複雑・ファジー小説

私の兄は悪と戦うヒーローです。
日時: 2017/05/24 00:12
名前: 鈴盛プリン(ろろ)

 私の兄は悪と戦うヒーローです。兄は私にそれを隠しているのかもしれませんが、バレバレです。バレています。
 できれば、お願いだから私をその戦いに巻き込まないでください。

 初めましての方は初めまして。お久しぶりの方はお久し振りです。この間長年かいていた能力少女が終わってしまったので、小説家になろう様で書いているやつをこっちに引っ張ってこようと思います。
 基本ギャグを目指して書いているので軽い気持ちで読んでください!

※注意※
この物語はグロシーンがよく出てきます。そういうのが苦手な方は注意してお読みください。
ちなみに一番最初のグロシーン到来は>>05です。

読んでも読まなくてもさして物語に支障がないプロローグ >>01

混沌篇  >>02 >>03 >>04 >>05 >>06

吸血鬼篇 >>07 >>08 >>09>>10 >>11 >>12>>13

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Re: 私の兄は悪と戦うヒーローです。 ( No.9 )
日時: 2017/04/17 22:01
名前: 鈴盛プリン(ろろ)

「ふぅ」
 私はそのあと近くの公園に行った。
 寒いからきーこきーことブランコを揺らして少し子供のように遊んでみたが、なんか空しくなって止めた。
 それからはベンチで身を丸くして時間をつぶしている。それにしても寒い。
「暇だな。うん。お金無いからコンビニでホットな紅茶を飲むこともできない。というか、あの割れた物の処理やってくれたんだろうな。あとでお礼を言わなくては」
 もう暇すぎてそんなとこを一人でぶつぶついっている始末だ。
 どうしよう。帰ろうか。帰っても家に入れるかどうか甚だ疑問だが、でもまあ、そろそろ帰ってみよう。

 いまの時刻は、腕時計を見ると九時四十六分。嫌な数字が続いてやがる。
 あ、まて。今日はなんか変な予感がしていたんだ。
 でも、それはあれだよね、この家に出されるという行為の事を示していたんだよね、そうだよね。
 あれ? でもおかしいな、変な悪寒がする。いや、これは寒いからであってそんな変な事が起こるっていう警告じゃないはず。
 そうだ。私はそう信じたい。
「よし、帰るか」
 なにかが起こる前に私は帰ろう。

 しかし、少し私の判断は遅かった。
「あ、いたいた。みーつけた」
 知らない男の人の声が聞こえてきた。
 私のことじゃないよな。うん。帰ろう。
「いや、君だよ。君! 君!!」
 君君? だれ? 知らない。よし、帰ろう。
 私は歩を進める。
「待てって、ジジョーヒーローの妹の弥生凛和!!」
 …………。あ、巻き込まれた。これは完全に兄に巻き込まれた。
 このやろう。どうしてくれるんだ私の人生。これは完全に死亡フラグというものが立った。よね。立ってしまったよね。

「と思いながら歩を早めるのやめろよ! 待たないと……」
「!?」
 なにか物凄い殺気を感じた私は声がしていた方を振り返った、振り返ってしまった。
 そこには鉄パイプを持った私と同じぐらいの背丈でとても綺麗な黒髪が太ももぐらいまで伸びた少女あくまが立っていた。
「殺すぞ」
 その男の声とともに、女の子は私を鉄パイプで躊躇なく殴ってくる。
 私は打たれ所が悪く、一発で気絶してしまった。

Re: 私の兄は悪と戦うヒーローです。 ( No.10 )
日時: 2017/04/21 07:20
名前: 鈴盛プリン(ろろ)

 頭が痛い。なんだか金槌でぶたれているような感覚がするほど痛い。

「…………」

 私の体の下が硬い、冷たい。コンクリートか石の上にでも寝ているのだろうか? あ、違うや、寝かされているのだろうか? どうなのだろうか?

 そういえば、殴られて気を失い、しかしそれでも気を取り戻したとき、漫画やアニメ、ドラマなどの大半はその殴られた時の記憶は無いという現象が起きる。が、しかし、しかし!! 
 ……私、全部覚えているってどういうことですか。もう絶対悲劇のヒロインとかそんな感じの器ではないのだな。でも本当鮮明に思い出せすぎてもう笑えるほどなんですが、爆笑してもいいですか。

 というか、最後私が女の子に金属バットで殴られる前に、あの黒髪の男の人殺すぞとか言ってたけれど、私死んでないんですが、普通に生きているんですが、どういうことなのかなこれ。
 というか、ここ寒い。え? 今、梅雨だよね。真冬並みとは言わないけれど、春に入ったか入ってないかよくわからない時期並みに寒いよ。なんなんだよここ。
 まあ、そんなこと思ったって、なにもならないか。

 えっと、足と後頭部の痛み以外、痛いと感じるところは無くて、手、足、胴体、どれも縛られている圧迫させられてるという感覚どちらもなし……か。

「…………」

 一応、目を開けてみたほうがいいのかな。たぶん、さっきいた公園ではないところにいるよね。

 さっき私がいた公園は全面が芝生に覆われており、コンクリートの部分など一箇所もない。
 あるのは黒い粒がたくさん集まっている砂場、長さ五メートルにも及ぶ巨大なジャングルジムと滑り台、そしてさっき私が乗っていたブランコ。こんなものだ。
 コンクリートは道路に行かなければない。殴られた衝動で私が道路に飛ばされたという線も存在するが、公園沿いを通っている道路のコンクリートはごつごつとしている。
 だけれど、今私が寝かされているところはどちらかというと手が滑らかに滑らせることができるほどすべすべしているので、その線は無いということになる。
 ということはどこかに連れられてしまったのだろう。あの二人によって。お兄ちゃんの敵によって。

 完全に巻き込まれちゃったのか、私は。
 って、あれ……まって。ここ、異世界というところじゃないよね。お兄ちゃん達って確か、魔界っていうところの奴らと戦っていたはず。ん? 嫌だよ? 地球から出さないでよ。

 私は重たい瞼をほんの少しだけ開けた。
 ほんの少しだけ開けた視界に映ったのは、だだっ広くてたぶん野球場が一個は軽々入るであろう空間だった。
 嘘だろ。え、私をさらったの結構ラスボス的な存在なのかな。え、まって、怖い怖い。
 私は目を閉じる。そして、寝た。


 たぶん二時間ぐらい寝て、私は起きた。そしてついついうっかりして起きたと同時に目をパッチリ開けてしまった。
「あ、起きた。キリト様、ヒーローの妹起きましたよ」
 そして、速攻起きたのが女の子に見つかってしまった。
 私は覚えている、私を金属バッドで殴った女の子だ。女の子と私の距離はたぶん五メートルもないだろう。
 まさかの事態。絶体絶命。どうしよう。怖い。

 お兄ちゃんがヒーローだからって私がお兄ちゃんの敵にかなうような力を持っているわけではない。
 お兄ちゃんは敵と戦うとき一回見ただけだが、幻術というか、火に包まれた竜をどっかから呼び出して戦っていたりした。が、私にはそんな力はない。私はただの一般人だ。人間だ。

「お、本当だ。おはよう、弥生凛和ちゃん」

 女の子に私が起きたのを教えてもらった男の人、名はキリトというらしい人が私に向かって微笑む。
 と、同時に私の体中に悪寒が走った。それに何かが這いずり回ったような感覚に襲われた。気持ち悪い。

「…………」

 私は声を出さずにただただキリトという人を寝ころんだ体制のまま、見る。

 ていうかこの人肌しっろ! 透き通るように白いんだけど。怖いぐらいだよ。
 本当に男は日に一回も当たったことがないのではないかと思うぐらい白かった。
 それに彼の髪は、たぶんお兄ちゃんよりも長く、襟足まである黒髪で、片目が前髪で隠れるほどの長さがあった。
 そして真っ赤のきりっとした目、不敵な笑みをこぼす口、どれもが白い肌に相まって、とても綺麗に見えた。思えてしまった。

 男の人の服装は、とにかく黒かった。黒のロングコート、黒のズボン、黒のミリタリーブーツ、因みに黒のロングコートの下も黒の服が見える。とにかく黒、黒、黒、黒。本当に黒ばっかりだ。黒い塊だ。
 というか、この人の八重歯長くない? とがりすぎじゃない? ん? え? いや、いや、そんなわけがないだろう。

 ──吸血鬼なわけないだろう?
 ──吸血鬼なんてこの世の中にいるはずない。

 「ああ、そうだそうだ」

 表面上は無表情な私を見て、少しつまんなく思ったのだろう。男の人が私に話題を振ってくる。

「まず自己紹介をしなくちゃな」

 一歩ずつ、私にゆっくりと近づきながら。

「俺の名前は、キリトっていうんだ」

 だだっ広い空間に彼の足音が不吉に響く。

「で、種族は」

 私は寝ころんだ体制から、すぐ動ける体制に変える。コツン、コツンと響いていた足音は、私の前で止まった。と、同時に男の顔が私の耳元に来た。

「吸血鬼っていうんだ」

「!!」

 その言葉を言われた瞬間、私は全力で後ろに飛び跳ねた。私は一応運動神経には自信がある。十メートルほど離れられた。

「あれまあ」

 吸血鬼はクスクスと嗤う。本当に面白そうだ。

「そんなに警戒しないでよ」

「私をそんな舐めるような感じで見るやつを、食料として見るやつを警戒しないほうがおかしい」

 私は私の周りの物すべてを警戒しながらそう反論する。
 さっきだって悪寒がしたのは私を、あの吸血鬼が私を、本当においしそうな食べ物のように見ていたからだ。
 ああ、踊り食いさせる魚とかはこんな思いなのかな。もう踊り食いを特集する食べ物の番組を見れなくなっちゃうよ。

「あらまあ、ばれちゃったか」

 彼は本当に楽しそうだった。

「おい、キイ」

「はい」

 女の子が抑揚のない声で返事をする。
 この子の名前はキイというらしい。あれ、なんか聞いたことがある名前だな。誰だっけ?

「お前は下がっていろ」

 嗤う吸血鬼。

「了解しました」

 おとなしく下がっていく悪魔。
 女の子が下がったのを確認すると私をまた舐めるように見てきた。

「…………」

 来る。
 私の首筋に冷や汗が走る。
 そして吸血鬼は歌うように、私に向かってこう言ってきた。

「さって、久々の惨殺タイムだ。せいぜい楽しませてくれよ、ジショーヒーローの妹の弥生凛和ちゃん」

 絶対嫌だ。

Re: 私の兄は悪と戦うヒーローです。 ( No.11 )
日時: 2017/04/29 20:41
名前: 鈴盛プリン(ろろ)

「嫌だ。私はあなたを楽しませない。本当に楽しいと思うまでに私は逃げる」

 私は唾を吐くようにそう反論した。

 私が今いる部屋は、視覚で確認できる出口は一つしかない。しかもそのたった一つの出口は、さっき歌うように楽しませてと言っていた吸血鬼の数十メートル後ろに存在した。
 しかも、さっき吸血鬼に下がっていろと言われたキイという女の子がその出口の隣の壁に寄りかかっている状態なのだ。私はその状況を見て尻込みしてしまう。
 どうやら躊躇なく金属バットで殴られたのは、結構私にとっていたかったらしく、トラウマが刻まれてしまったらしく、あの女の子は私の中で無意識に危険人物認定されているらしい。そんなわけで、あの子はなんか関わりたくないようなできる限り戦いたくないという気持ちが強い。いや、吸血鬼もそうなんだが。
 なんというか、一言でいうと、怖い。ただただ私はあの二人のことが怖かった。

 私はそんな心境を吸血鬼たちに悟られないように睨む。自分はお前らにはやられないぞ。と言いっているように。

「うーん、つまんないなあ。もっと! 助けを乞うように弱々しく目をうるわせるようにしながら俺を見てよ。そんなに強がらないでよ。楽しくない」 

「うるさい。さっきも言ったけれど、私は、あなたを楽しませる気は一ミリもない」

 私は睨む目を強める。

「そんなに俺を睨んでいたらかわいい顔に皺ができるよ」

「こんなちょっとの時間だけで皺ができたら逆にすごいよ」

「ねえ」

 吸血鬼は私に何か思ったようでなんとも言えない表情で私を見る。

「なに」

 私は睨みながら、警戒しながら言葉を促す。そして彼は、やるせなく私に言った。

「もうちょっと怯えて。なんかこっちが悲しくなってきたから」

「…………」

 ごめん、なんて言っていいのかわからないや。
 私はその吸血鬼の言葉にただただ呆気にとられた。
 いやだって、怯えたら負けだと思うじゃん! 思うつぼだと思うじゃん! だったら笑うか、睨むか、相手の嫌がることをするにきまってるじゃん!
 え? なのに、え? 今吸血鬼なんて言った? 『もうちょっと怯えて。こっちが悲しくなってきたから』は? え? それを私に言ってきて何になるの? え? 

 というか、私はどうすればいいのだろうか。
 これは相手が精神的に弱まってきた、ということで受け取っていいのだろうか。わからない。いろんな意味で私は困ってしまった。真顔で。

 とりあえず、こんなことを考えてもなにも私にとっていいことは起こらないと思ったので、私はここから脱出することを考え始めることにした。
 何もない、あるとしたら巨大な何本もある柱のみの部屋は出入り口が視覚的に認識できるものが一つだけ。たった一つ。
 その隣には、私を金属バットで躊躇なく殴った女の子が私たちの様子を傍観者のように窺っている。さっきの様子を見てでの印象ではたぶん、あのキイという子は吸血鬼の言うことなら何でも聞きそうだ。
 最悪の場合、あそこに行くことができても、吸血鬼に命令されれば一瞬であの女の子によって殺される。

 どうしよう。今私がいるところは出口の扉から約百メートルある。私の五十メートル走のタイムは六秒四八だった。だとするとあそこまで約十三秒。難しいかもしれない。
 でも、やってみなくては始まらない。

「あ!!」

 私はいきなり大声を出す。

「!? なんだ!?」

 吸血鬼は突然の私の大声で驚く。

「コンナトコロニ、ユーフォーガー!!」

 自分で言っといてあまりにもばかばかしかったので、片言になってしまった。しかし、奇跡が起きた。

「!? なんだと!? UFO!? どこだ! どこにある!」

 え、マジかよ。ちょろいよ。この吸血鬼意外と純粋さんなのか!? というか、人外でもUFOを知っているところに驚きだよ。
 まあ、そんなことを考えている暇なんてない。私は吸血鬼の横を風の如くすり抜け、出口に向かって走る。全速力で、走った。

 それと同時に壁に寄りかかって傍観に浸っていたキイが吸血鬼にツッコミを入れる。

「!? キリト様、馬鹿なんですか、なんなのですか!? この部屋、窓なんてありませんが」

「え! あ、やっちまった」

 それで吸血鬼が騙されたことに気づく。この吸血鬼、馬鹿だ。
 私は出口まであと約十メートルのところまで来ていた。あと、少し。あと、少し。
 そのあと、何かの破裂音が私の耳に届いた。


 この作戦は、結果を言うと失敗に終わった。
 なぜか、最初に言っておくが、キイは、主である吸血鬼からなんの命令もなかったため、ツッコミを入れただけでそのあとは傍観に戻っていった。
 ならば、誰にこのままいけば成功だったものを妨害されたか。

 そんなのわかりきっていることだ。そう、吸血鬼。
 あと五メートル、たったそれだけの距離だったのに、その距離になっていきなり目の前に吸血鬼の姿が現れたのだ。そして私は、蹴られた。腰のあたりを。
 たぶん吸血鬼は私に向かって廻し蹴りを繰り出してきたのだろう。そのあとは、まあ、普通に私は横に吹っ飛んだ。たぶん数百メートルぐらい。で、壁に体がめり込んだ。
 それと同時に体の中からとても嫌な音が聞こえたのは言うまでもない。

「っぐ……はっ……」

 吐血こそしなかったものの、私は肺の中の空気を全部吐き出す。
 ガラガラという音が耳元から聞こえた。そのあとにゆっくりと私は一部の壁とともに床に落ちていく。

 私が床に落ちて数秒した後、頭上で嘲るような声が聞こえる。

「ああ、ごめん、勢いよく蹴りすぎたわー。大丈夫?」

 体が痛い。これは骨が何個か逝ったな。私は息を整える。

「…………。さっきの──」

「おお、喋れるんだ。凄いね。ん? どうしたの」

 吸血鬼が私の言葉に反応する。私の質問を促してきた。

「さっきの……ぐっっはっ。あれ、瞬間移動ってやつ?」

 吸血鬼が『にたあ』と、変な言葉がつきそうな、なんとも言えない笑みを私に向けてくる。実に気分が悪い。

「そうだぞ。あれはな、世にいう瞬間移動ってやつだ。よく分かったな」

 その言葉を嘲るように紡ぐ吸血鬼の声は、認めたくないが、聞いていてとても落ち着くような声だった。
 私は仰向けになっている体を起き上がらせようと、腕に力を入れる。それと同時に体からミシミシと音がした。ああ、これ絶対安静とか言われる類の怪我してるわ。めんどくさい。

「だって、いきなり目の前に現れたんだから、それしかないと思うじゃん」

 私はやっとのことで、上半身を上げた。が、

「──そうか、なら、物分かりの良い凛和ちゃんにサービスだよ」

 手で、首元を掴まれ、勢いよく床にたたきつけられた。

「ぐがっ」

 痛すぎて何が体の中で起こっているのかわからない。だが、一つだけわかること。
 ──流血がない。
 自分でもわかんない。私の身体ってこんなに丈夫なものだったっけ?
 だが、たぶん、内出血は死ぬほどある。だけれど、赤い液体が私の体から一滴も出てない。垂れていないのだ。

「まだ、死んでないよね?」

 次は勢いよく持ち上げられる。

「うん、息ある、死んでない。はは、辛そうな顔! いいね。かわいいと思うよ」

 ──それが一番人間らしい。

 そう吸血鬼が嬉しさを隠そうともしないで、狂気性を全面に押し出しながらに言った。
 この吸血鬼は狂っていると思う。心の底からそう思った。

 あ、そういえば、私がこんな状況に陥っていることを兄たちは知っているのだろうか? 知らないかもしれないな。だとしたら、私の助かる確率って一パーセント未満じゃないのかな?
 私の体重は四十キロ。それを軽々片手だけで持ち上げているのだから、腕力は相当だと思う。さすが吸血鬼。アニメとかで夜の王とかラスボス的な感じで出てくるだけある。

 でも、もし知っていても、私が家から出てきた理由があれだからな。お兄ちゃんが怒り心頭で助けに来てくれないかもしれない。
 ああ、その場合は死んでからお兄ちゃんを呪い殺しに行こう。
 でも、もし、知ってすぐに迎えに来てくれるのなら、いま、向かってきているのなら、私は、それまでの時間稼ぎをしよう。
 それに掛けてみよう。何秒でも、何分でもいい、時間を稼ごう。

 そういえば、煉璃さんから貰ったナイフが、銀のナイフが、ん? 銀のナイフ? 確か、アニメとかって銀のナイフは吸血鬼にとっては致命傷を与えられる道具とかじゃなかったっけ? もし、それが本当ならば、いけるかもしれない。うん。

 私は、この嬉しさを内側にしまっておくことができなかった。

「……何を笑っているんだい?」

 それは、吸血鬼には予想していなかったことだったのだろう、心の底から驚いたような顔と声をしている。

 私は、吸血鬼など相手にせず、ここにいないあの、無駄に熱い人に向けて、微笑みながら言った。

「お兄ちゃん、来なかったらぶっ飛ばす」

Re: 私の兄は悪と戦うヒーローです。 ( No.12 )
日時: 2017/05/11 20:26
名前: 鈴盛プリン(ろろ)

「お兄ちゃんか、まだ、諦めないんだな」
 吸血鬼は少し馬鹿にするように、呆れるように私を見てきた。私はそれに反抗するように、強がって睨む。睨むしか対抗の仕方が分からないから。

「はっ、笑うなら笑えばいい。罵るのなら罵ればいい。しかし私は諦めない」

「兄貴を信じる……てか。そうか、じゃあ、俺は楽しむことにするよ。そしていいことを教えてあげよう。俺は人間が悲痛な顔を浮かべているのを見るのが大好きなんだ」

「うん、なんとなく察しがついていたけれどやっぱりそれは狂っていると思うよ。そんなに楽しそうに言っているのも狂ってるし、言っている内容も狂っている。救いようがないね」

 私は失笑する。そうしたら吸血鬼が嬉しそうにした。

「おお、お前真顔や睨みよりもそっちのほうがなんかいいな。そそるな」

「!? お前まさかのM!?」

 え、怖い。なんかこっちのほうが怖い。狂気性を感じる。Mって私の中で最強説あるからね。

 私はゴミを見るような目で相手を見る。お兄ちゃんの時よりもこっちのほうが引いた。

「は? ふざけるな、俺はMじゃない。それと俺を汚いものを見るような目で見るな」

 Mではないのか。なるほど。ということは、たまたまそんな発言になってしまったということか。紛らわしいな。うん。
 そんなことを思っていると、あるところから吸血鬼を中傷する声が飛んできた。

「キリト様、さっきの発言は普通にMに間違われてもしょうがないですよ。正直私も引きました」

「キイ、お前は黙ってろ。お前の言葉は正直で容赦がないから結構傷つく」

 吸血鬼が涙目になる。私の言葉よりも身内の言葉に弱いということか。なんだか面白い。


 とりあえず私は、吸血鬼から少しだけでも離れられる方法を探す。
 吸血鬼は今、私の真上にいる。私の顔の前に奴の顔があるといった状況だ。吸血鬼だから血を吸うのだろうか? 私の血を? そんなの飲んで何になる。とりあえず一回離れよう。
 …………。時間稼ぎだけでいいんだよね。“人間の常識を外さない”やり方で、時間を稼ぐ。お兄ちゃん達が来ることを信じて。
 私は吸血鬼を観察する。今の吸血鬼はキイという少女の中傷のおかげでまだ涙目で少しイライラしているような雰囲気を醸し出している。今なら、いけるか。少し距離を稼げればいい。
 それだけでも時間は稼げると思うんだ。


「…………」

 今か。吸血鬼はさっきの味方の中傷で少し気が散っている。たぶん、今仕掛けないと私は距離を稼ぐ機会を失う。
 私は近くにあった吸血鬼の服、詳しくいうと黒のコートの裾の部分を右手で勢いよく掴み、それを勢いに任せて強く引っ張った。

「うおっ」

 吸血鬼はそういって姿勢を崩してくれる。なんか少し嬉しかった。
 歓喜して時間を使っている暇はない。私は素早く隠し持っていた煉璃さんから貰った銀のナイフを空いている方の左手で取り出し、ちょうど近くに来た吸血鬼の左肩あたりに刺す。

「ぐっ」

 吸血鬼は一瞬苦しそうな顔をした。どうやら痛いということはわかるらしい。そういうものは人間と同じなのだろうか。

 私は刺したナイフを抜き、吸血鬼の落ちてくる体を避け、立ち上がる反動を利用して数十メートル距離をとった。自分の身体を見るとナイフを抜いた瞬間に血が噴き出してきていたが、幸いにも赤い模様は私の身体には現れていなかった。
 私はナイフを振るい、それに付いた血を落す。

 吸血鬼は倒れはしなかったものの、膝を地に落としている。私がナイフを刺した肩からは血が滝のようにではなかったが、大河のようには流れていた。
 どうやら現実リアルの世界でも銀のナイフは吸血鬼には痛いものらしい。普通のナイフだったらどうなったのだろうか、という考えが脳裏に浮かんだが、それは今は関係ないものなので脳の隅っこに放り投げる。

「はは、凄いなお前。そんなものを隠し持っていたのか。誇っていいぞ。俺にさらわれて俺に傷を負わせたのお前が初めてだ」

 吸血鬼は私を睨む。私は今、吸血鬼を見てはいけない気がしたので、少し目を伏せている。

「そうなんだ。でもなんか、あなたに言われてもうれしくはないね」

「あらあら、謙虚な子だねえ。まあ、君のお兄ちゃんにはいつも傷を負わされているんだけど。ていうか、凛和ちゃん何で刺したのこれ。全然治らないんだけど。あ、よく見たら銀のナイフ持ってるじゃん。このやろ、俺の最大の弱点」

「私のお兄ちゃんは強いからね。というか、え? 最大の弱点は日光じゃないの?」

 私は咄嗟にそう突っ込んでしまった。
 銀のナイフよりも、日光の下に行った方が一瞬で灰にできるイメージがあったからだ。これもただ、イメージに過ぎないし、神話やアニメなどの表現に過ぎないのだが。

「!? なぜ知ってる!?」

 だけれど吸血鬼がどきりとしたようなとても焦ってきた声を出してきたので、

「マジかよ」

 私は呆れてしまった。どうやら私のいる現実の世界の吸血鬼は漫画やアニメでよく知られてる設定と同じのようだ。マジかよ、腕力とかそういうの除いて考えると一般人でも倒せるんじゃない? でもまあ、それは腕力を抜いた場合だ。現実はそんなに甘くないし、そう簡単に倒せない。力が圧倒的に違う。一瞬でこちら側が殺られるだろう。


 でも、狙い通り吸血鬼から距離を取ることができた。しかし、油断は禁物。さっきあいつは瞬間移動という、非現実的な技を使いやがってきた。ということは、距離を取ったってそれは一瞬の安息にしかならないということ。

 面倒くさい。早く終わらせたい。そういうことが脳裏によぎった瞬間だった。

「うーん。なあんか、お前を痛めつけるの飽きたわ」

 そう、吸血鬼が立ち上がりながら笑ってきた。私は咄嗟の判断でナイフを元々隠してあったところに戻す。私が今はいている短パンには腰の後ろあたりなぜかペンなどが入れられるようにポケットがついている。そこに入れてあったのだ、あのナイフは。
 私はナイフを入れ終わった後に首を傾げる。

「どういうこと」

「つまりこういうことだ」

 その言葉が私の耳に付くとともに、吸血鬼の顔が私の首筋に来ていた。そしれ逃げられないように右腕をつかまれ、腰にも手をまわされてしまっていた。

「な!?」

 私は逃げようとするが、力が強すぎて肩を振ることさえ許されなかった。

「俺はな、腹が減っているんだ」

 私の首筋に吸血鬼が舌をあててくる。キモイ。え、誰か助けて。

「お兄ちゃん、助けて……」

 私の口からこぼれたのはそれだった。

「あれまあ、まだ信じてるんだ。助けを望んでいるんだ。お兄ちゃんがくるって。お兄ちゃんが自分を助けてくれるって。でももう、ゲームオーバーだよ」

 そして吸血鬼が私の首に向かって歯を突き立てようとする。

「うええ……キモイ」

「!? キモッ!? 怖がるとかじゃなくてそっち!?」

 なんか過剰に反応してきた。なんなんだよこの吸血鬼。喜怒哀楽があまりよくわからないよ。

「キモイよ。本当にキモイ。性的に無理」

「うわあ。辛い。性的に無理って初めていわれた。あのロリコンジショ―ヒーロー女子にもまだそんなこと言われてないのに」

 ロリコンジショ―ヒーロー女子って、煉璃さんのことか?  いや、お兄ちゃんと面識があるのなら煉璃さんと面識合ってもいいんだけど、性癖までバレてるってなにしたんだよ煉璃さん。

「…………」

「あれ? なんか凛和ちゃん呆れたような顔してる。ああ、あの煉璃って子と知り合いなのか。で、その子の性癖を俺が知ってるから、何やらかしたんだよって思ってるのか」

 ギクッと私は反応してしまう。いや、なんでわかるんだよ。

「あ、図星? やったあ。それじゃあ、いただきます」

 吸血鬼は、とってもうれしそうな顔をして、そのまま自分の牙を私の首に突き立てた。

Re: 私の兄は悪と戦うヒーローです。 ( No.13 )
日時: 2017/05/24 00:11
名前: 鈴盛りプリン(ろろ)

「!? は!? 痛っ!」

 痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い! すっごく痛い! というか、熱い。
なんなのこれは、本当に辛い。
 これは、嫌だ。私は空いている方の手で何とかナイフを取り出す。そして、吸血鬼の左腕の方に近い部分を刺した。

「な!?」

 牙と私を拘束していた手が一瞬離れる。その瞬間を私は見逃すというへまをしなかった。
素早く廻し蹴りをお見舞いして距離を取る。それと同時に少し目眩がした。どうやら少し貧血を起こしているらしい。

「はあ、はあ……」

 私は息を整える。首を少しだけ触ると、手が赤くなった。ベトベトというか、ぬちゃあという気持ち悪い感覚が手の中に広がる。

「あれ、逃げられちゃった。というか、ナイフ刺さったままだよ、俺の腕に。ということは余裕はもうなくなっているということだね。あともう少しだ」

 吸血鬼は自分で私がさしたナイフを抜く。そして、自分の服の下に仕舞った。

 何をするつもりだろうか?
 というか、私は武器を奪われてしまったということになる。これは不利になってしまった。これからどうやって時間を稼ごうか。

「というか」

 吸血鬼が口を開く。私は眉をひそめた。

「何?」

「十一年前のこと、君は覚えているんだね」

 十一年前? それは、どういうことだろうか。十一年前など、一番忘れていい事が詰まっている時なのだが。

「どういうこと?」

「しらばっくれないでよ。君の両親が殺されたことだよ? 覚えているんだよな、お前は。あの、えーと、そう、ひどく似合った長いピンク色の髪をした人が君の両親を殺したんだよね」

「…………」

 吸血鬼は自信満々にそう言った。少し偉そうに、そう言ったのだった。

 なぜ、知っている? いや、当てずっぽうかもしれない。はったりなのかもしれない。
 しかし、私は──初めてこの吸血鬼に対して本当の意味で恐怖心を感じてしまった。

 それと同時に、吸血鬼に主導権を握られてしまったことは言うまでもないこと。彼はとても楽しそうに笑っている。

「黙らないでよ。というか、凄い目で俺を見るね。鬼を見る目だ」

 鬼を見る目? 間違ってはいないかもしれない。たぶん私は今、言葉に表せないほどひどい顔をしているだろう。私は声を低くする。

「なぜ、知っている」

「おお、怖い」

 彼はわざとらしく身震いをする。これがお兄ちゃんだったのならば私はすぐさま飛び蹴りと廻し蹴りをくらわしていただろう。それぐらい、ムカつくやり方だった。

「うーん。いいよ、教えてあげよう。俺はね、ちょっと吸血鬼でも特別な種族でなんだよ。人間でも、化け物でもなんでもいい。ただ、血を吸うだけで、その血を吸った者の記憶が全部見れるんだよ。どう? 凄い?」

 ちょんちょんという効果音がつきそうな歩の進め方をして、私に近づいてくる。しかし、私は後ろに下がろうとしなかった。吸血鬼に対する好奇心というものが生まれてしまった為だ。
 それに感づかせないために私は鼻で笑う。これが今の精いっぱいの対抗だった。

「記憶が? そんな馬鹿な」

「本当だよ。あ、そういえば昨日チーズケーキ作ったの? 凄い美味しそうだったけど。あと趣味はネットと、菓子作りか。インドア派なんだね。もうちょっと外でな? ほら、ガキらしく鬼ごっことか」

「こんな歳で鬼ごっこなんてする機会なんてそうそう無いわ! 小学生とかじゃないんだよ!! 私は!」

 鬼ごっこなんて今は変なテンションにならないとやらない。中学の頃はよくやってたけど。

 というか、この吸血鬼、本当苦手な部類なんだけど。生理的になんか受け付けない部類にいる気がする。

「でも、もしもあんたに私の記憶が全部見れているのなら、手加減はいらない、ということでいい?」

「おお、強気だね。でも、君は少し不思議なんだよね」

「なにが?」

「見れない部分がある。でも、それでも凛和ちゃんの弱みはわかった。十一年前のことが一番の君の弱み。一番根強く記憶の中に存在していたから。そうだよね」

 見れない部分か。どこが。…………わからない。でも、あれはやめておくか。
 そして、十一年前、

「一番根強く存在してるとか。はは、情けない」

 私は溜息交じりに無意識にそう呟いてしまった。

「というか君はさ」

「ん?」

「なんでこんなに記憶が存在してるの?」

 吸血鬼が本当に不思議そう首を少し傾げる。
 どういうことだろう? 記憶なんて沢山存在して当たり前だろう。記憶がなければ人間は生きていけない。
 私は首を傾げる。

「それはどういうこと?」

「だから、脳って自分にとってあまり有益な情報ではないもの、関係ないものは少しずつ排除していくんだよ。なのに君はそういうことはない」

 吸血鬼が、とんとん、と自分の頭を指で触る。

「だから?」

「完全記憶能力って知ってる? ほら、人間ではサヴァン症候群? を患わっている人とかによくあらわれるのが多いってい言われているやつ。君にはそんなもんは無いと思うけど、記憶が忘れられないってことは無い?」

「…………」

 私は一瞬、精神科というか、セラピーとかにいる感覚になった。

 というか、心当たりがありすぎて辛い。どうしようか。

「それがどうした」

 私は虚勢を張る。こいつには弱い部分を見せたくないと本能が告げていたからだ。

「いや、別に。ただ」

「なに?」

「君のことが気に入った」

 そう言って私のほうに急に吸血鬼が駆けてくる。
 まあ、まだ瞬間移動を使われないだけましだけれど。

「あっそう」

 しかし、やはり早い。そして、私はそれを避ける。いや、避けようとした。

「!? 痛った」

 動けないぐらいに足に痛みが走り、何事かと思った。一瞬だけ、私は自分の足を見る。すると、足は血まみれだった。

「ああ、さっきの傷が開いたのか。なるほど」

 私は口で言って無理やり自分を納得させる。
 にしてもどうしよう。あと二秒で吸血鬼が来る。足は鉛のようになって動かない。でも、人間の常識を……人間? 人間の常識って? 常識って何? 鎖? どういうこと?

「あああああああああああああああああああ! もう面倒くさい!」

「!?」

 突然の私の大声に吸血鬼が驚く。そのお陰で少しスピードが遅くなった。しかし、そんなものあまり関係なんてない。速いものは速いのだ。

 吸血鬼は不死身。そんなの知ってる、私は多少傷を負っても気にしない。どうせいつかは治るんだから。
 ──ならば、もういい。人間の常識を外してもいい。時間を稼ぐんだ。

「一回死ね!」

 私はあるものが私の手の内に出てくるように願う。そして、私はその出てきたあるものをしっかりと掴み、吸血鬼の首を掻き切った。

 吸血鬼の首からは鮮やかな鮮血が流れていく。私はその血を何とか足の痛みを耐えながら避け、私たちの様子を見ているキイにも、吸血鬼にも背を向けないようにしながら距離を取った。

 私がしたことは簡単だ。私には昔から超能力というものがあるらしく、想像したものが、出るように願ったものが願った空間に出るという何とも素晴らしい能力を持っている。
 まあ、それは私が両手で持てるサイズのものしか出せないのだが。ほかにもあと一個、違う系統の違う異能を持っているのだけれど、それはまた今度ということで。今はそれは必要ない。
 にしても私の想像した物が願った空間に出るというものは、武器を出すにはちょうどいいものだ。因みに今はちょっとした対吸血鬼用の小刀を出した。そしてそれで迷いなしに吸血鬼の首を掻き切ったのだ。
 今思うと何怖いことを迷いなくやっちゃってるのという話だけれど、その時必死だったんだろう。

「っち。足が痛いな。立つものやっとだよ。どうしてくれんだよ」

 私は悪態をつく。もちろん周りは警戒している。
 というかお兄ちゃんまだ来ないのかな。早く来てほしい。そろそろ出血多量で倒れそうだ。手も青いし、これは結構やばいと思う。

 数秒すると、吸血鬼は首もちゃんと胴体にくっついて、再生して、起き上がった。

「ははは、はははは、ははははははははは、あはははははははははははははははははははははははは!!」

「…………」

 どうしよう。首をはねられて、頭のおかしい吸血鬼がもっと頭のおかしいものになってしまった。

 私は無言で吸血鬼を見る。

「おお、おお、おお、おお! さっきのはなんだよ。というか、そんな武器、君の記憶見たとき一回も出てこなかったけれど、見なかったけれど、どうしたのかな?」

 どうやらお怒りのようだ。血管が首から浮き出てるのがわかる。
 というか、これ何回かやったことあるんだけど。記憶にしっかりと刻まれてるんだけど。
 ああ、なるほど。これが見えなかった記憶か。

「ん? これ? 私のとっておきの武器だよ。こうやって」

 私はさっき出した小刀を掌に持てる位置に出るように願う。

「おお、出た。出すんだよ」

 私は空間から出たそれを強くつかむ。
 因みにさっき使った小刀は左手に持っており、今出した小刀は右手に持っているという状態だ。

「異能、というやつか。は、そんなものを出す記憶は見なかったが。ああ、そうか、俺が見れなかったのはその類のものだったということか。ふん、面白い」

 ははは、とまたおかしくなったように吸血鬼は笑う。
 私は平然を装っているが、結構内面では慌てているので、それを見ることしかできない。
 というか、血を失いすぎて頭が働かなかった。だって、たぶん頭が働いていたら異能のことなんてこんな奴にばらさなかった。

 少し高らかに笑った後、いきなり吸血鬼は瞬間移動を使って私の腕をつかみ、この空間を支えられていると考えられる柱のひとつに向かって投げた。
 私はもう反抗する気力が残っていなかった。さっきあんな偉そうなことをことをさんざん思っていながら情けないことに吸血鬼のされるがままになってしまった。

「あれ? 反抗なしか。ああ、君がいたところ血がたくさんたまってるね。もしかして体のどっかけがしてる? あ、してるね。足が。なんか赤い液体が垂れてるね。そして少し黒いスニーカーも赤くなってる。うーん、俺の食料がなくなっていくのはいただけないな。よし」

 私のところに来た吸血鬼は私の腕をつかむ。

「君へのお仕置きはこうだ。死ぬまで体中の血を絞り出してやる」

 その言葉を聞いた後、私は完全に目を閉じた。

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