複雑・ファジー小説

【リレー企画】セイテンノカゲボウシ
日時: 2019/01/09 13:52
名前: マッシュりゅーむ  (fuaru0696@gmail.com

こんにちは!マッシュりゅーむです。(正確にはおまさの中の人の友達です)「アイツに友達がいたのか!?」という疑問はさておき。
今回の作品は、リレー形式で進めていきたいと思います。リレーは初めてなので、皆様にご協力いただいて面白い物語になればいいと思っています。
ではでは、楽しんでいってくれたら幸いです!


注意:以下に注意してください。
・コメント等は差し控えてください。



…以上ッ!!

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Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.55 )
日時: 2019/08/02 21:35
名前: ANIKI@プロメア ◆6xvrxzWXxs

こんばんは。横から失礼します。

>>54
URLから[h ttp://]が抜けてるので、クリックしてもアクセス出来なくなってますよ。

Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.56 )
日時: 2019/08/03 07:23
名前: おまさ

ANIKI@プロメア様、ご指摘ありがとうございます。修正いたしました。

 今後もこの作品をよろしくお願いします。


・・・ほのぼの企画?い、嫌だなぁ忘れてるわk

Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.57 )
日時: 2019/08/07 02:52
名前: marukun

世界がスローモーションに切り替わる様な感覚と、背筋に寒気が走り自分の首に鎌が迫るのが見える。
(マズイマズイマズイ!どうする?この状況を打開するにはっ!)
しかし、遅いとはいえ鎌は着実に私の首に迫ってくる。
それがさらにレナを急かし、慌てさせる。
『主よっ・・・』
天の声キターーーー!!
『すまんが主の期待には添えん。この一撃を防ぐのが手一杯だ、後は貴様だけでっっ・・・−−−−−−−−−−−−』
いきなりフォスキアとの繋がりが途切れ反応が消える。
そして鎌の刃は私の首に数ミリまで迫る。≪カゲノギシュ≫から≪カゲノホコ≫が生成され、鎌の攻撃を薄皮一枚で防ぐ。
そのまま私は吹き飛ばされ、家屋の壁に激突する。
「カッッハ…」
痛みで意識が飛びかけるが、辛うじて保つ。
とりあえず防げたケド…
どうするか…フォスキアは反応ないし…目の前の女の人強そうだし…
どうする!?

Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.58 )
日時: 2019/08/10 13:21
名前: おまさ

どうする。

その言葉だけが延々と頭の中を廻り、空転する思考回路には言葉と裏腹に何の解決策も浮かんでこない。
重苦しく正面を見据えると、未だに凄まじい〈カゲ〉の奔流が流れる鎌を片手で軽々と持ち、少女がゆっくりと近付いて来ている。
穏便に事を進めようと会話を試みたが、それはどうやら状況が許さないらしい。
「・・・やむを得ない、か」
全身打撲に軋む左腕を僅かにあげ、私は〈カゲ〉を漲らせた。
ヘイズと一緒にいた三人の少女、そのうちの一人である大鎌を持った彼女も、恐らく〈カゲノミコ〉だ。まともに張り合えばたとえこちらが万全状態でも勝ち目はない。ボロボロの今の状態なら尚更だ。
ーーーーーーー〈ミコ〉に勝とうなどと傲慢もいいところだ。故に私は、彼女は倒さない。

ただ、今は会話できる時間を作れればそれで良い。たとえ、肺腑を潰されようと。私は、重い頭を持ち上げて決死の覚悟を決めた。
そして、左手から〈ツルギ〉を捻り出そうとーーーーー、



「ーーーーーっソ・・・・・・・ッ」

身体が、言う事を聞かず頭から前に倒れこんだ。
ーーー今もパチパチと音をたてている戦禍の炎が、私を嘲笑っているようにも聞こえた。


「ーーーー。」
警戒していた相手が、仕掛ける前に崩れ落ちた様子を、ディレカートは目を眇めて見つめる。恐らくは重度の脳震盪。まだまともに立ち上がれないだろう。 今のうちに拘束して、洗いざらい吐かせる事も出来る。
ーーーディレカートが攻撃をしたのは、一旦距離を置く為だ。少し様子を見て、そこから質問をし判断をつけるつもりだった。
だが、一撃で片付いてしまったのは結果としてまあ、しょうがない。まさか死んではいないだろうから、ユグルのところに連れて行って、治療した後に尋問することにしよう。

ディレカートは、〈カゲ〉への適性がない。

大気中から〈カゲ〉を取り込んだり、それを体内で循環させることに関しては問題ないのだが、ディレカートはその〈カゲ〉を形にして術を行使できないのだ。もっとも彼女の場合、常人よりもはるかに多くの量を取り込めるが、「月桂樹の鎌」に流す量が膨大なのと、身体能力の強化に回っている為実害は無いのだが。
故にディレカートは治療術を行使できない為、ユグルに任せるのが最適解ーー、







「!!」
飛んできたものをディレカートは勘で回避。吃とそれが飛んできた方向を見つめ、目を疑った。






































ーーーーーーーー昏倒していた異邦人が、僅かに狂気に染まった笑みを浮かべ、ナイフを投擲していた。




時は、私が倒れた時に遡る。


「ーーーーぁーー」
どんどん視界がぼやけ、暗くなっていく。
周りの音は、少しずつ遠ざかって行って、代わりに私を受け入れるのは暗澹とした世界だ。
ーーー溺れれば、意識だけではなく命まで消えていく。直感がそう訴えている。

脳内に鳴り響く警鐘の音すら置き去りに、私の意識は闇に沈もうとしていた。その時だ。

「ーーーーあれ、いつまで無様に伏せってるつもりなん??」

頭蓋に無遠慮に響く他人の声に、沈みかけていた私の意識は飛び上がった。
「だっ、誰ぇ?!」
「そんな驚かんでも。それに、今からウチは名乗るとこやったんやよ」
能天気な幼い声が返った。姿形は見えない誰かと会話しているようだ。
そして今、自分がいるこの暗い空間は何だろう。多分、かつてフォスキアと直接言葉を交わした場所と近いものだろうと想像はつくが。
「姿が見えない・・・って事は・・・まさか幽霊!?私ひょっとしてもう死んでる!?」
「出会って五秒で人を〈ゲア〉扱いやなんて、随分とご挨拶やね?ま、それに近いもんではあるんやけど」
少し話して見て分かったが声は幼いが喋り口は結構大人らしい。余韻のため方や会話のテンポも、声とのギャップがある。
「じゃ、ロリババアってこと?・・・ノーランさんが興奮するのは一人で十分なのに・・・」

「ーーーー考察の途中やけど、そろそろウチにも喋らせてんか?」

一人で騒いでいたら、相手の声音に凄味が増してきたので思わず押し黙った。すると相手は「ええか?」と前置きして、
「まずウチは、アンタさんに敵対するのとちゃうよ?付け加えれば、今アンタさんの目の前にいる子とも無関係や」
「・・・敵じゃ、ない・・・?」
「せや。むしろ味方、と言いたいんやけど、生憎ウチはアンタさんに会ったばっかりや。信頼しろ言うても疑われるんは分かる」
事実、相手は未だ姿を見せていない。まだ敵と見做すのは少々気が早いが、かといって味方と見做すにはあまりにも相手と接していない。私は取り敢えず、様子を見ることにした。
「せやけど信じて欲しいんや。ーーーウチはアンタさんが誰で、何処から来て、向こう側の世界で何をしてきたんか全部知っとる」
「ーーッ!?」
私を、この世界に召喚したのは川本江と名乗っていた青年だ。私はそう仮定しているが、果たして異世界召喚は、たった一人でできる事なのだろうか。
確かに、奴の戦闘力は〈ミコ〉のそれと拮抗すると聞いた。しかしだ。奴とて一人の人間だ。できることには限度がある。私のように一人で世界を渡ってきたのならまだしも、実里と嵩のように個々で渡ってきた可能性を考えにくい二人が、一緒に送られることだってあるのだ。つまり、
「召喚には、関係者がいる・・・?」
「ま、そんなところやね。因みにウチもそのうちの一人やったんやけど、無理くり手伝わされてはったんや」
点と点が結び付く。
召喚には関係者がいて、異世界から人間を集めている。川本江はそのうちの一人で、協力者は恐らく数十人規模の優秀な〈カゲ使い〉。その数十人の人間が目的を同じにして人間を呼び寄せている・・・?


そう考えると、今自分が話しているのは〈カゲ使い〉何だろうか。
「いんや。ウチは人間やないかな。と、そや。アンタさんに姿見せるの忘れてはったわ」
考察にやや強引に割り込んだかと思うとーーー突如、目の前に光が現れた。その輝きに思わず目を細め、光が収まると私は目を開ける。

「どーや」

光があったはずの場所に立っていたのは幼い少女だ。浴衣というか巫女服に似た装いに、黄の色彩の混じる長い髪。よく見ると頭には狐のような耳があった。体躯は小さく、外見年齢は10歳から12歳といったところか。これが所謂ケモ耳なのだろう、と私は思った。
ーーーー そして、彼女からは膨大な量の〈カゲ〉の奔流が感じられる。その量、フォスキアにわずか届かないが、とてもじゃないが普通の量ではない。

「人間ではない」という彼女の発言、とてつもない〈カゲ〉の流れ。ここから推測するに、
「・・・貴女は、〈カゲボウシ〉なんですか・・・?」
「いんや、ちょっと違うかな。正確にはウチは、〈カゲノチミ〉って呼ばれとる種族や」
また新たな単語が出てきたが、〈カゲノチミ〉とは文面から推測するに〈カゲ〉を纏った魑魅魍魎の類のものらしい。よくあるファンタジーの世界観でいうと、〈カゲボウシ〉が精霊ならこちらは微精霊、という立ち位置なのだろうか。
よく実態がつかめていない私の内心を悟ったのか、「あのな、」と少女は座り直した。
「〈カゲボウシ〉言うんは、稀にできよる大気中の〈カゲ〉の溜まり場が数百年かけて周りの〈カゲ〉を取り込んで、最終的に一気に収束して生まれるんよ。ただ、溜まり場の周りの〈カゲ〉が不足したりしよると稀に生まれるもんがある。それがウチらや」
そう言うと少女は自分の狐の耳を撫でた。
「〈カゲ〉が不足した環境で育ったウチらや、せやからこの耳は空気中の〈カゲ〉の吸い込み口の働きをしとるんやよ」
「〈カゲ〉が不足・・・?じゃあ術の威力は、」
「うん、〈カゲボウシ〉よりかは小さいね。でもまあ、アンタさんのみたいに暴走することはあらへん」
フォスキアの、ことだろう。かつて二度暴走し、それが私の運命を左右した。
「・・・・・まさか、貴女に体の制御を委ねる・・・?でもそうすれば、さっきの人と話す時間が稼げる・・・」
「せや。勿論、奴さんを殺したりはせんよ?ウチは、アンタさんの会話の時間を作るだけや」
なるほど、悪くない提案だ。しかし、しかしだ。本当にこの少女を信頼していいのだろうか。とんだ法螺吹きであれば、取り返しのつかない事態になる。私は、二つの希望の狭間で揺れていた。

ーーーひとつは、この〈チミ〉と協力して運命を打開する方法。

ーーーひとつは、自身で運命に抗い事態を収束させる方法。

でも、選択肢は一つしかなかった。
リスクはある。けどリスクを冒さずして運命様を打破することなどできないと、心の何処かが知っていた。

「ーーーー解りました。制御、お願いします。えっと、」
「?・・・あ、せやった。まだウチ名乗ってへんかったな。ウチの悪い癖や」

そう言うと、狐の少女は立ち上がって名乗った。

「ーーーーーウチの名はデュウ。ーー宜しくな、レナさん」
「こちらこそ、デュウ。・・・あ、呼び捨てで良かったですかね?」
「ええよ、それに、敬語も使わんでええ。長い付き合いやろ?」
「私は今日知ったんだけどね」
苦笑し、手を繋いだ。そうしてから、私はデュウに再び向き直る。

そういえば、まだ聞きたいことがあったんだ。

「なんで、デュウは私が倒れた時に、」
来てくれたのか、と。

言外に含んで言うと、デュウは不思議そうな顔をした。
「なんでって、アンタさんが呼びはったんやろ、ウチを。それにウチだけやなく、他の子らもウチについてきたで」
「え、っ?」
「自覚してへんの?ーーー言っておくけど、アンタさんのその体質、異様やからね」

私の体質?それによってデュウが来た?
ーーーーーーーーそういえば、フォスキアが来た時もそうだった。

追い込まれて、命だって危なくて、本当に死の淵に追い込まれた時。そう言う時に、フォスキアとかデュウが来てくれたんだ。

つまり、
























ーーーーーーーー私には、無意識に〈カゲボウシ〉や〈チミ〉を呼び寄せる体質があるってこと?




ディレカートは訳がわからなかった。
何故、先程まで倒れていた相手が、鬼気を強めながら立っている。
何故、膝をついてなおも運命に抗わんとする。
全くもって、理解不能だ。
「ーーーーー。」
ちらと後ろを見れば、ユグルたちがーーーヘイズまでもが驚きに目を見開いている。誰もがただ、驚愕の目で目の前の異邦人を見つめていた。
ディレカートも、改めて目の前の異邦人を見据える。以前は、得体の知れなさに警戒して。
ーーーーーそして今は、己の脅威、敵だと認識して。

その鋭い視線に、異邦人はたじろぐこと無くーー少しくぐもった声で、嗤う。







『ーーーさて、ウチもお役目を果たすとしよか』


Re: 【リレー企画】セイテンノカゲボウシ ( No.59 )
日時: 2019/08/11 14:42
名前: マッシュりゅーむ

「――」
 辺りは先の戦いを暗示するように、散々な有様だった。
 建物は崩れ、炎は燃え移り、街の人々のものだろう、怒号や叫びが響いていた。
 しかし、その事件の発端が最後に処理された場所は、いやに静かだった。

『…そんなに驚く事でもないと思うんやけどなぁ』
 そんな中、発せられた声音は、その場の空気にそぐわない、呑気なものだった。
 10〜12歳ぐらいの若い女の子のくぐもったような声を出したその主に、見た目は大人の女性なので、変に感じてしまう。しかし、その落ち着いた雰囲気のせいで、違和感がかき消されていた。

 その言葉を真正面で聞いていた人――ディレカートは、静かに警戒を最大限に引き上げた。
(自惚れているわけじゃ…ない、けど……。〈カゲノミコ〉の一撃を受け…て、立てる、なんて…)
 心の中では結構喋れる彼女は、その疑問を口にした。
「…何者……?」
『ん?う〜ん、そやなぁ…』
 何かを考える素振りを見せた名前知らない――名乗っていたようだが、集中していて聞いていなかった――女は、スっ、と顔を上げて、にやりと笑って言った。
『ウチは……唯の好戦的な、紅狐やよ』
 瞬間――

「――ッ?」
 視界から女が消えたと思ったら、死角から鋭い突きが迫った。
 それを、――突然の事で多少は驚いたが――鎌で押し返しながら冷静に対処する。押し返した反動で後ろに下がった。
  
 女は、いつの間にか顕現させていた長剣を右手で、先程投擲してきたナイフよりも少し長い短剣を左手で弄びながら口を開いた。
『さすが、〈カゲノミコ〉やねぇ。完全に死角やったはずなんやけどなぁ。ま、想定内やから別にいいんやけど』
「…どう、もッ!」
 今度はディレカートの方が攻撃を仕掛ける。手にある鎌をくるりと一回転させながら一息で間合いを詰め、横薙ぎに一閃。
 しかし、女は後退せずにそのまま踏み込み、刃の射程圏内から外れると、近距離で短剣の突きを放ってくる。
 だが、日頃から鎌を使った戦いをしているディレカートには、そんなことは想定済み。鎌の内側に向いている刃の部分に意識的に〈カゲ〉を集め、爆発させようとする。
 それに一拍遅れて気付いた女は急いで離脱しようとしたが、遅い。

「食らって…!」
 もはやそれは懇願に近かった。そして、爆風を受けた女と、女を盾にして自分は免れたディレカートは、一緒に吹き飛び、転がる。
 そして先に起き上ったディレカートは、少し離れた、あの女が転がっていったであろう場所を注視する。
 もくもくと砂埃が舞う中、晴れた先には――
「…っ!?いな…い?」
 ――そこにいるはずの女はいなかった。そして、

『――ちょっと〜、危ないやないの〜〜』
 その声は、真下から聞こえてきた。
 瞬時にその場から飛び退く。しかし、それは回避の意味をなさなかった。
 ズサッ!という音と共に、ナイフがディレカートの影から現れた。
 首をひねるが、微かに頬を掠り、そこから血が垂れてくる。

「ッ!」
『よっこいしょっ、と』
 鋭い痛みに顔をしかめる中、少し遠く離れた建物の影から、あの女が何事もなかったように、這い出てきた。そして、顔をこちらに向けると、ムッ、とした表情で口を開いた。
『自分も巻き添えに、なんてようやるわ。そんなことばっかしてると、こんな風に――』

 そこで、女はこちらに駆け出してきた。
 今の出来事について考える暇もなく、こちらも応戦しようとディレカートも向かう。
 女の手が一瞬、ぶれたような気がしたが、気にせず戦に身を落とす。袈裟斬り、上段、突き。下、左、下、右、上。高速で交し合うその剣技は、いっそ美しい程でもあった。
 
 と、ふと女の左手にあった短剣が無くなっていることに違和感を覚える。ここまでの斬り合いはすべて右手の長剣で行っていたのだ。
 そして、鎌と剣のぶつかり合う金属音が鳴り響く中、女がふと下から上に斬り上げようとしてきた。それを防ぐため、鎌を下に向ける。と、――

「?」
 刃と刃が交わった時、ぎゅん、と女が長剣の向きを変えて、鎌を上から抑え込む形にした。そこで、一瞬固定されてしまった。そして、その一瞬は、女にとって十分な時間だった。

『こんな風に――負けてしまうんよ?』
 にこりとしながらその言葉が言われると同時に、頭上から短剣が落ちてくる。そう、女が走り出した直後、手がぶれたように感じたのは、短剣を上に投げていたから。そして、その落下地点を予想し、その位置までディレカートを誘導した、ということだ。

 凶器が迫る中、ディレカートはこの女の手のひらで踊っていたと理解し唇をかみしめる。そして、さすがに首を切られてはマズいので、鎌を翻し、短剣をはじく。その間無防備になってしまうが、ディレカートにだって体内の〈カゲ〉を体全体に巡らせて、耐久力を上げることくらいできる。さらに体の前方にだけ集中させれば、後ろの防御は出来なくなるが、前方の防御力をもっと上げることが出来る。
 剣に斬られるならこのくらいが丁度良いだろう。
 そして、来たる斬撃に耐えようと――

『――防御する場所は、ちゃーんと考えないとあかんよ』
 その言葉が聞こえた時には―――〈カゲ〉を纏わせた全力の回し蹴りが、ディレカートの横腹を貫いた。

     *     *     *

 ――時は、ディレカートとレナの戦いが始まる直前に戻る。

「ディレの、攻撃を、凌いだ…?」
 驚きを隠さないディレカート以外の3人の〈カゲノミコ〉は、ユグルの呆然とした声で意識を取り戻す。
「すごいなぁ、やっぱり君の子というべきかな?ヘイズ」
「え、じゃあ、あの子がヘイズの言ってたレナって子?」
 ファグの言葉にそうなのか、とヘイズの方を向くユグル。しかし、レナのことをこの中で一番知っているヘイズは、少し考えたあと、首を横に振った。

「え、違うの?」
「…ぅ……ぇ…」
 少しずつ声を出せるようになってきたヘイズは、頑張って自分の思ったことを口にしようとする。
 しかし、何度も声を出そうとするが、かすれたものしか口から出ない。
 困ったユグルはファグに助けを求める。
「う〜ん、どうする?ファグ」
「そうだね…『シャーナー』を使うか」
 思わぬ単語が聞こえたので、ポカンとしてしまうユグルとヘイズ。
 それに気づいたファグは、「そうだね」と言って、言葉を続ける。

「『シャーナー』にはね、取り付けると言いたいことを変わって言ってくれるっていう、機能があるんだよ」
「へぇ……」
 『シャーナー』にそんな便利な機能があるとは、と、感心したように今もファグの髪の上に乗っている髪飾りを見るユグル。

「じゃあ早速……」
 と、自分の手で『シャーナー』を取り外し、ヘイズに着けてあげるファグ。
「うん、可愛いじゃないか」
『余計なお世話じゃ……おぉ!』
 ファグの軽口に反射的に反応したヘイズは、ちゃんと喋れている事に感嘆の声を上げた。
 
「で、それで彼女がサトウ・レナではないというのはどういうことかな?少なくともボクは記憶力には自信があるのだが」
『あぁ、そうじゃな。実際はレナなんじゃが……、中の人格が変わっておる』
「えーと、じゃあ彼女の〈カゲボウシ〉が舵を切ってるってこと?」
 ユグルの言葉に首を振るヘイズ。
『いや。レナの〈カゲボウシ〉がディレに斬られたのは見たじゃろう。だからあれはまた別の〈カゲボウシ〉……いや、《陰影量》がちと不安定じゃな………〈チミ〉か』
「ちみ?……もしかして〈カゲノチミ〉のこと!?」
「へぇ、〈チミ〉か……レア中のレアじゃないか」
 ヘイズの予想に、ユグルは驚嘆し、ファグは面白そうに顎をさすった。
 
 と、その時丁度、レナが建物の影から出て、何かディレカートに話していた。
「【潜影】も使えるの!?」
『なかなか強力な〈チミ〉じゃな』
 ヘイズとユグルが戦力分析をしている横で、ファグが微かに目を瞠り、考え込む。
(【潜影】が使える〈カゲノチミ〉…?どこかで……あぁ、もしかしてアイツのとこの…。フフ、面白いこともあるんだな)

「ファグ?聞いてる?」
 心の中で笑っていると、ユグルから声を掛けられた。
「ん、あぁ、すまない、何かな?」
「大丈夫?…〈チミ〉だとしてもディレには流石に勝てないと思うから、危なくなったら私達も止めに入りましょ」
「あー、多分、その心配はいらないと思うよ」
 ヘイズとユグルが眉を顰める。まぁ、見ててみ、と、片目をつぶるファグ。
 何を根拠に、とユグルは訝しむが、すぐに目を見張る事となる。

 ――ディレカートとレナの勝敗が決した、数秒前の出来事だ。

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