複雑・ファジー小説
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- Lost Silver【オリキャラ募集中】
- 日時: 2016/04/24 15:27
- 名前: 燈月リン (ID: 7XOfSzGy)
- 参照: http://www.kakiko.info/bbs2a/index.cgi?mode=view&no=575
あの時の母は、随分いつもと姿が違っていた。
手足には動きにくそうな枷。服は背中が丸見えとなった生地の薄いワンピース。普段露出を嫌う母ではあり得ない格好だった。
不安になった私が「何処にいくの?」と聞くと、儚げに微笑み「貴族様の所へ」と短く答えた母。
まだ幼かった私には、彼女の言った“貴族様”が何を指しているのかさえ分からなかった。
______私はあの日以来、母の姿を見ていない。
*
はじめまして、燈月リンです。
上の参照の部分を押せば、オリキャラ応募が出来ます。
興味がある方は是非行ってみてください!
- Re: 二話 幼い少女 ( No.2 )
- 日時: 2016/05/08 18:38
- 名前: 燈月リン (ID: Xgilb50Q)
「も、もしかして、結構待った...?」
恐る恐る質問すると、メンバーの皆は揃って「うーん...?」と肯定も否定もしなかった。こういう時は肯定しているのと同じである事を、私は知っている。やっぱり寝過ぎたのか...と心の中で反省していると、何処からかまだ幼い可愛らしい声が聞こえた。声がした方へ目を向けると同時に、足元に小さな衝撃がくる。びっくりして下を見ると、クリクリとした大きな目で私を見上げる小さな少女がいた。
「おはよっ、ルイお姉ちゃんっ!」
「あ、おはようアイリ。お見送りしに来てくれたの?」
そう微笑むと、うんっ!と元気良く返事した少女、もといアイリ。彼女は、随分前の作戦で取り返した生け贄だ。
生け贄とは、人間を喰らう不死者に対抗出来ないと判断した政府が提案した、最終手段。又はそれに選ばれた、人間の事を指す。生け贄となるのは頭脳明晰、或いは容姿綺麗な人間と決まっており、アイリはその整った外見が理由で選ばれたのだ。
初めて会った時は酷く怯えた目で私を見つめていたが、色々とお世話をしているうちになついてくれた。フワフワの栗色の髪は私と同じくボブにしており、その頭を撫でると目を細めて気持ち良さそうな顔をする。私の最大の癒しだ。因みに湧は「ガキはあんま好きじゃない。小さくて踏んじまいそうだし」と言ってあまり近寄らない。
こんなに可愛いのに___なんて思いながらアイリの髪を触っていると、彼女の口からいつもの言葉が零れ出た。
「今日も早く帰ってくる?」
「...うん、勿論。アイリはちゃんと他のお兄ちゃんお姉ちゃんにお勉強教えてもらうんだよ?」
「うん、分かった!」
ニパーッという効果音が一番合うであろう笑顔を私に向けると、私の足から華奢な体を離した。そして、全員に「行ってらっしゃいっ」と手を振る。
今回の作戦に参加するメンバーは、皆微笑んで手を振り返した。
______今日は、屍食鬼からの生け贄奪還作戦実行日。
- Re: 三話 屍食鬼 ( No.3 )
- 日時: 2016/05/08 21:38
- 名前: 燈月リン (ID: Xgilb50Q)
屍食鬼とは、先程説明しそびれた不死者の中の一種。スラム等の荒れた町によく現れ、人肉を好んで喰らう危険生物である。不死者には他に二つの種族が存在するのだが、その中で屍食鬼が最も数が多い為、遭遇率が極めて高く、生け贄に選ばれていない一般人が襲われる事も少なくない。
そして____Silver以外の武器で攻撃しても、そいつ等は絶命しない。これは屍食鬼だけでは無く、不死者全体に当てはまる。Silverで心臓を破壊しない限り、彼らは不死身なのだ。
そんな奴らから生け贄を奪うのは、一筋縄ではいかない。必ず今日も犠牲となるメンバーが出るだろう。もう何度も修羅場をくぐり抜けてきた私でも、怖いものは怖い。
私はそんな恐怖心から逃れるため、一週間前に知らされた今回の作戦を、何度も何度も頭の中でリピートした。
まず最初に生け贄が乗せられた馬車に私と湧の二人が乗り込み、決行者の部下達を殺害する。決行者というのは、生け贄制度を提案し、生け贄を誰にするかを選ぶ人間社会での最高権力者の事である。逆らえば即死刑か生け贄行きで、奴等の支配下に置かれている人間はいつ自分が生け贄に選ばれるのか、毎日ビクビクしながら生活しているのが現実だ。
そんな馬鹿げた世の中を作り上げた最高権力者さんの部下を始末した後は、待ち伏せしていたメンバー達と合流し、生け贄達を連れて直ぐ様逃走する。ここが、今回の作戦で一番重要な所だ。
屍食鬼は、犬の数百倍鼻が良い。特に、血の匂いには敏感だ。集中さえすれば、何千キロメートルもの遠い場所の匂いも分かる。
だから活動時間ではない朝でも必ず、決行者を殺害した所で異変に気づくだろう。“自分のテリトリーの中で人間が殺られている”、と。テリトリー内に居る=食べても良いと認識し、死体をも食べる食欲旺盛な彼らは、きっと血の匂いに堪らずやって来る。
出来れば、不死者との戦闘は控えたい。だから、たどり着かれる前に逃げなければならないのだ。
もしたどり着かれたりなんてしたら___と考えただけで、背筋がゾクッとする。
結局、恐怖心は抜ける事は無かった。
____作戦実行まで、あと一時間。
- Re: 四話 新人参加メンバー ( No.4 )
- 日時: 2016/05/28 21:29
- 名前: 燈月リン (ID: 5A9iE8mS)
ただただ愛用のSilverを弄くって、一時間という長い時間を潰していた私。因みに、五本のナイフの内、刃渡りが長い二本が接近戦で、刃渡りが短い残りの予備のナイフは遠距離攻撃に使っている。拳銃タイプも良いな、と思った事もあったが命中率が壊滅的であるため、その考えは即座に削除された。以前湧の予備の武器である拳銃を使わさせてもらって、その評価は酷評だった気がする。
それって確か八年前の事だっけ____と昔の思い出に浸っていると、隣で仮眠していた湧がパチッと目を開けた。
何で時計を見ずに時間ピッタリ起きられるのか、とても不思議だ。
「...もう時間か」
「うん...行く?」
「おう」
湧はゆっくりと立ち上がると、背伸びをしてから他のメンバーに「頑張れよ」と声を掛けた。実は今日のメンバーは私と湧以外、全員入りたての新人なのだ。Silverの使い方もまだ不慣れである彼らだが、いつまでも巣に籠っていても成長しないという理由から、今回初めて作戦参加メンバーに選ばれた。
ガチガチと恐怖と緊張で震える彼らに、私も湧と同じように声をかける。
「こっちも出来るだけフォローするから。じゃあ、また後で」
「は、はい...」
その小さく震えた返事を聞き取ると、私は湧と共にアジトの外へと出た。
ここからは、それぞれ別行動だ。
*
私と湧が目的地点に着くと、貴重である無線機で新人達に配置に着けたかを確認する。無線機の向こう側からは「はいっ...!」という覇気のある声を装った返事が聞こえた。
そして、それを双眼鏡で遠くを見る湧に伝える。
「みんな配置に着けたって.......どう?来た?」
「いや...まだだな」
何が、というと勿論生け贄を乗せた馬車の事だ。生け贄に逃げられないように頑丈に作られたそれは、一目見ただけで普通の馬車と見分けられる。主な違いは、窓が一切無い所。そして前には武装した決行者の手下が馬を操っている事。
そいつ等を殺って生け贄を無事逃げさせられたら、私達の勝ちということになるのだ。
- Re: 五話 とある刑務所 ( No.5 )
- 日時: 2016/07/06 21:04
- 名前: 燈月リン (ID: del8tE9y)
ルイ達が、生け贄を乗せた馬車が来るのを待っている頃。
場所は変わってとある刑務所で、ルイ達の標的である屍食鬼ルートの馬車が到着していた。
この刑務所に捕らえられている犯罪者は皆、成績優秀、容姿綺麗な人間。“生け贄は優秀な人間”と決められているのだが、優秀が故に犯罪を犯してしまう人間もいる。ただでさえ減少してきている人間の数を補う為に、犯罪者である彼らも生け贄に選ばれるのだ。
武装した決行者の部下二人が、とある牢獄に腰を屈めて入って行く。そこだけが他の牢よりも広く、どこよりも無機質だ。
そんな部屋の片隅で、壁に背を預けて座る男が一人。
「おい、早く立てっ!」
二人の内の一人が、鞭でバチンと床を叩いた。しかしその脅しは牢獄の主である主である彼には通じない。
しびれを切らした決行者の部下は、鞭を床から彼の体へと打ち付けようとした。重い足枷とコンクリートで固められた頑丈な手錠で動きを封じている事を良いことに。
しかし、鞭が彼に当たることはなかった。
完全に振り下ろされる前に、ゴツッという何かが砕けた音と、「ガッ」という部下の短い呻き声が牢獄に響き渡る。顔面をやられ、鼻の骨が折れたみたいだ。
「なっ」
「静かに」
残された一人の部下の背後に回り、同じように手錠を固めるのコンクリートの重さを武器として扱う、背が高く容姿綺麗な男____と言うより青年に近い彼。
容赦なく頭を打ち付けられた部下は、力なく地面に倒れた。すると、ドクドクと大量の血が後頭部から流れ出す。牢獄には、直ぐ二人分の鉄の香りが広がった。
それをスン、と一瞬だけ吸った彼は思わず鼻と口を片手で押さえた。
腹の底から沸き上がる食欲。口内で大量に増える涎。
人間相手に。喰いたい、という欲望が溢れた。
「....いいや、今は抑えろ」
青年は自分を叱るようにそう言うと、何故今まで壊さなかったのかと思えるくらいに、頑丈な手錠をいとも簡単に壊して外した。同様に、足枷も外す。
次に彼は、肉塊へと変わった部下の服を剥ぎ取ってから、段々と冷たくなっている体を引きずって早足で牢獄を出た。そして、外に用意された馬車の中に放り投げる。勿論、馬車の中には今回連れて行く予定である生け贄も入っているのだが、そんな事お構い無しに、血を拭き取ってもいない死体を生け贄達と共に閉じ込めた。中から「ヒッ...」という女の悲鳴が聞こえたが、知ったことではない。
彼は部下から剥ぎ取った固い帽子を深く被り、ひどく汚れ薄い生地で出来た囚人服の上から、防弾シートが仕込まれたコートを羽織った。
そして、本来決行者の部下が持つべき馬の操縦縄を、しっかりと握ったのだった。
- Re: Lost Silver【オリキャラ募集中】 ( No.6 )
- 日時: 2016/06/05 13:28
- 名前: 燈月リン (ID: nq7vYh80)
皆様、お久しぶりです、作者の燈月リンです。
お知らせですが、今月の9、10、11日〜一週間後までは私事で更新できません。
それ以降は必ず更新しますが、不定期になる事が多いです。
ご迷惑をお掛けしますが、どうぞこの作品をよろしくお願いします。
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