複雑・ファジー小説

物語がありがちな方向にしか進まないのだが
日時: 2016/08/23 15:43
名前: ホット51 ◆JD2z56wc7I (ID: P3.L1.aj)





 俺たちは「アンチありがち会」略して「AA会」である。


 ありがちな世界に終止符を!
 色づきすぎた世界を無色へ!
 人間らしくない世界から脱却せよ!


 そんなことをモットーに活動を続けているが、今日も事件はやってくる。
 ただ毎日を平穏に過ごしたいだけなのに。
 この特殊体質のおかげで、幸せな未来がどんどん遠ざかっていく。


 しかし! あきらめてはならない!
 平和な日本で平和に暮らすため、このアニメのような毎日に、今、決別するのだ。




 ゆけ! AA会よ! 進め! 迷える子羊共よ!


 

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Re: 物語がありがちな方向にしか進まないのだが ( No.1 )
日時: 2016/08/28 12:47
名前: ホット51 ◆JD2z56wc7I (ID: ecbw2xWt)

「はいはい、それ地雷。屋上で昼飯食うとか初心者でもやらないミスだね」
「だって誘われたんだから仕方ないじゃないのさ」



 放課後。
 いつものように活動拠点である第三校舎の男子トイレで、ミーティングを開いていた。

 ミーティング内容は当然「今日のありがち報告」から始まる。
 新学期という今日、警戒しなければならないのは「転校生」の存在だ。こいつにひっかかると、目も当てられない。嫌でも人生がありがちの方面へ転落していくに違いないのだ。


「そういう大惨事先輩も、今朝、食パン咥えたかわいい女の子と登校中に正面衝突してましたよね? ちゃんと見てましたよ」
「あれは事故だ、事故。こういうこともあろうかと、わざわざ通常よりも30分も早く家を出て、裏道まで通ってきたのに、なぜか食パンを加えた女子が現れたんだ。最近、こういうレアケースも多いから、お前らも気をつけろよ」


 そう、俺たちの特異性質……。
 それは「なぜか自分たちの周りでアニメや漫画のような特異事例が起こり、巻き込まれてしまう」ということ。
 生まれながらにそうだった。平穏な日常を過ごしたいのに、妙なことに巻き込まれる。どうやらそれがアニメや漫画にありがちなことと知ってから、俺はなんとかその状況を打破するべく、アニメや漫画を研究し、その主人公がとらなそうな行動をあえて選択するという努力を重ねていたにもかかわらず、最終的に謎の転校生に絡まれたり、魔法使いをスカウトしているマスコットキャラにつかまってしまったり、悪の組織に拉致されたり、それはそれはもうさまざまな修羅場を潜り抜けてきたのだ。

 そして、このAA会こそが、そんな特異性質を持った4人が集い、なんとかしてこの状況から抜け出そう! と結成されたものなのだが……。



「てか思ってたこと言っていいっすか? こうやって、男女4人でなんちゃら会とかで集ってること時点で、すでに漫画にありがちっすよね、私たち」

Re: 物語がありがちな方向にしか進まないのだが ( No.2 )
日時: 2016/08/30 13:54
名前: ほっと51 ◆JD2z56wc7I (ID: UJ4pjK4/)



 今日のミーティングも終わり、さらりとしたポニーテールを結い直しながら、ずいずいと階段をおりていく小磯。そんな彼女に続きとぼとぼと階段を降りながら、溜息をついた。



 ――こうやって、男女4人でなんちゃら会とかで集ってること時点で、すでに漫画にありがちっすよね、私たち



 随分と正論を言ってくれる。
 高2のくせに高3である俺に逆らうなんて生意気なやつだ。
 が、言っていることは間違いではない。確かに、男女数名でなんちゃら会や、なんちゃら団や、その他意味不明な慣れ合いをするのはアニメや漫画にありがちだ。言ってしまえば、普通に部活に所属するだけで俺たちのような特異体質の者にとっては、アニメや漫画にとってのありがちへ誘われるフラグにすらなり得る。

 けれども、俺は同じような迷惑を被っているやつらが集まり知恵を出し合うことで、なんとかして今の状況から脱しようとすることは悪いことだとは思わない。まあ、こうしてAA会を始めてから半年、これといった成果はまだ出せてない(むしろ悪化している節がある)というのは事実なのだが……。



「まあ、小磯ちゃんの言ってたことは確かかもしれないけど、私はこのAA会のこと嫌いじゃないのさ」
「おい、遠藤。その、語尾に一々“のさ”とつける口癖は止めろと言っただろ。アニメキャラにありがちだぞ」
「仕方ないのさ。これは、遠藤家の先祖代々続く呪いで、語尾にのさを付けないとニキビが一個増えるというそれはそれは恐ろしい呪いがかけられちゃってるのさ」


 ぷい、とそっぽを向いた遠藤の横顔を、窓の向こうの桜が飾っている。
 バカにもほどがあるっすね、と鼻で笑った小磯に続き、俺も一言二言文句を発したが、それ以上言うと遠藤が泣き出しそうだったからやめておいた。
 俺は彼女をバカにしているわけじゃない。ただ少しでもありがちから解放されたいだけなのだ。



「……ところで、ミーティングから一言も喋っていないが、どういうつもりだ、佐々木」

 
 ずーっと気になってはいたのだが、先ほどからなぜか階段を後ろ向きで降りている佐々木に声をかけてみる。
 こいつの奇行は今に始まったことではなく、弁当をいきなり手づかみで食いはじめたり、授業中にスキップを始めるなど数々の伝説を生み出してきていたので、階段を後ろ向きに歩いていることに関してはもはや突っ込んだら負けだと俺は思っている。


「体調が悪い」
「お前が体調良いとき見たことないけどな。まだやってんのか? 夜中の魔物退治」
「おかげさまで魔物退治に巻き込まれてから3か月たったが、未だに魔物が絶滅してくれなくてな。毎日やっている。このように後ろ向きに歩くのも訓練の一環だ」

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