複雑・ファジー小説

継ぎ接ぎバーコード【No.04突入】
日時: 2018/01/11 21:41
名前: ヨモツカミ

 ――――殺さなければ。

 幸せなんて言葉は程遠く。存在を許されない僕らはどう生きればいいの。

 生きたいとか、殺したくないとか、愛されたい。そんな願いが、全て叶わないお話。

 掲げたナイフに込めるのは?

「どうか安らかに、死んでくれ」

 それは、彼が自分自身で与えた罰。存在しない終わりを目指して生きる、彼らの償い。


………………………………



こんにちは、ヨモツカミです。何も完結させたことが無い打ち切り芸人なので、今回もどうなるかわかりませんが、きっと終わりまで書き続けますので、どうぞお付き合いください。
趣味で好きな時に書くので1ヶ月2回更新です。
良い意味で読み手を裏切るような、そんなものが書きたいですね。

〈注意〉
・死ネタ、流血表現を多く含みます。
・たまに書き直したり加筆します。
・誤字・脱字多々あり。
それでも大丈夫な方は、どうぞお付き合いください!


〈軽い説明〉
群青バーコード
青色の、通常のバーコード。モノによっては人の役に立つかもと考えられている。バーコード駆除の為の兵“カイヤナイト”は群青バーコードで構成されている。
翡翠バーコード
緑色の、失敗作を意味するバーコード。暴走しやすかったり、力が使えなかったり、ヒトとして機能しなかったりする。大体はすぐに処分される。
紅蓮バーコード
血のような赤色の、殺人衝動をもつ、特に危険なバーコード。うまく使えば兵器として使えるため、重宝されたりもしたが、基本的に危険視されており積極的に駆除される。
漆黒バーコード
全てを吸い込む様な黒色。殆ど謎に包まれている。本当の化物だと恐れられている。
ハイアリンク
バーコード駆除専門の軍隊。基本的に人間で構成されているが、その中にバーコードで構成された特殊部隊“カイヤナイト”がある。

〈なんか作者が描いてみた〉
・ジン>>8
・クラウス>>15
・トゥール>>18
〈頂き物〉
>>23
>>31

〈お客さま〉
銀竹様
凡丙@tablet様
小夜 鳴子様

〈目次〉
No.00 懺悔と黒の約束
>>1
No.01 曇天下の爬虫類へ
>>2 >>3 >>4 >>5
>>6 >>7 >>9
No.02 朱に交じる亡霊は
>>10 >>16 >>17 >>19
>>20 >>21 >>22 >>24
No.03 哀を求めて蚊帳の外
>>27 >>28 >>29 >>30
>>32 >>33 >>34 >>35 >>36
No.04 白昼夢は泡沫の如し
>>37

Twitterアカウント→@tsugiba

2016年 5月6日 執筆開始
2017年 7月1日 No.01修正
2017年 8月4日 No.2修正

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Re: 継ぎ接ぎバーコード ( No.1 )
日時: 2017/07/01 19:59
名前: ヨモツカミ


No.00 懺悔と黒の約束

 ……どれくらいの間、こうしていたのだろう。
 肩で息をしながら、割れた蛍光灯が織りなす暗がりの中、血に濡れて重たくなった白衣を脱ぎ捨てる。血液を染み込ませ過ぎて、これが本当に白衣だったのかも疑わしい程に汚れてしまっていた。それを脱ぎ捨てても、肌を伝う血の不快感は拭いきれない。毒々しいほど鮮やかな色に全身を包んで、自分が動くたびに雫が白い壁や床をも彩った。
 ――アイツは何処だ。
 進もうとすれば、転がった死屍累々に脚がもつれて何度も転びそうになる。まるで死してなお縋り付くみたいに、何度も肉片に足を引っ掛けた。知っている研究員の顔もあったが、構わず踏み潰して進む。靴底で耳障りな音がしたが気にしている余裕なんて無い。
 いくら進んでも、どこまでも死体の道は続く。込み上げる胃液を抑えて壁伝いに進んだ通路の先から、悲痛の叫びが響いた。

「殺さないでくれぇ……!」

 そっと声のした部屋を覗きこめば、彼女の後ろ姿と、自分もよく知る研究員の男が向かい合っていた。男は涙やら鼻水でぐしゃぐしゃになった顔のまま、信じられないモノを見るような目で震えている。考えずともわかる。今まさに、彼女が手を下す瞬間であった。
 桜色の髪を揺らしながら、彼女がゆっくり男との距離を詰めてゆく。表情はわからない。ただ、迷いのない足取りには明確な殺意があった。

「止めろっ、なんでだよ、こんなことは止めてくれ! 間違ってる!」
「――ええ。そうね。あなたの言うとおり。もしかしたら、そうかもしれない……けれど」

 震えながら後ずさる男に、押し殺したような、それでも優しい声色で彼女が答えた。そして続ける。男と同じようにひどく震える、頼りない右手を掲げて。

「どうか、私の身勝手を許して」

 瞬間。時が止まったかのように錯覚する。音もなく男の目や耳、鼻からドロリと鮮血が溢れ出す。程なくして男が突然地面に蹲り、血を吐き出した。聞いているだけで気が狂いそうな呻き声をあげながら。胸を何度も掻き毟ってのたうち回り、やがて脱力した男の身体は、彼が創り上げた鮮やかな赤色に沈む。
 もう動かなくなった男と目があった気がした。苦悶の表情を携え憎々しげに、此方を睨んでいるかのように。どうしてこんなことをするのかと、訴えているように思えた。
 慌てて目を逸らすついでに彼女の後ろ姿を見れば、薄い桜色の長髪は血がこびりついて、ボサボサに乱れている。せっかく綺麗な髪なのに勿体無いな、なんて今思うには余りにも悠長だった。

「……約束だからね」

 あんまりに震えて掠れかけた声だったから、泣いているのだと思いこんでいた。此方に気づいてゆっくりと振り返った彼女の紅色の瞳は薄っすらと潤んでいたが。辛そうに、それでも確かに笑っていたのだ。
 今にも壊れそうな、脆い笑顔は彼女の強さだったのかもしれないし、弱さでもあったのだろう。

「例え何年掛けようと。必ず殺し続けるの。終わりのその時までね」

 終わり。その言葉を口の中で転がして、余韻を確かめる。何処か可笑しな響きであった。
 彼女の言葉に小さく頷いてみせたが、それは本当に数ミリ程度の上下動しかなかったように思う。なんと儚い言葉か。心の奥で静かに嘲笑する。

 ―――終わりなんか有りはしない。そんなこと彼女だってとっくに気が付いていた筈なのに。それでも尚、存在しない終わりを目指して生きるなんて。

「約束だ」

 胸に刻まれた漆黒のバーコードを握りしめて。ただ、2人は嗤った。何も欺けない浅はかな笑顔で。
 その約束は、彼らに出来る最大の後悔であり、罰であり、償いだったのだ。

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