複雑・ファジー小説

Re: 変革戦記【フォルテ】 ( No.3 )

日時: 2018/03/14 11:19
名前: サニ。 ◆6owQRz8NsM

「…あれ?」

 遠い遠い昔の話。大地がそこまで緑で覆われていなかった頃の話。
1人の子供が見つけたのは、とてつもなく巨大な『鉄のかたまり』。それはきれいとは言えず、いくらか煤や傷跡が残っていた。
 それは地面に深々と突き刺さっていて、とても子供ひとり、いや大の大人が何人いたって、掘り起こせるようなシロモノではなかった。それでも、どうしてもそれが『ほしい』と思ったのか、子供はそれに恐る恐る手を伸ばす。柔く、小さすぎるその手で。
 その時、その鉄のかたまりは触れた瞬間に、触れた場所から青い光を走らせた。
機械的な音を立てて、ゆっくりと地面からその姿を現す。
そして地面からすべてを出したその鉄のかたまりは、確かに子供に『語り始めた』。


自らの『本来の名』と、『これから起こるであろう先の話』を。



変革戦機【フォルテ】
第1話─Magnolia─



 今ここは人々がせわしなく動き回る、現代よりは先の日本。
 ビル街の中でもひときわ大きいビルに、大きなビジョンが映し出され、コメンテーターと司会者と思われる人物が、各々好きなように、収拾がつかないくらいに持論を繰り広げていた。その内容は、わざわざ立ち止まって耳を貸すような内容ではなく、聞くに堪えないものであるというのが現実である。通行人もそんなものを聞く暇があるのなら、何か別のことをしたほうがもっと有意義だと踏んだのか、目もくれずに先を行く。
しかし、その上──否、正確には『同じ場所の別の空間』といったほうがいいだろうか──では、巨大ロボットによる2つの陣営の戦闘が行われていることを、待ち行く人々は何も知らない。
『何も影響のないよう』、『単なるエゴか世の為か』、激しい戦闘が行われていることを。

「いい加減帰れ、グローリア!お前たちのせいでどれだけ一般人に被害が行くと思ってるんだ!」
『帰るのは貴様らだろうがクソガキ共!それにこれはちゃんとした公共事業!フォルトゥナの子供を引き取って、国の事業に役立ててやってるだけだ!それがわからんのか!』
「これだから大人って…自分のしてることを素直に悪だと認めないのよねー。どれだけそのフォルトゥナの子供たちに悪影響を与えてんのか知らないの?というかあんたらの引き取るは単なる『誘拐』とか『拉致』でしょうが!」
『このクソガキ共…連れ帰れば使えると思ったんだが、やはりここで殺しておくべきだな!』
「へー、へー、有用そうなフォルトゥナの子供を今ここで殺すんだー、へー、これでも食らえ!」

 上空。否、『周囲の風景をスキャンしデジタルデータ化し、そこだけ切り離された別空間』では、軽3機の巨大ロボットが、互いに互いを傷つけあいつぶしあっていた。ある者は手数で攻め、ある者は手にしている刀で切り込む。残りの1機はライフルで懸命に2機の猛攻を必死に凌ごうとするが、おそらく支給品であろうライフルだけでは、猛攻を防ぐことなどまず不可能に等しいだろう。しかも相手は『特殊能力』を使って襲い掛かってきている。

「超子ちゃん必殺!『スーパーパイロキネシス』!」

 その時、手数で攻めていた1機が、補助具の役割をしているのであろう杖から、巨大な『火のかたまり』をライフルを持った1機にぶつける。ぶつけられた相手は瞬く間に火によって包まれる。

『あ、熱い熱い熱い熱い熱いぃぃぃぃ!なんだっこれ、い、息が…ッ!かひゅッ…』
「うおやっべえキャンプファイヤーじゃん踊らな」
「そんなことしてる暇ないと思うんだけどなあ…」
『お前らッ…なに…しや…』
「うわまだしゃべってるよただでさえ酸欠なのに、元気アルネ―」
「なんで最後カタコトなんだよ?とりあえず機能停止するだろうから、さっさとパイロットだけ放り投げて、機体だけ持ち帰るぞ」
「はーいはい!とりあえず機体回収要請だすねー」

 燃え盛る機体を前に、この戦闘において勝利したと思われる2つの機体は、徐々に機能を停止していくそれに対して同情も慈悲もなく、ただ淡々と残りの作業に入るのだった。



 この世界には、『フォルテッシモ』と呼ばれる巨大なロボがあった。どこから来たのか、誰が作り上げたのか。それは今となってはわからない。ただ、原初の機体をあるひとりの子供が見つけ、その機体に触れた瞬間に動き出し、触れた子供に対し、自らのこととこれから起こるであろうことを語った、とは史実には書かれている。真実か偽か、確かめる者はだれ1人としていない。
 そのフォルテッシモは前までは、軍用兵器として使われていたが、現在は互いの存亡の為にある2つの組織が使用し、闘い、そして散っていく。とはいっても一時的にベッドの上の住人になってフォルテッシモには二度と乗れないだけなのだが。
 それが、大人だけで構成された今現在の国家最高権力組織『グローリア』と、その組織に対抗しまとめ上げられた、未成年で構成された組織『マグノリア』。本来、グローリアは『フォルテ』と呼ばれる『異能力』に目覚めた人々、『フォルトゥナ』を、一般人からの迫害から守るため、およびフォルトゥナの社会的地位を向上させるために作られた組織なのだが、いざ政治に介入したとなると、その目的は一変した。
 国家権力を握り、自由に政治に口出しをできるようになっただけでは飽き足らず、自己利益の為だけに、国中からまだフォルテに目覚めて間もないフォルトゥナの子供たちを連れ去り、実験の実験台にしたり、奴隷として扱ったりと、悪いように使うようになった。中には使い捨ての兵士として他国の戦場に送り込まれ、フォルテを乱用された挙句命を落として国に帰ってくる子供もいた。そして一般人への洗脳教育。グローリアに、たとえフォルトゥナがなくとも絶対の崇拝心をもたせるように仕立て上げた。
 そんなグローリアに対抗すべく、未成年のフォルトゥナだけで構成されたのが

「『マグノリア』ってわけ。ここまでオッケー?」
「FUUU!イカしてんZEマグノリア!」
「で、なぜもとよりマグノリアにいる俺もこの講義に出されてるんだ?部屋に帰りたいんだけど」
「初心に戻ってもらおうとね!あと引きこもりもいい加減にしなさい」
「そうだYO芳賀(ハカ)!ファーストハートも肝心だZE!」
「おまえうるせえ…」

 そして今。マグノリアでは、『初心に戻ろう講義』と題した、いままでの歴史の授業がたった3人で執り行われていた。



続く

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