複雑・ファジー小説

シークレットガーデン-椿の牢獄-[完]
日時: 2017/10/13 09:21
名前: 姫凛 (ID: nj0cflBm)
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel6/index.cgi?mode=view&no=16274

▼━━━━−−ご挨拶をば 】

おはこんばんにちは、姫凛(プリン)と申します。
御観覧ありがとうございます(*´ω`*)

この作品は「シークレットガーデン〜小さな箱庭〜」の「第四章 監禁・脱走」を○○さま目線の物語です。
この物語にはあるお方のネタバレ要素が含まれています。お手数ですが本編第三章にある選択肢[後をついて行く]を見てからを強くお勧めします。

※URLをクリックして頂ければ本編に飛べるようになっております。
最初に言っておきます。この物語では人がお亡くなりになります。グロイ描写などがありますので苦手な方はご注意くださいませ。
[ある乙女の淡い恋心にキュンキュンしすぎ要注意!]

▽━━━━−− -椿の牢獄- 】
[登場人物>>01-03]
「prologue>>04
「紅き鎧の騎士の日常>>05」 
「メシアの生き残り>>06-08
「恋愛相談>>09」 
「黒い企業>>10-11
「終焉の刻」>>12-14
「一気に読みたい人へ>>01-14

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Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.10 )
日時: 2017/09/30 18:48
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: 7ZQQ1CTj)

我らの敵であるメシアの生き残り、ルシアに固く手を握りしめられあちらこちらへと椿のろうごくないを引っ張りまわされること数刻。

「この造り…まるで迷路だよ」

ぼそりとルシアが独り言をつぶやいた。壁に片手をついて大きく溜息をつく。その寂しげな背中を見ていると何故か胸の奥がきゅうぅと締め付けられるように痛くなる。

我はいったい何をしているのだろう_。

何が悲しくて敵に片手を掴まれ通路を走り回らなければいけないのだ。
こんな間抜けな姿、他の者に見られでもしたら……口封じしなければいけないではないか。
ただでさえ王が手駒が日に日に少なくなってきていると嘆いていらっしゃるというのに……。

だがこのまま奴の物憂げな背を見つめているだけでは駄目か_。

「そ、そうですね。敵からの侵入も脱出も困難な構造になっていますから……」
「そうなんですかっ!? このまま…進んでいたらいつか見張りの人に見つかっちゃいそうだな…」
「……」

あぁそうだな。このまま闇雲に走り続けるだけでは確実に誰かに見られるだろう。
そして我は貴様と見た者を口封じに殺さなければならないだろう。
殺るか。殺らないか。考えていた悶々と考えていたところ

「ッチ」

こやつはある意味勘が鋭いとでも言うのか、ただ闇雲に我を連れまわしているだけだと思っていたのに、椿の牢獄に勤める監守共が寝起きする部屋へとたどり着いたのだ。

「………」
「………」

部屋の中からは音が二人。話し声が聞こえてくる。
今は全員勤務時間のはず。そうかさぼり組と言うわけか。我を目の前にし、堂々とさぼるとは良い度胸。
その堕落した精神叩き直してくれよう! と腰に手をかけたところではっと気が付くそうだ、今の我はムタクモ。獲物(武器)を持たない丸腰の状態だった。
そしれ隣にはメシアの生き残りがいる。今は鎮まり耐える時か……後で覚えておれよ。お主ら。

出入り口の隅から隠れて、タバコを吸い楽しそうに雑談するあやつらの話に耳を傾ける。

「はぁー。やになっちゃうなー」
「だよなー。少ない給料しかくれないくせに、仕事は一日二十時間もさせられるんだもんなー」
「寝る事しかできねーよなー」

なんなのだ、こやつらの会話は! 聞いていれば先程から王への不満ばかりっ。休む時間があるだけでもありがたいと思わないか! 我になど気をゆっくり休める時間など早々ない。あればそれは奇跡、王の為になることで浪費するもの。
ドルファに入社したのなら己の持つ全てを王へ捧げるのは当然の事だろう。

「………」
「なぁ逃げ出さないか?」
「ばっ、お前そんなの誰かに聞かれたらどうするっ!? 即刻討ちきりだぞっ!!」
「大丈夫だって、今ここには俺たちしかいねぇーって」

残念だが此処にいるのは貴様らだけではないぞ。と言えるものなら言いたい。言ってしまったら最後、部屋が真っ赤な血で染まってしまうがな。

ほう逃げ出す算段か。我の前で堂々と、な。
ならば聞いてやろう。そしてその逃げ道を封じた上で貴様らの命を狩り取るとしようか。
入社したあの日、王の前で見せた忠義の証、あれは真っ赤の嘘だったその罪の花、我が摘み取ってくれよう。

……ふふふふふふふふふふふふふ。


「おれっあいつらから聞いたんだ。この椿の牢獄の何処かに隠し階段があってその先が外の世界につながってるって…」
「お、お前。あんな奴らの戯言を信じるのかよ!?」

なにっ隠し通路だとっ!? 何故あれの存在を貴様ら下っ端が知っているのだ! あれの存在は我とロックスの奴しか知らぬはずっ。
まさか、ロックスの奴が酒に酔って口を滑らせてたっ!? いや…我の前ではちゃらんぽらんだがやる時はやる男? だ、多分、きっと…な。
だからそれはあり得ない。それに看守長から聞いたというなら「あいつ」とは呼ばないだろう。そして「あいつら」と複数形で呼んでいることから犯人は複数人。

ふふっまさか脱走犯を捕まえるだけではなく裏切り者、密告者の情報を手に入れることができるとはな、めっけもんとはこのことか。

「………」
「っ!?」

驚愕の表情だ。すぐ近く隣にあったメシアの生き残りの瞳がやる気の炎が燃えているのだ。
こやつ隠し階段を見つけ出し、我を連れて此処から逃げ出すつもりだ。奴の瞳がそう語っている。
だがあそこへはそう簡単には辿り着けないだろう、だって隠し階段がある場所は……。

「…行くのですか?」

社交辞令というものだ。一応聞いておいてやろうというせめてもの慈悲というものだ。
だ、そう。ただの慈悲で聞いてやっただけだというのに何故だ。何故、口から出た声は震えか細い声になっている。
どうしてこんなにも胸が締め付けられる、どうしてこんなにも腕が震える。
震えをおさめようとルシアの手を離し腕を掴むが一向に震えはおさまらない。何故だ。何故なんだ。

自分が分からない。


どうして体の震えがおさまさらないのか。


どうしてメシアの生き残りのことを考えると こんなにも胸が苦しくなるのか。


全くわからなった。どうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうしてどうして_どうしてなんだ?











Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.11 )
日時: 2017/10/08 08:33
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: IkQo2inh)


「…うん。みんなを探しに行かないと.
それにムラクモさんをこんな所に置いてなんていけないよ!」
「ッ!?」

真剣な瞳。純粋瞳。穢れを知らない瞳が我を真っ直ぐ見つめる。
やめろ。やめろ。やめてくれ。そんな綺麗な瞳で我を見るな。見ないでくれ。返り血で汚れ穢れてしまった我を見ないで。
身体が震える生まれたての小鹿のように小刻みに震え治まらない。何故だ。何故こんなにもこやつといると狂わされる。
嗚呼。顔が熱い。火照っているのか? それとも怒りで頭に血が上り思考が上手く働かないのか?
我は我が分からない。メシアの生き残りである貴様のことが分からない。

ぼぅと奴の瞳を見つめていると真剣な瞳が少し困惑した表情となる。
困った顔もまた可愛いのだな……っと、和んでいる場合ではなかった。

「ぁ…隠し階段は…あっちです」

なんでもいいとにかく誤魔化さなければと出した言葉がこれだった。捻り出した声も蚊でも飛んでいるのかと思うくらい小さなものだった。

驚愕だった。まさかここまで動揺させられていたとは。

「えぇっ!? ムラクモさん知ってるの!?」

余計な気でも使っているのか、はたまたただの阿呆なのか、メシア生き残りは間抜けな顔をし驚いている。
この状況で気がつかぬのはよほどの阿呆だ。それにこやつはそうとうのお人好し、ならば答えは前者であろうな。

だがしかし、せっかくの気遣い。ならば我も一応社交辞令としてひとつなにか言っておくとするか。

「ですがあそこは魔物の巣窟となっています。それでも…」
「それでもだよっ! 大丈夫、君のことは僕が護るから!!」
「ッ!?」

メシアの生き残りに「君のことは僕が護るから」と言われた瞬間、我の中にある何かが最高潮へ達した。自分では分からないがもしかしたら、頭から湯気が出ているかもしれない。そして顔はきっとゆでだこのように真っ赤なのであろうな。

敵に背を向けるとはなんてことだ、といつもなら言う所だが今回は仕方ない。メシアの生き残りに背を向け大きく深呼吸をし邪心を払い精神を正す。

「わっ、わかりました。……ですが私の仕事は人を守る事。貴方を守る事なんです。
 互いを守るって事でいいですか?」

この言葉に嘘偽りなどない。真実。本当の気持ちだ。何故なら今ここでメシアの生き残りに死なれるのは非常によろしくない。王の野望を叶える為にはまだこやつには死なれては困る。だから我は命懸けでこやつを護る、護りたいそれだけだ。

「うんっ! よろしくねムラクモさん」

何も知らぬメシアの生き残りは我に対し眩しく、溢れんばかりの太陽のような笑顔を向ける。
幼子の頃からずっと日の当たらない日陰で生活していた我にとってその笑顔は眩しすぎた。もし我が陽の光に弱い吸血鬼として生を受けていたら、こやつの純真無垢な笑顔で灰となっていただろう。

「は、はいっ」

噛んだ。しかも裏返った。酷い声。返事だ。でもこれが捻り出せた精一杯の返答だった。
もう我の身も心もずたぼろだ。ぼろ雑巾のようだと言っても過言ではないだろう。まさか一度も戦闘せずにここまで我の体力を消耗させるとは可愛い顔をして恐ろしい奴だ。


こちらです。とメシアの生き残りを誘導する。隠し通路ある部屋まで。
椿牢獄最深部に位置する部屋。部屋の中には日本刀や昔の武将が着ていたとされる鎧兜や椿の掛け軸がかけられた特別仕様の部屋。
げすとるーむとも呼ばれ。この部屋は主に我らの王、バーナード様が此処へ視察に来られた時などに寝室として使われている。
バーナード様以外この部屋の立ち入りを禁止されている。王にだってぷらいべーとはある。独りでゆったりしたいときや、隠し事などもあるのだろう。我はまだそこまで王からの信頼を得ているわけではないからな。

「………」

部屋に入り込み書類などを片付ける時に使う机の後ろにかけられている椿の掛け軸をめくりあげる。

「…隠し階段だ」

ふとメシアの生き残りがそうつぶやいた。掛け軸の後ろにあるのは冷たい鉄の壁ではなく、暗闇で先の見えない深淵へと続く階段が隠れているのだ。
普段誰も近寄らない深淵から獣達の雄叫びが聞こえてくる。獣だけで人がいないのだから当然電機なども通っていない。暗闇の世界だ。
懐中電灯を忘れないようしなければな。あと替えの電池も。こんな暗闇我としては日常風景そのものだから別にどうということもない。だが後ろにはメシアの生き残りもいる。もしかすると奴は暗いのが苦手かもしれない。暗いと目が見えず事故死してしまうかもしれない。
…だから仕方なく、仕方なく我は懐中電灯と替えの電池を忘れずに持って行くことにするのだ。決して幽霊がいるかもしれないからなどという間抜けな理由ではないのだからな!

そういえば今日はいつも以上に、化け物達の声が五月蠅い。
どうやら相当腹を空かせているみたいだな。数百年ぶりに飯にありつけるちゃんすに嬉々としているということか、嘆かわしい。

「此処の魔物は今まで貴方が戦ってきた魔物とは比べ物にならないくらいに強いですよ。
 気を引き締めて」
「うん。ムラクモさんもね」
「…はい」

やはりメシアの生き残りの意思は相変わらずのようだ。愚かだ。そのように先急いではいつか死ぬぞ。
ろくに戦場に立ったことのない若人。早死にする者が多い。
貴様の事は我が死んでも護る だから安心して後ろをついて来くるのだ ルシア。

深淵へと続く階段を下りてゆく。これは我も知らなかったこと、どうやら我らは何者かに後を付けられていたようだ。
我としたことが何をやっていたのだ。鼠一匹気がつかぬとは……そうだった、メシアの生き残りの言動に一喜一憂していたせいで周りのことなど気に留める余裕がなかったからだ。

「へぇ〜、おもろそうやったから後付けてみたら、なんや楽しそうな事になっとるなないの。くひひひっ」

我らを付けていたという黒い眼帯に出っ歯な男はニタニタと気色の悪い笑みを浮かべすきっぷるんるんと幼児の遠足のように階段を下りて行ったそうだ。
なんとふざけた男だろうか……地下で出くわしたらその身体に我を舐めるとどうなるか思い知らせてやろうではないか。

……ふふふ。そう考えるとある意味の所では楽しみではあるかもしれない。

Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.12 )
日時: 2017/10/12 11:48
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: nCjVBvXr)

それは地下の深淵と続く階段を下りてすぐの事だ。

「はぁぁぁぁ!!」
「ふんっ!」

―ゲシャァァァァ!!

躊躇なく地下に住まう化け物達が我らに襲い掛かって来たのは。ならば我も躊躇なく斬り裂くとしようか化け物達を真っ二つに。
知識のない。食欲しかない獣達は学習などしない。先陣を切った者がどんどん斬り殺されているというのに、数だけで押し襲い掛かってくる。愚かな。それでも我が王の僕だとでも言うのか。なんと愚かで無駄な物たちだ。ならばせめてその命。我が鉈の錆にしてくれよう。

「はぁっ!」

―ブシャァァ!!

バッサバッサと目の前に、左右に、後ろに、同時に、現れる化け物達を鉈で斬下し槍で貫く。あぁつまらぬ。こやつら相手では童の遊戯でしかない。退屈過ぎて退屈しのぎにもならない。目の前は一撃で血の海となり、一瞬で辺りは肉塊の山となる。

「はぁ…はぁ…」

我に背中を預ける形で戦っていたメシアの生き残りの息が荒い。もうばてたか。この程度の準備運動にもならない、戦い程度で。

「大丈夫ですかっ?」
「うっ、うん」

振り返り一応聞いてみると奴の顔は全然大丈夫そうではなかった。疲労困ぱいといった表情で苦笑い。我に心配をかけまいとでもしているのか? それは馬鹿にされたものだな。貴様にとって我という存在は――

「こちらにっ!」

ムカつきメシアの生き残りの腕を掴んでいた。そして三字に横へ進み壁に紛れて隠してあったすいっちを起動させ、隣の壁を横へ動かせ隠し通路を出現させる。
化け物達がまた襲い掛かってくる前にメシアの生き残りを連れ中へ入り、壁を移動させ通路を塞ぐ。壁の向こう側からは化け物達の悔しそうな鳴き声が木霊している。
地下も上同様にからくりだらけだ。来たことはあまりなくとも、何処にどんなものがあるのか把握している。設計図を見れば誰だって一目瞭然のことであるがな。

Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.13 )
日時: 2017/10/13 08:27
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: nj0cflBm)

「隠し階段の次は…隠し壁……」

メシアの生き残りは今只の壁へと戻った隠し扉をまるで隣人の邸へ訪ねて来た客のようにこつこつとのっくし材質を確かめているようだ。こつこつと叩くたびに首を左右に傾げながら。そんな不思議な物なのか、ずっとからくりがある生活をしていた我には分からない感覚だった。不思議そうな顔で首を傾げるメシアの生き残りに「はい。此処は最高技術を持ったからくり職人達に造らせた、からくり牢獄なんです」とからくりのことを説明してやった。メシアの生き残りから出てきた言葉は「へぇ…」となんとも素っ気ない物。初めて見る物だ。それも致し方ない物か。―少々つまらなくも感じるが。

いや今はそんなくだらない事に現を抜かしている場合ではない。一刻も早く此処ここから逃げ出さねば……知識のない化け物達だげ、食欲は旺盛だ。どんな姑息な手段を使って襲いかかってくるか知れたものではない。メシアの生き残りの腕を掴み「こちらですっ」と次のからくりの仕掛けがある場所へ移動しようとしたときだった――腹部に強烈な重い一撃、まるで鉄球を当てられたかのような激痛を感じたのは。

「ごふっ」と喉の奥から腹の奥の方から血が溢れ吐血した。横にいるメシアの生き残りの「ムラクモさんっ!?」我を心配する声が聞こえる。敵に同情をかけられるなどなんと惨めな。ふがいなき事だ。吐血し膝までついてしまうとは……こんな醜態バーナード様へとても見せられたものではない。汚名は返上するもの。足元に落ちているのは腐りに繋がれた分銅か……ならば敵は一人しかいぬ――ロックス。「ヒドイやないか〜、ムラクモちゃ〜ん」鎖の先を持つものに鋭い眼光を向ける。けたけた嘲り左手で鎌を持ち右手で繋がれた鎖をくるくると手持ち無沙汰のように振り回している。

「わしという男が居ながら、他の男に浮気するやなんて」

浮気だとなんの話だ、と奴の視線の先を見つめればそれはメシアの生き残りの事だった。そうか他の男と駆け落ちしようとしていることが気に食わないのか。……ふふ。なんと幼稚で独占欲の強い男だ。我の心などとうの昔に王へ捧げたというのに。ぺっと唾を吐き捨てたつもりがそれは赤黒い血だった。この体は我が思っている以上に先の一撃でだめーじを受けていたようだ。――瞼を閉じた。そして無理やり抑え込んでいるもの殺意の奔流。臓腑を丸ごと支配するが如きそれらを一時的に解き放った。
心地よい感覚だ。瞼の裏側で微かに見える、轟々とした流れとうねり。毛細血管の幻が脳に見せつけてくるのは、血流のいめーじ。肉塊の夢想。次々に思い浮かぶいめーじが、指を、脳を、心臓を、全身全てを震わせて――あぁ――殺したくなってくる。

「貴方…何者ですか?」
「はぁ?わしはお前なんかに用はないっちゅーねん」
「奴の名はロックス。此処の監守だ」
「そしてムラクモちゃんの彼氏やなっ」
「えぇぇぇ!!」

なにか聞こえる。瞼を閉じた向こう側の世界でなにか聞こえる。話し声、男が二人。驚くメシアの生き残りの声といやらしく笑うロックスの声だ。人を疑うという事を知らないメシアの生き残りがまた何か変な勘違いをしているような気がするがそんな事我には関係のない話。我のすることなんていつの時代もどんな時でも変わらない。

「そこをどいてください」
「いややと、ゆうたら?」
「……殺す」
「くひひっ、ムラクモちゃんはせっかちやの〜」

鉈の切っ先をロックスに向ける。我が獲物は欲しているのだ、奴の生き血を。ならばそれを用意してやるのが持ち主の役目。メシアの生き残りにも剣を構え直す様に伝え、殺る気になったロックスも右手に掴んでいた鎖を手持ち無沙汰な感じから八の字に回し、いつでもその先に下げられている重い文堂から重い一撃を放てるように。「まぁ、ええわ。わしも最近体がなまってきとったから、ええ運動になるわ。死んでも恨まんといてなぁ!!」躊躇なく襲いかかってくる奴に向かって我はあくまでもムラクモとして答えた「それはこちらのセリフです!」―と。

やっと始まる。血沸き踊る闘いが。やっと潤すことが出来る毎年ずっと乾き続け砂漠のようになってしまった我が喉を――我が獲物を―潤すことが出来る。

Re: シークレットガーデン-椿の牢獄- ( No.14 )
日時: 2017/10/13 09:09
名前: 姫凛 ◆x7fHh6PldI (ID: nj0cflBm)

「ほらほら、どないでっか!?」不規則に乱暴に鎖を振り回すロックス。「うわっ!?」飛んでくる分銅をかわすのでやっとのメシアの生き残りと「くっ」やはりあの一撃が尾を引いているのか、脳髄からの指令を受け取った体が指令通りに動くのにこんま二秒遅れる。それが致命的たった。本来ならばかわすなど当たり前、三分もあればこんなロックス程度すぐにでも一片の欠片も残さず粉砕してくれるものだというのに……こんま二秒体の動きが遅れるだけでかわせるものがかわせず攻撃を受けてしまいそのだめーじが蓄積され疲労となる。悪循環だ。

メシアの生き残りも分銅をよけるだけで精一杯といったところか。青ざめた顔から大量の冷や汗が流れている。本調子ではない我と役立たずのメシアの生き残り、絶好調であり我らを甚振ることを楽しんでいる。気に食わない。あぁ胸くそ悪い吐きそうだ。このような塵屑に弄ばれるなど憤懣やる方ない思いとはこのことをいうのだろうな。「スキありやっ!」大幅な体力を消耗し、疲れ切った我らを見て勝機を感じたのだろう。ロックスは右腕を大きく振り上げ鎖で繋がられた分銅も大きく飛び上がり「「…あれっ?」」絡まった。天井を覆いつくすようにいくつも配管された鉄ぱいぷに上手い事くるくると絡みほどけなくなったようだ。「ちょっ、ちょっと待ってな…今取るさかいに」ロックス両手で力いっぱい鎖を引っ張り鉄ぱいぷごと絡まった鎖を解こうと悪戦苦闘しているようだが、複雑に絡み合ったそれはもうそう簡単には解けない。
溜息が出るほどに阿呆な男だ。そっと静かにロックスも背後に立ち「え…? ムラクモちゃんそれはないわ〜。さすがに…卑怯やで? な? な?」とうぃんくをしてくるロックスに苛立ちを感じ「…待つわけないだろっ!!」鉈で奴の背を真っ二つに切り裂いた。「ムギャーー!!!」と響き渡るロックスの断末魔。あぁ――なんて耳障りな声なんだ。
「む、叢ちゃん……」まだ息が合ったか本当に黒光りする虫並みの生命力と気持ち悪さを持った男だな。蔑む視線を足元にすがり這いつくばる死にぞこないの屍に向ける。

「な、なぁ……このままじゃアカン」
「……なにがだ」

こんな死にぞこないの屍の話など聞いてやる必要性もなにもないのだが、なぜかその時我は止めを刺せなかった。話を聞いてやることにしたのだ。どうゆう風の吹き回しなのか自分でも分からなかった。只なんとなく、まだこやつの話を聞いていたかったのだ。

「ドルファフィーリング……はな……バーナード……は……叢ちゃんが思っとる……ような凄い男やない」

なにを―なにを言っているのだ、この屍は。我らの王。バーナード様を愚弄する言葉を吐くなどっ。槍を振り上げる。狙いは死にぞこないの屍の頭上。「――思い出すんや! 自分が何者だったのかを」ぐちゃり。元同僚だった男の最期はぐちゃり。頭部を槍で串刺しにされ悲鳴も断末魔も上げる間もなく一瞬の死。痛みも苦しみもない死。―即死。

ぐちゃり。ぐちゃり。ぐちゃり。なんども奴の体に槍を突き刺した。最初の一撃で死んでいたことは知っている。手ごたえがあったから、妄言しか吐かぬ口がやっと閉じたから、いやらしいものを見る瞳から生の光が消えたから――もうこと切れているのはわかっていた。それでも我は槍を突き刺し続けた。骨が砕け肉が途切れない贓物が破裂する。生臭い匂い。鉄の臭い。嫌な音。我の中に眠る黒き獣がドラゴンネレイドとしての本能が満足するまでこの無意味な虐殺は続けられた。椿の牢獄看守長ロックスと呼ばれた男が只の肉塊となるまで続けられた。






我は叢。この世界を支配する王 バーナード様の手駒 紅き鎧の騎士と呼ばれる者。それ以外の何物でもない。
















                                          -fan-

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