複雑・ファジー小説

【短編集】 幻想中歩行
日時: 2016/05/08 19:56
名前: 儚 (ID: aWtSrojt)

空の青に染まりたくて、空の下で歩いてみた。
――――私は透明。周りの空気が透明だったから。

森の緑に染まりたくて、森の中を歩いてみた。
――――私は無色。周りの緑に触れられないから。

夜の黒に染まりたくて、夜の街を歩いてみた。
――――私は何色? わからなかった。いろんな色がありすぎたから。

ある日見たあの幻想。
私はその色に染まりたかった。
歩けばしみこむと思ったけれど、
幻想はどこにあるかわからなくて。
わからなくて。

あの色に染まれるならば
今、透明のままでもいいかな、と思った。



【幻想中歩行】



* * *


ファンタジー、コメディ、ホラー、詩、いろんなジャンルごちゃまぜの【短編集】です。
各話タイトルは文章の最後に付ける形式でいきたいと思っています。
ジャンルは各話の最初に付けます。

更新は不定期になると思います。

未熟な新参者ですが、よろしくお願いします!

Page:1



Re: 【短編集】 幻想中歩行 ( No.1 )
日時: 2016/05/08 19:54
名前: 儚 (ID: aWtSrojt)

(ホラー)


「さわりマス、さわりマース」

私の最寄り駅。ホームへ降りる階段の最後の段を踏んだとき、それは現れる。

「さわりマス、さわりマース。あなた、さわりマースゥゥー」

天井を貫くのでは、と心配になる黒い巨体。
マヨネーズの容器に若干似ていて、すぼまった先には白い目がついている。
あきらかに階段をふさぐ『彼』。毎回、毎回、私の仕事終わりを邪魔する『彼』。
私は今日もそのまま足を出し、『彼』の体を突き破る。

「さわりマ・・・ス?」

ポスン。

私の体の形に『彼』に穴があく。しかしそれはお風呂に張った水のよう、穴は何かが流れ込んだようにすぐにふさがる。お、お、オ、と『彼』は目をぎょろぎょろさせるが、事実、『彼』に実体はない。

「なにが『触ります』よ」

幻覚のくせに、粋がったヤツ。



* * *



翌日私は朝をむかえる。
電車に乗って出勤。朝、『彼』は出てこない。

「どうしてこんなことも出来ないんだ!」

昼前上司に叱られる。
お昼時間が削られていくのを横目に見ながら、私は謝罪を続ける。
何を謝っているのか疑問に思う。だって小言は全て聞き流しているのに。

上司に言われた仕事をこなす。
上司も、上の上司に言われた仕事をこなしている。
みんなそうだ。みんな、そうして何事もなく終えている。
無事に。
確実に・・・。



夕方、電車に乗って帰宅。
ホームの階段、最後の一段で、私は足を止める。

「さわりマース、さわりマス」

『彼』が現れる。

「さわりマース、さわ・・・」

ポスン。
開く穴、ふさがる穴。

「・・・りマース、さわりマス。お、お、オ?」

馬鹿な幻覚。
まあ、そんな幻覚を見る私も、大概馬鹿なのかもしれない。


* * *


その日、『彼』のようすは昨日とは違った。

「さわりマス、さわりマス」

いや、様子は同じである。
その現れる時間が、違っていたのだ。

私が階段を下りきった後、『彼』は電車の中にまで入ってこようとしたのだ。
まあ、幻覚だし、と気にしないで居ると、『彼』はつり革を持つ私の隣に立った。

一駅通過、椅子が空いたので座る。『彼』も――――いや、『彼』は座る所がなかったため、床に座っていた。

・・・空気椅子で。

(馬鹿な幻覚・・・)

幻覚だから、かもしれない。








電車が止まったのは、『彼』がちゃんとした椅子に座れた時のことだった。
人身事故であるらしい。一日の仕事で疲れ切っていた私は、何で深夜近くに、と煩わしく思う所もあった。

『彼』が口を開く。



「さわりマス、さわりマース」



いままでずっと黙ってたのに。私は驚いて『彼』を見る。

「さわりマース」

『彼』はもう一度そういって、そして口を閉じた。







(なんで、今日は家までついてくるの?)


『彼』はアパートまでついてきた。幻覚とは言え気味が悪い。

「さわりマス」

ドアを開けたとき、『彼』はそういった。


――――部屋には明かりがついていた。

「嘘」

思わず手が止まる。
どうして? 何? ・・・誰?

少しずつ扉を開く。それにつれ、漏れる明かりが大きくなっていく。

扉を開くのをやめて、警察に電話すればよかったかもしれない。
しかしもう遅い。

ドアの後ろには、見知らぬ男が立っていた。興奮したような息づかいがすぐ近くに聞こえる。
いやだ。
気持ち悪い。

恐怖に足が止まる。
男の右手に握られた包丁が、私の腹に刺さるのに時間はいらなかった。

痛い。
やだ。
怖い。
やめて。



「オ、お。さわりマス、さわりマァース」



『彼』の声が聞こえる。



遠のく意識のなか、それはとても耳に障った。



1.【さわる】 -the end of it-



+++++解説+++++
たいへんわかりにくいですね、すみません。

まず、主人公は仕事にストレスを感じています。合わない仕事、うるさい上司、それに薄っぺらい謝罪をくりかえす自分。
なによりも、仕事が終わって帰るときが一番嬉しい自分の人生。
とても気に障(さわ)る。
こんなのは嫌だ。

そんな自己嫌悪に浸る時に、異形の幻覚『彼』が現れるようになります。
「さわりマス」そう繰り返す触れない『彼』。
そんな存在も煩わしい。気に障る。はやく消えろ。消えてしまえ。
そう願って『彼』の体に穴をあけるが、思い通りいかずすぐ塞がる。

電車に乗ってきた『彼』は自ら行動しない。まるで私(上司)を模倣する私(自分)みたい。上司(この時の私)にある物は私(椅子の無い『彼』)に無い。椅子がないのに空気椅子でがんばっている。楽しようとしているのに余計疲れる。
幻覚は私のように馬鹿なんだ。

人身事故のせいではやく家に帰れない。
そう思ったとたん騒ぎ出す『彼』。うるさくて気に障った。

どうして家までついてくるのか。
その家の中に潜む強盗。
気がつかれて焦った強盗は、家主の私の殺害を企てた。
嫌だ。
死にたくない。
こんな人生で死ぬなんて、ぜったいに嫌だ!

「さわりマス」
死に際までずっと消えなかった『彼』。そんな幻覚も気に障る。



あれ・・・? わかりづらいから解説付けたつもりなのに余計わかりづらいですね・・・!?

「さわりマス」には「障りマス」という意味があります。もう・・・それだけわかってくだされば大丈夫です。
サンタさん、説明力プリーズ・・・。

Re: 【短編集】 幻想中歩行 ( No.2 )
日時: 2016/05/08 19:55
名前: 儚 (ID: aWtSrojt)

(ファンタジー、ヒューマン)


私は蒼い。
幸せの蒼い鳥。

みんなが私をほしがって、私をむしって取っていく。
いいよ、幸せにするよ。
それが私。幸せの蒼い鳥。
本当の願いを、本当にするの。


ある日、私のもとに人が来た。

「あの人の心がほしいの!」

わかい綺麗な女の子。
私の羽を一枚あげる。
次の日見かけた女の子。隣に格好良い男の子。
私は蒼い幸せの鳥、女の子を幸せにした。


ある日、私のもとに人が来た。

「あいつが憎い。あいつを消せ!」

古い靴屋のおじいさん。
私の羽を一枚あげる。
次の日ちいさな街の中。靴屋のきらいな『あいつ』はいない。
私は蒼い幸せの鳥、靴屋のおじいさんを幸せにした。


ある日、私のもとに人が来た。

「あれが大嫌い! あれが無かったらいいのに」

眼鏡をかけた大学生。
私の羽を一枚あげる。
次の日地球のとある『物』。世界からそれはなくなった。
私は蒼い幸せの鳥、大学生を幸せにした。


みんなを幸せにしてるはず。
はずなのに。

女の子の男の子、本当に好きな子と仲違い。
靴屋の嫌いなあの人が死んで、慕う人らは悲しんだ。
大学生の嫌いなあるもの、好きな人は嘆いてた。

どうして。みんな不幸になっていく。


ある日、私のもとに人が来た。
綺麗で優しい赤い目の男性。

「君に一目惚れました」

私は幸せの蒼い鳥。
それは願いじゃないんだよ。言うと、彼は悲しげに笑った。


次々訪れる人々。
比例して減ってく私の羽。
最後の一枚、彼が来た。

「これが取れたら私は帰る」
「どこへ」
「どこだろうね」

私は背中に手を伸ばす。

「最後の一枚、幸せになって」

彼が羽を持ったその瞬間。

空から財宝が降ってきた。


ああ、そんなものか。



私は蒼い。
幸せの蒼い鳥。

みんなが私をほしがって、私をむしって取っていく。
いいよ、幸せにするよ。
それが私。幸せの蒼い鳥。

本当の願いを、本当にするの。


2.【幸せの鳥】-the end of it-




+++++解説+++++

主人公の蒼い鳥は、本当の願いしかかなえることが出来ない。
羽をむしって、住民の「本当の願い」をかなえていくうち、青い羽根は少なくなっていく。
そんな中、彼女はある男性に出会う。
「君に一目惚れした」
君を手に入れたい。
そう言われて、彼女は拒むが、彼はひかずに度々訪れる。何度も訪れる彼に、彼女もだんだん惹かれるようになる。

しかし別れの時が来る。
蒼い鳥は背中の羽がなくなると、『どこか』へ帰らねばならないのだ。
最後の一枚、蒼い鳥は好きな彼に幸せになってほしい。彼に青い羽を渡すと――――空から財宝が降ってきた。
それは彼の本当の願い。彼は彼女に一目惚れしたのではなく、彼女の羽目的に訪れていたのだった。
それを見ながら、彼女は思う。

「ああ、(人間って)そんなものか」

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