複雑・ファジー小説

ハートのJは挫けない
日時: 2018/05/20 09:34
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

 能力バトル流行れ!(大声)

 新創作始めました波坂といいます。閲覧ありがとうございます。今回は能力バトル系を書いていきます。色々と至らない部分もあろうかと思いますがそこはどうぞ生暖かい目線で見守って頂けたらなと。

 目次

0.ブレイクハート【>>1-4】 >>1 >>2 >>3 >>4
1.スティールハート【>>5-7 >>10-15】 >>5 >>6 >>7 >>10 >>11 >>12 >>13 >>14 >>15
2.バインドハート【>>16-24】 >>16 >>17 >>18 >>19 >>20 >>21 >>22 >>23 >>24
3.トリックハート【>>25-28 >>31-】 >>25 >>26 >>27 >>28 >>31

Twitter創作アカウント
→@namisaka_sousak

 略称はハジケナイです。

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Re: ハートのJは挫けない ( No.27 )
日時: 2018/05/16 19:25
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

 幕が下りた体育館のステージを見ながら、演劇部の公演を待つ。パイプ椅子の座り心地は背もたれがあるだけ良かったと言えるだろう。席順は俺が右端。貫太を挟んで観幸が左端、といったところだ。

「で、変幻自在の演者ってなんなんだ?」

 小声で観幸に聞こえるように問うと、彼は流石に教員やらがいる前ではパイプを出さないのか、何かを右手に持つような仕草だけしながら答えた。エアパイプ芸人でも目指すつもりかお前は。

「ありとあらゆる役を演じる演劇部のダークホース……浮辺縁(うわべ/ゆかり)の事デス」
「浮辺縁……女か?」
「男デス。僕と同じように女子と間違えられるような名前デスが、彼はれっきとした男デスよ」
「でもさ、それって単に演技が上手いだけじゃないの?」

 貫太の質問に、チッチッチと舌を鳴らしながら音に合わせて指を振る観幸。

「ノンノンノン。彼はそのレベルではないのデス」
「そのレベルじゃないって?」
「彼はあらゆる役柄を演じる……というより、自然に行うのです」

 その言葉の意味が分からず、なんとなく聞き返してしまう。

「自然、だぁ?」
「彼は全ての役柄を自然体でこなしているかのような、そんな感じなのデス」
「でもよぉ……自然に振る舞うのと演技をするのはちとちげぇんじゃねぇか?」

 俺は演劇に関しての知識が全く無いために、あまりそういう事はよく分からないが、自然に振る舞うのと演劇をするのは少し違うとは思う。

「では共也クン。キミは自分が感情移入できる人間と出来ない人間、どちらが演じやすいデスか?」
「そりゃ勿論できる人間だな」
「言い換えると、彼は全ての役柄に対して無理なく入り込めるのデス。先程は少し言い方が悪かったかも知れまセン」

 観幸の言葉になんとなくだが納得する。しかし、それでは根本的な疑問は解消されない。

「でも、そいつぁ結局、演技が上手いで終わるんじゃねぇか?」

 俺がそう言うと、観幸はニヤリと笑う。この発言を予想していたのだろうか。既に切り返しは考えていたようで、間髪入れずに彼は言う。

「それがデスね。以前、たまたま図書委員で遅くまで残っていた時、部活帰りの彼と出会った時の話デス。彼はいつも柔和な雰囲気の穏やかな気性の持ち主でシタ。しかし……その日に限って、彼はとても荒々しい口調の豪快な人物だったのデス」
「……その日に限って性格が変わったって事か?」
「そうなのデス。そして彼に聞いてみた所、演劇部の練習で彼が演じたのは酒飲みの気前の良い人物だったそうデス。……偶然デスかね?」

 確かに、偶然とは考えづらい。観幸の言葉には合理性と説得力があった。だが、

「それ、アイツの気質とかじゃねぇのか? 一度役に入ると中々抜けないみたいな」
「……ヤケに食いついてきマスが何か理由でもあるのデスか……?」
「てかな、普通に考えておかしいんだよ。ハート持ちっていうのはそんなに多くねぇんだ。一つの学校に一人いるかいないか。もっと言えば、地方都市なら市町村の中に一人いるか居ないかのレベルだぞ?」

 だがここはどうだ。俺、貫太、愛泥とこの学校に三人もいる。兄さんはまだ都会からやって来たとして数えずとも、かなりの数になる。

「それがこんな狭い領域に三人もいるんだ。誰かが意図的に作らねぇ限りはもう居ないはず……」

 そこで、少しだけ、何かが頭の中で引っかかる。記憶を辿ると、朝の兄さんの発言に辿り着いた。

『これは俺の推測に過ぎないが、ハート持ちを作る力を持つ何かがいる』

 この言葉が何回か頭の中で反響し、思わず押し黙る。もし、仮に、そんな力を持つ者が居たとしたら──?

「どうしたのデスか?」

 不審な顔でこちらを見てくる二人。急に言葉を切ったのが不味かったのだろうか。何でもないと返しておく。

「とにかく、普通は有り得ねぇんだよ。こんなにハート持ちが集まるのは」
「ふむ……普通はデスか。なるほど」

 すると観幸は何処からとも無くルーペを取り出しこちらに翳して、一言。

「探偵の仕事は、普通を疑う所から始まるのデス」

 その後の彼のドヤ顔が無ければ、俺はもしかしたら、その可能性を疑っていたかもしれない。

「あ、始まるよ」

 観幸と話していると、貫太がステージの方を向いてそう言った。顔を向ければ、幕が引かれ始めており、舞台には二人の人間が立っていた。背の高めな女子生徒と、中くらいの身長の男子生徒だ。

「……あの背が高い男子生徒が浮辺クンデス」

 背が高い、と言われて少し見回したが、良く考えれば観幸から見たら、ステージに立つ男子生徒の身長は高く見えるのか、と納得し、それを見る。服装から男と分かったが、顔立ちからはあまり男らしさが感じられない。が、幼い訳ではなく、むしろ女性らしさを持ち併せている、と表現するべきだろうか。
 そして、演劇部の公演が開始された。





 演劇中、俺はずっと主役を演じていた浮辺を見ていた。正直、俺は演劇や演技に詳しくないので、あまり評価は出来ないが、特に下手な印象は無かった。恐らくだが、上手い部類に入るだろう。
 劇が終わった所で、俺達の他に十数人程度居た人々が拍手を送る。当然、俺も便乗して手を叩く。内容自体は結構退屈しないものだった。隣では、貫太が少しだけ涙ぐんでいるのが分かった。

「泣いてんのか?」
「だ、だってぇ……」

 貫太は多分、感動系の作品を読むとすぐに涙を流すタイプだろうとは薄々考えていたが、案の定というべきか、的中していた。観幸は正直よく分からない複雑な表情をしている。

「さて、これからどうする?」

 俺が問うと、答えたのは観幸だった。貫太は制服からハンカチを取り出して涙を拭いている。貫太の女子力を確認しつつも、観幸の話を聞く。

「勿論、浮辺クンに会いに行くのデス」

 それから俺達は校門で暫く雑談しながら浮辺を待っていた。公演の後の片付けなどの作業があるのだろう。既に時刻は7時を回っており、陽はとっくに落ちていた。

「ええと、今日の主役ってどんな役柄だったっけ?」
「正義感が強くてハキハキした感じデス」

 貫太の質問に、観幸が答える。つまり、浮辺が主役と同じような性格であれば、観幸の発言の信憑性が増す。という事だ。

「……来たのデス」

 学校から、一人で浮辺が出てきた。彼は制服に着替えており、少しだけ疲れたような顔をしていた。……何かあったのだろうか。

「やあ、浮辺君」
「ん……ああ、貫太君か」

 知り合いである貫太が声を掛ける。戸惑うような様子を少し見せたのは、暗くて一瞬、誰が話し掛けてきたのか分からず身構えたからだろう。正体を確認すると、すぐに緊張を解いた。

「その……今日の演技、凄く良かった。なんか語彙力足りなくてアレなんだけど……その」
「別に凝った表現なんて要らないから、素直に嬉しいよ。ありがとう。もっとも……先生からは少し叱られちゃったんだけどね……」

 それから数回言葉を交わした所で、浮辺がこちらの存在に気が付いた。視線の先は、俺。

「そこにいるのは……観幸君と……」
「ああ、俺はこの2人の知り合いだ。今日の公演、観てたぜ」
「君も見てくれたんだね……嬉しいよ。主役で緊張したけど……」
「そうかぁ? 結構自然体な演技だったぜ」
「……演じてる時は役に入るのに無我夢中だから……自分じゃよく分からないかな……」

 声音は柔らかめで丸みのようなものがあった。雰囲気的には、少しだけナヨナヨとしているが、弱気とまでは行かない程度。身長は俺よりも十センチ程低いだろうか。

「というか……君たち、僕に感想を言うためにこんな遅くまで……? 明日言ってくれても良かったのに……」
「いや、ワリィな。今日感じた事は今日伝えるのが筋かと思ってな」
「……そっか。そうだね。うん、確かにその通りかもしれない」

 ニコリと笑う彼。その笑顔は嬉しさを示しているが、少しだけ儚さが混じっているようにも思える。

「君、なんて名前なの? 僕は浮辺縁。……こんな名前だけど男なんだ」
「俺は友松共也。共也って呼んでくれ」
「ああ、宜しくね、共也君。僕の事は好きに呼んでよ」

 彼が右手を差し出してきたので、取り敢えず握り返しておく。2人で握手をした後に、それじゃあ、と言って浮辺は帰って行った。

「……観幸、なんかお前の話と違うんじゃないか?」

 彼は全く、今日の主役のような性格ではなかった。寧ろ、彼の素の性格では無かっただろうか。
 俺の問いに答えない彼の方を向くと、彼は自分の手を顎に当てて考え込んでいた。


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Re: ハートのJは挫けない ( No.28 )
日時: 2018/05/20 09:11
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

「観幸……話が違うんじゃねぇか?」
「ムムム……おかしいのデス……」

 首を捻る観幸に問いかけても、返ってくるのは唸るような声だけ。彼はルーペの持ち手の方でこめかみを軽くグリグリと押しながら考え込んでしまう。

「ボクの考えが外れたのデスか……?」
「どうもこうも、そうとしか考えられねぇだろこれ」

 浮辺が歩いて行った方を見れば、既に彼の姿は夜に消えていた。ここは観幸の考えが違っていたと考えるのが妥当だろう。彼は今日、特に演じたキャラクターと同じような性格をしていた訳でもないし、いつも通りの性格だったらしい。普段の彼を知らない俺が確認したのでは無いが。

「……いや、まだ可能性があるのデス」
「はぁ? お前この期に及んでまだ変えないつもりかよ……それは流石に呆れるぜ」
「共也クン、探偵と言うものは常に別の可能性を考え続ける生き物なのデス。例え99%の確率で間違いの推理も、残り1%を切り捨てる訳にはいかないのデス」
「へいへい。そんで? どーゆー事なんだよこれは」

 正直、こんなに遅い時間帯だ。家に帰ってやる事もあるし、俺は早く帰りたいという考えで一杯だった。だから、こんないい加減な対応ていたのかもしれない。観幸の言葉も、いつもの探偵トーク程度にしか考えていなかった。

「彼の力は……一定時間が経つと自動で溶けるタイプのものデス」
「つまり?」
「ボクが遭遇した時、彼は演劇部の帰りでシタが、その時は恐らく練習で演技した直後に帰ったのデス。しかし……今日は片付けやら何やらで時間を取られた為に、学校から出る間に力が解けてしまったのデスよ」

 確かに、と言うと思ったのだろうか。
 まあその考えなら状況が一致するのも理解できる。結構良好な推理かもしれない。無論、全てが推測である点を除けばの話だが。

「……今日は遅いから帰るぜ。じゃあな」
「あ、うん。またね」

 なんだかいるだけ時間の無駄な気がしてしまい、俺はその場から離れることにした。


 そして、次の日の事だ。いつもの滝水公園の入口辺りで貫太を待つ。滝水公園は入口が幾つかあり、中を突っ切ることでショートカットできるため、いつも公園の中を通っている。噴水を通りかかった時、ふと、先日の事を思い出した。

「……兄さん、まだこの街に俺がいるのは間違い、なんて言うのかね」

 兄さんや実家からは何度も此処を離れるように言われた。と言うよりは、実家で暮らせと言いたいのだろう。別に俺は実家が嫌いな訳では無いし、仮に行ったとしても辛い思いはしないだろう。
 だが俺がこの街を離れる訳にはいかない。何が起こっても、離れられない訳がある。

「おはよー共也君」
「おう、貫太」

 一人で考え込んでいるところに、貫太が来た。相変わらず低い背丈の彼は必然的に俺を見上げるようになる。

「そういや、貫太は浮辺と知り合いなのか?」

 昨日話していたのを見た感じだと、少なくとも初対面という訳では無さそうだった。

「うん。一年生の時、隣の席になった事が何回かあって」
「じゃあよ、昨日何か変わった所とかあったか?」

 貫太は目を瞑って唸りながら2、3回自分の頭を人差し指で軽く押す。そして悩ましい顔をしつつも言葉を紡いだ。

「なんだか……自信があるなって……」
「自信……どういう事だ?」

 発言の意味がよく分からなかったので問い返してみると、貫太は目を開いてこちらに顔を向けて、手振りを添えて話し始める。

「一年の時、浮辺君は極端に自分に自信が無かったんだよ。褒めると自己嫌悪の言葉が止まらないタイプの人。でもなんだか……昨日は褒め言葉を素直に受けたり、自信があるように見えたし……それに主役を受けたっていうのも違和感かな。彼、脇役したいって言ってたし。まあ、自信がついたなら良い事なんだけどさ……」

 昨日の浮辺の様子とは確かに違うが……貫太の言う通り、自信が付いたとなればそこで終わりだ。だが頭に観幸の存在がチラつくせいでついつい色々と考えてしまう。要らない考えだと切り捨てて、俺は大人しく、ハートの力で瞬間移動した。
 理由は、まあ、貫太の方を見れば分かるだろう。

「おはようございます。貫太君」
「あ! ちょっと! 共也く……お、おはよう。隣さん……」

 その後、学校へ行くと、観幸が既にいた。珍しくルーペもパイプも握らずに、ずっと静かに顎に手を当てて静止している。

「おう観幸、どうした?」
「……ああ、共也クン。特定する方法を考えていたのデス……」

 彼は少しだけ疲れた様子で対応してきた。……多分、昨日から考えていたのだろう。ここまで来ると呆れを通り越して心配になって来るが、言われて止める彼ではないことは、既に把握済みである。

「で? 成果は?」

 そう問うと、彼は黙って人差し指のみを立てた手を突き出してきた。一つ? 何かあるのだろうか。

「一つ、少々粗い方法デスが、思いつきまシタ」
「ほー、じゃあ聞いてもいいか?」
「……まあ、条件として貫太クンか愛泥サンが必要デスが……無難に貫太クンに協力して貰いましょう」

 貫太か愛泥……2人の共通点はなんだろうか。ハート持ち、と言うなら俺や兄さんが入っていないのはおかしいだろう。仮に忘れていたとしても、観幸がそんなことするようなタイプではないことは百も承知だ。

「実に単純な事なのデスがね……」

 観幸の策を聞いて、確かに、と驚いた。ハート持ちでも無いのに、いや……ハート持ちではないからこそ思い付いた策だろう。やはり侮れないなと意識を改めつつも、俺は自分の席へと戻り、どうやって戻ってきた貫太を説得するかを考え始めた。
 結論から言うと、やはり奴は断れない男だった。


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Re: ハートのJは挫けない ( No.29 )
日時: 2018/05/18 20:02
名前: 透 ◆zFxpIgCLu6

波坂さん

 こんにちは。某所ではお世話になっております、透です。
 3話の途中ですが、ちょっとお邪魔させてください。
 支離滅裂な文章になってしまいますが、最後まで読んでいただけると嬉しいです。

 ハジケナイ、いつも楽しんで読ませていただいております。胸アツな展開に毎回心臓を揺さぶられています。
 どのお話もすごく好きなのですが、わたしはスティールハートが一番好きです。なぜなら共也くんがかっこいいからです。
 最初は「殴れば皆死ぬ」理論の見也さんが好きだったのですが、いつの間にか共也くんが好きになっていました。完全なヒーローではないけれど、助けに来てくれる共也くんめちゃくちゃかっこいいです。
 なのでバインドハートの共也くんのあのシーンも「最ッ高〜〜〜!!」って思いました。何度も読みました、何度読んでも興奮しました。

 1人1人が壁にぶつかって、それに真っ向から立ち向かって壁をぶち壊していく登場人物とストーリーが好きです。
 ストーリーは王道でシンプルなんだと思ってます。でも、王道と言っても絶対に人を感動させられるかと言われればそうではないと思うので、人を感動させたりアツくさせたりできるハジケナイは本当にいい作品だと思います。
 ハジケナイの文章も好きです。はっきりしてて、無駄がないというか、ストレートな文章が、作品にあっていていいなあと思います。台詞やモノローグで好きなところがあるのですが、ネタバレになってしまうので、また別のところでお伝えします。
 アクションシーンはめちゃくちゃかっこいいし、とても好きです。アクションシーンはバインドハートのが迫力があって一番好きです。愛泥さんこわかった……。

 それと、この作品での能力の使い方には、毎回すごいなあと思わされています。能力の設定も能力名もとても好みです。その上、思いもよらなかった使い方がされているので、さすがだなあ、と思っています。異能力モノを書いている身として、とても見習いたいです。

 ハジケナイは面白いです。最新話を追いかけるのが楽しいです、最終回まで追いかけ続けます。それくらい面白いし読んでいて楽しいです。
 波坂さんも色々思われることはあると思いますが、今回はそれを伝えたくて来ました。どうか最終回まで、ここで書いていただけたら、とてもうれしいです。
 これからも応援しています。また来ます。それでは。



 透

Re: ハートのJは挫けない ( No.30 )
日時: 2018/05/20 09:09
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

>>29 透さん

 某所ではこちらこそお世話になってます!感想ありがとうございます!
 作者的にストーリーには結構力入れてるので、ほんと、そこを褒めてください嬉しさ極まってますありがとうございます! 一応作者的に思う主人公は共也君なので気に入って抱けて嬉しいです!
 個人的にはなんか物理的成長より精神的な成長描写が好きですね! そこはがっつり作者の趣味です! この作品で1ミリでも感動されられたら私の勝ちだと思ってるので私の勝ちですね(?)
 出来るだけスラスラ読めて最低限は伝わる文章を意識しています! 狙ったことが上手くいっていたら嬉しいです!
 バインドハートのアクションシーンって珍しく蹴りも拳も何ですよね。ほんと、なのに1番動いてる気がするので作者としても謎です。
 なんかもう……そんな言葉言われたら作者冥利に尽きますね! ありがとうございます! 完結できるように頑張ります! ほんとにコメントありがとうございました!

Re: ハートのJは挫けない ( No.31 )
日時: 2018/05/20 09:10
名前: 波坂 ◆mThM6jyeWQ

 僕は共也君と一緒に、今ここに居る。僕が学校に着くなり頼み事をしてきた彼。僕は特に断る理由も無いので了承した。
 そして、その後僕達は浮辺縁君のいる演劇部の部室までやって来たのだが──

「なぁ貫太。さっさと俺を信じようぜ」

 僕から見て、右前方にいる共也君がそう言う。ボタンが掛けられておらず、羽織るだけの学ラン。大きな身体に筋肉質な体格。そして彼の顔。どこからどう見ても、彼自身である。
 その見た目は間違いなく友松共也であろう。だが僕には、目の前の共也君が、本当に共也君であると断定することは出来なかった。
 何故なら

「おいおい待てよ。俺が本物だっつーの」

 もう一人、僕の左前方に瓜二つの顔に全く同じ服と体をした、友松共也がいるからだ。ドッペルゲンガーというか、最早本人が2人になったと言う程の再現度である。無論、2人が居るということは、どちらかが偽物なのだろう。

「どっちが本物なの?」
「俺だ」
「俺だ」

 僕がそうやって問うと、彼らは全く同じ動作で自分を指さした後、隣の方を睨み付けるように見て、お互いに指を差し合う。

「テメェ! 真似なんかしてんじゃねぇぞ!」
「テメェ! 真似なんかしてんじゃねぇぞ!」

 僕は目の前で繰り広げられる鏡写しの言い合いに頭を抱えるしかない。2人は同じような動作で全く違わないセリフを同時に言うのだ。

「どうしてこうなったんだ……」

 僕は現実逃避気味に、意識を少し前の事が起こる前に向けた。そう、それは確か──。





「浮辺君? ごめんなさいね。今先生と買い出しに言ってていないの」
「買い出し?」

 僕が演劇部を訪ねると、浮辺君は留守だった。買い出しという単語を聞いて、演劇部にそんな事が必要なのかと思い、聞き返してみる。

「ええ。昨日の公演でダメになったのがあってね。ほら、ウチの演劇部って男子が少ないからさ。浮辺君は男の子だし」

 荷物持ち要員にされたのか、とそう解釈する。多分だが間違っていないだろう。

「いつぐらいに帰ってきます?」
「えーっと、あと1時間くらいしたら帰ってくるかしら。少し遠目の場所に行ったから」

 その後、演劇部の先輩が逆に聞き返してくる。

「ところで、浮辺君に何か用事でも?」
「はい。少し話がしたくて……」
「うーん、なら待ってる? ちょうどいい場所があるし」

 それは僕らにとっても良い提案だったので、僕らは付いていく事にした。案内されたのは、視聴覚室。教室の前には大きな白いスクリーンが掛けられており、すぐ近くにはプロジェクターが設置されている。適当な椅子にかけるように言われたので従うと、先輩が放送器具を弄り始めた。
 数分後、少し後に映像が流れ始める。見覚えのある場所の映像。そう、ウチの学校の体育館のステージだ。先日、演劇部が公演をした場所。

「これは?」
「勧誘も兼ねた暇潰しね。あ、映像は去年のよ」

 勧誘しているのか、と思わず身構えるが、実際内容は単純な劇だった。暫く映像を見ていると、物語の中に見覚えのある人物が出てくる。

「あれ、浮辺君?」

 確かに浮辺君だった。配役としては、少なくとも序盤に出ては来るものの、完全に目立たないであろう、脇役のポジション。昨日の配役とは大違いだ。そして何より……下手だ。いや、下手なのかどうかはよくわからないが、少なくとも昨日のものとは全く違う事だけは分かる。共也君にこっそりそれを言うと、同意の言葉が返ってくる。

「……少し、違う気がする」
「……ああ。なんかまるで人自体が変わったみてぇだ」

 その後も話は進んでいくが、特に彼の活躍のシーンもない。単純な脇役な上に、数少ない彼の演技には、何か違和感というものがある。昨日に比べると、精度も質もまるで違う。

「……浮辺君、去年と全然違う……」
「ええ。彼、少し変わったのよね」

 気が付けば、無意識のうちに漏らしていた言葉に、演劇部の先輩が反応していた。

「彼、1年生の三学期辺りに、突然演技の質が変わったの。急に、役作りが上手くなって、なんだか……その人本人になったみたいに、全然、演技しているって感じじゃなくなったの」
「え……」
「それに演技もなんだか……演じている人そのものが変わったみたいなの。昔の一生懸命な演技、嫌いじゃなかったんだけど……」

 その言葉に、浮辺君の演技を見てみる。確かに、今の彼のような精密さと本物感に溢れた演技ではないが、彼が熱意を持って、真剣に演じているということは分かる。見ていて、好感が抱ける演技というのだろうか。

「その……えっと……」
「私の名前は雪原優希乃(ゆきはら/ゆきの)よ」
「……雪原先輩は、やっぱり浮辺君が変わったと……思いますか?」
「そうね。彼なりに努力を積んだのかしら。かなり変わったわ。でも……昔の一生懸命さとか、必死さとか、そういうのが無くなっちゃったのは少し寂しいわ。……最も、最近は凄く幸せそうだけどね。彼」
「幸せそう?」
「ようやく努力が実ったんだもの。周囲から評価を受けたら誰だって喜ぶわ。彼の場合、最近急に先生から気に入られ始めてるし……」

 雪原先輩は少しだけ寂しそうな顔をしている。が、すぐに表情が変わったと思えば、演劇が終わっていた。プロジェクターを弄りながら彼女が時計を確認する。

「もういい頃ね。部室にいるかしら」

 その後視聴覚室から出て部室へ向かう。
 彼女から外にいるよう言われた為、部室の前で待機していた。少し経った頃に浮辺君が現れた。僕らと同じ制服を着ている。多分、買い出しに行く時の服装のままで着替えていないのだろう。

「えっと……僕に用事があるの? かな?」
「ああ、ワリィな。浮辺」
「全然。それより、どうしたの? 貫太君までさ」
「何でもないけど、まあ、ほら、少しだけ見せたいものがあるんだよ」

 そう言って、僕は観幸に言われた通りのセリフを言う。正直、芝居がかっているせいで演劇部にはバレるんじゃないかとヒヤヒヤする。が、彼は少しだけ訝しげな目線をぶつけてきたものの、なんだかんだで了承してくれた。……バレたのかと思った。
 それから人気のない渡り廊下まで足を運んだ僕ら。

「こんな所まで来て、何するんだい?」
「いや、俺も知らねぇんだ。なんか貫太が見せたいものがあるっていうからよ」

 そう話している浮辺君と共也君。そして、共也君は僕に背中を向けていて、浮辺君がその斜向かいにいる。余りに絶好すぎる位置関係。偶然にしては出来すぎている。
 これから行うことを想像して、思わず息を飲み込んだ。2、3回、ほどバレないように深呼吸をする。
 目の前で2人が会話していること。そして共也君に見えないように、また浮辺君に見えるようにやることが重要なのだ。
 何故なら、共也君にバレたら、困るのだから。そう考えると、手に汗が吹き出てくる。暑いなと気温のせいにして、自分の動揺を誤魔化しつつも標的を見据える。
 僕は1歩、共也君への距離を詰めた。心臓が飛んでいきそうな位、鼓動が大きくなる。胸が張り裂けそうなほど緊張する。もしこれが失敗したら後がない。そう考えるだけで、僕は死んでしまいそうだった。
 まあおかしな話だろう。
 これから人を刺すというのに、自分が死にそうとは冗談にも程がある。

 そして僕は、隠し持っていたナイフを突き刺した。
 しっかりと、ゆっくりと押し込む。

「────貫、太?」

 共也君が、驚いたような声音を上げる。彼にしては珍しいな、なんて思いながら、振り返った彼の見開かれた目を見る。きっと彼も、本気を出せば僕なんてすぐに殴り飛ばせるはずなのに、そうしないのは、彼の優しさ故だろう。

 ゆっくりとだが、彼の体が力なく倒れていく。膝をつき、手を付き、そして体を這いつくばる様に床に押し付ける。彼の背中に突き立つのは、1本のナイフ。
 視線をゆっくりと、倒れた共也君から浮辺君に向ける。彼の表情が、僕への驚愕で埋め尽くされていた。まあ当然だろう。僕は彼に見せ付けるためにやったのだから。

「……僕が見せたかったものはこれだよ」
「き、君はなんて事を! そんなもので人を刺すなんて!」

 浮辺君が、腰を抜かしながら、伏した共也君を指さす。彼の手は震えていた。だから、僕はここで追い打ちをかける。
 倒れた共也君と浮辺君の間に入り込むようにして立つと、制服からもう1本、ナイフを取り出す。学ランは物を隠すのに都合が良い。そしてそれを彼に向けると、彼はガタガタと震え始めた。

「や、止めて……、止めてくれよ貫太君!」

 そうやって、必死の表情で懇願する彼。

 その必死さに、僕は思わず笑ってしまう。いや本当に、おかしくておかしくてたまらない。

 どうして彼はそんなに恐怖しているのかさっぱりわからない。笑いを堪えきれなくなって、僕が笑い始める。

 すると、彼の表情がさらに一層、僕を恐れるものになった。
 不思議に思いつつ、僕は笑いながら、そのナイフを二、三回、手の中でクルクルとした。


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