複雑・ファジー小説

逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】
日時: 2019/04/03 16:38
名前: マルキ・ド・サド

どうも、いつもお世話になっております。マルキ・ド・サドです。
前々から創作を練っていたどうしても書きたかった新たな小説を書こうと思っています。
ローファンタジー小説『ジャンヌ・ダルクの晩餐』をご覧になって下さりありがとうございます!
皆様のご愛読により私の小説はとても大きな作品となりました。
この感謝を忘れずこれからも努力に励もうと思います(*^_^*)

コメントやアドバイスは大いに感謝です。

悪口、荒らし、嫌み、誹謗中傷、不正な工作などは絶対にやめて下さい。

今回のテーマは妖怪が蔓延る暗黒時代を舞台として描かれる戦国ダークファンタジーであり残酷でグロテスクな表現が含まれています。この小説を読んで気分を害した場合はすぐにページを閉じる事をお勧めします。



【ストーリー】

 天正10年(1582年)。謀反を起こした明智光秀の軍が織田信長を襲撃、3万の兵が本能寺に攻めかかる。しかし、突如現れた妖怪の群れが明智軍に襲い掛かり兵達を惨殺、優勢だった軍勢は瞬く間に総崩れとなる。決死の抵抗も虚しく光秀は戦死、本能寺の変は失敗に終わるのだった・・・・・・

 その後、信長は妖怪を操り数々の戦を勝利を収めついに天下を統一、戦乱の世に終止符が打たれ人々は太平の訪れを期待する。しかし、冷酷な魔王の手により治められた大和ノ国は第二の暗黒時代が幕を開ける。そして、とある日の逢魔時の空に響き始めた謎の聲、人々はこの異変を妖怪の巣の叫び、地獄の唸り、神々の呪いであるという噂が流布されるのであった・・・・・・

 天正12年(1584年)。徳川家康の家臣にして『不知火』の一員である若武者『本多忠勝』は奈良の支部にて『柳生石舟斎』と共に武術の修行に明け暮れていた。ある日、そんな彼らの元に真田氏の武将『真田昌幸』が訪れる。妖怪が溢れた天下の事態を重く見た昌幸は不知火の復旧を訴え信長打倒を依頼する。要望を聞き入れ忠勝は日本各地へ出向き織田政権を陰から崩そうとするがその時は誰も知る由もなかった。妖怪に溢れた天下の闇の奥に更なる魔の手が潜んでいる事を・・・・・・


【主な登場人物】

 本多忠勝

 物語の主人公である若き武将。猛将に似合わず白い長髪でおっとりとした面持ちのため一見すると少女にも見えなくない。不知火の復旧、そして太平の世を取り戻すため妖怪を操る信長や七天狗を倒す旅に出る。桶狭間の合戦を戦い抜いた若き日に闇鵺の宝刀である『殉聖の太刀』に触れ呪縛の呪いにかかり手にした時点で当時の年齢が固定され成長が止まっている。髪が白く容姿が幼いのはそのため。


 柳生宗厳(石舟斎)

 柳生一族の長にして剣術『新陰流』の継承者。号は石舟斎。柳生家厳の子。新陰流第2世。妖の討伐の際に踏み入った妖魔の森で忠勝と出会い以後、弟子として彼を育て上げた。彼も不知火に所属する精鋭であり、真田昌幸の訴えにより勢力の復旧を決意、忠勝を日本各地に派遣する。


 織田信長

 第六天魔王と恐れられる尾張国の戦国大名。本能寺の包囲網を際には妖怪を使い明智光秀の軍勢を返り討ちにし、その後も幾度もの戦に勝利を収めついには天下人となる。妖怪による統治を始め人々を恐怖で支配、高等な妖の一族である七天狗を従え多くの配下を大和ノ国各地に配置させている。人ならざる者の力に魅了された彼は自身も魔の血を取り込み半人半魔と化した。


紅葉

信長の側近である妖。武器は妖刀。
両親が第六天魔王に祈った結果で生まれた絶世の美女の鬼女。
源経基に寵愛され一子を宿していたが戸隠山に流された挙句、最後に降魔の剣を手にした平維茂に首を斬られ掛けるなどと痛い仕打ちを受けた為に人間が苦手になった。
信長が第六天魔王と名乗った事で信長の行く末を見届けようと信長の側にいる。息子の経若丸には結構甘いところがある。


 七天狗

 信長に忠を尽くす高等な妖の一族。妖怪である自分達を迫害した人間達を憎悪している。日本各地で暗躍しているがその存在を知る者はなく目的すらも不明。全員が天狗の仮面を身に着けており烏、狼、山猫、猿、狐、狸、熊の計7人で構成されいる。


【不知火の一員】

鈴音

不知火の一員である楽器の付喪神。武器は笛。
300年以上も大切に扱われた笛が付喪神として実体化した姿で名前は元々の持ち主につけてもらった。
人当たりの良い性格から小さい子供達からは慕われている。
争い事を激しく嫌悪するため自ら前線に赴くよりどちらかと言うとサポートに徹する為、戦闘能力はあまり高くない。


海李

不知火の一員である楽器の付喪神。武器は太鼓。
300歳以上も大切に扱われた太鼓が付喪神として実体化した姿で名前は元々の持ち主につけてもらった。
面倒見の良い性格から子供達からは慕われている。
また、鈴音とは元の持ち主が同じで同時期に実体化した為、鈴音とは幼馴染でお互いに好意を寄せている


杉谷 千夜

不知火の一員である人間の忍び。武器は銃器、短刀、焙烙玉。
甲賀で織田信長の支配に異を唱える勢力の所属であり魔王信長を討ち取るべく日々、命懸けの戦いを繰り広げている。
実は甲賀出身ではなく戦で村を追われ生き倒れていた所を甲賀の忍者に保護され杉谷家に養子になる形でくノ一になった。
杉谷善住坊とは兄の様に慕っていたが信長の暗殺未遂で酷い方法で処刑された事により信長に対して恨みを持っている。


滓雅 美智子(おりが みちこ)

不知火の一員である人間の忍び。武器は妖刀。
信長に反旗を翻す反乱軍の一員で甲賀の勢力と同盟を結んでいる。
その為、千夜とは面識があり彼女の事を『千夜ちゃん』と呼んでいるが本人からはあまり受け入れられていない。
忍者ではあるが無用な争いは好まない平和主義者であらゆる物事をスマートに済ませたがる。


ファゼラル・マーシャ

不知火の一員である西洋の魔術師。武器は属性を宿したタロットカード。
西洋から来た魔術師の青年で、常に敬語で話す。敬語を使わないのはカード達くらい。
自分のパートナーであり家族のような存在のカード達の事を非常に大切にしている。
鈴音達と仲が良く音(メロディ)のカードで伴奏を流して上げる事も。


ライゼル・マーシャ

不知火の一員である西洋の魔術師。武器は属性を宿したタロットカード。
西洋から来た魔術師の少女でファゼラルの双子の妹。常に敬語で話すファゼラルに対しライゼルはタメ口で話す。
自分のパートナーであり家族のような存在のカード達の事を大切に思っている。兄ぐるみで鈴音達とも仲が良い。


ゼイル・フリード

不知火の一員である人間の騎士。武器は剣と斧。
よく女の子と間違われやすく女と間違われたり子供だと馬鹿にされるのが極度に嫌う。
英雄のジーク・フリードの子孫にあたり体格に合わずかなりの食欲の持ち主。


蒼月 蒼真(そうつき そうま)

不知火の一員である半人半獣。武器は刀。
父親は人間、母親は妖狐の間に生まれた青年。
不正や悪を嫌う為、信長の政権に嫌悪感を抱いている。
人間妖怪関係なく平等に接しているため子供達からも慕われている。


箕六 夕日(みろく ゆうひ)

不知火の一員である人間。武器は大鎌。
物語を書く事が大好きな文系の青年。端麗な容姿から女性に間違えられる事が悩み。
幼い頃に霧隠の山奥に迷い込み狼の守護霊を拾い家族のように親しくなった。
以後、頼れるパートナーとして常に行動を共にしている。


【用語】

 殉聖の太刀

 忠勝が使用する聖の力が秘められた太刀。かつて室町時代の大和ノ国に訪れた異国の聖女の剣を刀へと打ち直した物。斬った人間や妖怪の霊気を吸収する事で刃の強化、『神力覚醒』が可能。異国の聖女だけが完璧に扱うことができそれ以外の者が触れると呪縛の呪いを受ける。不知火の秘宝でもあり神器の1つとして崇められている。


 不知火

 忠勝が所属している義の名のもとに戦う兵団。日本各地に支部を持ち人々の太平を尊重し民の平穏、調和の安定を目的とする。室町時代に『異国の聖女』、『陸奥重盛(むつ しげもり)』により結成され足利将軍家の影の軍隊として活躍していた。主に妖怪討伐や国の平穏と調和の安定を保たせる事を生業としており1世紀以上も前から大和ノ国の民を守ってきた。室町幕府が滅んだ本作では主君を失い衰退の一途を辿っている。


 夜鴉

 不知火同様、表では知られない秘密の組織。太古から存在しており人と妖怪の調和を目的とする。人が立ち入らない群馬の山奥に拠点を構え結界で身を固めている。戦いを好まず社交的な存在だが妖怪を不当に扱う不知火や織田政権の事はよく思っていない。


 妖怪

 日本の民を恐怖に陥れている人ならざぬ者。原住する者と魔瘴石で生まれた者の2つのタイプが存在する。また、下等、中等、高等の階級があり骸武者や鰐河童、妖蟷螂などの下等妖怪は知能が低く本能のまま人を襲う。鬼や大百足の中等妖怪は強力な力を持ち言葉を話す事も可能。高等妖怪は姿形は人間に酷似しており超人的な頭脳と戦闘能力を備えている。


 大和ノ国

 物語の舞台である妖怪に支配された列島大陸。日本、妖都島、ジパングとも呼ばれる。戦が絶えない戦国の世だったが信長の天下を手中に納めた事によりかつての面影を失い、政は一層に腐敗した。八百万の神々が住む神秘的な国でもあり、不思議な魔力を持つ霊石や宝玉が大量に眠っている。


・・・・・・オリキャラの提供者・・・・・・

桜木 霊歌様
妖様
siyaruden様
シャドー様
挿し絵(少し修正しました)は道化ウサギ様からの提供です。皆様のご協力に心から感謝いたします。



以上です。それでは物語の幕を開けようと思います。

Page:1 2 3 4 5 6 7



Re: 逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】 ( No.37 )
日時: 2019/06/23 23:14
名前: マルキ・ド・サド

「ギャアアアアアア!!・・・・・・アアア!!」

 両腕を失い、修羅鬼は耐え難い痛覚に雑音に近い叫びを上げた。関節から先がない切り傷からは血管の束がミミズの群れみたくうねる。さっきまでの暴れ狂っていた面影は消え鬼らしくない女々しい表情を浮かべる。

「ウ・・・・・・ウウウゥ・・・・・・」

「人を脅かす妖怪め・・・・・・!」

 罵る台詞を吐き捨てると、忠勝は覚醒した殉聖の太刀のグッと強く握りしめ、止めの一撃を加える。刀身は肩に傷穴を空け、そのまま硬い肉体を滑らかに両断した。二分された修羅鬼は苦しげな唸りを最期に燃え果て、灰の山と化す。太刀の魔力が解かれ、力を全て使い果たした忠勝もその場に座り込んだ。さっきやられた腹部の痛手に血の混ざった咳を吐き散らす。そこへ蒼真達が駆けつけて来た。

「忠勝!無事か!?」 「忠勝くん!」

 倒れかかった忠勝を海李と鈴音がとっさに支える。

「お前達が戦っている区域で妖怪が姿を現したから、こっちの敵勢を片付けて加勢に来たんだ。しかしどうやら、不要な助けだったようだな」

 蒼真が安堵の笑みを浮かべ、夕日も感心しながら

「まさか、あの妖怪は忠勝くんが1人で倒したんですか?さすがは徳川一の猛将だ。天に昇った眩しい光はやはり、あなたが持つ殉聖の太刀の覚醒だったのですね」

「皆が・・・・・・ここにいるって事は・・・・・・」

「ああ、織田のクソ共は全滅したぜ。こっちもかなりの被害を受けちまったがな・・・・・・鈴音の奏でた音色が皆の命を繋ぎ止めてくれたんだ」

「ねえ、ゼイルはどうしたの?あんたと一緒にいたはずじゃ?」

 ゼイルが見当たらない事にライゼルが辺りに視線を送り、彼の行方を探す。

「ゼイルは僕がやられた後、勇敢に立ち向かったんだ・・・・・・でも、敵が強過ぎて・・・・・・僕も"神力覚醒"に頼らなかったら・・・・・・死んでた・・・・・・」

「そうか・・・・・・夕日、ライゼル、お前らはゼイルを探してくれ。忠勝も鈴音も大義を働いたな。怪我を手当てしたら、後は飯を食ってゆっくり休むだけだ」

 襲撃部隊は壊滅し、狭い村を舞台とした戦場は静けさを取り戻す。しかし、その集落は再建が不可能なほど大きな被害を被り、とても人が住める場所ではなくなってしまっていた。家々の多くが焼けては崩れ灰になり、道の至る所には逃げ遅れた村人、戦死した両軍の死体で埋め尽くされる。

「一方的な虐殺に近い戦だったな。2年前の本能寺を嫌でも思い出すぜ。一体、どれくらいの人間が死んだんだ?」

 滅んだ跡地に広がる地獄絵図に海李が露骨に顔をしかめる。

「さあな・・・・・・村への救援には俺達を含む300人の兵が派遣されたが、生き残った者は100人にも満たないだろう・・・・・・更に事実を付け足せば、精鋭の何人かも負傷した。こちらの損害は致命的だ」

「こっちにも十分に戦えるだけの兵力があったら、こんなにも罪もない人間が死ぬ事はなかったんじゃねえのか・・・・・・!?もっといい結果に・・・・・・!」

「やめて海李くん!仕方ないよ!不知火はもう、昔みたいな強大な組織じゃない!それでも皆が命を投げ出す覚悟で戦ったから、犠牲にならずに済んだ人もいた!私達はよく頑張ったよ!誰の落ち度でもない!」

「畜生・・・・・・!畜生ぉ!!」

 自分達の無力さに悔しさを隠せない仲間を鈴音が必死に慰める。

「殺された者は哀れとしか言いようがありませんね・・・・・・ですが、今回の件で不知火の戦力が大幅に削減された問題も視野に入れなければいけません。僕達はあまりにも味方を失い過ぎた。いくら精鋭が健在だとしても兵がなくては組織での役目はあまりにも重すぎます。こんな状態では、次の戦に出向いたところで犬死するのが関の山でしょう。認めたくはありませんが、不知火が完全壊滅する日が訪れるのも決して遠くはないでしょうね」

 ライゼルと共に気絶したゼイルを連れて戻って来た夕日。普段、前向きな性格を絶やさない彼も望みのない発言を口にする。しかし、すぐさま考えを切り替え

「とにかく、余計な心配は後回しにして、石舟斎様と合流しましょう。鈴音くんと海李くんは忠勝くんの方を頼みます。今は負傷者の手当てが先です」

 鈴音と海李は指示に従い、互いに手を貸しながら忠勝を運ぼうとした時、ふいに近くの建物から何かが動く物音がした。同時に生きた気配を感じ、壁の内側に誰かが潜んでるのを悟った。

「誰かいるのか・・・・・・!?」

「しっ!静かに・・・・・・!」

 息を呑み、緊張を走らせる精鋭達。蒼真は妖刀を抜刀し、夕日は大鎌を構えて前に出る。声には出さず、後ろで警戒する仲間に"ゆっくり下がれ"と手で合図を送った。

『"・・・・・・いな!"』

『"やって・・・・・・!"』

『"て・・・・・・しょうか・・・・・・?"』

 何かを話し合っっているようだが、上手く聞き取れない。しかし、中にいる人数は3人だと確認できる。

「おい、そこにいるのは誰だ?出て来い」

 蒼真は口調を鋭く外に出るよう促した。建て付けの悪い戸がガサツに開く。

「ひっ・・・・・・!ひいいい!!」

 最初に姿を曝け出したのは背の低く、いかにも気弱そうな男だった。農民らしからぬ整えられた綺麗な格好、背負った風呂敷からして商人である事が窺える。今にも危害を加えて来そうな蒼真達を見た途端、腰を抜かして悲鳴を上げた。

「どうしたがね!?」 「どうした!?まだ奴らが・・・・・・!」

 後に続いて他の2人もひょっこりと死角から顔を出した。独特な喋り方をする体格のいい男に細身で肌の白い女。彼らも商人と同じく怯えた姿勢を取る。

Re: 逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】 ( No.38 )
日時: 2019/07/07 18:52
名前: マルキ・ド・サド

「ど、どうか!命だけはお助けを!」

「安心しろ。俺達は味方だ」

 情けない命乞いに呆れた蒼真と夕日は武器を収めた。武装を解いた姿を目にした3人の男女も深い安堵の意を示す。

「ずっと、この長屋に隠れていたんですか?火の手が回っているのによく助かりましたね」

 夕日が怪訝そうに首を傾げると

「は、はい!突然起きた襲撃に逃げ場もなくて・・・・・・長屋に逃げ込んだらこのお二人方と出会ったんです!3人で隠れる場所を探していましたら偶然、廊下の下に穴を見つけまして・・・・・・狭かったですが命が助かるならと、そこに入って・・・・・・!」

 窮地に一生を得た理由を商人がやや焦りながら説明する。

「だから、火や煙の中にいても無事だったのか。正に文殊の知恵だな」

 海李が感心しているのか、呆れているのか判断しにくい口調で言った。

「着ている服装からしてあんた達全員、この村の人間じゃなさそうね?怪しくはないけど、念のため名前や素性を教えてくれる?」

 今度はライゼルが3人の詳細を問いかける。

「見ての通り、私は商人です。この国では珍しい南蛮の品を扱っていて、商いのために遥々、この村へ足を運びました。あ、申し遅れました。名は喜平と言います。どうぞ、お見知り置きを」

 続いて、体格のいい男と肌の白い女が礼儀正しさとはかけ離れた態度で

「わしゃ、名は平八と言うじゃらぁ。女房と喜劇を披露するために三河(現在の愛知県)から来たんだがの・・・・・・どないして、こんな事になったんだがぁ・・・・・・」

「小夜よ。よろしく。人を笑わせるために来たってのに、始まったのは殺戮の嵐で・・・・・・まったく、冗談じゃないよ!・・・・・・で、あんた達は?こっちが素直に名乗ったんだから、次はそっちが名乗る番だよ」

 小夜が実に不機嫌そうにライゼルがした同じ質問を返す。

「俺は蒼真、隣にいるこいつが夕日。俺達は不知・・・・・・いや、この付近の自警団を務めている。せっかく、遠い所から来たのに災難だったな」

「ホントに最悪!災難の一言で済ませられるもんじゃないよ!」

「罪もねえ百姓が大勢殺されて・・・・・・なんて世の中じゃらね・・・・・・」

「品があっても買う人がいない・・・・・・ああ、これじゃ宝の持ち腐れだ・・・・・・」

 想定すらしていなかった最悪な展開に戸惑う3人。不知火の精鋭達は少しの間、彼らに視線を留めていたが

「ここにいたって、しょうがねえ。早く集落の外へ出ようぜ?」

「そうだね。忠勝くんとゼイルくんに傷の手当てをしなくちゃ」

 海李と鈴音が言って、ライゼルもその優先に従う。

「あたしも先に行ってるわね。ファゼラルの事が心配でじっとしていられないの」

「蒼真さん、僕達も行きましょう。皆が待ってます」

「そうだな。ここでの役目は終わった。お前らも来い。いくら戦が終わっても、こんな死体だらけの場所じゃ気は休まらんだろ。こっちだ」


 村の外では生き残った者達が粗末な野営場を作り陰気に満ちた一時を過ごす。故郷を終われた村人は家族や友人の死に悲しみを分かち合い、互いに泣き崩れている。愛人を殺された若者、孫を奪われた老人、親を失った子供もいた。

 戦いを終えた不知火の兵達も英気を養っていた。痛みや疲れに蝕まれ、仲間が死んだ悲しみに暮れ、その場を動かない。その中には死んだように横たわる忠勝、ゼイル、ファゼラルの姿も。夕日とライゼルに付き添われ、石舟斎が薬と包帯を用い、彼らに手当てを行う。

「ファゼラル!しっかりして!死んじゃだめよ!」

 手を握られ呼びかけられてもファゼラルの意識は既になく、返事は返らなかった。

「忠勝くんとゼイルくんは特に目立った外傷はありません。元々、不死身と言える頑丈な体ですからね。しかし、問題はファゼラルくんだ」

「ああ、止血剤を流し傷口を押さえているが、血が止まらん。やばいぞ。顔も青ざめ、呼吸も短くなってきてる・・・・・・このままでは・・・・・・」

 石舟斎はファゼラルの容態を深刻に見下ろす。槍で貫かれた胸からは血が滲み、白い布切れを真っ赤に染める。

「隠れ家に連れ帰り、治療を施しては間に合いません。"霊石"を使いましょう。あれならどんな怪我でも立ちどころに治せるはず」

 夕日の提案に石舟斎は迷わず頷く。

「一刻の猶予もないからな・・・・・・ほんの欠片でもいい。誰か持ってないか探してきてくれ」


 そんな人溜まりから離れた木の下に転がる岩に千夜が座っていた。腿には赤く湿った包帯を巻いている。撃たれた傷を気にする様子はなく、平然と夜の涼しさに浸っていた。

「千夜ちゃん」

 そこ美智子がやって来た。

「撃たれた傷は大丈夫?まだ、痛む?」

「平気よ。手当のお陰で大分、楽になったわ。何か用?」

 千夜は友好的とも言えない態度で問いかける。

「ずっと、火の中で戦っていたから喉渇いたでしょ?お水、飲む?」

「ありがたいわね。貰えるかしら?」

 差し出された竹筒を受け取り、千夜は中身を飲んで水分を補う。美智子はその隣に座り、2人は怪我人や難民が集まった所を眺めた。家や家族、友を奪われた悲惨な光景に胸が圧迫される。

「大勢の人が死んで、生き残った人達は家族を奪われて・・・・・・罪なんてない人達なのに、あまりにも可哀想・・・・・・」

「そうね。でも、私達はできる限りの事はした。それ以前に今回の戦いで、私達はまともに戦える戦力を失ったわ。不知火がこれからどうなるのか、不安で仕方ないわね・・・・・・」

 千夜は蒼真とほとんど同じ事を口に出し、夜の空に浮かぶ丸い月を見上げた。

Re: 逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】 ( No.39 )
日時: 2019/07/29 08:13
名前: マルキ・ド・サド

 翌日・・・・・・


 昨夜の戦から1日近くの時が流れた。時間は夕方、暗雲が空を埋め尽くし、夕日の光は差し込まない。遠くでは雷鳴が轟き、まるでそう経たないうちに雨が降るような兆しだ。不知火の隠れ家は霧に包まれている。風が吹くと、それは雪のような冷たさに変わる。

 道場では、剣道着姿の蒼真が石舟斎を相手に剣術の稽古に励む。カンッ!カンッ!と両者の握る木刀の音が、部屋や敷地に木霊する。浴場では美智子とライゼルが風呂を沸かそうとしている最中だ。竹筒を使い、釜戸に焚いた火力を強め湯加減を確かめる。庭では夕日が守護霊である狼を傍に置き、のんびりと盆栽の手入れをしていた。

「せいっ!」 「とりゃっ!」

 何度ぶつかり合ったか数え切れない硬い刀身を重ねると、2人は短く距離を置き手合わせをやめた。戦いの構えを崩し、互いにお辞儀する。

「蒼真。お前の腕はなかなかだが、いささか力が足りない。強く柄を握って刃を振ってみろ。そうすれば、もっと容易に敵を斬れるだろう」

「有難き助言、感謝いたします」

「少し休め。今度また、稽古に付き合ってやる」

 蒼真は頷いて、汗に塗れた顔を布で拭う。熱くなった体を涼ませるため、同情を出て冷たい霧を浴びた。偶然、庭にいる夕日の姿が目に映り、気紛れに話しかける。

「また盆栽をいじっているのか?」

 背後から聞こえた声に夕日は振り返り、軽く微笑んだ。

「これはこれは、蒼真くんじゃないですか。そちらもまた、剣術の腕を磨いていたんですか?」

「ああ、まあな。たまにはお前も修行に励んだらどうだ?前からお前とは差しで勝負してみたかったんだ」

「悪くない誘いですが、遠慮しておきます。生憎、体を動かしたい気分じゃないのでね。今はのんびりと好きな事に明け暮れていたいんです」

 夕日は礼儀正しく断ると、短い松の枝や葉を切り形を整える。狼の守護霊が細い鳴き声を漏らしながら、蒼真の脚に擦り寄せた。

「相変わらず人懐っこいな。ところで、昨夜生き残った村の連中はどうなった?」

「村人達でしたら、この山に点在する他の隠れ家に住まわせる事となりました。ここならふもとよりも安全ですし、食料にも当分、困りません。ですが、肝心の村の復旧はまだまだ先の話でしょうね・・・・・・」

 蒼真は実に不愉快な気持ちで"そうか・・・・・・"を息をするように吐き出した。

「ちなみに、あいつらはどうなったんだ?ほら、長屋に隠れていた商人と風変わりな夫婦がいただろ?」

「ああ、確か・・・・・・喜平さんと言いましたっけ?それと平八さんと小夜さん。あの人達も別の隠れ家に移りましたよ。災難で苦しんだ人達を喜劇で笑わせているらしいです。辛い時こそ、笑いは元気の源になりますからね」

「あいつらも皆のために戦っているんだな。暇ができたら、ちょっと顔を出してみるか。実を言えば、俺も喜劇は嫌いじゃない。どんなネタを披露しているのか、非常に興味がある。一緒に行かないか?」


 一方、食堂では忠勝とゼイルが鈴音と海李と共に夕食を嗜んでいた。

「和食ってホントうめーな!いくら腹に入れても飽きないぜ!」

 ゼイルはガツガツと白飯とおかずを頬張る。彼の横には米粒が余った丼がいくつも重なっていた。その数は他の3人が食べた分を合わせても、足りないくらいだ。

「おいゼイル、食い過ぎじゃないか?大概にしないと腹壊すぞ?」

 海李が心配になって気を遣うが、彼はお構いなしに凄まじい食い意地を見せつける。

「あはは、とても大怪我した人とは思えないね・・・・・・」

 忠勝も呆れて苦笑を浮かべた。

「へへっ、あんな程度でくたばるようじゃ、フリートの名が泣くぜ!あの妖怪、俺を殺したきゃ食い殺すか、体を引き裂くべきだったな!」

 ゼイルは痛い思い出をゲラゲラと愉快に笑い飛ばす。不意に戸が開き、ファゼラルがやって来た。少し容態が悪そうだが、怪我はほぼ完治したらしく具合もよさそうだ。

「あ、ファゼラルくんだ!」

 鈴音が嬉しそうに言って、4人の視線が彼に集う。

「おお!ファゼラルか!こっち来て座れよ!」

 ファゼラルは静かに頭を縦に振ると、言われた通りゼイルの隣の席に着く。

「お前が死んじまうんじゃないかって、不安で仕方なかったぜ。刺された所はもう大丈夫なのか?」

「ええ、霊石の力で傷を癒しました。痛みもないし、気分もいいですよ。皆さんには多大な心配とご迷惑をおかけしてしまいましたね・・・・・・」

 忠勝が"そんな事ない"と気を落とすファゼラルを慰める。

「迷惑だなんて・・・・・・皆、ファゼラルがよくなって凄く喜んでる。僕は君が黄泉に行かずに済んで、心の底から安心したよ」

 海莉も続いて

「忠勝の言う通りだ。自分に責任を感じる必要はない。戦をすれば当然、死人や怪我人が出る。下手すりゃ、俺だって命を落としかねなかった」

「ファゼラルくんが助かった時のライゼルさんの喜びようったらもう・・・・・・!嬉しさのあまり、泣きながら私に抱きついたんだよ。皆だって、きっと同じ気持ちだった」

「皆さん・・・・・・ありがとうございます・・・・・・!」

「おっと、礼なら蒼真に言ってくれ。お前を救うために霊石を探して色々と駆け回ったんだからな」

 ゼイルが笑って、蒼真の活躍を告げる。

「蒼真さんが・・・・・・?そうだったんですか。後でお礼を言わなきゃいけませんね」

 すると、また元が開いて誰かが食堂に足を踏み入れる。次にやって来たのは千夜で深刻そうに、緩みのない生真面目な表情を繕っていた。

「あんた達、ここにいたのね」

「千夜か。お前も腹減ったのか?こっちに来て何か食べろよ」

 ゼイルの誘いを否定し、ある知らせを告げる。

「石舟斎様が皆に大事な話があるそうよ。夜になったら、全員道場へ集合してほしいと・・・・・・この事を忘れないようにね?」

 千夜はそれだけ言って、そそくさと食堂から立ち去って行った。

「大事な話って何だろう?」

 鈴音が首を傾げ、誰に問いかけるわけでもなく言った。

「さあ・・・・・・しかし、石舟斎様の事ですから重要な話になるのは、まず間違いないですね。もしかしたら、これからの任務に関する事でしょうか?」

 ファゼラルがこれからの展開を予測し、海李がどうでもよさそうに

「さあな。不知火はもう、壊滅寸前だから任務なんかないんじゃないか?組織の解体を告知されるとも考えられるぞ?」

「え!?不知火がなくなったら、私達はどうなるの!?」

「とにかく、夜になったら道場に行こう。ファゼラルが言った通り、重大な任務を言い渡されるかも知れないね」

 焦る鈴音の態度を和らげ、忠勝は呑気に残った夕食を全て平らげた。箸を茶碗お前に置くと、満足そうに手を合わせる。

Re: 逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】 ( No.40 )
日時: 2019/08/04 20:34
名前: マルキ・ド・サド

 あれから一時の時間が過ぎ去り、夜は訪れた。不知火の精鋭達は薄暗い廊下をぞろぞろと渡り、予定通り道場に集合する。道場には弱い灯が灯され、石舟斎と昌幸が皆の到着を待っていた。2人の後ろの壁には大和ノ国の全体が描かれた地図が。

「来たな。忠勝、全員揃っているか?」

「はい」

 忠勝は肯定の返事を返し、仲間が並ぶ背後を振り返った。

「皆、よく集まってくれた。これから大事な話をしようと思う。好きな所に腰を下ろしてくれ」

 石舟斎は忠勝達を座らせ、昌幸の隣に立った。

「お前らをここに呼んだのは他でもない。これからやってほしい任務の内容を伝えるためだ」

「任務?」

 鈴音が首を傾げ、石舟斎は話を続ける。

「お前らも知ってると思うが、4年前の本能寺襲撃の失敗で死を免れた信長は妖の力を使い 天下を手中へ納めた。奴がこの国の支配者となった現在、国には怪異が溢れ民草(人民)はその餌食となり、その多くが怯えながら暮らしている。このまま奴の意のままにしておけば、政は悪化する一方だ。今よりも遥かに最悪な時代が訪れるのは間違いないだろう。それだけは、何としてでも阻止しなければならない」

 石舟斎は一層鋭く、眉を顰めた。

「そして、逢魔が時になると、どこからともなく聞こえてくる何者かの聲。その正体を探ってほしい。俺や昌幸殿の直感が間違っていなければ、これは何かの災いの前触れだと思われる。嫌な予感がして、仕方ないんだ」

「聲って、夕方になると聞こえてくる女の子の聲だよね?」

「ああ、さっきも稽古に励んでいたら、聞こえてきた。しばらくしたら、聲は止んだが」

「助けて・・・・・・苦しい・・・・・・とか、いつもそんな言葉を響かせてるよね・・・・・・本当に気持ちが悪い・・・・・・」

「あの聲は決まった時間に国に各地で聞こえてきている。あくまでも僕の勘ですが、正体は人間ではありません。恐らく、地上から発せられているものでもない。だとすると、天界からか地界からか・・・・・・こことは異なる世界から何者かが助けを求めているでしょう」

 夕日は謎だらけの案件を独自に推理する。

「あの聲は信長や妖怪の出現と関係があるのでしょうか?」

 忠勝は率直に問いかけるが

「それは分からん。だが、逢魔が時の聲は信長の天下統一の直後に起こり始めた。奴がこの異変に関わっている可能性は否定できない。だからこそ、お前らの力がいるんだ」

 石舟斎の言っている事は、十中八九正しいと忠勝達には分かっていた。だが、誰1人やる気になる者はいない。蒼真が皆が思っているであろう異議を唱える。

「お言葉ですが石舟斎様。あなたはまさか、ここにいる俺達だけで信長を討ち果たせと仰っているのか?不知火は昨夜の戦いで成員のほとんどが壊滅しました。最早、順風満帆な戦など叶わぬことでしょう。更に反論を挙げれば、今の俺達にはかつては強大だった兵力どころか、資源や資金すらも不足している。そんな状態で天下の魔王を討つなど不可能に等しいかと・・・・・・例えるなら、人間の赤子が鬼に楯突くようなもの。逢魔が時に度々鳴り響く聲の件に関しても、悠々と調べる余裕がありません」

「蒼真くんが捉えた意味が本当なら、僕もその考えには同意いたしかねます。あまりに荷が重すぎますし、ここにいる人数だけで織田政権に立ち向かうのは一言で結論を出せば無謀です。石舟斎様の気持ちは僕達も同じですが、ここは衝動的にならず機会を窺いながら別の策を練った方がいいでしょう」

 冷静な判断を仰ぐ夕日に続いてゼイルも

「俺も無鉄砲に突っ込んでいくのは反対だ。信長を敵に回すって事は、この国自体を敵に回すって事だからな。勝てない戦に挑んだところで、惨めに犬死するだけだろ?死ぬのは嫌じゃない。だけど、無意味に命を散らせと言うなら話は別だ」

 と精鋭達は次々と最早文句とも受け取れる反論を並べる。忠勝だけが1人、何も言わず黙っていた。

「確かに、今の状態で信長に挑んだらこっちの全滅は確実だ。だが、俺も酔狂でこんな事を言いだしたわけじゃない。ちゃんと手は用意してある。昌幸殿に計画があるそうだ。当人から内容を説明してもらおう」

 昌幸は一歩前に出て、より真剣な態度で忠勝達を睨んで見下ろした。

「妖怪を野に放ち、天下を誑かす信長を抹殺しなければこの国に泰平の未来などない。奴の野望がもたらす悲劇はいずれ、外つ国にも飛び火するだろう。だが、皆も申す通り、今の不知火だけの戦力では勝機がない事もまた事実。ここはまず、組織の復旧に専念すべきだ。それには兵力、資源、資金、これらを補う必要がある」

「酔狂じゃないなら、どこかに当てがあるんですね?」

 ファゼラルが期待を芽生えさせながら問いかける。昌幸は後ろに用意した地図の方へ行き、九州の地方を指で丸くなぞった。

「九州を治める島津家を頼るのだ。あの地方を治める一族を味方につければ、不知火にとっても大きな助けとなるだろう」

「冗談だろ?いくらいくら義理堅い島津家と言っても、あいつらはとっくに信長の属軍にに成り下がってる。信用しろって方が難しいぜ」

 海李は納得いかず、口を尖らせる。

Re: 逢魔時の聲【オリキャラ・イラスト感謝!】 ( No.41 )
日時: 2019/08/17 20:45
名前: マルキ・ド・サド

「左様、かつては名を轟かせていた武将達は今や信長の配下だ。だが、全てが奴に忠実というわけではない。むしろ、反感を持つ者の方が多いと言える。特に島津一族は織田政権に対し、相当な不満を抱いているのだ。反乱を起こそうと密かに兵を集めているという噂もある。しかも、あの地は海外貿易が盛んなうえ、資源も豊富だ。この好機を逃す手はない」

「なるほど。少なくとも、あたし達にはまだ希望が残ってるって事ね」

 ライゼルが普段と変わらない喋りで軽く笑みを繕う。

「まずは島津家の当主、『島津義久』殿と対面し、協力を申し出るのだ。されど、ただで褒美をくれるほど、お人好しな男ではない。見返りを要求するなら、あちらも条件を持ちかけて来るはずだ」

 石舟斎も昌幸の意見を助長し

「俺達には一刻の猶予もない。お前らには不知火復旧の第一歩として九州に向かってほしい。反対したい奴はいるか?いるならここに残るか、組織を去るか、好きにして構わん」

「俺は行くぜ」

 最初に肯定の返事を返したのはゼイルだった。

「やられっぱなしの生き方は性に合わねえ。例え、微塵でも敵に勝てる望みがあるなら、俺はその望みに賭けたい。それに組織がなくなっちまったら、忠勝とも武を競い合う事もできなくなっちまうしな」

「私も行くわ。何もせず、信長の凶行をただ指をくわえて見てるだけなんて耐えられない。私は兄の仇を討つと誓った。その思いが叶うなら何でもするわ」

 千夜も強く賛成の意を示した。

「私も最後まで諦めない!皆だって本当は嫌でしょ!?悪い奴が罪もない人々を苦しめる世の中なんて!それを正せるのは私達しかいいない!今までもそうしてきたように、また皆で戦おう!ここにいる皆が力を合わせれば、きっと勝てる!」

 鈴音の鼓舞に精鋭達は心を惹かれ、"そうだ!"、"その通りだ!"と次々と気合いを入れ始める。そこには軟弱だった情けない面影はなく、不知火の本来の姿を取り戻したかのようにも見えた。

「決まりだな。だったら、これ以上事態が悪化しないうちに、いち早く九州に向かおう。目的地には紀伊国(現在の和歌山県)から船に乗って向かった方がいい。毛利の海域を渡航するのは危険、四国の南を通った方が安全だろう」

 蒼真は九州への経緯を個人で計算するが

「まあ、待て。皆の心が1つに団結したのは嬉しいが、まだ忠告すべき点が残っている。はっきりと言えば、これが最も重要な問題だ」

 それを聞き、忠勝の盛り上がりった勢いを鎮め、再び緊張感のある雰囲気を作った。その件に関しても、またしても昌幸の口から内容を告げられる。

「織田の領地に出向けば無論、敵が待ち構えているだろう。だがしかし、本当に厄介なのはただの武士や凶暴な妖怪などではなく、『仮面の妖達』だ」

「仮面の妖達?何者なんですか?」

 初めて耳にする名前に美智子は目を丸くして聞いた。

「信長の配下には人の姿をした強力な妖達がいて、国の各地で人間の支配を任されている。誰も奴らの詳細を知らず、唯一の情報からして人数は合わせて7人、全員が仮面で素顔を隠しているという事だけ。一部の者からは『七天狗』とも呼ばれている」

「七天狗だと・・・・・・?そいつらが織田政権を陰で支えてるって事か?」

 腕を組み、独り言を零す海李。忠勝は姿勢を変え、蒼真に問いかける。

「ねえ、蒼真は色々なものに知識があって詳しいよね?何か知らない?」

「期待に背くようで悪いが、俺もその七天狗については全くの無知だ。しかし、人の姿に酷似した妖怪は『高等妖怪』と呼ばれ、人間が束になっても及ばない卓越した頭脳と戦闘能力を備えているらしい。数百万の妖怪から1人の割合で生まれ、その戦力は強大。千人の鬼に匹敵するそうだ」

「人型の妖怪ってそんなに強いの!?」

「正に地獄から生まれた化け物の中の化け物だな。鬼や大蜘蛛を相手にするのとはわけが違う」

 恐怖に戦いたか、武者震いか・・・・・・ゼイルは握った拳を小刻みに震わせる。彼とは裏腹に千夜は動揺の兆しもなく、男勝りな態度を取った。

「相手が誰だろうと関係ない。私達の目的を阻む者がいるなら、排除していくだけ・・・・・・」

「私も千夜ちゃんと同じだよ。妖怪が恐くて不知火の精鋭なんて務まらない。それにこっちにだって、鈴音や蒼真という心強い付喪神や妖怪がいる。決して、簡単には引けを取らないわ」

「それと僕達、西洋の魔術師も忘れないで下さいね?」

 ファゼラルがクスっと笑い、ライゼルも任せてと言わんばかりに自信に満ちた面構えを見せる。

「誠に頼り甲斐があるな。石舟斎よ。此奴らは必ず功を立てるであろう」

 昌幸は愉快に大笑いし、石舟斎も同じ思いでこくりと頭を縦に振った。

「明日の日の出が上ったら、お前らは九州に出発してくれ。島津義久殿なら、きっと力になってくれるはずだ。俺はここに残り、昌幸殿と共に他に不知火の復旧に繋がる手段がないか探す。忠勝、お前が部隊の頭領になって皆を束ねるんだ。それから、全員無事に生きて帰って来い。頼んだぞ」

Page:1 2 3 4 5 6 7



題名 小説をトップへ上げる
名前
E-Mail
URL
パスワード (記事メンテ時に使用)
コメント

現在、0文字入力(半角/全角/スペースも1文字にカウントします)


  クッキー保存