複雑・ファジー小説

常夏【改編しました】
日時: 2016/06/14 20:17
名前: 夏目美帆 ◆BcA2yefb/2 (ID: kkPVc8iM)
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs/index.php?mode=image&file=5189.jpg

再びこんにちは、夏目美帆です。
↑のは夜明です。題名は白の世界になっていますがお気になさらずにw


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Re: 世界中を驚かせてしまう夜になる ( No.1 )
日時: 2016/06/09 22:07
名前: 夏目美帆 ◆BcA2yefb/2 (ID: kkPVc8iM)

登場人物

夜明(よあけ)
「生駒支部」所属。18歳の灰色のワームが特徴的な少女。
判断力が早く敵には容赦がない一方で、困っている人には誰にでも手を差し伸べ、一般人の突然の協力要請に驚きもせず二つ返事で了承するほど肝が据わっている。苗字は諸事情により伏せている。黒いサーベルを帯刀。生まれつき怪力。
能力名【???】

才波 京(さいば きょう)
「生駒支部」所属。22歳の高身長に端正な顔立ちの男。
飄々としていて食えない男で、空気がよまなかったり人をからかうのが好き。頭脳明晰で能力を利用した戦闘を得意とする。
能力名【無価値な証明】

中村 修(なかむら おさむ)
18歳の少年。
少し気弱で卑屈なところがあるが正義感が強く、心優しい。両親に虐待された過去がある。
能力名【白虎】

横峯 氷雨(よこみね ひさめ)
40歳の威風堂々とした男。
着物姿が特徴的な東京の有名集団「生駒支部」のボス。
常に落ち着いていて、威厳たっぷりだが仲間思い。天然な一面も。武器は常に帯刀している日本刀。
能力名【調律の理】

裁鬼 柚子(さばき ゆず)
17歳の可憐な容姿を持つ少女。
心優しく、真っ直ぐな心の持ち主。海里とは兄妹。
能力名【海浮かぶ癒し】

裁鬼 海里(さばき かいり)
20歳の鋭い目つきの男。
クールで冷静沈着。武術に長ける。柚子の兄。
能力名【霧凄む悪魔】


随時更新……。

Re: 世界中を驚かせてしまう夜になる ( No.2 )
日時: 2016/06/11 20:22
名前: 夏目美帆 ◆BcA2yefb/2 (ID: kkPVc8iM)

(何だ……! 何が起こってるんだ……!)

 場所は東京。
 時刻は夜の10時ぐらいになるだろうか。パーティーが行われている白い館の赤いカーペットが敷かれている廊下にて。
 細身の体格、少し頼りなさげな雰囲気を持つ少年は目の前の光景を恐ろし気に見ていた。
 その光景は人生でもトップを争うぐらいのものであろう。其れも無理は無い。

――……何故なら、【人間だったもの】と少女が戦っているのだから。

 傭兵顔負けの剣術を使う少女。少女は人間だったものと互角以上に渡り歩き――灰色の外套を翻しながら、自らの武器であるサーベルを横一線に振った。

「如何してこうなったんだっけ……?」

 少年は酷く驚いた顔をした。そして、如何してこうなったのかを思い出そうとしたとき、ポン、と軽く少年の肩に手が置かれた。
 思わず肩に手を置いた人物の顔を見上げる。其の人物は、身長が高く、俗でいう美男子という人間だった。
 真剣な顔をして、彼は言った。

「――……【あれ】が今回の事件を起こしたのは、能力者を狙っていたからだ。詰り、君をね」

……そうだ。
 確かまだ、4時間前までは平和だったのに――……。











「美香子お嬢様、17歳のお誕生日おめでとうございます!!」
「ありがとうございます。皆さま。父ともども、これからもよろしくお願い致します」

 盛大な拍手と、五月蠅いぐらいのクラッカーと紙吹雪が辺りを舞う。
――時刻は6時。夕暮れとともに太陽は沈み始める。
 そして、この白い館の当主の一人娘――倉橋美香子(くらはしみかこ)の生誕を祝う会場と化していた。
 倉橋家は日本でも有数の財閥である。此処に来ている煌びやかな服を纏った人々は皆、彼女の父親である倉橋和義(くらはしかずよし)の親族・財閥関連の部下たちであった。

 今日は娘の大事な誕生日だ。倉橋は美香子のために豪華な食事や催しも準備している。

「美味しそうだなぁ……」

 少年――中村修(なかむらおさむ)は豪華な食事を見て、思わず流れそうになる涎を堪えた。
 細かく言えば彼は、此処の招待客では無い。厳密にはアルバイトだ。アルバイト内容は至極単純なもので、接客や受付・簡単な給仕が仕事だ。今日だけだが、時給1500円という高い数値を出されたため、親元を離れ絶賛貧乏生活を送っている修にとっては有難い話だ。

「はっ! 何を言っているんだ僕は。ちゃんと仕事しないとご当主様に怒られてしまう」

 修は気を引き締めるように黒いエプロンの紐をきつく結んだ。そして両頬を思い切り叩くと、新しい食事を運ぶために裏方へ回る。
 招待客の人数は100を余裕に超えているだろう。通りすがる人全員が綺麗な服、自信に満ち溢れた表情を浮かべている。

(……いいな)

 彼らに比べたら自分等きっと端にいる小石と一緒だろう。お金や生活に苦労することなく、きっと自由に生きている。

――彼らはダイヤモンド。自分はそこにある石ころ。

(虚しい……)

 自虐するような笑みを浮かべる修。そして忘れるように速足でその場所を去った。








「……血。チ。ち。欲しい。ホシイ。ほしい……」








――……人々に紛れて、悪意は呟く。
 

Re: 世界中を驚かせてしまう夜になる ( No.3 )
日時: 2016/06/11 21:14
名前: 夏目美帆 ◆BcA2yefb/2 (ID: kkPVc8iM)

「はぁ……疲れた……」
「お疲れ……と言いたいけどまだまだ食事運ばなきゃだからね、修君」

 調理場のテーブルには隙間無く豪勢な食事が置かれている。1時間動き回ったつもりだったのだが、まだまだ甘かったようだ。
 思わず弱音を吐く修に同じくアルバイトで先輩である20代前半ぐらいの男、林節目(はやしふしめ)は苦笑する。

「運んできます……」
「あ、一寸待って修君」

 覚悟を決め、テーブルにある料理に手を掛けた瞬間、何かを思い出したかのように林は声を掛ける。
 料理に手を伸ばす寸前で手を止めた修。そのまま林の顔を見る。
 彼の顔は妙に真剣だった。

「……? どうしたんですか?」
「最近、ここら辺に通り魔が出没してるらしいんだ。しかも、普通の通り魔みたく包丁とかの刃物じゃなくて、背中から刃物が触手の様に飛び出すって話。その姿は……人間とは思えないんだって……」
「と、通り魔!? 人間じゃない!?」

 林の物騒な話に体を硬直させる。そんな修に林はケラケラと軽快に笑いながら手を横に振る。

「信憑性はないけどね。飽くまで噂だし。この屋敷も通り魔が出たところだと言ってもこの人数だし、襲われることはないだろうね。でも、一応用心することに越したことはないよ。おっと。無駄話もここまでだ。さ、早く食事を運んでしまおう」
「は、はい……」

 余韻を残したまま。
 何処か煮え切らないまま。
 修と林は仕事を再開した。









「やっと落ち着いた……。流石に2時間も経てばお腹一杯になるもんなぁ……」

 あれだけ忙しなく動いていたのに気が付けば足の速度がゆっくりになってきているのを感じた。
 修は仕事が落ち着いたため、少しだけ両腕を伸ばし、伸びをしていた瞬間だった。

「何をしている!!」
「は、はい! 済みません! サボっていたわけじゃあ……」

 背後から怒号が聞こえてくる。自分に向けられたものだと思い、ガバッと頭を下げながら謝罪の言葉を並べる。だが、次の怒声が飛んでこない。
 いや、怒声が少し遠くに感じたのだ。修は恐る恐る顔を上げ、状況確認をする。怒られていたのは修ではなく――……。

「いやぁ、私たちは倉橋当主に依頼されて此処に来た者です。通り魔からの護衛にね。ご当主に話を通してくれたら分かるかと」
「ふざけたことを言うな! ご当主が貴様らの様な貧乏人を此処に入れるわけないだろう」

 叫んでいるのは中年の男。服装からして此処の招待客だろう。顔を真っ赤にして目の前にいる高身長の美男子に怒鳴っている。
 当の美男子は男を宥めるように手で静止している。
 何処か他人事のように修はその様子を見ていた。

(……あ)

 修は、漸く気が付いた。美男子の後ろにいる灰色の外套を羽織った少女の姿を。そして目が合った。
 その目は晴天の青空の様な――……。
 思わず魅入っていた。

「今すぐ帰れ!!」
「何事かね」
「く、倉橋ご当主!!」

 強く背中を押される美男子。だが、横から凛とした声が響き渡る。その声の主は美香子の父である倉橋。
 その姿に男は思わず後ずさった。そして、わざとらしく咳をすると、言い訳をするかのように美男子を指さした。

「この貧乏人共がこの高貴なパーティーに入り込んでいたのでたった今追い出そうとしていたところです」
「その者たちは私が依頼した護衛の者たちだ。その様な言い方は止めてくれないか」
「し、しかし」
「ということだよ。君は下がっていたまえ」

 サラリと倉橋は男の言葉を軽く否定する。さあっと顔を青くした男に追い打ちをかけるように美男子は悪意たっぷりの笑顔で肩に手を置いた。
 其の言葉に男は何も言えず突っ立っているしかなかった。

「君たちが生駒支部のメンバーだね」
「はい。上からの人選の結果、私――才波京(さいばきょう)と隣にいる夜明(よあけ)が今日の護衛にあたります」
(……夜明っていうんだ)

 少女の名が判明し、思わず修はその様子を魅入っている。美男子――才波の言葉に倉橋は嬉しそうに口角を上げた。
 そして、目の前にいる夜明に視線を向けた。

「……君があの【北の最強】か。会えて光栄だよ」
「宜しくお願いします」

 表情を変えずに少女――夜明は一礼した。不愛想ながらもニコニコと人当たりのいい笑みを浮かべる倉橋。

「護衛だからと言って気を張らなくてもいい。そこにある食事を遠慮しないで食べてくれ」
「食事!?」

 今まで無表情・無愛想な夜明が嘘のように輝きだした。人形のように動かなかったのも嘘のよう。
 だが、ハッと我に返って再び真剣な顔に戻る。
 倉橋は追い打ちをかけるように、

「……七面鳥も、デザートもある」
「夜明、少しだったらいいんだってサ」
「そこまで言うなら仕方ない!」

 倉橋と才波が微笑ましそうに夜明を見る。夜明は再び明るい表情に戻ると軽快な足取りで歩く。
 彼女が向かっている先には修がいて。

(こ、こっちに来る!)
「まずはプリンから!」

 最初は速足。そして今は修の持っているトレイの中に大量に積まれたプリンめがけて走っている。
 修の頭は追い付かず、ショートを起こそうとしていた。
 そして、足元が崩れプリンは思い切り宙を舞った。

(嗚呼、やってしまった……。盛大にこぼして、クビになってしまう)

 そう思い、尻餅をつく痛みがやってくる。そう思っていたが、いつまでも痛みはやってこない。
 其れもそのはず。何故なら……。

「アンタ大丈夫!?」

 何故なら、夜明が右腕で全てのプリンを受け止め、左腕で修の体を支えていたからだ。
 

Re: 世界中を驚かせてしまう夜になる ( No.4 )
日時: 2016/06/11 22:09
名前: 夏目美帆 ◆BcA2yefb/2 (ID: kkPVc8iM)

(……な、なんて力強い……っ)

 抱えられたまま修は思った。
――……この少女、細腕ながら苦しそうな顔を見せることなくかなりの量のあるプリンと自分を抱えている。
 確かに修は男の中でも細身な方だが此処まで難なく支えられると何かを失ったような気がしてならない。
 そんな修の心情を知る由もなく夜明は「まずはプリンを置いて……」などと呟いている。

「あ、ありがとう」
「どういたしまして。そしてこのプリン美味しいね」
「食べるのはやっ!」

 修は自力で体制を整えるとおずおずと夜明に礼を言った。夜明は満足そうに頷くといつの間にかプリンを口に入れていた。
 その光景を見て必死で才波は笑いを堪えていた。

「しょ、少年。恥じることはないさ……っ。幾ら少女漫画のヒロインの様な扱いを受けてショックを受けているかもしれないが、夜明は常人より力が強いんだ。気にすることはない」
「は、はぁ……」

 プルプルと震えている才波に修は歯切れの悪い言葉を返した。
 そんな間にも夜明は七面鳥を食べようと足を運ぼうとしている。才波は「おっと」と一声上げると、夜明の腕を引っ張り、修の前へ連れて行った。

「今七面鳥食べるところだったんだけど!」
「それは後で。依頼を忘れちゃいけないよ。早速唐突で悪いんだが少年。一寸聞かせてほしいことがある」
「え!? 僕!?」
「倉橋当主。彼を少し借りますね」
「嗚呼。構わないよ」
(嘘――っ!)

 流れるように修は才波に引っ張られていく。
 倉橋は表情を変えることなく3人を見送っていった。







「僕は中村修と言います。……何を聞きたいんですか?」
「勿論、通り魔の事さ」
「通り魔!?」
「その様子じゃ知ってるみたいね」

 連れてこられた場所は、主に物置として使われている一室だ。此処なら誰も来ないし近寄らない。
 だが、物が多くて座るスペースは限られている。
 才波の言葉に思わず修は立ち上がった。夜明はじっと彼を見る。

「で、でも僕其のことについては噂話程度にしか知らなくて。バイトの先輩から聞いた話なんです。才波さん……でしたよね。貴方達の方が知っているんじゃあ……」
「大体は調べたんだけどね。大凡の動機や行動パターンは分かっていても人相はわからない。幾ら私たち生駒支部(いこましぶ)でも」
(い、生駒支部!?)

 フゥ、と夜明は深いため息をついた。修はとある単語にとても驚いていた。

(聞いたことある……。生駒支部は政府や警察でも手に負えないような仕事を生業としている能力者精鋭部隊! さっき少し話には聞いていたけど……)
「然しおかしいな」

 顎に手を置きながら、才波は言う。
 夜明と修は同時に彼の顔を見ると、才波は話し出した。

「実を言うと通り魔が起こした事件、其れほど日にちが立っていないんだ。だから噂っていうのは少しおかしい。……修君、そのバイトの先輩というのは……」
「見つけたぞ!」

 バタン、と荒く扉が開けられた。扉を開けたのは先程才波たちを追い出そうとしていた男だ。
 男は怒りの形相を浮かべている。

「貴様ら……先ほどは好くも倉橋当主の前で恥をかかせてくれたなこのネズミ共め!!」
「アンタが人の話聞かないからでしょうが!」

 きっと夜明は男を睨み付ける。その視線に思わず生唾を飲んだ男だったが、もう後には引き下がれないのだろう。男も夜明を睨み付ける。
 才波は肩を竦めると座っていた椅子から立ち上がり、

「落ち着いてください。先程の件で何か不快にさせたのなら後程話を伺います。ですが今は立て込んでおりまして……」
「貴様の都合など知ったことか!!」

 男が叫んだ瞬間だった。

 ズン、と鈍い音が部屋の中に響き渡った。然も、その音とともに男の体は脇腹から何か鋭利なものに貫かれていて――……。
 男は悲鳴も上げる間もなくその場に倒れこむ。体からは溢れんばかりに血が流れる。
 修は小さく悲鳴を上げるがそれどころではない。早く男を介抱しないと……――!

「だ、大丈夫ですか!?」
「危ない修!」
「!!」
「夜明!! 修君!!」

 修は男に駆け寄った瞬間、眼前に刃物が迫っていた。反射が追い付かない。だが、自分を呼ぶ夜明が腰に差していたサーベルで襲い掛かる刃物を一刀両断したことによって難を逃れた。
 才波は倒れた男の状態を確認する。

「……まだ息はある。でも、このままだと出血多量で死ぬ」
「……そんな! 早く手当てしないと」
「敵(あっち)はそうさせてくれないみたいだけどね」

 夜明の言葉に修は目を見開く。酷く、驚いていたのだ。
 何故なら、信じられなかったからだ。
 目の前にある光景を……。

「あっれ〜? そのおっさん、さっき僕に難癖つけてムカついたからぶっ殺そうと思ってたんだけど急所には至らなかったかぁ。でもいいや。修君が此処にいるから」
「林……さん……!」

 其処にいたのは、邪悪な笑みを浮かべる林の姿。そして、背中から触手の様な幾千もの刃物の姿。
 何時もの爽やかな林の面影はどこにもなかった。

「僕は君の事ずっと見てた。君の肉、丁度いいんだ。切り裂くのに!」

Re: 世界中を驚かせてしまう夜になる ( No.5 )
日時: 2016/06/12 19:06
名前: 夏目美帆 ◆BcA2yefb/2 (ID: kkPVc8iM)

「う、嘘ですよね林さん。林さんがこんな……」
「残念だが真実だよ修君。彼――林は君に近づくために【片っ端から関係ない人】を切り裂いた。そしてその噂話とやらを聞かせて警戒させる。そして【自分は味方】だと思い込ませて油断したところをザクリ……の予定だったのだろう」
 
――……林が噂の通り魔。その真実を受け止められない修は否定の言葉を吐き出した。
 だが追い打ちをかけるように、才波は横目で修を見ながら言う。才波は「油断ならないよねぇ」と引き攣った笑みを浮かべながら呟いた。

「流石は生駒支部の精鋭だ。全部正解だよ。能力者は能力者を引き寄せ合う。……こうなる運命だったんだろうねぇ」
「それって、どういう」

 余裕そうに。不敵に林は笑いながら言う。美味しそうなご馳走を目の前にした大蛇のように舌なめずりをする彼に修の背筋は思わず凍っていた。背筋を凍らせたのは何もそれだけではない。
 能力者は能力者を、という言葉だ。

――それじゃあまるで……。

「……僕が能力者みたいな言い方じゃないですか……。止めてくださいよそんな冗談」
「修。今のアイツに道理も道徳も理屈も。勿論冗談も通用しそうにない」

 一言。夜明はそう言うと、サーベルを構えもせずに林に斬りかかった。
――……早い。
 修の感想はこの一言に尽きる。その証拠に能力を発動している林の刃物はそのスピードに追い付くことなく1本、切り落とされてしまった。

「い、いつの間に!」
「さっき」

 大したことなさそうに夜明はケロッとした表情でいう。そんな彼女に憤慨した林は怒りのままに。能力に身を委ねた。
――刃物の数が10本から20〜30本へ。
 その悍ましさに修は尻餅をつく。

「……如何して、こうなったんだっけ……?」

 目の前には少女と【人間だった】林が戦いを繰り広げている。ただし一方的だ。夜明は伸びた盆栽を斬る様に捌いていく。
 林の刃物も負けじと夜明を襲うが彼女には傷一つつけられない。
 怖気着いた修の肩に軽く才波の手が置かれる。

「――……【あれ】が今回の事件を起こしたのは、能力者を狙っていたからだ。詰り、君をね」
「僕が……?」
「京! 修と其処の倒れてる人を早く逃がして。じゃないと間に合わなくなる」

 夜明は男の腕を抱えた才波にそう言いながら林の右腕を切り落とした。才波は甲高い悲鳴を上げて床に崩れ落ちた。
 その隙に才波と修は部屋から脱出しようとドアノブに手を掛ける。だが、林は、

「……行かせるか……修君は僕のものだ!!」
「しまっ……!」

 と、床に這いつくばりながらも刃物を伸ばし、修と才波に襲い掛かる。最早、執念だろう。林の目は血走っていた。
 死を感じた修に反し、才波は冷静さを失わずにいた。然し、抵抗する様子は見受けられず、只手を翳しただけだった……のだが。

「残念。私に能力は聞かない」
「!! 何!?」

 刃物が才波と修に触れようとした瞬間、刃物(それ)は灰と化した。林は驚きを隠せない。
 才波はフフン、と自慢げな表情を浮かべた。

「私の能力は【無価値な証明】。体に触れた能力や武器の攻撃は一切向こうで無用さ」
(……凄い……)
「こんのっ……チート野郎ども……!」

 例えるなら林はゲームで準備を怠った勇者だ。彼は全ての攻撃を叩き潰す夜明と全ての能力・武器での攻撃が効かない才波というラスボスを眼前にしている。
 怒りが止まらない林。その瞳は充血どころではなく、真っ赤に
染まっていた。

「ぜってぇ許さねぇ!!」

 林はそう叫ぶと、有象無象に背中の刃物を屋敷の壁や天井、床に刺し始めた。それと同時に屋敷はグラグラと怪しい音を立て始めた。


 

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