複雑・ファジー小説

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猫と神とオレと
日時: 2024/08/28 15:59
名前: 吉良 ◆tr.t4dJfuU (ID: 70vEHkeO)

 圭ちゃん、ごめんね。

 猫はそう言って顔を歪めた。
 どうして猫があんな顔をしているのか、分かっている。
 何の所為か、分かっている。

 ただ現状に納得していないオレが、
 ただ理由に理解を示したくないオレが、
 大丈夫と言いたいオレが、

 自己満足以外何物でもない欲望を抱えて今日もオレは






















 猫との明日の為に外れた道を突き進む。








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初めまして、吉良キラと申します。
かなりの亀更新になるとは思いますが細々と書いていこうと思っています。

【お知らせ】
2024/02/13:スマホが変わったので以降のIDが変わってしまうと思いますが、吉良です。

Re: 猫と神とオレと ( No.1 )
日時: 2016/11/21 18:46
名前: 吉良 ◆tr.t4dJfuU (ID: 6vo2Rhi6)

第一話 オレと猫

天才とは生まれつき備わった優れた才能をもっている人のこと。
簡単にいえば天つ才をもった存在。

オレこと尾崎圭一(オザキ ケイイチ)のそろそろ17年になる16年間で人生のうちで該当者がたった一人いる。
頭がいい奴とか才が一つ頭抜けている奴なら何人もいるのだけれど、天才は一人しか該当してないのだから天才には早々会えないレアキャラなんだと思う。

俺の知っている天才とは沢口颯(サワグチ ソウ)ちゃんだ。
すっごく爽やかな名前なくせに可愛い幼馴染……と言わなきゃ怒る女の子。
なかなかに束縛心が強く、オレのプライバシーを尽く無視してきたり結構大概にしてほしいなって思う時が多々あるかまってちゃん。しかも自分勝手で強かでズル賢い。それなのになぜか憎めない自由気ままで束縛されることを嫌う半野良な猫によく似た子だ。
だからオレは颯ちゃんを心の中で猫と呼んでいる。
結構猫関連でごだごだに巻き込まれているから本当に勘弁してもらいたい。

まぁ、友人にしたら、たとえ思春期関係なく無理矢理「可愛い」と言わそうとさせられたとしても、たとえ部屋に勝手に入ってごろごろされてたとしても、たとえオレといい雰囲気になった女子にこっそり隠れて牽制入れられていたらしいと知ったとしても

「もー、颯ちゃんったら〜。」

で終わらせちゃうオレも大概だそうだ。
言わせてもらうとIQが何ぼか違ったら会話が成り立たないといわれているのだから猫と難なく会話が成立できているのは猫のかなりの頑張りの証しだから少しくらい行動を多めに見てあげたくなるのも仕方ないじゃないか。
という言い訳を考えてる程度にはオレもあの子には甘いことは理解しているのだから放っておいてほしい。

それでも一つだけ言わせてほしいことはある。
流石に猫にもそろそろオレの考えに対して理解を得たい。
多分一般論だと思うのに全然聞き耳を持ってくれない猫には本当に困っている。

「君は自分の性別をしっかり理解しているの?何で警戒心を持たないの?」

と云うことことをオレ今まで何回言ったっけ。

午前6時半頃、窓からさす光が少々強くなってきて暑くなるのも早くなってきたなーと眠りと目覚めの間にぼんやりと思えるようになった今日のこの頃、腹部に唐突な鈍い痛みを感じた。
目を無理矢理に開けるとフトンの上から猫がまたもオレに跨っていた。
しかもとってもいい笑顔でこっちを見ているというおまけ付きで。
とどめに「おはよう、お目覚めいかが?」とかね、毎日本当にお決まりなことばかり言ってくるけどさ恒例化しないでほしいよ。

「やだ圭ちゃんったら言いたいこと二つになってるよ?うっかりさんめっ。
 あと手を出されようとも逃げれる方法くらい一瞬で10以上は考えつくし遠慮なく襲ってくれて良いからね?」

「うん、オレの思考回路理解してくれるなら毎日毎日こうものしかかるのはやめようか。
 オレが間違いを起こす前に超絶可愛い颯ちゃんに逃げられるだろうけどこういうのってあんまよろしくないよね。」

毎朝台本でもあるのかと思ってしまうほどに滑らかな会話をしながら頭の隅でこの朝の目覚めを早急にどうにかしなきゃなぁと考える
少し体をずらして起き上がり猫をオレの上からどけると残念そうに唇を尖らせる猫には本当に苦笑か出てこない。

そろそろこれが日常だと錯覚しそうで怖い。

分かってる。これは普通に考えて異常だ。

Re: 猫と神とオレと ( No.2 )
日時: 2016/12/04 16:54
名前: 吉良 ◆tr.t4dJfuU (ID: 6vo2Rhi6)

第一話 オレと猫 2

着替えるからと颯ちゃんを締め出した途端、深い溜息が出た。
朝からこんなに重々しい溜息吐けるオレどんだけ。

あの様子じゃきっとまた朝ご飯が出来上がっているんだろうな。
猫がオレの家に入り浸るのはつい昨日とかそんな軽いレベルではない。
オレが一人暮らしを開始したその当日からだからざっと2年目に突入している。入り浸り2周年記念パーティーとか開かれたらどうしよう。
オレの食生活とか部屋や衣類関係、総じてオレの生活に対して心配してくれるのはありがたいけど正直家から遠いはずなのに毎日のように来るのはどうかと思っていたし、今も思っている。
去年なんて朝に来ることはなかったけどオレが家に帰る前に家に勝手に入り込んでオレの帰りを待つだけでなく、夜遅くまで居座ろうとしたのでデートとかこつけて家に毎日送りとどけていた。365日欠かさず。オレってばマメだよね。

身体が他の人と比べ物にならない程に弱いのに何やってんの。風邪で何日寝込む気だよ。と何度小言を言ってきただろうか。今ではそれすら結構前のことように思える。
なぜなら今年からはオレの通っている高校に颯ちゃんがいつの間にやら受験して見事に入学したのでそのデートはなくなったどころか、オレの借りてるマンションの隣に引っ越して来たから登校も下校も一緒になったからだ。毎日が本当ツッコミどころが多すぎる。
色々ありすぎてもう一々昔を思い出す暇もない。
それでも友人に、幼馴染のお前に対する執念は恐ろしいな。と顔を引き攣らせながら言われたあの日だけはまだ鮮明に覚えている。






あと、毎度毎度鍵を変えているはずなのにすんなり入ったのかすっごい気になっているんだけれど全然教えてくれないから犯罪的な方法じゃないことを切実に祈っている。



「圭ちゃーん、まだぁ?」

「あ、そろそろ行くから待ってて−。」

着替えにしては時間がかかっていると思われたのか猫から催促の言葉が出てきた。
よくよく見てみると6時半に起きたはずなのにもう7時になろうとしていた。
遠くに意識を飛ばしすぎたみたいだ。

Re: 猫と神とオレと ( No.3 )
日時: 2016/12/04 17:00
名前: 吉良 ◆tr.t4dJfuU (ID: 6vo2Rhi6)

第一話 オレと猫 3

オレと猫の関係というものはかなり曖昧なもので毎度どう説明しようか、と悩んでしまう。
まず恋人では絶対ないし、友達と呼ぶとどうも軽く感じて、幼馴染という単語の枠からはかなり外れていると思うし一心同体と言うと重い。
猫はオレとの関係を表す言葉を口に出さない。言いたくない、というより言い表す必要性を感じていないようだ。
まぁ過干渉してくる理由も言葉にして教えてくれないんだけどね。
それは必要性を感じて早急に教えてくれるととても嬉しい。

「圭ちゃん今日はすごい意識飛ばしてるねぇ。今日僕の誕生日だから?」

向かいに座っている猫がもう食べ終わったのか空の食器を食卓の隅のほうに追いやり頬杖をつきながらオレを見る。
猫は明るい茶色の猫目をゆるりと細め何とも楽しそうに微笑む。
見慣れていたとしても一瞬目が奪われるから本当自分が可愛いと理解している猫は狡い。

「今日で颯ちゃん16でしょ?結構前から年頃だけど'なんの関係のない'男の家に入り浸るのはどうかと思うし。マチガイが起きたらどうするの?」

冗談交じりでそう答えると猫は愉快そうに笑った。

「圭ちゃん、'なんの関係のない'女が家に入り浸るのを容認している君も大概だよ。
 なんならマチガイ、犯しちゃおっか?」

こてんと首をかしげると長い茶色のきれいな髪がさらりと揺れる。
誘惑の仕方をよくよく知っているこの子は慣れたようにオレの手の上から手を重ねる。ジワリジワリと逃がさないよう確実に捕らえようとする、そんな手の乗せ方。
普通なら目が離せなくなったり顔が赤くなるんだろうけど

「や、それはいい。てかそろそろ学校行こっか。」

オレは難なく手をすり抜けて何事もなく食べ終わった自分の食器と猫の食器を運んで洗い桶に入れる。猫はツレナイ、だの。赤面モノなのに、だのぶつくさ言いながら鞄を持ち玄関に向かっている。
正直猫がオレに対してそういう系の仕草やら悪戯はよくやってくるから対処には慣れたものだ。
まぁ、未だに心臓が跳ね上がるし脈も上がるけど。
オレは少々平常心を装うのが上手くなりすぎたようで猫の期待には応えるのは難しい。

まぁ、だからと言ってオレ以外の奴にもやっているならそれは猫と散々話し合わなければならないのだが。

Re: 猫と神とオレと ( No.4 )
日時: 2020/03/18 17:11
名前: 吉良 ◆tr.t4dJfuU (ID: Kot0lCt/)

第一話 オレと猫 4

学校に行く途中オレは大事なことを口に出した。
取り敢えず誕生日のプレゼントは用意したけれども部屋の飾り付けとかもしたい。
オレ的にはサプライズパーティーとかしたかったんだけど猫にはサプライズもへったくれもない。大体の時間は共有しちゃっているし、そうじゃなくてもきっとすぐにバレる。意味のないことはしたくない。サプライズは知られずにやるからいいのだとオレは常々思う。
何よりそれがすごく楽しいしね。

「そういえばさ、今日の放課後はどうするの?」

いつも通り一緒に帰る?今日は颯ちゃんの誕生日だししっかり祝わないとねー。と軽い口調で聞いてみると猫は一瞬、ほんの一瞬だけ顔を曇らせた。それは痛みに耐えているような見たことのない表情だった。

今思えば終わりを覚悟していたのかもしれない。

でもオレは気がつかなかった。その顔はオレが瞬きをしている間に消えてしまっていたせいで全然気がつくことができなかったんだ。
今でも悔やまれる。

「んー・・・・・・、今日はちょっと用事があるから先帰ってもらってもいい?」

すごく残念そうに笑いながら猫はそう言った。
珍しい、素直にそう思った。猫から用事があるという言葉はちょくちょく聞いてはいたが、その全ては帰る前に終わらせていたり後回しにしたりしたりするばかりだったからなんか新鮮。
じゃあ、サプライズにはならないけど部屋を飾り付けて驚かせてみようかなぁ。

「そっかー、何時頃には終わりそう?流石に暗くなる前には帰ってこれるよね?」

考えていることがバレないように気をつけながら聞くと猫はクスクスと笑う。

「やだ、かっほごー。日が沈む前には帰れるようにするから大丈夫だよ。」

「過保護にもなるよ。颯ちゃんは可愛いし体弱いんだからヤバい目に遭ってからじゃ遅いのは知ってるでしょ。」

知らないとは言わせない。絶対に言わせない。何度危ない目に遭ったか何度ヤバい人たちに会ったかを猫が忘れているとは思いたくない。
そうオレの目が物語っていたのか猫は諦めたように軽くため息を吐いて知ってるよと笑った。

その後、他愛もない話をぽつぽつとしながら学校に向かっていると目前にある校門で人集りが出来ているのが目に映る。

「何だろーね。珍事件でもまた起きたのかな・・・・・・頭痛ぇ。」

そう、俺が通っているこの学校よく珍事件が起きる。基本的にはとある一人の先輩のせいなんだけどさ!ほんとにいい加減にしてほしいよねあの先輩。
自然と眉が眉間にしわを作ってしまう。毎度毎度平謝りしているのオレだっていうのに悪びれもしない。
少しは罪悪感で大人しくしろっての。

「大丈夫だよ、今回はただの抜き打ちの荷物検査だから。」

「マジかー面倒だねぇ・・・・・・・・・て何で颯ちゃんが抜き打ちのこと知ってんの?」

猫は問いには答えずにさっさと列に並び始めるから仕方なしにオレもその後に続く。
抜き打ちの荷物検査はゲームとかお菓子とかスマホを没収することはない。ただ煙草とか未成年が持ってちゃいけない物をを所持しているかどうかを見るだけだから持ってきてないオレ達からしたら面倒くさいだけだ。
それにしても何で風紀委員じゃない猫が知っているんだろう。オレですら知らないのに。情報漏洩してんの?

「圭ちゃん、そろそろ僕らの番だけど・・・・・・大丈夫ー?」

「ぜーんぜん大丈夫。問題ないよ。」

ふざけてそう言ってくる猫はつまんないの、と楽しげに笑う。なんて矛盾した言動。
そうしている間に目前には長机とそれを挟んだ向こうに立っている風紀委員の皆様方が見え始めた。朝から大変だよなぁ、ほんと

「じゃ、お願いしまーす。」

順番が来たからそう言って長机にリュックを長机に乗せてチャックを開け中身が見えやすいようにする。
取り敢えず早く終わんないかな。疑われているようでこういう検査は本当に苦手だ。


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