複雑・ファジー小説

あなたに出会う物語
日時: 2017/08/14 07:07
名前: ももた

小さな手……小さな温もり……
あなたはもう一度、私に会いに来てくれたのね。
あなたに最初の贈り物をあげましょう。
あなたの名は……

***

こんにちは、気まぐれなももたです。初心者で、更新は不規則ですが、頑張って書いていきます!

〈注意〉
本作は多少のグロ表現、下ネタ等を含みます。嫌な予感がした方は、ブラウザバック!

〈目次〉
Chapter1……>>1>>2>>3>>4>>5
Chapter2……>>6>>7>>8>>9>>10>>11
Chapter3……>>12>>13>>14>>16>>17>>18>>19>>20>>21>>22>>23>>24

〈主要登場人物〉
以下、ネタバレを含むことがあります。本編を読んでからの閲覧を推奨します。プロフィールはストーリーの進行に合わせて更新します。

スノウ・ヴァイス(18)
ベース:白雪姫
呪い:???
反動:氷を操る
雪のように白い肌、黒檀のような黒く長い髪、血のように赤い唇の美しい少女。赤ん坊の頃から孤児院で育ち、周りからは優しく礼儀正しいと評判。

フレッグ・ポンド(18)
ベース:カエルの王様
呪い:満月の夜にカエルの姿になる
反動:身体能力が高い
短いブロンドの、麗しい青年。しかしある理由から、強いコンプレックスを抱いている。少し卑屈な面もあるが、勇敢な性格。ハンスから『ケロちゃん』と呼ばれるのを嫌がっている。

ハンス・クーヘン(28)
ベース:ヘンゼル
呪い:???
反動:悪魔を払う武器を操る
赤い巻き毛で、長身の美しい青年。革命軍のリーダーを務めている。陽気でいたずら好きな性格。

マルガレーテ・クーヘン(28)
ベース:グレーテル
呪い:???
反動:悪魔を払う武器を操る
ハンスの双子の妹で、容姿が兄によく似ている。ハンスの右腕となって、常に彼を支えている。兄よりも男前な性格で、面倒見が良い。愛称は『メグ』

ローザ・フォン・ルーク(14)
ベース:いばら姫
呪い:悪夢しか見ることができない
反動:人の悪夢を盗ることができる
白銀色の髪に、赤い瞳が特徴的な美少女。身体があまり丈夫でない。穏やかで物静かな性格。実はとても寂しがり。

ジャクソン・ビーン(26)
ベース:ジャックと豆の木
呪い:豆の木に身体を寄生される
反動:身体を植物のように扱える
癖っ毛の黒髪で、あごひげを生やしており、右目に眼帯をつけている。女好きな性格で、マルガレーテに会うたびに口説いている。また、フレッグのことをいつも気にかけており、弟のように思っている。愛称はジャック。

アーサー・アルビオン(5)
スノウとともに、孤児院で育った子供。やんちゃ盛りで、遊ぶことと食べることが好き。人懐っこく、今や革命軍のマスコット。

リリス
国を治めるている。白雪姫の魔女の生まれ変わり。

ブライア(32)
若作りとイタい服装が趣味。いばら姫の魔女の生まれ変わり。人を操る力を持つ。

ハッグ(34)
肥満体でお菓子好き。砂糖でできた悪魔を呼び出す力を持つ。ヘンゼルとグレーテルの魔女の生まれ変わり。

エビルダ(39)
フレッグに好意を寄せているらしい。カエルの王様の魔女の生まれ変わり。

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Re: あなたに出会う物語 ( No.20 )
日時: 2017/07/14 23:37
名前: ももた

少女は走った。か細い足を懸命に動かして。自分の力で外に出たのはいつぶりだろう。普通の人間には朝飯前な距離でも、少女には千里にすら感じられる。何度もつまずきそうになり、足を止めようとした。しかし、そこで足を止めてしまえば、間に合わないような気がした。
「ハンス……もう……泣かせない……」
しろがねの光を手に、ローザは父のもとへと急いだ。

***

「気でも狂ったか、ハンス!?」
ハンスの剣が、フレッグの耳元をかすめる。アーサーを背中から前に抱え直し、フレッグはハンスの斬撃を避けた。あと一瞬でも出遅れていたら、アーサーに当たっていただろう。一撃目を外したハンスは、フレッグの左腕、すなわちアーサーを抱えている腕を執拗に狙ってくる。
(標的はアーサーか!?)
ハンスの間合いにいては、アーサーを守れない。そう判断したフレッグは、大きく後ろに跳躍した。そして小型通信機を耳から外し、ハンスの利き手にめがけて投げつける。フレッグの腕力で打ち出せば、それは立派な弾丸だ。
キンッ
先に見切ったハンス、は剣を盾に変えてそれを防ぐ。弾丸を弾くとすぐに盾を剣に戻し、追撃しようとフレッグとの距離を縮めようとする。アーサーという枷のあるフレッグに残された選択は
「ちっ!!」
離脱だった。
脱兎の勢いで、旧市街地区に逃げ込む。目標を見失ったハンスは、通信機の電源を入れた。
「メグ、スノウちゃんの介抱をたのむ。それから、ジャックは俺と合流してくれ」

***

「くそっ!何があったんだよ、ハンス!」
アーサーを抱えながら、フレッグは旧市街の家々を屋根伝いに逃げる。
(どこかにアーサーを隠して、ハンスを抑えこもう)
どこか高い場所。それなら、ハンスはすぐに駆けつけられない。対して、ジャンプ力のあるフレッグは、いつでも庇いに行ける。隠し場所は、すぐに見つかった。
「広場の鐘!」
フレッグはまっすぐに、広場の方へ走った。しかし、鐘が近づくにつれて、あやしい人影が目にとまる。それは、派手な衣装に身を包んだ魔女だった。
「ブライア……相変わらず、悪趣味なドレスだな」
「ほ〜〜んと、フレッグって女の扱いがなってないよね。こんな美人に、そんな酷い言葉を浴びせるなんて……」
夕陽に照らされた魔女は、歪な笑みを浮かべる。
「は!寝言は寝て言え……」
「ま〜〜ったく、エビルダはこんなカエルのどこがいいんだか……」
ゾクリと、フレッグの背筋に悪寒が走る。
「ブライア……お前、こんなところで何してる?俺たちを殺しにきたのか?」
「半分あたり?本当はスノウ様を殺しに来たんだけど」
フレッグの胸に、疑問が広がる。
(スノウ……様?)
「でも、アンタを殺すとエビルダがうるさいんだよね〜〜。あの人、アンタにゾッコンだから」
ふふっと笑いを漏らすブライア。対してフレッグは、先程から口にされる忌まわしい名に、心なしか震えていた。
「半分と言うのは……お前が殺したいのは俺じゃないということか?」
やや臨戦態勢を強めながらフレッグが問う。ブライアはもったいぶるように、言葉を濁し、また口を開く。
「そうじゃなくてぇ……」
刹那ーーフレッグは首筋に鋭い痛みを感じる。両手で首を抑えて、その場に膝をついた。指の隙間から、生温かいモノが流れ落ちる。
「アンタたちを殺すのは、そこの坊やだってこと!」
ブライアの声にフレッグが顔を上げると、口から鮮血を滴らせ虚ろな目をしたアーサーが、こちらを見下ろしていた。

Re: あなたに出会う物語 ( No.21 )
日時: 2017/07/17 23:18
名前: ももた

雨の降る広場。女の胸には大きな刀傷。彼女から流れ出る血は、雨が洗い流してくれていた。女の顔は、眠っているように穏やかだ。男は彼女の傍に膝をつき、そっとその亡骸を抱きしめる。
「本当……ひどい女だよ……君は……」
頬を伝う水滴は、雨なのか涙なのか、彼にそれは分からない。やがてそれは滴り落ち、彼女の髪にふりかかった。
「俺の気持ちに気づいてたんだろ!なのに……こんな終わり方……っ」
男は雨空に吠えた。何度も、何度も、愛しいその女の名を呼びながら……

***

「あ………うぁぁぁぁあああっ!!」
フレッグは叫び声を上げた。次から次へと溢れ出す血。痛み、恐怖、驚き、さまざまなものが入り混じり、混乱の渦に突き落とされる。
「なんで……アーサーが……?」
「これが私の魔法……私は、人を操ることができるの。この坊やをどう動かすかは、私の思うまま……」
フレッグがのたうちまわる横で、ブライアはアーサーに向かって何かを放り投げた。アーサーはそれを難なく受け止める。アーサーが振り上げたそれは、銀色に輝くナイフだった。
「じゃ、バイバイ、カエルの王子様」
アーサーは、それを躊躇なくナイフをフレッグに振り下ろした。
キンッ
金属のぶつかり合う音がする。大きな影が目の前に立ちはだかっていた。
「ハンス……」
「……」
まるで、別人のようだ。いつも笑顔を絶やさないハンスが、怒りと悲しみに満ちた表情を浮かべている。突然現れたハンスにおののいたのか、アーサーはフレッグたちとの間に距離をとる。
「大収穫!カエルの王子様に加えて、ヘンゼルとグレーテルもまとめて始末できるなんて……」
ハンスは、キッとブライアを睨みつけた。
「あぁ、でもアンタなら、この坊やも、迷わず殺してしまうかもね」
ブライアは残念そうに、それでいて愉快そうに言った。
「アーサー……も……?」
フレッグが呟く。フレッグの言葉に、ブライアはことさら驚いた表情をした。
「なんだ!ハンスから聞いていないの?」
「……黙れ、ブライア」
襲いかかってくるアーサーの刃を、ハンスはその剣で受ける。アーサーは、ブライアの方にハンスを行かせないつもりらしい。
「フレッグ、そこの男はね」
「やめろ!言うな!!」
ーー言えなかったんだよ。俺は……
制止も虚しく、ブライアは告げる。
「殺しちゃったの。前革命軍リーダー・ステラ……好きだった女をね」

Re: あなたに出会う物語 ( No.22 )
日時: 2017/07/25 21:57
名前: ももた

ステラは、顔立ちはおとなしそうな割に、やることは豪快な人だった。いつか、ギャングが革命軍を攻撃してきた時だって、ボコボコに打ちのめしてその上仲間に引き入れていた。守るべきものがある女は、強かった。
そんな彼女が、ある日しばらく行方知れずになった。ステラのことだ、戦車で脳天をぶち抜かれない限り死なないだろう。そんな風に考えていたら、ステラはひょっこり帰ってきた。ハンスがいつも稽古をつけている、あの広場に立っていた。ああ、やっぱり……
「おかえり、どうしたの?」
ハンスは、笑いながら問いかけた。すると、彼女は
「ハンス……」
愛用のロングソードを、ハンスたちに向けていた。
「何……?どうしたんだよ?」
「ハンス、お願い……」
躊躇うその表情に反して、彼女の体は否応なくハンスを切りつける。ステラは、絶望を帯びた表情で、ハンスに嘆願した。
「私を殺して……ローザをこの手で殺める前に……!」

***

「ハンス……」
何か言葉を……フレッグが声を搾り出そうとした時、黒い影が彼に覆いかぶさる。
「やい、コスプレ鬼女!怪我人は退却させて貰うで!」
一遍の罵倒を残し、フレッグの姿が消えた。愉悦に浸っていたブライアは、一瞬顔をしかめた。
「こざかしい盗人……構わないわ、アーサー!今はその男を殺すことに専念しなさい!」
魔女の号令とともに、アーサーがハンスに襲いかかる。アーサーのナイフを、ハンスは大振りな剣で受けた。ハンスがそのまま押し返そうとすると、体の軽いアーサーは、難なくハンスの切っ先から逃れ、次の体勢に移る。
「くっ!」
リーチはハンスが勝っているが、アーサーの小さな体躯と反射の速さで、ハンスは劣勢に置かれていた。
「あらあら、お若いリーダーさん。どうして早く殺さないの?あの女はすぐに楽にしてあげたのに……」
「黙れ!」
単にハンスの経験不足か、それともアーサーの無邪気な笑顔が記憶を支配するせいか、子供を相手に剣を振るったことがないハンスは、見る見る間に追いつめられる。
ウサギを追いつめたキツネのように、ブライアは顔を歪ませて笑った。

Re: あなたに出会う物語 ( No.23 )
日時: 2017/08/12 22:53
名前: ももた

「ふふ……あははは!」
ハンスとアーサーの攻防を眺めながら、ブライアは笑い声をあげた。
「思ってもみない逸材ね!これならきっと、スノウ様も殺せる!手柄は私のものだ、ハッグ!」
ブライアはアーサーに手をかざす。すると、アーサーの俊敏さが増し、ハンスは防戦を強いられる状態に追い込まれた。
「絶望しなよ、ヘンゼル。アンタじゃ、私を倒せないんだ」
「そうかもね……」
背後から、小鳥のさえずりのような細い声がした。ブライアが振り向こうとした瞬間……
「なっ……!!」
ブライアの胸は、銀色の剣に貫かれていた。豪奢なドレスを、鮮血が染めていく。ブライアはその剣に見覚えがあった。かつて自分が手駒にした女の愛刀だ。背後を睨みつけると、宿敵の姿が視界の淵に入った。
「あなたを倒すのは……私の仕事だから……!」
「キ……サマ……」
そのまま剣から手を離す。剣とともに広場へと吸い込まれていく魔女の身体。それを屋根から見下ろしていたローザは、息をついてその場に座り込んだ。今になって、鼓動が早まる。ふと、父の方へと目を向ける。そこには、意識を失っているアーサーを抱きかかえるハンスの姿があった。
「よかった……間に合って……」
「ローザ!どうして外に……」
ハンスは心配そうにローザの隣に駆け寄った。
「もう……繰り返してほしくなかった……ハンスが……また泣くから……」
ハンスに背中をさすられ、徐々に呼吸を整えていく。ローザは、苦しいながらも、満足そうな笑みを浮かべていた。

***

雨が地面を叩きつける音が鳴り止まない。その音は、ハンスの心の内を表しているかのようだった。腕の中にいる女性は、とうに冷たくなっている。
不意に雨音がやんだ。誰かが傘を差し出している。顔を上げると、そこに立っていたのはこの女の娘だった。
「泣かないで」
震える声でローザは言う。自分だって泣きたいはずなのに、ローザは傘を突き出したまま涙をこらえている。
その強さに、ハンスはどれだけ救われただろうか。ローザのそんな顔を見つめて、ハンスは心に誓った。
(ステラ……君の守りたかったものは、俺がずっと守っていくよ……)

Re: あなたに出会う物語 ( No.24 )
日時: 2017/08/14 07:06
名前: ももた

数日後
マルガレーテがシャワールームで身体を洗っていると、誰かが入ってきた。湯気でよく見えなかったが、ジャクソン出ないとかを確認すると警戒を解いた。
「すみません……まだ上がってないのに……」
「スノウ、一緒に入るか?」
スノウは恐縮そうにしながらコクリと頷き、マルガレーテの隣に来る。
「兄さんがすまなかったな。脳に変調はないか?」
「はい、大丈夫です!あと後すぐにメグさんが介抱して下さったから……それに、ハンスさんも、私のことを案じて気絶させたんですし……」
スノウは何やら口ごもった。偶然聞いてしまった、廃病院でのあの会話のことだろうか。
「どうした?」
「あの……メグさん、私って、白雪姫の宿命を負っているんですよね……」
お湯が熱いのか、スノウの頬が紅潮している。マルガレーテがシャンプーを流しながら話を聞いていると、スノウは問いかけた。
「私って……キスした人と結婚しなきゃいけないんでしょうか?」
一瞬、シャワーのお湯が鼻に入る。あまりの激痛に涙が出る。しばらく咳き込んだマルガレーテは、呼吸が落ち着いてから答える。
「ゴホッ……何もそこまで気にかけることはないんじゃないか?……フレッグに何か言われたのか?」
「そう言えば『付き合ってください』って……でも、どこに行くとか、何をするとか、何も聞いてないんです」
なるほど。この子を育てた先生とやらは、よほどスノウのことを大切に育てたらしい。おかげですっかり箱入り娘である。
「スノウ、それはつまり、恋人になってくれと言っているんだ」
「ふぇっ!?」
薄紅に染まった頬をさらに赤らめて、スノウはたじろぐ。ここまで純情だと、見守ってやりたい気持ちが芽生えてくる。しかし、あのフレッグをして、ここまで心を開かせたのはスノウぐらいだろう。
「スノウ……フレッグのこと信頼しているか?」
「え?……はい、いつも助けて下さって、頼りになる人だと……」
「スノウはフレッグのこと、困った時には助けてやりたいと思うか?」
「……はい」
マルガレーテは笑顔をほころばせた。きっとこの子なら、フレッグのことを支えていってくれる。
「スノウ、お前が良ければなんだが……」

***

「「スノウちゃんに告ったぁあ!?」」
「声がでけえ!!」
驚嘆するハンスとジャクソンを、怪我人用ベッドから半身を起こした状態でフレッグが怒鳴りつけた。
(あのtheコミュ障が……)
(自分から言ったやて……?)
詳しく話を聞こうと催促する2人に、フレッグは顔を赤らめながらその場を切り抜けようとする。
「で?スノウちゃんは何て?」
「何も返事は来てねぇよ」
「アホやな!ガンガン押さんかい!」
「普通の女子は、お前のアプローチにはビビるからな!?」
いつものような談笑を繰り広げていると、誰かが部屋のドアをノックした。ジャクソンがドアを開くと、アーサーが皿を抱えて立っていた。紙皿の上に、皮の剥かれたリンゴと、フォークが一本。
「これ、スノウが……」
「なんや!脈アリやん!」
「いや、何で紙皿……?」
とりあえす、フレッグはアーサーから皿を受け取る。ハンスとジャクソンがアーサーとじゃれ合っているのを横目に、切り剥かれたリンゴを1つずつ頬張る。いくつか食べると、紙皿に何か書かれていることに気がついた。リンゴをフォークでどかして、その文字を読む。
『こちらこそ、よろしくお願いします。スノウ・ヴァイス』
思わず顔がニヤける。ハンスやジャクソンにバレたら、またからかわれるだろうが、今はそんなことが気にならないくらい気持ちが満たされていた。
白雪姫のリンゴは、確かによく効いた。

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