複雑・ファジー小説

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【カキコ住民参加型】都市伝説の噂
日時: 2016/03/25 11:58
名前: 双葉亭 ◆23.21kNj1E (ID: bUrLJMdS)
参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=528

 
「俺達はね、人に忘れられたら死ぬんだよ。人の噂によって生かされる存在だからさ。」

カキコ住民が転生したら都市伝説になった、という設定のコメディーホラーを目指したもの。
まだ参加者が集まっていないので最後まで一人な可能性もあり。

荒らし、中傷は回れ右。
感想やアドバイスは喜んで受け取ります。
拙い文章しか書けないと思いますが、温かい目で見守ってくださると嬉しいです。

《目次》

Re: 【カキコ住民参加型】都市伝説の噂 ( No.1 )
日時: 2016/03/25 22:12
名前: 双葉亭 ◆23.21kNj1E (ID: 98AXyywb)

 
目が覚めると、トイレにいた。

何を言っているか分からないだろう。僕も分からない。
そもそも、僕は死んだはずなのだ。
春になり始めて、雪が少しずつ溶けてきた。ニュースでは花粉の量が多いと予報されたその日、僕はコンビニで肉まんを買って家に帰るところだった。
信号無視はしてないし、よそ見だってしなかった。この時は、僕が死ぬなんて思ってなかった。

けど、人生とは分からないものである。
僕がどれだけ注意しようが、車を運転する方が注意をしていなかったら意味がない。
結果的に言うと、車が歩道に突っ込んできて、僕を轢いたのである。
轢いたというよりは、吹っ飛ばしたという方が適切だろうか。体が宙高く飛んで、地面に落下し、頭がくわんくわんと回ってるみたいで……。

……まぁ、とにかく、僕は死んだのである。
なのに、何故だかこんなところにいるのである。
何がどうなって、こうなった。


01【都市伝説 赤マント】


とりあえず、辺りを見回す。
ここはどこかのトイレの個室のようだ。僕は先ほどまで洋式トイレの蓋に座って、タンクにもたれかかっていたらしい。
慌ててトイレから離れ、ドアを軽く押してみる。

個室の外に出ると、沢山の便器が壁にくっついている。
……よりにもよって、男子トイレにいる。

「僕、女なんだけどぉ……。」

ぼそり一人で愚痴を溢しても、誰かがそれに応えてくれるわけではない。
壁についている鏡を見てみると、生前より随分と前髪が長くなっている。そのせいで、目が見えない。
前髪を掻き分けてみると、くりっとした黒い目が見えた。まつ毛も長めで、正直、生前より随分と美人になったように見える。

いや、顔のことはどうでもいい。
問題なのは、服装である。

被っていた帽子を手に取り、さまざまな角度から見る。
どこもかしこも、真っ赤。着ている服も、真っ赤。しかも、演劇で身につけるようなマントを羽織っている。これも真っ赤だ。
どこもかしこも真っ赤っかで、正直目が痛くなってきた。
こんな女が男子トイレにいたら、どんな目で見られるか。

……想像したら、それだけで胃が痛くなってきた。

早くここを出ようと、出入り口である扉の前へ来て、ドアノブへ手を伸ばした、瞬間。



ドアノブが、回転した。

ヤバい、と頭で考える前に、体が動く。
一番近い個室に駆け込み、角に体を押し付け、慌ててドアを閉める。
ばくばくと大きな音を立てる胸に手を置き、荒々しい呼吸を繰り返す口を手で塞ぐ。
ドアが閉められる音。かつ、かつと、こちらへ近寄ってくる革靴の音。
だらだらと冷や汗が垂れ、体はがくがくと震える。

早く、早く、出ていって__!


心ではそう望むのに、何故だか、体が言うことを聞かない。
くるり。僕の意志に反して、体がドアと向き合う。
ぐぐ、っと、僕の膝が糸で釣られてるみたいに、上に上がる。

そして__、僕の足がそのままぴんと延び、ドアを蹴った。

ドアの向こうには、もう要を足し終えたらしく、手を洗いに行こうとしている男子高校生。
こちらを見て、黒い目をまん丸く見開き、ぽかんと口を開けている。

あぁ、終わった__。

意志に反して、口が開く。せめて、せめて、言い訳ができれば!
そんな僕のわずかな希望は、僕自身の手によって打ち砕かれた。

「赤いマントと青いマント、どちらがよろしいかな?」

自分の喉から出てきたとは思えないほど、低く醜い声。
頬が痛くなるほどに吊りあがった口角。にたり、細められた目。

全てが、僕の物じゃない。
僕の体なのに、僕の物じゃない。僕の思い通りに動かない。

少年が、掠れた声で何か言った気がする。
僕は、懐から何かを取り出して、それで__。





……そこからのことは、何も覚えていない。

けれど、気がついたらトイレの外にいて、何やら鉄っぽい臭いが鼻をついた。
ゆっくりと、自分の体を見ると、ところどころに赤茶色のものがこびりついている。
息が、荒くなる。
胸が、腹が、痛くて、苦しくて、トイレに駆け込む。


駆け込んだのは、何故か男子トイレだった。
個室に駆け込もうとしたら、足に何かがぶつかった。




僕の足にぶつかった、ものは。
僕の体についているものと同じ、赤茶色のなにかで汚れた、人間だったなにか、であった。

Re: 【カキコ住民参加型】都市伝説の噂 ( No.2 )
日時: 2016/03/27 22:36
名前: 双葉亭 ◆23.21kNj1E (ID: 98AXyywb)

 
__そんなこんなで、僕は都市伝説デビューを果たしてしまったわけなのである。

脱人間。しかも人を自分の手で殺してしまったという感覚。今まで脅えていた〝お化け〝に自分がなってしまったという事実。
それらを先輩である都市伝説に知らされた時は、ショックでトイレに引きこもった。その後にトイレに入ってきた人間をまた殺してしまい、結局一か月もトイレに引きこもってしまった。

人間ではなくなると、不思議なことに、殺人に対する禁忌の念があまりなくなった気がする。
今では、青いマントが欲しいと言った人間をボディーブローで気絶させて、頸動脈にやけに鋭いストローをブっ刺している。その上、その血をスポーツドリンクを飲むのと同じ感覚でちゅうちゅう吸っているんだから、都市伝説は怖いものである。

まぁ、そんなこんなで都市伝説として順応してしまった矢先のこと。

僕のいるトイレがある公園に、一人の先輩が来ていた。

02【引きこもりネットワーク】

都市伝説というのは、みんなの心の中にいると言ってもいい。
つまり、みんながいると思っている数だけいる。沢山いる。一怪異見つけたらあと十怪異は町にいるのである。
それは僕が生まれた町でも同じだったようで、僕がいればあと十個の怪異がいるわけだ。

「……しかし、先輩達はこの寒い中外で活動するんですか。辛いですねぇ。」

ベンチに腰掛け、がたがたと震える体をマントで包む。
怪異でも寒さって感じるんだね。赤マントびっくりしたよ。

「いや、俺は誰かに呼ばれない限りは屋内にいるし。」

…………。ひとりかくれんぼさん、僕、それは初めて聞きました。
ひとりかくれんぼって降霊術だから、そもそもその怪異に肉体があるとは思ってなかったんですがね。

ひとりかくれんぼさんは、引きこもりらしい。
ただ、ひとりかくれんぼさんはこの公園の近くのアパートに住んでいるらしいので、時々買い物ついでに僕と話してくれる。
なので、怪異からしたら希少価値の高い人なんだ。レアキャラだね。人間からしたら必ず来るから、レアでもないのだけれどね。

僕も屋内の怪談ではありますが、ひとりかくれんぼさんとは状況が違うんだ。
ひとりかくれんぼさんは温かいところに呼び出されることもある。しかも二時間もそこにいていい。
しかし、僕はと言えばトイレに出る怪談だから、いつも寒い。冷たい便器に座って人を待つのは辛い。最近寒さに耐えきれず、被害者の財布から少しだけお金を抜きとってコーンポタージュを飲んだり銭湯に行ったりしてる。もうこれ、ホームレスがカツアゲした揚句、人を殺したようなものだよね。自分がここまで屑になれるとは思わなかったよ。

「……先輩はいいですねぇ。家があって。」
「その言葉、他の奴らに言ってみろよ。」
「殺されますね。僕も一応家がありますから。」
「公衆トイレだけどな。」

ひとりかくれんぼさんはずるいですね。唇をぐっと噛みしめたら目をそらされた。その後に鼻で笑うのが聞こえました。解せぬ。

「……そもそも、僕は他の都市伝説の皆さんに会うことができるんでしょうかね。」

僕がぽつりと呟いた途端、すぐ横から視線を感じる。ゆっくりひとりかくれんぼさんの方を見てみたら、目をかっぴらいてこちらを見ていた。解せぬ。

「お前、俺以外の怪異と会ったことねぇの?」
「まぁ、僕もまた引きこもりなので。トイレの中でちくちくマントを縫っているだけでも時間は潰せるものですよ。」
「つまんねぇ人生送ってんだな。」
「人間やめると夜さえ怖くなくなりますし。暴漢なんて血を抜けば一発ですし。僧侶さえ来なけりゃ一発ですよ!」

こんな会話で笑える僕等はやっぱり頭がどうかしてます。ひきこもりの都市伝説が二人揃うとこうなるんですね。都市伝説怖い。

「とりあえず、僕の当面の目標は、ひとりかくれんぼさん以外の都市伝説に会うことなのですよ!」

高らかに宣言しても、彼は僕を見てません。興味が目の前にある噴水に写っています。泣きたい。

「口裂け女さんとか、花子さんとか、カシマさんとか、有名な都市伝説に会うのです! そして、あわよくば寂しさを紛らわすためにお友達になります。」
「寂しさを紛らわすために。」
「ひとりかくれんぼさん、寂しくないんですか?」
「殺すぞ。」
「ワンカウントいただきました。真に申し訳ございますません。」

謝る気は毛頭ない。都市伝説になってから生死に関しての概念も変わってきた。寿命って大事。死んじゃう体は大切。

とりあえず、僕は引きこもりを卒業し、他の怪異に会うのである。ひとりかくれんぼさんの手首を握り締めて一緒に連れて行こうとしたら、手首を結構な力で殴られた。驚いて手を離したら逃げられた。

……解せぬ。
とにかく、夕日が落ちる前にはトイレに戻ることを目標とし、公園から出てみる。

怪異とは、案外人の近くにいるものである。
見えないだけで、信じようとしないだけで、街にうじゃうじゃいたりするのである。

「ねぇ、そこの赤マントの子。私、キレイ?」
「ねぇ、そこの赤マントのお姉ちゃん。あたしメリーさん。今、貴方の後ろにいるの。」

……そう。意識していないだけで、意外と近くにいるのが都市伝説なのである。

はじめまして。 ( No.3 )
日時: 2016/04/03 01:50
名前: 佐渡林檎 (ID: zWHuaqmK)

はじめまして、佐渡林檎と申します。はじめまして、あれこれさっき打ったかな。

久しぶりに文字を打つものでそわそわしております。

なんとなく数ヶ月ぶりにカキコを覗いたら面白そうなタイトルのがあって全部読みました。



作者さんに垣間見えるギャグセンスににやけながら読みました、ご馳走様でした。お化けさん達視点というのもなかなか面白いですね。

これからも期待しております。軽い感想で申し訳ないです、語彙力がないもので。


ではでは、また。


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