複雑・ファジー小説

今日の宿題:明日までに人間を殺してください
日時: 2019/06/15 01:48
名前: 塩鮭☆ユーリ
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1173.png

拙作ですが優しい目で見守っていただけると幸いです。(*- -)(*_ _)ペコリ
表紙のURLを貼っています。よければ見てください。

☆粗筋

ーー「キミは、死神になる才能があるよ」
 孤独な少年の前に差しのべられた救いの手は、死神のものだった。

 死神の学校へと通うことになった少年は、死神になるべく日々勉学に励むがーー。
 ある日、恐れていた課題が出される。

「明日までに人間を殺してください」

 少年の決断はーー。



中学生です。
すみませんが、テスト期間などの場合は更新が遅れがちになります。
スローペース更新ですが感想などをいただければ泣いて喜びます。

☆目次

プロローグ >>01

第1章 シニガミガッコウ

第1話 グランドピアノ >>02
第2話 黒いローブ   >>03
第3話 死神の鎌    >>04
第4話 またひとつ   >>05

Page:1



Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.1 )
日時: 2019/06/07 17:01
名前: 塩鮭☆ユーリ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12560

☆プロローグ

 俺は父親が嫌いだ。
 いつも笑顔で、そのくせ平気で人を傷つけることができる父親が嫌いだ。大嫌いだ。父親の血が俺の中に半分流れているのだと思うと、自分の血管を噛みきりたくなる。

 俺も母もただ黙って暴力を受けていた。母は俺を何度も庇うので、体中にあざができていた。痩せていて、それでも家事を黙々と進める母に、俺は尋ねた。

 どうして、離婚しないのかと。

 母は悲しそうに笑った。
 とてもとても、悲しそうに笑った。

「ごめんね」

 ただ、そればかりを言っていた。
 その悲しそうな笑みばかりが目に浮かぶ。

 ある日、酔った父がいつもより酷く母をぶった。
 俺は父の前に立ちふさがった。すごく怖くて、殺されるんじゃないかと思ったけど、それでも母を守りたいと思ったのだ。
 ーーしかし、酔った父が俺に向けたのは、拳でも怒りでもなく。

 同情だった。

 俺を哀れむ瞳に背筋が凍りつく。何故。何故俺を哀れむ。哀れむなら俺が父に、だ。暴力をふるうことしかできない父にだ。
 なのにどうしてーーそんな可哀想なものを見る目で見るのだ。

 俺は、ちっともーー。
 可哀想なやつじゃない。
 母から愛されているし、いつも怯えて生活はしているが、それでも父に可哀想だと思われる要素が見当たらない。怯える原因は父にあるのだから。

「可哀想に……誰にも必要とされずに」

 心から哀れむ声に、俺はゾワゾワとしながら後ろを振り返った。
 母が、狂ったように泡をふきながら俺を憎々しげに睨み付ける。

「愛してるわ。愛してるわ……××。だけど私はあなたを産まなければよかったと思うの……そうすれば、こんな風に壊れることもなかったのに。あの男の血がどうしてあなたには入ってないの?あなたの血の半分が夫のものだったらよかったのに」

 ーーガキリ。

 何かが壊れた。

 そうか。
 今まで俺の半分の血はこの父親のものだと思っていたが母の不倫相手のものらしい。それで母は父に暴力をふるわれているのかーーしかもそれを甘んじて受け入れている。
 あぁ。そうか。

 ーー俺は。

 愛されてはいても、生きることを望まれてはいないんだな。
 できるなら、今すぐ殺してしまいたいに決まっている。邪魔だ。障害だ。

「……ッ」

 視界がゆらぐ。
 ダメだ。
 ここで泣くなんて、できないーー。
 居たたまれなくなって、俺は家を飛び出した。
 追いかけては来ない。
 当然だ。
 彼らは俺が飢え死にすることを願っているのだから。

 俺は、死ぬことでようやく親孝行できるらしい。
 乾いた笑みがおかしく張りつく。ねばっこい感情よりも先にどうしようもなく涙が溢れそうになる。
 ーーダメだ。
 夜遅いとはいえここは大通り。人前で泣くことなんてできない。
 路地裏へ駆け込む。

 じっとりとした空気に晒されながら、俺は頬に冷たいものが伝うのを感じた。

「そこの泣き虫さん」

「っ」

 人に見られてしまったか。恥ずかしい。俺はぱっと涙をぬぐって声のしたほうを見る。

 白い髪の少女が立っていた。
 彼女の持つ銀色の鎌が月の光をうけて鈍く光った。

「キミは、死神になる才能があるよ」

 それは、死神からの死神の世界への招待状だった。

Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.2 )
日時: 2019/06/07 17:18
名前: 塩鮭☆ユーリ
参照: http://www.kakiko.info/upload_bbs3/index.php?mode=image&file=1174.png


第1章開幕記念イラストをURLで貼っておきます。
よかったら見てください。



☆第1章 シニガミガッコウ 第1話

 ガシャン。グシャン。ドシュアアアン。

「五月蝿いッ」

「あーごめんごめん。ちょっと練習してたんだけど、うまくいかなくって」

 寝起きの頭で確認する。
 広大な屋敷の中で最も大きい応接間。その中央で、白い髪の美少女がグランドピアノを弾いていた。一見、幻想的なものがあるが、音がピアノのそれではない。

「どうやって弾くんだろ、これ」

 首を傾げる美少女ーーファミを軽く睨む。
 一週間前、ファミの弟子にされてからというもの、俺はこの屋敷で寝起きしていた。一応健全な十二歳であるし、美少女とひとつ屋根の下、というものにドキドキしたのも事実だ。

 ーーしかし。
 ファミがこんなんである以上、ドキドキするようなことはおこらず、やぼったいオーバーオール姿で毎夜「ちょっくら人狩ってくるわー」なんて言いながら出かけていく彼女を見送るだけが俺の仕事である。

 弟子らしいことは何もしていない。
 掃除洗濯料理など、家事はファミ曰く『使用人』の幽霊たちがしてくれる。無口で無表情なため、遊び相手にはならない。
 なんとなく屋敷から出るのも嫌だったし、俺は一週間ほんとうにゴロゴロと過ごしただけである。

「貸してみ」

 ポロン、ポロロン。

 指をはしらせ、ピアノを弾く。
 普通の音が出た。やはり、ファミが悪いだけで、ピアノに異常は見られないようだった。

「すごいな」

 ファミは感嘆のため息をつく。
 素直な言葉に俺は居心地が悪くなって目を背けた。

「これくらい、誰でもできる」

「ピアノは習っていたのか?」

「……今思えば、俺が家にいるのが目障りだったからなんだろうが、習い事だけはたくさんさせられていたからな。ピアノもある程度は弾ける。下手だけどな」

 ファミがあまりに期待のこもった目で見てくるので、試しにふと浮かんだ曲を弾いてみる。物覚えは悪い方で、長く習っていたというのに暗譜している曲は多くない。迷う時間はあまり必要としなかった。

 柔らかい春のはじまりを喜ぶ曲で、温かい気持ちになれるメロディ。自然のいきいきとした姿を描いた歌詞に引き込まれたのを覚えている。
 お気に入りの曲のひとつだ。

 弾き終えると、ファミはパチパチと拍手を送ってくれた。

「すごい、すごいよ。キミは才能がたくさんあるんだねぇ」

 照れ臭くなって顔を背ける。
 褒められるのは苦手だ。

「買い物に行こうか。楽器も買ってあげるよ」

 買い物。
 どこからその発想が出てきたのかと問い詰めたくなるほど唐突だが、ずっと出かけていなかったため、その提案は魅力的に感じた。

「うん」

Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.3 )
日時: 2019/06/08 10:48
名前: 塩鮭☆ユーリ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12560

☆第1章 シニガミガッコウ 第2話

 目深に黒いローブを被った俺とファミは、幽霊らに見送られながら屋敷をあとにした。
 屋敷の外は森の中である。といっても、そこまでうっそうとしたところではない。十分ほど歩けば森の外に出られる。
 涼しい森の中を抜けると、ぽかぽかとした春の陽気にさらされた。この黒いローブでは少し暑い。俺はファミをちらりと見る。俺はまだ下が半袖だからいいものの、ファミはしっかりと着込んでいたはずだと思いだし、心配したのだった。

 鼻歌混じりに軽やかな歩みで進むファミは、白い髪をローブの中に隠し、赤い瞳を目深にかぶることでカバーしているものの、彼女が美少女だということは僅かに見える彼女の要素からわかる。
 だがどうやら、暑いと感じてはいないようだ。

 潔く諦めて歩を進めた。
 森があるだけあってそこそこの田舎だったが、電車に揺られればたちまち景色は都会のそれになった。因みに、電車賃はファミが出してくれた。

 人々がごったがえす大通りを堂々と黒いローブで歩く度胸はたいしたものである。聞けば、人間はたいして周囲に興味がないし、この黒いローブは影を薄くする効果があるそうで、今は透明人間に限りなく近い程度の存在感らしい。

 俺はそれを聞いて、少し胸をなでおろす。

 黒いローブ姿がダサいとかそういうことではなくーー。

『××くんが行方不明になって八日目です。警察は……』

 時折雑音にまじって聞こえるニュースの中の自分の名前。
 ぐ、とフードをかぶり直して口をかたく結んだ。

「はい」

 ファミは唐突に俺に手を伸ばした。

「は」

 俺が何か反応するより先に俺の片手をすくいあげ、軽く握った。

「都会では迷子になりやすいからねー弟子の安全を守るのも師匠の役目なんだよねー」

 少しだけひんやりとした手に、その小さな後ろ姿に。
 癒される。
 ここにいていいんだよと、優しく言いきかされたように感じた。

 いつもは師匠面なんてしないのに。
 こんなときだけ。
 師匠面するんだからなぁ。

「ほら、ついた」

 大通りをカクンと曲がる。こんな道あったっけーなんて、思いながら。

 すると、そこには。
 おどろおどろしい文字で『死神の鎌専門店』という看板があがっている店の前についた。ガラリと変わった風景に内心ビクビクしながらも店を観察する。
 外装はふるめかしく、紫色のペンキをぶちまけたような屋根はところどころはげていた。それなりに頑丈なつくりなのだろう店の前には蜘蛛の巣、ショーウィンドウには最新モデルらしいハイセンスな鎌。

「楽器を買うんじゃ……」

「楽器も買うんだよ」

 しれっと言ってファミは店に入る。俺は躊躇いがちにあとに続いた。

Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.4 )
日時: 2019/06/15 01:46
名前: 塩鮭☆ユーリ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12560

☆第1章 シニガミガッコウ 第3話

 古めかしい外装とは違い、中は新しいものばかりだった。店内の音楽は流行りの曲、ピカピカに磨かれた最新モデルらしい死神の鎌。店内の中央には3Dに浮かび上がるデジタルなマネキン。そっと触れてみたが感覚がないということは、電子データなのだろう。

 店内に売られる鎌を持ち、流行ものの服と合わせたコーディネートを着用したマネキンが次々と浮かび上がっては消えていく。

「はーいいらっしゃぁい」

 接客だろうがなんだろうが、スマホは手放さないらしい店長の声は柔らかいというよりは、ゆったりとのばす声。バサバサのつけまつげと、これでもかと巻かれた見事な金髪。萌え袖になっている袖の方に目をやれば、しっかりと塗られたネイルが目にはいる。下は目が痛くなる蛍光色のミニスカート。

「相変わらず派手な格好をしてるわね」

「誰かと思ったらファミりんじゃないのぉ。連絡してくれないからどこかで餓死したのかと心配してたのよぉ」

「そもそもあたしはスマホ持ってないからね。連絡しようにもできないわよ」

 呆れたように、というよりは楽しんでいるようにみえる。これが二人の挨拶がわりのようなものなのかもしれない。店長さんもスマホの所持を勧めたりはせず、むしろこちらに興味を向けた。

「それよかファミりん。そこの坊やはなんなのぉ?」

 ファミは軽く肩をすくめた。

「あたしの弟子。今日はこの子に死神の鎌を見立ててやってほしいの。金に糸目はつけない。知ってるでしょ?あたしの金遣いの荒さぐらい」

 そういえば、弾けもしないのにグランドピアノがあるというのはおかしい。
 かなり新しいものだったし、三日前にいきなり現れて「買った」と言われただけだった。ファミの金遣いが荒いのはなんとなく伝わってくる。
 それにしては、ファッションに興味がないのか毎日オーバーオールである。
 折角の美少女なのだから、この店長までとは言わなくとももう少し着飾ってもいいのではないだろうか。

「ふーん。オーケーよぉ。ファミりんが見込んだ子の鎌を見立てられるなんて光栄だわぁ」

 冗談か本気かわからないような声色でそう言われ、どうしたらいいのかわからずに固まっていた俺を指差す。

「任せて。死神学校でも人気者間違いなしのイケた男の子にしてあげるぅ」

 俺に拒否権なんてものは用意されておらず、二十歳かそこらの女性にあれこれ鎌を持たせられ、ぺちゃくちゃとお喋りにつきあわされることになった。その間、ファミは店から消えていて、また違う店に出かけているようだった。
 ……本当に、買い物が好きらしい。

「これねぇ」

 満足げに店長は鎌を持った俺を眺めて呟いた。
 俺が握っている鎌の名前はブレック。
 緑みがかかった柄の比較的シンプルだが使いにくいモデルらしい。初心者にそれを勧めるのはどうかと思ったが帰ってきたファミに「似合っている」と笑顔で言われ、俺は迷いなくそれに決めた。

Re: 今日の宿題:明日までに人間を殺してください ( No.5 )
日時: 2019/06/15 01:45
名前: 塩鮭☆ユーリ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no

☆第1章 シニガミガッコウ 第4話
 
 たくさんの買い物袋を抱えて、俺とファミは死神の鎌の店を後にした。
 この紙袋のほとんどが俺のために買ったものなのだと聞かせられ、驚きと申し訳なさが押し寄せてくる。年上ならまだしも、見た目は同じくらいの少女に買ってもらってばかりで、しかも居候しているような状態だ。

 図太い方だと思っていたが、流石にこれは流せない。

「こんなに……いつか、お金返すから」

 ファミは軽く笑って首を振った。

「返す必要なんてないよ。これを買うのは師匠の義務みたいなものだから。弟子はみーんなしてもらうの。遠慮しすぎ」

 そうなのだろうか。
 どちらにしろ、しばらくはその言葉に甘える他ないのだが。

「でも、こんな大量の荷物必要なのか?」

 衣類はわかる。死神の鎌もわかる。
 楽器もわかる。そもそもそれが目的だったからな。今思えば楽器って高いしやっぱり買ってもらうべきじゃなかったと後悔しているが。

「これは何なんだ?」

 よくわからない言語で書かれた本のようなものが十冊程度、筆記用具とカバン、おまけに見たことのない制服。さっき確認したが、サイズは合いそうである。つまり、俺が着るものなんだろうけど……。

「死神学校に行くために必要なものだ」

 ……死神学校。
 そういえば、さっきの店長もそんなことを言ってたが。

「死神学校っていうのが必要なのか?師匠と弟子でやっていくんじゃないのか?」

「だいたい一年間で卒業できる。そっからは本格的に師匠と弟子の二人三脚だが、命を扱うからな。とりあえず最低限のルールや知識を詰めこまないと悪い師匠にひっかかったとき大変なことになるからな」

 一年間。
 学校に行くことが特に嫌だというわけではないが、どうしてもそういった『以前の生活』に近いものは、『あの日』を連想してしまう。
 壊れかけていた家族が決定的に、致命的に、壊れてしまった日。

 そして俺がーー人間を、やめた日。

 それがほんの一週間前のことだというのはなんだか不思議な気分だ。

「そうなのか……」

「全寮制というわけでもない。こっちに帰宅するといいよ。勿論、寮がいいなら寮でいいが……コネをつくるチャンスでもあるし、死神学校に通うことは決定事項だ」

 俺が乗り気でないことは察しているらしい。

「こっちに帰りたいかな」

 その理由に少し、ファミに会いたいからっていう理由が含まれることは口が裂けても言えないが。

「あぁ。いつでもおかえりと言ってやるさ」

 帰り道、人々が自分達を無視することに慣れ、俺はまたひとつ人間らしさを失った気がした。けれど、それは寂しいだけのものではなく、誇らしくもあった。
 まだ俺の名前をニュースキャスターが連呼していたが、よほどニュースがないのか、平和だな、と。

 ただ、的外れなことを考えながら帰路についた。

Page:1



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