複雑・ファジー小説

JKに幸あれ
日時: 2019/09/05 21:34
名前: 耳

フィクションです。

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Re: JKに幸あれ ( No.21 )
日時: 2020/03/21 20:16
名前: 耳

「応援よろしくお願いします」

幹太はバスに乗り込む前に、保護者と父兄に頭を下げた。幹太は一応キャプテンなので、こういった場で挨拶をしなければならない。皆が拍手をして、ぞろぞろとバスに乗りこんだ。今からバスでインターハイの会場に向かう。今年はまぁまぁ近場だが、貸切の高速バスで3時間半係る。

「なぁー、莉央おるやんか」

莉央は幹太の母の横で、バスに乗りこんだ幹太に向かって手を振っていた。幹太も振り返した。

「幹太くん、もう緊張してなさそうですね」
「もうねずっとヘラヘラしてるのよ」

幹太の母は新幹線でこの父兄の壮行会に着ている。父親も単身赴任で地方にいるので、母親1人で来たらしい。幹太にとって2度目の全国の舞台である。バスが出発したので、選手は皆窓に手を振っている。幹太もそうした。

「じゃあ、私は学校で勉強してきます!さよなら」
「待って莉央ちゃん。これ、地元のお土産」
「えーわざわざありがとうございます」

じゃあね、と言い幹太の母親は他の部員の母親たちの元へ帰って行った。莉央は、そのまま体育館に向かった。木製のコーティングされた良質な床が、キュッキュッと音を鳴らされている。中ではバスケ部が練習をしていて、先程から聴きごたえのあるボールの音が響いている。莉央は、汐田と目が合った。汐田はめちゃくちゃ真面目な奴、と周りから言われている。坊主頭が伸びれば汐田も十分薄めながら顔も整っているのだ。

「あ、センセー」
「部活見学か?」
「勉強の息抜きですよ?」

バスケ部の顧問に気に入られているので、部活見学と居座っても問題ない。奥にいる女バスからは険悪の眼差しを向けられているが、莉央くらいになると跳ね返すまでもなかった。汐田は顧問に名前を呼ばれ、手招きされた。プレー中ながら、コートの外にでてきた。

「汐田、動けるんやお前は。だからもう半歩詰める意識がないとあかんて!」
「…はい」
「汐田ダメだぞー」
「…」

汐田はベンチに座る莉央に視線を合わせた。このあと、オフでしょ。莉央が目配せしたので、

「はい」

と顧問に返事をしたのか、莉央に返事をしたのかわからないまま、また全体練習に参加していった。

Re: JKに幸あれ ( No.22 )
日時: 2020/03/21 20:35
名前: 耳

とっくの前(小3)にはもう父親のことは諦めた。記憶のある限り1度も授業参観、発表会に来たことがない。インフルエンザや溶連菌など体調不良のときは、車で1時間かけて父親の祖父母が来てくれる。冷えピタを両親に貼ってもらったことがない。誕生日は、冷蔵庫にワンホールのケーキが入っていたが葵は1人で食べきれないので、結局消費できないまま捨てていた。塾の面談にも来ない。ゴミ出しと掃除、料理は葵がする。洗濯と家計を支えるのが父親の役目である。幸い転勤は2回しかしていないので、なんとか祖父母の近く(それでも車で1時間半)に留まっている。怒られたことも、褒められたこともないし、自分の名前の由来も知らない。父親がどこの大学、高校を出たのかもネットで調べるまで知らなかった。

仕方なく葵は目を真っ赤にして、駅のホームに来た。幼少期に両親から愛情を注がれてないと感じて育った割には、葵はしっかりしているし、傍から見れば気になるのは突っぱねた性格くらいであとは問題ない。

私には誰が必要で、そうじゃないのかがわからない。血がつながっている父親にそうじゃないと思うなら、誰と生きたらいいんだろう?でも、今までそうやって生きてきたのに、たまに悲しくなるのはやっぱり自分の親だからだと思った。電車に乗り込み、ぼんやりどそんなことを考えていた。

Re: JKに幸あれ ( No.23 )
日時: 2020/03/21 21:08
名前: 耳

「初回から厳しいですね…おっとここでスクイズですか」
「このね、彼の捌きも絶妙でしたね」

この実況と解説からわかるように、隆貴たちは初回から8点も取られていた。今相手は情けをかけたのか、送りバント。これでツーアウトである。

「田沢」
「はい!」

同室で隆貴の子守りをしていた田沢は一応エースである。もう監督にベンチ横でキャッチボールを強いられている。先発2番手の浪江はもう楽しそうにしている。もう浪江には声をかけに行けないので、キャッチャーも楽しそうにしている。顧問の指示で外野は後進し、隆貴はレフト側に大幅に寄った。また質のいい金属音が響き、浪江の頭上を越えた。浪江はすぐさま振り返り、とりあえずガッツポーズをした。隆貴がキャッチして、なんとか抑えた。

「昨日、想定したな…15点までだぞ」

から始まり、技術的なことを申し訳程度に顧問は刷り込んで一番の打者がバッターボックスに入った。

「初回から150キロ出ました。プロ注目選手の袴田です」
「高校生でこの安定感は素晴らしい。いやー、素晴らしい」

解説が語彙力を失うほどの投球なのだ。全く手が出ない。この日のために160キロで対策して来たのに、空振り三振。

「手元が狂うわあんなん」

戻ってきた牧田はそう言った。顧問に小言を言われたあとも、部員は討ち取ることが出来ず初回に隆貴の出番はなかった。

Re: JKに幸あれ ( No.24 )
日時: 2020/03/21 21:41
名前: 耳

幹太はぼんやりと音楽を聴いていると、携帯が鳴った。

幹太のママからお土産もらった!
ありがとって言っといてー

また余計なことした

と幹太はすぐさま返して、アイマスクをした。今は寝たい気分なのだ。鼻に異物感が来たと思ったら何やら霧吹きを鼻の穴に噴射された。幹太はすぐさま犯人を見つけて絞めた。

「ブスやなー」
「うるせぇ」

高校生なのに、取っ組み合いでとても楽しそうである。

「また返信来なくなった…」

莉央はベッドの上で塞ぎ込んでいる。汐田は床に座り上裸で莉央に背を向けてゲームをしている。

「部活忙しいんやろ…なぁ、帰れや」

莉央は汐田にベッドに置いてあるクッションを投げつけた。

「あんたは何も分かってない!あたしがこんなにさびしいのに、よくそんなこと言えるね」
「俺、浮気相手やもん」
「なんでそんなこと言うの?もう、どいつもこいつもなんなのー」

莉央はもう一度寝転がった。壁に顔を向けている。幹太は最近返信が遅い、女の子とご飯に行ったらしいし、もう浮気は黒である。私は別が他の男子といるのは幹太が構ってくれないから。

「ねぇ、汐田は私のこと好きでしょ?」
「好きやで。だから島田とはよ別れや」
「幹太が好きなの!」
「拉致あかんわ、はよ帰れ」

皮肉にも汐田はサッカーのゲームをしている。

「莉央が言うことわからんわ。なんで俺とおるん?振ったらええやんか」

幹太と別れたときに次の宛がまだないから。それを言うのは(プライドが傷つくため)嫌なので、聞こえないふりをした。

「えー、汐田かわいそうじゃん。てか、私といるのによくゲームなんかできるよね」
「男なんてそんなもん」
「幹太はそんなことしないよ?ずっとあたしと喋ってくれるもん」
「相当疲れとるんやろな島田」

島田はヘラヘラしてるけど良い奴。汐田をとにかく枕で叩いていた。そんな事ないから。

「気が済んだな、帰り」
「…ほんとに言ってるの?それ」

後ろから首元に抱きついて来た莉央が、耳元で呟いた。汐田はゲームをする手を止めてしまった。

「もう知らんで」

汐田は携帯で音楽を爆音にして、それを床に放った。

「カラオケしよーや」
「機材ないねん」
「じゃっ、アカペラで」

遠征のバスに乗る度に、このやり取りを聞かされている。このフレーズでもう面白い。マイクで沁みるような声でバラードを歌い上げるので、部員はノリノリどころか感性が上がっていた。幹太もスマホを構えて、みんなで合いの手を入れていた。

Re: JKに幸あれ ( No.25 )
日時: 2020/03/21 22:54
名前: 耳

何だか打てそうな気もしない、わけじゃない。なんだろう、分からないけど。いわゆるアドレナリンが出ている。9対0ですでに5回まで来ていた。なんとかみんなで抑えている。隆貴が構えると同時に、自然と武者震いと気合が出てきた。

「古河は大きな声を上げましたね」

隆貴が珍しく声を上げたので、ベンチは盛り上がった。顧問も手を叩いて微笑んでいる。あっ、という間に白球は青空に舞い上がった。

「綺麗なアーチを描いてレフトスタンドに直撃しました」

と実況が言うのに、隆貴はまだ強ばった顔でダイヤモンドを1周している。大差で負けているので、観客席は隆貴のホームランに大歓声を上げた。完全に相手校がヒールになっているが、ベンチに戻ってきた隆貴にやっと喜びが現れてきた。ベンチでは珍しく笑顔でハイテンションの隆貴は、だいぶカメラにズームされていた。

「つなげー!」

ベンチからの興奮を背負って、牧田は構えた。俺も、隆貴みたいに!と言わんばかりに攻めたが、追い込まれてしまった。こんなことで乱れるのはプロ注目選手ではない。

「あ…」

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