複雑・ファジー小説

継ぎ接ぎバーコード
日時: 2018/12/11 21:48
名前: ヨモツカミ
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=19542

 ────殺さなければ。

 幸せなんて言葉は程遠く。存在を許されない僕らはどう生きればいいの。
 生きたいとか、殺したくないとか、愛されたい。そんな願いが、全て叶わないお話。
 掲げたナイフに込めるのは?

「どうか安らかに、死んでくれ」

 それは、彼が自分自身で与えた罰。存在しない終わりを目指して生きる、彼らの償い。

………………………………

こんにちは、ヨモツカミです。何も完結させたことが無い打ち切り芸人なので、今回もどうなるかわかりませんが、きっと終わりまで書き続けますので、どうぞお付き合いください。
趣味で好きな時に書くので遅いですが毎月6のつく日を更新日にする予定でしたが、面倒になったのでやめました。1ヶ月に1〜3回更新の予定? でーす。
良い意味で読み手を裏切るような、そんなものが書きたいですね。

〈本編を読む前に〉
・死ネタ、流血表現を多く含みます。
・たまに書き直したり加筆します。
・コメント頂けると更新速度が上がります。超欲しいです。
それでも大丈夫な方は、どうぞお付き合いください!

〈軽い説明〉
群青バーコード
青色の、通常のバーコード。モノによっては人の役に立つかもと考えられている。バーコード駆除の為の兵“カイヤナイト”は群青バーコードで構成されている。
翡翠バーコード
緑色の、失敗作を意味するバーコード。暴走しやすかったり、力が使えなかったり、ヒトとして機能しなかったりする。大体はすぐに処分される。
紅蓮バーコード
血のような赤色の、殺人衝動をもつ、特に危険なバーコード。うまく使えば兵器として使えるため、重宝されたりもしたが、基本的に危険視されており積極的に駆除される。
漆黒バーコード
全てを吸い込む様な黒色。殆ど謎に包まれている。本当の化物だと恐れられている。
ハイアリンク
バーコード殲滅特殊部隊。基本的に人間で構成されているが、その中にバーコードで構成された特殊部隊“カイヤナイト”がある。

〈目次〉
一気
>>0-
登場人物紹介
>>52
No.00 懺悔と黒の約束
>>1
No.01 曇天下の爬虫類へ
>>2 >>3 >>4 >>5
>>6 >>7 >>9 (一気読み>>2-9
No.02 朱に交じる亡霊は
>>10 >>16 >>17 >>19
>>20 >>21 >>22 >>24>>10-24
No.03 哀を求めて蚊帳の外
>>27 >>28 >>29 >>30 >>32
>>33 >>34 >>35 >>36>>27-36
No.04 白昼夢は泡沫の如し
>>37 >>38 >>41 >>42 >>43 >>46
>>47 >>48 >>49 >>50 >>51>>37-51
No.05 静寂に告ぐ藍晶石
>>53 >>54 >>56 >>57 >>58 >>59
>>60>>53-60

Twitterアカウント→@tsugiba

〈なんか作者が描いてみた〉
・ジン>>8 ・クラウス>>15
・トゥール>>18
・祝★2017年冬大会>>39
・祝★参照6666記念>>56
・なんか動画作ってみた>>60
・祝★参照7777記念
〈頂き物〉
>>23 >>31 >>40 >>55

〈お客さま〉
銀竹様、凡丙@tablet様、小夜 鳴子様、透様

〈その他〉
・AnotherBarcode -アナザーバーコード-(URLより)
継ぎ接ぎバーコードとは別の、もう1つの話。番外編集のようなものです。投稿頂いたオリキャラ(一応まだリク依頼板で募集中)や本編で語られることの無い登場人物の話や、ふざけて書いたifストーリー等。
・まあ座れ話はそれからだ(複雑ファジー)
主人公以外の4つの視点から主人公を見ていくよーみたいな。私はコメディのつもりで書いてる高校生達の青春なんとか。
・虚ろに淘汰。【短編集】(複雑ファジー)
趣味を詰め込んで書いてる、よく題名の変わる短編集。息抜き程度に書くのが楽しい。

2016年 5月6日 執筆開始
2017年 8月4日 No.02修正
2018年 1月7日 冬大会金賞受賞(ありがとうございます)
2018年 3月3日 No.00修正
2018年 8月31日キャラ絵新調しましま!
2018年 9月2日  No.01修正

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Re: 継ぎ接ぎバーコード2-6 ( No.21 )
日時: 2017/07/27 08:05
名前: ヨモツカミ
参照: https://t.co/jiN1O9eVDB

 階段を下りながら歩く、最後尾のクラウスが、前を征くトゥールにしか聞こえない声で、ぽつりと零す。

「オレ、生きてていいのかな」

 トゥールは何も答えなかった。その代わりに、軽く尻尾で顔面を叩かれる。……鱗でガサガサしていて、冷たい。変温動物の皮膚だ。
 下に着いて外に出ると、落ちてきそうな程重たげな雲に覆われて薄暗い空。この街はずっと曇っているな。なんてクラウスが空を見上げていると、ジンがピタリと歩みを止めた。
 そもそも、何処を目指して歩いているのか。クラウスがトゥールに話しかけようと、その横顔を覗き込む。そこで初めて、トゥールが針のように細くなった瞳孔で、何処か一点を睨みつけているのに気が付いた。

「トゥール?」

 クラウスが声を掛けると、トゥールは短くいる、と答えるだけだったが、その一言だけでも大体のことを察することは出来た。

「昨日、僕の腹を裂いてくれたのはてめぇだったな……」

 殺気立った声でジンが虚空にむけて話しかける。姿は見えずとも、その気配をはっきりと感じ取ったのだ。

「――可怪しいわねぇ。あれだけ切り刻んであげたのに、どうして生きてるのかしらぁ。面白い子ねぇ?」

 崩れた平屋の影から、細身の若い女が出てきた。暗い紫の髪をサイドテールにしていて、銀灰色の眼はギラギラと殺気を携えている。彼女の服は鮮やかな赤色をしている――ようにも見えたが、それらが全て血液の色だというのは、今もなお滴るのを見ればすぐにわかった。こびり付いた返り血に更に赤を重ねて、元の色なんて失われていた。

「お前らは下がってたほうがいい。紅蓮バーコードだ。あの女の〈能力〉は指先が鎌みたいになって、動きも素早くなるから、なかなか手強いよ」

 1歩前に踏み出して忠告するジンを無視して、トゥールもその隣に並ぶ。

「なるほど。アイツに昨日、体中引裂かれて、逃げていたら俺たちに出会ったわけか」

 数メートル程離れたところで嗤う女を睨みつけながら、ジンは舌打ちする。
 昨日の事。背後に気配を感じたときには手遅れで、ほとんど何が起こっているかもわからないまま背中に、腕に、膝に激しい痛みが走って、相手を視界に捉えた頃には胸を裂かれていた。彼女の素早い攻撃は、こうして面と向かっていても肉眼で追えるかは微妙な程だ。

「……煩いな、そーだよ。文句有るかよ」

 そんな話をしている間に、女は〈能力〉を発動し始めていて、両手の指先が伸びて鋭く弧を描く。ギラリと鈍い輝きを放つ5本の鎌の様に変わっていた。
 クラウスは、ジンに言われた通りにさっさと透明になって、近くの瓦礫の陰に隠れた。その事に女は気付き、不思議そうな顔をしていたが、あまり気に止めなかった。
 ――全部、引き裂けるならそれでよかったから。今はただ、抑えられない衝動に意識を沈め、気が済むまでそうしていたかったのだ。
 口元を歪めて、女は嗤う。血を求めるだけのバケモノの顔だ。

「アヒャヒャ! ショタと蜥蜴、まとめて引き裂いてやるわぁ!」
「誰がショタだ、気違いめ!」

 敵が接近してくるよりも先に、ジンは人差し指と中指を突き立てた両手を軽く振る。すると、虚空から無数の黒い刃が出現して、それらが女に向かって飛んでゆく。
 ――出せるナイフって、1本だけじゃなかったのか。トゥールは、ぼんやりと他人事のようにそう思って、黒く輝くナイフの1本1本を見つめていた。
 そのナイフの全てを見事な身のこなしで交わし、女はジンに接近して来る。それも、目で追えないほどの速さで。例えるなら、風の様に。

「――〈ウェルテクス〉……つむじ風、だな」

 冷静にぽつりと呟きつつ、引き裂かれる痛みを思い出して、ジンは咄嗟に右に転がって女との距離を取る。が、そもそも、彼女の狙いはジンではなく、その後ろで棒立ちのトゥールであった。
 ――何してんだこの蜥蜴! 避けろよ!
 そうは思っても、今更ジンがどうこうする暇なんてない。そしてトゥールも動く気配は無い。
 まさかあいつ、殺される気か。一瞬そんな考えが過ぎったが、それは杞憂であった。
 勢い良く振り下ろされた女の右腕を、トゥールはしっかりと受け止めていた。そのまま掴んだ右手を支点に、地面に勢い良く叩きつける。鈍い音。
 ぎゃ、というような声を上げて女が吐血したが、それでも自由な左手で、トゥールの両足首を切り裂いて反撃する。
 鋭い痛みによろめくトゥールを見て、ジンはナイフを投げようとして動きを止める。透明になっているクラウスが何処にいるか分からず誤射するかもと考えると、躊躇してしまう。そのもどかしさにジンは舌打ちした。
 女はトゥールが怯んだ隙に、掴まれていた腕を振り払って斬りかかろうとしたが、何を思ったのか動きを中断して、後方に飛び退いて距離を取った。それを不思議に思いながら見ていると、トゥールが唸るような声を上げた。

「俺の獲物だ――下がってろ、クラウス」

 凄みのある声に一瞬透明化が解けたのか、トゥールのすぐ横にクラウスの姿が視認出来たが、再びその姿は見えなくなる。
 女は透明化しているクラウスの気配に感づいて距離を取ったのか。ジンでも、目に見えない相手を気配だけで勘付く、というのは難しい。ちょっと面倒な相手に出会ってしまったな、と思わず舌打ちする。
 彼女は再度トゥールに接近し切りかかるが、それを上手く腕で払い除けて、彼は殴り掛かる。だが、彼女の素早さに翻弄され、トゥールの拳は空を掠める。激しく繰り返される攻防に介入する事も出来ず、ジンは黙って見守るしかなかった。

「……トゥールはさ」

 不意に気配もなく、真後ろで声がした。反射的にナイフを投げようと身体が動き、真後ろの奴の額に得物を突きつけた所で、クラウスだと気付いて、どうにか自分を制する。

「いきなり出てくるな! あと少しで脳天貫いていたぞ!」

 目を丸くさせて、驚いた表情のクラウスが、にへっと緊張感の無い笑顔を浮かべながらごめん、と短く謝罪する。

「……トゥールは、殺すの好きなんだ」

 つむじ風女と攻防を続けるトゥールを眺めながら、クラウスが言った。
 確かに、切り傷を増やしながらも、彼女を捉えるトゥールの両眼は、獲物を前にした捕食者の様に爛々と光を滾らせている。その様子は何処か狂気的に写った。
 クラウスが薄っすらと微笑んで、物騒だよなぁと零しながらジンを見る。

「初めて会った時も殺されそうになったし。なんでオレのこと殺さなかったんだか知らないけど。元々、バーコードの研究施設で逃げ出そうとする奴を殺す仕事してたんだってさ」

 ヤな仕事だね。クラウスが静かな声色で零した。

「……その仕事、知ってるよ」

 ジンはそう、短く返すことしか出来なかった。
 それは清掃員なんて呼ばれたりしていたが、脱走しようとするバーコードや、失敗作と判断されたバーコード、実験に使えないと判断された人間なんかも殺す。要らないモノを、片付ける仕事。クラウスが思っているよりも沢山、トゥールは死体に触れてきたはずだ。
 それをわざわざクラウスに教える必要は無いだろう。微笑んでるくせに、悲しそうに歪められた顔に、それ以上の事を言える気がしなかった。

Re: 継ぎ接ぎバーコード2-7 ( No.22 )
日時: 2017/08/08 17:39
名前: ヨモツカミ

 2人の戦闘は、中々決着が付きそうになかった。
 女が一方的に斬りつけている様に見えるが、爬虫類の硬い鱗に致命傷を与える事は出来ず、トゥールは女の攻撃で浅い切り傷を増やしていくだけなのである。対するトゥールは、彼女を捕まえさえすれば致命傷を与えられるかもしれないが、風の如く動き回る彼女を目で追うのがやっとのようで、戦況はどちらにも転じない。
 いずれどちらかの体力に限界が来るだろう。そう思って見ていると、不意にトゥールとの距離をとった女と目があった。昨日よりも研ぎ澄まされた殺意がジンに向けられる。このままトゥールを相手していても埒が明かないと判断して狙いを変えたのだろうか。
 ――来い。そう思ってナイフを構えたジンに、彼女が接近することはなかった。

「――余所見なんてするな。俺が相手だろう」

 女が行動に出るより先に、一瞬の隙をついたトゥールが後ろから女の右腕を掴んで、その華奢な肩に鋭い牙を突き立てていた。
 女の大きな目が更に見開かれる。皮膚を突き破り、肉を抉って深々と牙の食込んだ肩から鮮血が溢れて、返り血で彩られた女の服に、塗り重ねられてゆく。ゴリッと骨のひしゃげる音が鈍く耳にこびり付いた。

「……っ痛、離、れろぉぉおぉ!」

 獣の如く唸る様な声で喚き、トゥールの頬を斬りつける。そして女はトゥールが怯んだ隙に、素早く距離を取った。
 頬に出来た新たな傷と口元から滴る鮮血を拭って、トゥールが薄っすらと微笑する。女は留めなく流血する肩を押さえながら、それを睨み付けて、舌打ちした。

「まったくしぶといわねぇ……でも、もう飽きちゃったわ」

 不意に女はそう呟いてから、不気味に嗤う。
 一瞬の事だった。
 1つ瞬きした瞬間に、女がトゥールの眼前に迫っていて、女のギラギラした銀灰色の目が見えた。風の裂ける音だけが確かに聞こえた。
 咄嗟に反応出来なかったトゥールの喉元を、風が通る。全てを切り裂く鋭い風が。
 風が通った後に残るのは、赤い線。
 次の瞬間には、トゥールの喉は、燃える様な痛みに包まれて、口の中が鉄臭い血の味に埋め尽くされる。息を吐く代わりに溢れるのは真っ赤な血。

「トゥールっ……!」

 クラウスが思わず叫ぶ。
 殆ど何が起こったのか、クラウスとジンにはわからなかった。ただわかったのは、女が今日見た中で最速の動きを見せた事と、トゥールが吐血しながら崩れ落ちた事だけ。

「強そうな蜥蜴だと思ってたけど、結構呆気無いね」

 ポツリと言ったジンを、クラウスがヒトでも殺しそうな表情で睨みつける。トゥールは死なねぇよ。低い声でクラウスが言うのを、横目で見ながらジンは黙って聞き流す。
 女は倒れたまま動かないトゥールを見下ろして、満足そうに広角を上げた。それからジンとクラウスに視線をやる。新しい標的を見つけたバケモノは、刃物に変化した指に付着した赤色をベロリと舐め取り、くぐもった笑い声を零す。

「さぁ、お遊びはもう終わりにしましょうかぁ?」

 遊び。彼女の今までの攻防は、相手をいたぶって愉しんでいただけで、ずっと本気ではなかったという事だろうか。確かに、あれだけの素早さとあの鋭利な鎌があれば、もっと早く3人を殺す事も出来た筈だ。ジンだけは何度殺そうとも本当に死ぬことは無いのだが。
 しかし、紅蓮バーコードとは、そういうものである。彼女の本性がどうであれ関係なく、殺すことを楽しむだけの猟奇的な人格が生まれる。中にはソレに呑まれて、性格そのものが猟奇的な気違いに変わってしまう者もいる。ヒトを傷付け、身体を引き裂き、血を求め、命を弄ぶ、残虐なバケモノ。
 ジンは血濡れの衣を纏い、人間らしさをかなぐり捨てた笑顔を浮かべる女を見つめる。彼女は普通に生きる事を剥奪されただけの、ただの女性であった筈なのに。本当に、悲しい存在である。だからこそ、殺してやらなければならない。

「――――でもお前、もう死ぬよ」

 クラウスが表情を陰らせながらボソリと呟いた。
 女はその僅かな声を耳に捉えると、広角を吊り上げて如何にも楽しそうに高々と嗤う。

「あひゃひゃぁ! なんだってぇ!? どんな小細工して来ようと、あたしが先に殺せば、あた」

 しの勝ちなんだよぉ!!
 口していた台詞は、ぶつんと途中で消失した。
 言葉を紡ぐ筈の喉が、彼女の意思に反して、その動きを止めてしまったからだ。言葉の発声と共に、呼吸が停止していた。

「――――っは……!?」

 女はその場に崩れ落ち、喉元に手を当て、必死に口の開閉を繰り返すが、ひゅうひゅうと空気の抜ける音がするだけで、そこに酸素の循環は無い。
 突然の事に、ジンが少し動揺した様子で彼女を凝視した。

「……呼吸困難になってる。トゥールの毒が効いてるんだな。ほら、さっき噛み付いてただろ」

 冷たい目で女を見据えながら、クラウスが言った。更に、放っておいてももう永くはないだろうね、と付け加えると、女は強張った表情でクラウスを見つめる。
 蛇の仲間に、毒牙を持つ種類もいる。トゥールはサーモグラフィの他にも、爬虫類の持つ脳力を使いこなすことが出来るらしい。
 呼吸困難で死なせる方が苦しいだろう。せめてもの優しさで、ジンは黒いナイフを片手にゆっくりと女に歩み寄る。

「っ寄るな! は、殺す、ぞ!」

 虚勢だろう。女は呼吸もままならないくせに、それでも殺気の絶えないギラギラした目で、ジンをキッと睨み付けた。
 不用意に近づかない方が良いかな。幸い、彼女はへたり込んだまま、動けそうには見えない。ナイフの投擲で殺そうかと、無数のナイフを出現させた辺りで、低く殺気立った声が鼓膜を震わせた。

「俺の、獲物だと、言っただろう」

 いつの間にか、ビルの外壁だろうか、タイヤ程の大きなコンクリートの破片を抱えたトゥールが、すぐ隣まで来ていた。此方も息も絶え絶えで、喉と口元は真っ赤に染まっている。あまり大丈夫そうには見えなかったが、大丈夫なの、とジンが訊ねると、トゥールは無言で小さく頷いた。
 ジンが黙って下がると、トゥールは静かに両腕で手にしたコンクリートを高く掲げる。断面から欠片がパラパラと風にさらわれてゆく。途切れ途切れの呼吸を繰り返す女は、泣きそうな顔でコンクリートの塊を見据えていた。
 それが振り下ろされる前に、彼女はどうにか声を絞り出した。

「っ――まって……会い、たい……ヒトを、探し、てるのっ……」

 その言葉に、一瞬ジンは頬を歪める。彼女がどんな猟奇的な殺人鬼でも、誰かとの繋がりが、会いたいヒトがいる。それを示唆させる一言で、ジンに僅かなためらいが生じる。対象的に、凍りきった冷ややかな目で女を見下ろしながら、少しだけ頬を緩めてトゥールが言った。

「そうか。死ねば会えるだろう」

 身震いするほど冷えきった声だった。一瞬、ジンは待て、と言葉にしかけたが、それが音となるより先に、コンクリートの塊が無慈悲に投下された。
 下敷きになった頭部が、ミチミチ、バキバキと生々しい音を立てて砕ける。コンクリートの下はベットリとした赤色で埋め尽くされて、そこから胴や手脚が生えてるみたいな、なんとも歪な姿で彼女は最期を迎える事となった。

Re: 継ぎ接ぎバーコード ( No.23 )
日時: 2017/01/05 22:56
名前: ヨモツカミ
参照: https://youtu.be/5GLKH-CKqI0

こんにちは、ヨモツカミです。今回は更新じゃ無くて申し訳ないです。
あと、参照がいつの間にか1000超えてました。初めてのことで嬉しい限りです。皆さんありがとうございます。

1000超えた記念とか言うわけでもなく、継ぎ接ぎバーコードの動画を作って頂いたので、嬉しくてこっちにも載せようかと。ちなみにうごメモで描いたらしいです。こんな、拙い作品の為にありがとう御座います。

どうでもいい話ですが、私はこれを見るとき、音量を最大に設定してたので、イヤホンから爆音が響いてケータイ落としました。

Re: 継ぎ接ぎバーコード2-8 ( No.24 )
日時: 2018/02/20 01:22
名前: ヨモツカミ

 声も音も止むと、沈黙がやたらと重たく感じられた。吹き付ける風の音が、妙にはっきりと耳を掠める。ジンはひび割れたアスファルトを這う血の色をしばらく眺めた。その濃い赤は、灰色の街では不釣り合いな程鮮やかだ。グロテスクで、しかし美しくコンクリートを彩っでゆく。
 ジンは小さく息を吐いて、口を開いた。

「エグい事するね……」

 返事は無く、代わりに激しく噎せ返すのが聞こえるだけだった。見ると、トゥールは地面に膝を付き、背中を丸めて荒い呼吸を繰り返していた。全然大丈夫じゃないじゃないか。喉を裂かれて普通に立っている方がおかしかったのだ。
 バーコードがいくら治癒能力に長けているとはいえ、傷が塞がる前に失血が致死量に達すれば、簡単に命を落とす。生きていれば例外無く何時かは死が訪れるのだから、当然の事だ。――ジンやあの少女を除いてはの話だが。

「トゥール、へーき?」

 無空間から突如姿を表し、トゥールの顔を心配そうに覗き込んでいるクラウスに、思わず心臓が波打つ。足音も無く現れるのだ。本当に幽霊みたいである。

「大した事……ゲホッ」
「あるじゃん!」
「もう、塞がりかけている。大丈夫だ」

 ホントかよ、と苦笑を浮かべながらクラウスが息を吐く。
 体中に浅い切り傷があるものの、殆ど出血は止まっており、喋れるという事は喉も思ったより深く裂かれた訳ではないようだ。クラウスは安堵に顔を綻ばせた。
 本当に死にそうだったなら、あのまま2度と起き上がって来ることは無かっただろう。ジンは、フラフラしているものの、しっかりとその両足で地面を踏みしめるトゥールを見て、ほっと息を吐いた。

「邪魔が入ったけど、それも済んだ事だし。それじゃあ行こうか」

 そう言って何処かへ歩きだすジンの背中を、現実に引き戻されたかのように、クラウスが見つめる。それから、口元に付いた血を拭って、トゥールがその後に続くのを、慌てて袖を掴んで制した。急に引っ張られたことで僅かによろけながらも、彼はなんだよ、とでも言いたげな目でクラウスを見ながら足を止める。

「オレらさ、アイツに付いて行く意味あんの?」
「付いて行かない意味も、無いだろう」

 トゥールは即答だった。
 あるだろが。そう思うクラウスとは対象的に、当たり前のように何処を目指すかも不明であるジンについて行こうとする彼は、平然とした顔をしている。
 クラウスはそんなトゥールを見つめて、深く息を吐いた。

「……ジンはオレらのこと殺すんだぜ」

 クラウスの言うことは最もだ。そう遠くない未来で、自分を殺す相手に付いて行こうとするトゥールの行動こそが、異常である。誰よりも死ぬことを恐れ、生にすがるクラウスが、ジンを避けたがるのは当然のことだ。
 それでも、とトゥールは思う。クラウスに出会うよりも前に、ただ一度だけ出会った、あの桜色の少女の事を思い浮かべながら。名前も知らない、彼女の言葉を思い出しながら。
 ――笑って朽ちなさい。望まれて生きなさい。
 脳裏に焼き付いて薄れることのない彼女の声。今でさえ、目を閉じればその言葉のひとつひとつを鮮明に思い出す事ができた。

「……それでも、俺は行く理由がある」

 “俺を殺してくれないか”――昨日、トゥールが口にしていた言葉を思い出したクラウスは、苦々しげに顔を歪めた。

「……死ぬ為に生きてるみたい」

 本当に微かに聞き取れる程度の声。ずっと感じていた言葉が、無意識にクラウスの声帯を震わせて、音となる。
 それが聞こえていたかどうかはわからないが、トゥールは静かに諭すような声で言う。

「……少し、ジンに聞きたいことがあるんだ」

 僅かな沈黙を挟んで、クラウスがそう、と小さく俯いた。勿論言いたいことはあっただろうが、あえてそれを呑み込んだように見えた。
 それを気付かなかったふりをして、トゥールは続ける。

「それに、この街に長居するのは良く無いだろう」

 キョトン、とするクラウスに、カイヤナイトが来る、とトゥールは短く答えた。それを聞いて彼が顔をしかめる。
 カイヤナイト。それは人間に使役された群青バーコードで構成される、対バーコード軍である。どうせいずれは殺処分されるクセに、馬鹿みたいに人間に従ってバーコード殺しをする飼犬集団だ。
 紅蓮バーコードや不要なバーコードを駆除する為に、多くのバーコードが隠れ家とするこの街にやって来てもおかしくはない。恐らく奴らに捕まったら、クラウスは紅蓮とみなされて殺されるだろうし、トゥールは翡翠バーコードなので殺されるか、使えると判断されれば昔の様に清掃活動を強いられるかもしれない。
 奴らとの接触を想像するのもはばかられ、苦々しい顔でクラウスがいう。

「もう。わかったよ。お前がそんなに行きたいなら……行こう」

 随分離れたところまで歩いてから、2人が付いてきてないことに気がついたジンは、黙って遠くから彼らの様子を眺めていた。しばらくしてクラウスがゆっくり歩き始め、後を追うようにトゥールが動き出したのが見えて、ジンも進み出した。


* * *


 その3人を、少し離れた民家の陰から盗み見る、数人の人影があった。

「私は反対だよ……」

 肩に付く程度の淡い海色の髪を耳にかけながら、控えめな声でひとりの女性がそう口にした。
 思いがけない言葉に、仲間達の不思議そうな視線を集めて、少し居心地悪そうに目線を落とす。

「マリアナパイセン、怖いんスか?」

 からかう様に訊ねたのは、男にしては少し長い金髪を風に弄ばせる、碧眼の青年だ。
 マリアナと呼ばれた彼女は、悲しげな表情を崩す事なくコクンと頷いて怖いよ、と短く返す。
 思い出すのは、彼女と金髪の青年だけが知る、恐ろしい惨劇の事。

「ジンは、一瞬で仲間を殺しちゃったんだもの。今だってよく覚えてるよ。後ろにいたアイリスを最初に殺して……次はローザ、それから」
「そんなの聞きたくない。止めて下さいよ」

 先程からかった時の声色からは想像も出来ないほど低く冷たい声。金髪の青年は、顔をしかめながら吐き捨てるようにそう言った。
 他の仲間達が、聞いたことも無いその声に、ビクリと肩を振るわせる。普段の彼は、常に余裕そうに笑っていて、明るい性格で周りを元気づけるムードメーカーの筈なのだ。
 ボクだって、はっきり覚えてます。そう口にして真っ直ぐとジン達を捉える碧眼は、その時の情景を思い出したせいか、冷たくドロドロとした光を宿して揺れていた。きっとそれは、怒りであり、恨みであり――悲しみだ。
 マリアナは、そんな彼を不安そうに見つめる。彼女のアクアマリンの様な瞳の中で、金髪の青年の背中は震えて見えた。なんだか、今にも壊れてしまいそうだ。

「必ず復讐してやるんだ。ボクは許してないから。あいつがどんなバケモノでも、ボクが殺してやる」

 得意げに笑う彼は、仲間達がよく知るいつもの彼だ。流石ニック。事情を知らない仲間のひとりが、笑顔で金髪の青年の肩を叩いた。任せろ! なんて、頼もしい隊長であり続けようとする彼の姿に、マリアナは溜息を吐きつつ、真っ直ぐに忌々しい継ぎ接ぎの少年を見据えた。


to be continued…

Re: 継ぎ接ぎバーコード【No.2完結】 ( No.25 )
日時: 2017/01/27 23:57
名前: 小夜 鳴子 ◆1zvsspphqY

 
 こんばんは、めいこです。あさきです!はい、やって参りました。行くぞ行くぜ、と言って随分時間がかかってしまいましたが、ようやく読み終え、こうして感想を献上しにやってきた次第です。月並みな感想ですが、どうぞよろしくお願いします(?)。笑

 日頃あまり読まないジャンルでしたので、私に読めるかな?と若干の心配もあったのですが、そんな心配は杞憂でした。小難しいストーリーと設定をイメージしていた私はあっという間に、とても良い意味で打ちのめされ、よもつかみわーるどに引き込まれていきました……ごいごいすです。
 では具体的にどの辺がごいごいすだと感じたのかというと。
 まず、題名ですよね。ぱっ、と目をひくバーコードの文字。数年前に別名で活動していたとき、とある小説の題名を見て何故か「ぴっきーん」ときた経験があるのですが、この小説を見つけたときはまさしくデジャヴでした。あ、はじめてこの小説を発見したのは確か秋くらいだったと思います。ずっと気になってはいたんですよ……
 バーコード。見た瞬間、あの、お店でぴっ、とするものが思い浮かびました。そして読んでいくうちに、体のどこかにバーコードがあるのかな?と考えて、ビンゴでした。成程。バーコードに色がついていて、それで判別される。良いですね。とてもわかりやすいです!
 ついたーの方で「トゥールさん」と誰かさんが口々に仰っていたことがよくあったのですが、この方のことだったのですね。これからはきちんと反応することができそうです。笑
 そして、時折挟まれるギャグのような、ボケとツッコミ。セクハラには思わず声を上げて笑ってしまいました。全体的にシリアスなお話ではありますが、たまにこうしてほのぼのを感じさせてもらえるので、すいすいと読み進めることが出来ました。
 それから、物語の展開の仕方。ジンが登場したとき、「この子**っぽいな……」と思っていたのですがどうやら違うようで「なぁんだ」と安心していたのですが、「やっぱり**だったのかよ?!」と自分でコントを繰り広げてしまいました。笑 伏線の張り方、というのでしょうか。どきどきわくわく、はらはら。読者を適度に裏切る展開で、大変続きが気になりました。
 それからそれから、随所に散りばめられたイラスト。以前、YouTubeの動画を拝見させてはもらっていたのですが、やっとそれが誰なのかわかりました。トゥールさんがイケメンすぎて、どストライクすぎて辛いです。なんてイケメンなんでしょう……

 再度言いますが、私は普段、ファンタジーはファンタジーでも、なんというかこういった種類のものは読まない傾向にあります。ですが今回この作品を読んだことで、それは食わず嫌いだったのでは、と考えるようになりました。
 文章もよくよく見れば三人称で、それが気にならないくらい心理描写が細かく、また戦闘シーンも迫力があり、とても引き込まれました。気づけば読み終わっていて、もっと続きが読みたい!と強く感じました。
 ファンタジーの醍醐味である「不老不死」の言葉が出てきたときは思わずときめいてしまいました。笑 なんてったって全人類の夢ですからね。本人はそれで苦しんだ経験がありそうだと思いました。いや、現在進行形で苦しんでいる。「継ぎ接ぎバーコード」は、「生きること」についてもう1度考えてみたくなる作品だと、私は思います。

 まさしく月。長々と失礼しました。
 これからも拝読させていただきます。いや、是非ともさせてください(土下寝)!
 首を長くして、次なる展開をお待ちしております。
 

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