複雑・ファジー小説

何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ!
日時: 2020/09/14 01:49
名前: 牟川

知っている人は知っている牟川です!
小説カキコに戻ってきました。





・主人公サイドに立ったあらすじ

 とある司祭のせいで、勇者ユミのパーティーメンバーに任命されてしまったカルロ。こんなくだらない旅に付き合っていられるものかと思うものの、渋々、勇者ユミの旅に同行するのであった。
 そして、魔王軍による数々の嫌がらせを受けながらも、私用を優先するため旅を中断させたりする。

 だが、次第にカルロも勇者ユミに対して愛着を持つようになるのであった。


 
・魔王軍のスパイサイドに立ったあらすじ

 少し前に、魔王討伐に赴いた勇者が魔王軍のスパイに嵌められて捕まったというニュースは記憶に新しい。
 そこで魔王討伐を掲げる【教会】は新たに、ユミと言う少女を勇者に任命したのであった。
 
 魔王軍のスパイたちも、前の勇者を嵌めたように、今回も勇者ユミを嵌めようと画策するが、主人公カルロによって幾度も防がれてしまう。

 幾度もなく妨害に遭う魔王軍のスパイたち。次第にこれら数々の妨害が、カルロの仕業であると確信するものの、そもそもカルロという人物が一体何者なのかという疑問も持つようになるのであった。


尚、それぞれ別タイトルで『小説家になろう』や、『エブリスタ』でも投稿しています。



最後に……

この小説は、次第に謎が深まりつつ、ちょっとずつ解明されていくように書いています。
主人公カルロ(偽名)の生い立ちなども、最初はよくわからないことでしょうが、ちょっとずつ判っていくように書いていきます。

最初は、なんかテキトウにぶらぶらしている奴が勇者パーティの一員になったものだと思って読んでみてください!

第9話あたりから、ちょっとずつおかしな物語になっていきます! 

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Re: 何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ! ( No.5 )
日時: 2020/09/14 21:56
名前: 牟川

第4話 準上級モンスター毒タヌキとの戦闘



 マリーアは制止したものの、それは無意味に終わった。それは悪い意味でということである。

「はあっ!! 」

 ユミは毒タヌキの一匹に剣で斬りかかった。しかし多少は掠り傷を負わせたものの、毒タヌキは素早い動きでよけて見せたのだ。
 それに続き、他の複数の毒タヌキは爪を伸ばしてユミの顔面を目掛けて飛びかかってきたのである。

「くっ! 」

 ユミは咄嗟に左腕で攻撃を防いだものの、その結果当然なことだが袖は引き千切られており左腕から出血しているのが見えた。
 ユミは盾と鎧、そして兜も装備していない。
 装備しているのは旅用品にとして特別に仕立てられている服(当然戦闘に於いて耐えられると保障されているわけではない)と革製の籠手くらいである。

「何をしているんだ。ユミ、後ろへ下がれ。早くしろ! 」

 私は咄嗟に指示を出し、毒タヌキを目掛けて中級火炎魔法を発動させた。これで、2匹は倒すことができたものの、まだ4匹が残っている。そして、厄介なことにそれぞれ距離を置くようになった。

 奴らは多少は知能があるのか、纏まって行動していると魔法の餌食になるものと理解できたのだろう。

「ひっかき傷程度なら、初級回復魔法で何とかなるだろう」

 私はユミの左腕に手を当てて、初級回復魔法を発動させた。
 一方で毒タヌキの相手をするのは、ダヴィドとマリーアの役目となったのである。既に2人は、それぞれ槍と魔法で交戦している。

「くそっ……また外したか」

 ダヴィドは槍で突こうとするのだが、それを素早くよけられてしまい、またマリーアも魔法攻撃をするが、毒タヌキが動き回るものだから、中々命中をさせることができないでいた。

 毒タヌキは攻撃さえ当たれば直ぐに倒すことができる。しかし、素早く動き回るため攻撃が中々当たらないこと、そして何より胃液による攻撃があるものだから、決して下級レベルの魔物ではなく一応は準上級レベルとされているのだ。

「こうなったら! 」

 中々攻撃が当たらず埒があかなかったのか、ダヴィドは『毒タヌキ』へ目掛けて飛びついたのであった。

 すると、ダヴィドの体は思いっきり地面に叩きつけられるかのような勢いで着地した。

「よっし! これで逃げられないだろう」

 毒タヌキの一匹が、ダヴィドの体に押しつぶされている。
 そしてダヴィドは槍ではなく、サブで装備していたのであろう短剣でその『毒タヌキ』の喉ぼとけを突き刺した。
 これで計3匹、すなわち半分の『毒タヌキ』を倒すことに成功した。
 
 そして、私の方もユミの治療を完了したところである。

「ユミの治療も終わった。そろそろ逃げよう! 」

 私としては元々、毒タヌキと積極的に戦うつもりは無かったので、そう皆に提案した。
 だが……。

「め、眩暈が……うぅ」

 と、ダヴィドが言いながら倒れこんでしまったのである。よく見るとダヴィドの服は何かの液体で汚れていた。その汚れは赤色ではないので血液ではないことは確かだ。しかも、少し黄色っぽい。

 先程、ダヴィドが自分の体で押しつぶした時に毒タヌキが押しつぶされた衝撃か、或いは元々吐き出すつもりだったのかは知らないが、毒タヌキは胃液を吐いたのだろう。

 よって、胃液を吐き出したわけであるからダヴィドが毒にやられた、と考えるのが妥当である。

「とりあえず治療しないと! ユミとマリーアは毒タヌキからの攻撃を警戒してくれ」

 私はそう言って、意味があるかは判らないが毒への対策として呼吸を抑え我慢して、ダヴィドの元へと駆け寄る。

 他方、ユミとマリーアは臨戦態勢をとっていた。
 
「おぉぉぉい! 」

 と、不意に掛け声が来たのである。

「ん? 」

 私は、気になって後ろをみた。
 すると、3人の男がこちらへ向かって走って来ていたのである。

Re: 何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ! ( No.6 )
日時: 2020/09/15 22:18
名前: 牟川

第5話 治療! それに続く治療! 


「おい、大丈夫か! 」

 そう言って、男たちが駆けつけてきた。
 3人の男の内、1人は私が知っている人物であった。昨日、雇い入れをした傭兵団の団長だったからである。

 と言うことは、残る2人も傭兵団の一員なのだろう。

「ロムソン村に用があってな。ちょうどここを通っていたら、あんたらが魔物と戦っている姿を発見したわけだ」

 と、団長が言った。あくまでも私とは他人のふりをしているが、これは私がピンチになったら他人のふりをしつつ何人かで駆けつけてきてほしいと、昨日取り決めていたからである。

「私らもロムソン村へ行こうとしてたら、毒タヌキに遭遇してしまってな……。1人が胃液にやられて気絶してしまったよ」

 と、私は3人に説明した。
 
「そうか。なら後は俺たちに任せて、あんたらは急いで離れた場所まで逃げろ」

「すまない……そうさせてもらうよ」

 ユミとマリーアもこれに頷く。そして各自お礼を言って、速やかにこの場を後にした。
 尚、ダヴィドはどうしたのかと言うと私が背負っている。当然置いてきたなんてことはない。


 それから10分ほど歩き続けて、一休みを兼ねてダヴィドの治療をすることにした。私はダヴィドの体に手を当てて解毒魔法を発動する。

「これで、何とかなったはずだが……。なんだか、急に眠く……」

 先程から私は時間が経つにつれて眠くなってきたのである。疲れのせいだろうか? それもあるかもしれないが、一番の原因は恐らくダヴィドの服に付着した『毒タヌキ』の胃液であろう。うっかりしていた。
 
「カルロさん。大丈夫ですか! 」

 私が地面に座り込んでから、下を向いて俯いているとマリーアが心配したのか声をかけてきた。

「眩暈が酷くてね、たぶん胃液にやられたのだと思う」

 私はそう言ってから、まだギリギリ気が保てている内に、自分に体に手を当てて解毒魔法を発動した。

「具合は、大丈夫ですか? 」

「解毒はしたから、その内、眠気も覚めるだろう」

 とはいえ、私は疲れているので眠気が覚めないかもしれないが。

「ところでユミの奴は……」

 私とマリーアがユミの方を見ると、何とユミは倒れていたのである。

「まさか、ユミさんも!? 」

 と、マリーアが驚き言った。

 恐らくユミも毒タヌキの胃液が原因で倒れたのだろう。
 仕方がないので、私はユミにも手を当てて解毒魔法を発動させた。
 
 そして、ユミの治療も済ませた後、念のためにマリーアにも解毒魔法による治療を行うことにしたのである。

「念のため、マリーアにも解毒魔法をかけておこう。マリーアもいつ症状に襲われるかわからないしな」

「はい。お願いいたしますね」

 私は、マリーアに手を向けて解毒魔法を発動した。
 解毒魔法というのは、一瞬で終わるようなものではない。接種した毒が多ければ多いほど、そして毒性が強ければ強いほど、解毒魔法を発動し続けなければならない。

「まあ、ダヴィドは直接胃液をかけられたから直ぐに毒が回って一番早くに倒れたのかもしれないからな。私のこの推測が正しいかはわからんが」

 私は解毒魔法を発動しながら、自身の推測をマリーアに話した。

「カルロさんは本当に、攻撃系と回復系の魔法の両方が使いこなせるんですね。すごいですよ」

「別に凄くはないと思うがな。魔法が使える者が少ないからそう感じるだけだろう」

「そう……なのですかね? 」

 私の聞いた話では、魔法を使える者は決して多くないと言う(【魔王領】出身者は別)。
 そのため、攻撃系又は回復系のいずれかを一定以上使えるのであれば、仮に魔法士の資格を有していなくても、それだけで評価されるらしいのだ。

 また、その両方を一定以上使えるのであれば王宮でそれなりの地位に就くこともできると言われている。
 だから、私もどこかの王宮に仕官しようかと考えた時期もあったが、諸事情により諦めている。私の場合、身分を巧く偽装しているならともかく、身辺調査で不合格になることになることは見えていた。

「それにしても、何故カルロさんは魔法士の資格を取得なさらなかったのですか? 」

「【パレテナ王国】に住んでいたと言えば、判るか? 深くは言いたくないからな」

 【パレテナ王国】では貧しさのあまり、山賊がよく蔓延っていると聞く。
 冒険者ギルドや傭兵の斡旋をしている酒場では、【パレテナ王国】出身の山賊の人相書きが貼り付けられたりするのだ。

 まあ、私は【パレテナ王国】に住んだことは一度も無いので全くのホラであるわけだがな……。それでも、私が身辺調査を受けた場合には、非常に厄介なことになるであろうことは事実だ。

「なるほど……」

 マリーアが、私が誘導するとおりに察したのか、そう言った。
 
「治療は終わったぞ」

 私はマリーアの治療も済ませる。

 それから、しばらくしてユミが目を覚ました。
 目を覚ましたユミは咄嗟に周囲を見渡す。先ほど毒タヌキと戦っていた場所からは移動したので、少し混乱するかもしれない。

「大丈夫か? 」

 と、私はユミに声をかけた。

「うん」

「毒タヌキの胃液にやられたのだ。私も気を失いそうだったし、仕方ない」

 また少し経ち、今度はダヴィドが目を覚ましたのである。

「……ここは? まさか毒タヌキの胃液にやられたのか……」

「当りだ」

「そうか。俺のせいだな。みんな、申し訳ない」

 ダヴィドは落ち込んでいる様子だ。
 恐らくダヴィドが自身の体で毒タヌキを潰したことは記憶に残っているのだろう。だから責任を感じているのかもしれない。

「ともかく、体調のほうはどうだ? もし体調がまだ優れないのであれば、もう少し休んでいこうとおもうが」

「それなら、俺はいつでも移動できるぞ」

 ダヴィドはそう言って立ち上がって、付近を歩いて見せた。ふらつく様子はないので、もう体調もある程度は回復したのであろう。ユミもダヴィドに倣って、立ち上がって歩く。
 
「この調子ならロムソン村まで行けそうだな」

 そして私たち4人は、ロムソン村への移動を再開したのであった。

Re: 何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ! ( No.7 )
日時: 2020/09/15 22:21
名前: 牟川

第6話 ロムソン村に到着する



 ロムソン村に到着したころには、夕方になっていた。
 私たちはとりあえず宿屋を探すことにした。この村に人の往来が殆どなくても、一応宿屋はあったのでチェックインの手続きを済ませて、各自が一部屋ずつ使うことにした。

 尚、魔物の襲撃についての聞き込みは、明日に持ち越すことにした。今日はもう疲れているので早く休みたいからだ。

「今日は足手まといになってしまってごめんなさい。今度から軽率な行動は慎むね……。じゃあおやすみ」

 ユミはそう言って、今いる一階の食堂から、二階にある部屋へと向かった。マリーアも、今日は早く休みたいとのことなので部屋へと向かい、残ったのは私とダヴィドの2人である。

「カルロ殿……。今日はすまなかった。もし解毒魔法による治療が為されていなかったらと、思うと恥ずかしい限りだ」

「困ったときはお互い様だろ」

 今日、私は何度も回復系の魔法を発動したが、これは回復役として当然の役割であって、それを果たしたまでである。

 それよりも、どうしても気になって仕方がないことをダヴィドに話すことにした。

「あの毒タヌキのことだが、本来は森の奥深くに居るはずなのに道中で6匹とも遭遇したことが気になってね。もしかしたら……魔王の配下による仕業かと考えてしまったりするんだ」

 こう考えてしまうのは、私が疑心暗鬼な性格をしているからだろう。実際のところ、本当にそうなのかは確証を得たわけではないのだ。

「それは考えすぎでは? 」

 案の定、ダヴィドがそう言ってきた。
 客観的に見ればどう考えても、根拠に乏しいはずだ。それ自体は私も分かる。

「どうだろうかね。ただ【魔王領】出身者の中には魔物使い十言われる職業の者たちもいるわけだし、こういう者たちが毒タヌキを操っていたのではないかと……ね。仮に魔物使いの仕業であれば、その使役する魔物の体のどこかに≪刻印≫があるから、それがあるか否かで判るんだ」

 魔物使いは使役したい魔物に対して特殊な魔法を放ち、その体(魔物)に印を刻ませることによって自己が操る魔物を取得する。

 仮に素人がこの魔法を覚えて使ったとしても大概は失敗するのだが、魔物使いと言っても良いレベルの者が発動すれば、当然ながら素人に比べて技量もあるわけだから、それなりに成功するわけである。

 因みに魔物使いは、使役する魔物を特殊空間に閉じ込めておくこともできる。

「なるほど。では仮に今日遭遇した毒タヌキの体のどこかに刻印があれば、少なくとも【魔王領】出身者による人為的なものと推測することができるわけか」

「そういうことだ。まあダヴィドの言うとおり、あくまで【魔王領】出身者による仕業という推測ができるだけで、本当に魔王の配下による仕業かまではわからないが」

 【魔王領】出身だからと言っても、その出身者全員が魔王の配下だというわけではない。

 それに、【魔王領】の一般市民全員が魔王を敬うと言うこともない。未だに過激な反魔王派(具体的に言うと【共和派】と呼ばれる者たちだ)の連中の多くが、あの【魔王領】には蔓延っているくらいなのだ。

「とりあえずは、今日遭遇した毒タヌキに刻印があるか否かだけは確認したい」

 前回の勇者が嵌められたという噂もあるので、今はとにかく何事も最大限に警戒すべきだろう。

 まあ、とにかく毒タヌキの体を確認はして損はない。

「だから、私は今から例の遭遇現場まで向かうつもりだ。私が明日の朝までに戻ってこなければ、遭遇現場へ向かったことを2人にも伝えてくれ」

 私はそう言って宿屋を出たのである。
 もう疲れなど、どうでも良い。こんなものは気分でどうにかなるのだ。

「カルロ殿。1人で行くのは危険すぎる。だから自分も付いていこう」

 と、ダヴィドも外まで出てきた。

「いや、ダヴィドも疲れているだろうし、今日は休んでくれ。私はこれまで何度も1人で旅をして来た。だから危険を察知する能力はあるし、大丈夫だよ」

 本音を言うと、道中で野宿をしているであろう傭兵団に頼みたいことがあるのだ。その際に私が傭兵を雇入れたことがバレないように気を遣うのが面倒なだけである。

 ダヴィドは特に追及することもなく、「では気をつけろよ」と言って宿屋の中へ入って行く。
 それを見届けて、私は毒タヌキと遭遇した場所まで戻るため、移動を開始したのであった。

Re: 何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ! ( No.8 )
日時: 2020/09/16 22:52
名前: 牟川

第7話 刻印の確認


 私は特殊な魔法を使い、猛スピードで移動した。
 この魔法は魔力消費や体力消耗が極めて激しいのであまり使いたくないのが、急ぎたいので仕方あるまい。
 私にとっては、特に体力消耗がネックだ。


 そして、再び毒タヌキと遭遇した現場に戻って来る。

「道の両サイドにテントか……」

 と、想定外な光景を見て私はそう呟いた。
 テント布と木の枝で作られた、極めて簡易的なテントが並んでいる。強風でも吹いたら一瞬で倒壊しそうで、少なくとも私なら落ち着て眠れそうにない。

 どうやら、傭兵団はここを野宿場所に決めたようだ。傭兵団が道中で野宿をするのは判りきっていることだが、まさか毒タヌキと遭遇したこの場所で野宿をしているとは思わなかった。

「まさか、ここで野宿しているとはね」

 私がそう言うと、団長が気づいてやって来た。

「お、あんたか。ここまで何をしに戻って来たんだ? 」

 わざわざ私1人だけで、こんなところまで戻って来たのだ。団長も私の目的が知りたいのであろう。

「まず、毒タヌキの死骸があるなら、その死骸を確認したい」

「毒タヌキの死骸だと? すまないが、燃やして処分してしまったぞ」

 なるほど……。
 もう焼却処分されているのなら、刻印の確認はできないな。諦めるとしよう。

「そうか。死骸をいつまでも放置しているほうがおかしいだろうし、仕方ないな」

 【ファイア傭兵団】は、あくまでも常識に沿って、やることをやっただけである。

「だがどうして、今さら毒タヌキの死骸を確認しようと思ったんだ? 」

「ちょっと確認したいことがあってね」
 
 話が長くなると思ったので、刻印については伏せることにした。
 彼らにも用事があるからだ。

「確認したいこと? まあ良いか」

 団長は、まさに疑問に思っているのだろうが、これ以上の追及はしてこなかった。

「それで、【ファイア傭兵団】に頼みたいこともあるんだ」

 私が傭兵団に何を頼みたいかと言うと、ロムソン村を襲撃する魔物の討伐である。

「俺たちに頼みたいこと? 」

「ああ。ロムソン村はどうやら、魔物による被害が生じているらしい」

「なるほど。その魔物を討伐したいのか」

「まあそういうことだ。私としては、早いところ【魔王領】まで行きたいのだが、昨日話したユミという勇者と王宮兵士長のダヴィドが村の惨状を放置できないみたいでね」

 どうしても私が、【魔王領】まで急ぎたいのは本当のことである。
 とは言っても、何も魔王を倒したいというわけではなく、【魔王領】で色々とやらなければならないことがあるのだ。

 つまり、私にとってはタイミング悪く【教会】(実際にはあの司祭のせいだが)から勇者の同行者として任命されてしまったというわけである。唯一幸いだったのは、勇者の使命が魔王討伐であるが故に、目的地が【魔王領】方面ということだろうか。

 ところが、その唯一幸いだった点も、ロムソン村でしばらく滞在するとなれば、意味がなくなるわけだ。

「それで、俺たちに任せるようと考えたわけだな? 」

「ああ。だが具体的な状況は一切知らない。だからほぼ全員が、ロムソン村で滞在してもらうことになるだろう」

 例えば、実は大規模な魔物の群れがロムソン村の近くにいたとなれば、少数では荷が重いだろう。
 そのようなことを想定した場合、1人でも多くロムソン村に滞在してもらった方が良い。

「あんたからは大金をもらっているから、喜んで引き受けよう。だが、あんたに付いて行く頭数は何人か必要だろ? 護衛としても、そして我々本隊との連絡手段としてもな」

 確かに、団長に言うとおりか。
 私も彼らも、【魔王領】では実用化されている魔法電話というものを持っていないので、連絡のつきようがない。

 そうなると人が直接移動して連絡するほかないだろう。まあ、この方法だと私たちの旅が進めば進むほど、連絡役の負担は大きくなってしまうが……。

「そうだな。では6人ほど頼もうか」

 私は、連絡役と護衛役として6人ほど頼んだ。護衛2人に連絡役4人という計算である。

 何かイレギュラーが起これば破綻しそうな方式ではあるが、仕方あるまい。これ以上は人員を割くわけないはいかないからな。

 本当なら、ロムソン村に被害をもたらす魔物たちを討伐するふりだけをさせて、直ぐに傭兵たちを引き揚げさせることもできる。
 そのほか、ロムソン村に2〜3人だけ滞在させて、後は放置するという考えも浮かんだ。
 
 しかし、それは私の倫理感が許さなかったのである。

「よしわかった。6人をあんたに付ける」

 ということで、話はまとまった。

 それからは、細かい段取りなどを決めていく。
 また、傭兵団の面々にはなるべく、ユミ、マリーア、ダヴィドの3人には顔を見られないようにロムソン村に来てもらうように念を押した。

 既に団長を含めた3人は、顔を覚えられてしまっているかもしれないが、他の傭兵団員たちの顔さえも覚えられてしまっては色々と困るのだ。

 例えば今後も、偶然を装った救援をお願いする事態になった場合に、私と傭兵団はあくまで他人であるという設定に、無理が生じるからである。流石に偶然が重なれば、ユミたちも不審に思うだろうからな。


 また、傭兵団をずっとロムソン村に滞在させるとあっては雇った意味がない。そのため最大で3日間滞在させることにした。その期間を過ぎ次第、傭兵団は結果の如何に関わらず西ムーシの町へ向かわせるためだ。
 これが、私の倫理観との妥協である。

Re: 何で私が、魔王討伐に参加しなければならないのだ! ( No.9 )
日時: 2020/09/18 22:02
名前: 牟川

第8話 早くもロムソン村を発つ

 

 翌日。
 
「と言うことで、傭兵団が魔物討伐の依頼を引き受けたみたいだし、私たちは早いところ【魔王領】へ向かおうと思うのだが」

 と、私は朝食を食べながら3人に提案した。

「それに、【魔王領】に入ったからと言って直ぐに帝都……あ、いや魔王城に到達するわけでもないし、戦闘経験を積む面での心配もないかと思うぞ」

 【魔王領】は決して狭いわけではない。
 少なくともここ、【アリバナ王国】よりかは広い国土を有する。【魔王領】に到達するまで殆ど戦闘を行わなくても、そこから魔王の都までの道のりは長いのだ。だから、【魔王領】に到達して以降も魔王の都まで向かう間に、戦闘を積ませることもできるであろう。

 もっとも魔物と戦って経験を積んだとしても、果たして対人戦で役に立つのかは疑問だがな。

 聞くところによれば【教会】から選任された勇者たちは、毎度のごとく魔物としか戦わないという。それでは魔王討伐なんて難しいのではなかろうかと、個人的に思う。

「そうだね。魔物がいつ村を襲撃するのか判らないもんね。いつまでもここに居られるわけでもないし……」

 魔王討伐が勇者ユミの帯びた使命であるわけだから、ユミもロムソン村に長居が出来ないことについては理解しているようだ。
 私は、てっきりユミが駄々をこねるであろうと思っていたが、そうではなかったようで助かる。

 しかし私が少しばかり感心していると、思わぬ人物から反対意見が出た。

「せっかく、ロムソン村まで来たのですよ? 何もせずに帰るのはどうかと思います」

 そう言ったのは、マリーアであった。
 まさか彼女から反対意見がでるとは思っていなかったが、ダヴィドは私の意見に賛成するだろうし何とかなるだろう(たぶん)。

「自分はカルロ殿の言う通り、【魔王領】へ直ぐに向かった方が良いと考えている」

 よし!
 これで少なくとも私とダヴィドの2人が≪とっとと行こう派≫となる。

 まあ、ダヴィドに対しては昨日私が宿屋に戻って来て早々に説得しわけだがな。
 
 というのも、本当は傭兵団が毒タヌキの死骸を燃やししてしまい判別が不可能だった。
 しかし、まず私は「毒タヌキの体を調べたところ、刻印があったのだ」と嘘をついたのである。

 そしてその嘘を前提に、魔物使いによる仕業であるものと話をでっちあげた上で、この状況で魔物使いと戦うことになれば、経験の浅いユミがいると危ないと言って説得したのである。

 さらに【アリバナ王国】に雇われた傭兵団と偶然にも会い、話をしたところロムソン村の件は、彼らが後は引き受けてくれることになったとも言った。

 嘘も方便だ。

 さて、ダヴィドも賛成したのだ。
 後はユミさえ説得すれば3対1に持ち込めるだろう。

 だが……。

「ダヴィドさん! 貴方はそれでも王宮兵士長なのですか」

 と、ダヴィドに対してマリーアは言ったのである。

 しかも王宮兵士長のプライドを刺激するかのような物言いで、とても厄介なことになりそうだ。

「そ、それは……」

 案の定、ダヴィドは動揺しているようだ。仕方がない、私も何か言っておこう。

「マリーア。傭兵団が討伐する以上、問題はないはずだ。ここでわざわざ王宮兵士長がどうのこうのと言うのも少し変だと思うが? 」

「カルロさんって冷たい人なのですね」

 と、マリーアは直ぐに言葉を返した。私に対しても心を動揺させようと『冷たい人』などと言ったのだろうか?
まあいいや。考えても無駄だ。

「これは周知のことだが、前に選任された勇者が嵌められたという噂がある。だからこそ、冷酷な人間であると言われような対応をとるのは、仕方ないだろう」

「今この話に、前の勇者の話は関係ありますか? 」

「まあ、直接的には関係ない話だな。だが、この勇者パーティが今後どう行動するか、そのスタンスを決めるためには、前回の勇者がどうなったかという話も知っておくべきだろう。そして今まさに、この勇者パーティがどう行動するか検討すべき時だと思うが? 」

 今まさに、ロムソン村は傭兵団だけに任せるか否かの話し合いをしているわけだ。

「確かにそうですね……」

 と、マリーアも頷いた。

「傭兵団は【アリバナ王国】に雇われてロムソン村に来たのだ。だから後は【アリバナ王国】や傭兵団に任せようではないか」

 傭兵団が【アリバナ王国】に雇われたという話は、そういう設定に過ぎないが、傭兵団がロムソン村に滞在するのは事実である。

「まあ良いです。3人の判断に任せます」

 ようやく、マリーアは諦めてくれたようだ。それから、ユミも説得に応じてくれたので、早速私たちはロムソン村を後にしたのである。

 まだ早朝と言ってもよい時刻だ。
 もしかしたら、今日中に西ムーシの町に着けるかもしれない。

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