複雑・ファジー小説
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- G.A.M.E
- 日時: 2017/03/18 01:49
- 名前: 雛風 ◆iHzSirMTQE (ID: QxkFlg5H)
顔を熱風が撫ぜ、汗が頬を伝っていく。
目に映るのは大きな赤い火と、衝突して壊れた車が数個、そして——車の中で燃える妹。
ああ、妹が死んだんだ。妹が、死んだ。妹が——ついさっきまで、隣で笑っていた、妹が。
目の前がぼやけて、目から溢れた涙は汗と混じっていった。
* * *
「……またか」
一年前にあった事故の悪夢を見て、汗だくの嫌な朝を迎えた。
荒く頭を掻いて、さっきのことを忘れようと部屋を出て冷えたお茶を一気に飲む。
一年前に妹を亡くし、兄貴と二人暮らしだが最近は兄貴の顔を見ない。
兄貴の部屋に行くが兄貴の姿はなく、机の上にぽつんとゲーム機が置かれていた。
妹が買ってくれたそのゲームが無性に気になって、それに手を伸ばす。
起動して、瞬きをした瞬間——目の前には草原が広がっていた。
後ろから声がかかり、そちらへ向くと水色の髪の二十代ほどの女性がいた。
「こんにちは、勇者様。私はアシスタントです。ようこそ、《G.A.M.E(ジーエーエムイー)》の世界へ」
妹に似た彼女は、にっこりと優しげな笑みを浮かべてそういった。
彼女、アシスタントと俺の冒険物語が唐突に幕を開けた——。
* * *
こんにちは! クリックありがとうございます!
今回は主人公がゲームの中の世界で勇者として奮闘するお話です!
またオリキャラを募集するかもしれませんので、その時は是非お願いします!
それでは、ごゆっくりお楽しみください!
- Re: G.A.M.E ( No.1 )
- 日時: 2017/03/18 02:36
- 名前: 雛風 ◆iHzSirMTQE (ID: QxkFlg5H)
プロローグ
可愛い妹があるゲームを兄貴と俺のために買ってきてくれた。
最近、流行っているゲームらしく、“G.A.M.E(ジーエーエムイー)”という名前のRPGである。
RPGといっても、様々なモードがあり選択可能というのが謳い文句のゲームだ。
モードは計四つ、RPGモードやギャルゲーモード、乙ゲーモードや友情ゲーモードである。
それぞれ選んだものによってストーリーが変わってくる。
更にフリートーク機能が付いていて、キャラクターに自由に話を振ることができ、返答も自然なものが返ってくる。
俺はかなりRPGは苦手なのでやったことはないが、そばで兄貴や妹が楽しんでプレイしているのを見ていた。
兄貴がズルをして妹を負かしたり、妹が裏技を使って兄貴を倒したり。
たまに飽きて止めていたこともあるが、“G.A.M.E”は既に日課となっていた。
しかしその数週間後、妹は死んでしまった。
傷心しきった俺の前で、“G.A.M.E”はまるでその存在を主張しているように机に置かれていた。
隣で兄貴と戦って楽しそうに笑う妹を思い出し、それに手を伸ばす。
起動して、瞬きをした瞬間——目の前が草原に変わっていた。
見慣れた自室の光景はどこへやら、木々のない草だけの広々とした空間に思考が停止する。
「こんにちは、勇者様。ようこそ、“G.A.M.E(ジーエーエムイー)”の世界へ」
後ろから声がして振り向くと、水色の髪の二十代ほどの若い女性がいた。
年や目の色は違うが、どことなく妹と似ていて声も同一だった。
「初めまして。私はアシスタント、貴方のサポートをさせていただきます」
彼女、アシスタントと共に、俺の勇者としての冒険物語が唐突に幕を開けた。
「アシスタント……俺、絶対お前を守ってやるから」
「ふふ、ありがとうございます。マコト様」
「…………」
愛しい妹を思いだし、無意識に目の前の女性と妹を重ねる。
するとアシスタントは、口許に手を当て微笑んだ。その笑顔が眩しくて、心のどこかで彼女に魅了されていたことなど、その時の俺は気づいてはいなかった。
* * *
私の名前はアシスタント、勇者の案内役である。
勇者と聞いて何となく御察しだろうが、この世界は皆さんの住んでいる現実世界とは違う。
ここは——“G.A.M.E(ジーエーエムイー)”というゲームの中の世界である。
この世界の生物は等しく“キャラクター”であり、彼らに名前はない。
あるとすればゲーム上の役割、勇者1や村人1、魔法使いAや魔王などである。
何故そうなるかは、おそらくゲームの制作者が名前を考えるのが面倒だったからだろう。
私が現実世界のことまで認識しているのは、ただのアシスタントという“システム”であり、“キャラクター”として作られてはいないからである。
現実世界のことはほとんど全て知っていて、現実世界の情報は日々更新されている。
ただそれをこの世界の誰かに話せるかと言われれば、そうではない。
以前何度か口にしそうになったことがあったが、口は開いても声は出なかった。
どうやら製作側は私に事実を伝えることを禁じているらしい。
私はこの世界で、物に触れることも空腹や眠気を感じることもない。
ただ目の前に何らかの物体として存在して見える、いわゆる幽霊のようなものである。
そんな私はこの世界の主人公となる勇者、つまりは現実世界でのプレーヤーに基本的な操作を教える役割を担っている。
その後は主人公についていき、何か支障があれば手助けする。
「ここは……」
ああ、どうやら勇者が現れたようだ。
目の前の茶髪の男性は不思議そうに私を見つめている。
彼の名前は×××××、これから彼の冒険物語が始まる。
「私はアシスタントです。よろしくお願いします、勇者×××××様」
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