二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- ドラゴンクエスト8-光を求める者
- 日時: 2013/11/13 14:39
- 名前: 朝霧 ◆CD1Pckq.U2 (ID: 9kyB.qC3)
!挨拶
初めまして、そうではない方はこんにちは。朝霧(あさぎ)と申します。前作、スレッドのパスワードを忘れてしまい、編集が出来なくなったため再度スレを立てさせて頂きました。
立て直す際に前作、獣の末裔より大幅に設定が変化している面があります。が、オリキャラや設定を一部引き継いでいる面もあります。
!詳細、緒注意
:ハーメルン、すぴぱる様にも同じものを投稿させていただいています。
:まず携帯から更新→パソコンで直すため投稿直後は読みにくいです
:ドラゴンクエストⅧの二次創作小説。
:原作+捏造ストーリー。皆様が知るドラクエ8の世界ではなく、パラレルワールドの世界です。
:ドラクエ8のネタバレがあります!
:オリキャラ、世界観捏造、キャラ崩壊、自己設定の要素があり。個人的にドラクエ8をプレイしていて、ん?と疑問を持ったところに妄想をねじ込んでいる部分が多々あります。
:恋愛あり。オリキャラの落ちは8主です。主姫好きな方には不快な表現がありますので苦手な方はご注意下さい。
:一部扱いの悪いキャラがいます。特におまけの章。
:以上が苦手な方は、閲覧をお控え下さい。
それでは、長くなりましたがよろしくお願い致します!
長編
序章 黒い道化師
>>43、>>44,>>81,>>85
一章 旅への誘い(トラペッタ)
>>131,>>155-158,>>161-162,>>206->>215
その他
コラボ(×ユウさま、目覚めし運命)
>>90,>>93,>>94,>>97,>>104,>>106,>>111,>>113,>>116,>>117,>>119,>>122,>>125,>>126
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- Re: ドラゴンクエスト8-光を求め ( No.244 )
- 日時: 2013/12/04 23:35
- 名前: 朝霧 ◆CD1Pckq.U2 (ID: a7WresCQ)
一方、エルニアたちは。
シャウラの様子に気が付くことはなく、滝の近くでザバンと共に話をしていた。
「あやつとあのフクロウ、尋常ではない魔力を持っておるな。さすがのワシも鱗が逆立ったわい」
「ところでザバン。さっき、よく分かったね。あの杖から何かが出てくるって……」
ああ、とザバンは何でもないことのように、
「魔力の波動が、知っているものじゃったからの。魔物が仲間を呼ぶ呪文に似とったわ」
「ってことは、兄貴。ドルマゲスには魔物を呼び出す力があるってことでがすかね?」
ザバンは頷く。
そこにシャウラとセシルが近付いてくる。シャウラの表情は、いつもの落ち着いたそれに戻っていた。
「じゃろうな。あやつの魔力では魔物どころか、悪魔を呼び出すかもしれんな」
「……悪魔か。厄介だね」
エルニアは眉を潜める。
と、ザバンが思い出したように、
「ところでお主らよ、何故にこの水晶を求める?」
エルニアは手短に、水晶を探しに来た経緯を説明する。ザバンはなるほどと、腕を組んで頷いた。
「この水晶の持ち主の娘に、頼まれたのか。ならば、協力の礼も兼ねて渡してやろう」
ザバンは一度跳躍して滝に飛び込んだ。ややあって、両手で水晶玉を抱えて戻ってきた。人の頭程はあろう、大きな水晶玉だった。透き通った紫色をしていて、神秘的な雰囲気を醸し出している。
水晶玉をザバンが差し出すと、エルニアは両手でしっかりと受け取り、濃い緑の袋の中に閉まった。
「さっきは襲って来たのに、えらく態度が変わったでげすな」
ヤンガスが呆れたように肩を落とすと、ザバンはふぉっふぉっと笑う。
「乗り掛かった船、と言うやつじゃ。先程の戦いを見れば、お主らが水晶の占い師でないくらい察しがつくわい」
そういえば、とザバンはエルニアを見据える。
「お主はわしの呪い攻撃が効かなかったの」
「それが?」
「——水の流れで聞いた噂を思い出したぞ。『ここからほど近いある城が、悪魔の呪いによって滅ぼされた。生き残りはただ一人。そいつは、馬とおかしな魔物を連れて旅に出た』とな」
その話を聞いたシャウラは、ドルマゲスの昔話を思い出す。賢い王と美しい姫がいる王国。杖を守る王国。城は滅ぼされ、魔物と馬に姿を変えられた、と言う下りであることに気付く。
——魔物と白馬。すぐ近くにいるではないか。
「ところがお城は呪われ、滅びてしまいました。王様は化け物に、姫は白馬へと姿を変えられたそうです。王国はもうどこにもない。悲しいなあ。悲しいなあ……」
一生懸命に記憶を引っ張り出し、独りごとを装って言葉を紡げば、辺りが急にしんとなった。水の流れる音しか聞こえない。
振り向けば、ヤンガスとエルニアが驚愕の色を顔に出し、こちらを凝視していた。
「キミ、どこでその話を……!?」
震える声で尋ねるエルニア。驚愕を通り越し、顔は恐怖で青ざめていた。
「一昨日、町にいたドルマゲスさんに聞きました。いや、聞かされたと言った方が正しいですが」
そう告げると、エルニアは目を限界まで見開き、
「キミ、ドルマゲスに会ったの!? 行方に心当たりは? あいつはどこに行くとか言ってた?」
矢継ぎ早に次々と質問を浴びせられたが、シャウラは冷静に
「残念ですが、行方に心当たりはありません」
シャウラが首を横に振ると、エルニアはがっくりとする。
「くそ……ようやく手がかりが見つかったと思ったのに」
そこにセシルが、口を挟む。
「なら、ルイネロに聞けばいいだろう」
「ルイネロさん? 誰だっけ?」
眉を潜めるエルニアを見て、セシルはニヤリと意地の悪い笑みを浮かべた。
「ユリマの父親の占い師だ。聞いていなかったのか?」
「き、聞いてたさ! ルイネロさん、ルイネロさんだよね!」
エルニアは、むきになって反論する。焦る様子から本当は忘れていたようだが。
セシルはふんっと鼻を鳴らすと、
「あいつの得意分野は、探し物だ。人、モノ問わずにな……水晶さえあれば、ドルマゲスの行方も探せるのではないか?」
「キラーパンサーのくせに、やけに詳しいじゃないか」
エルニアはセシルを見下ろし、皮肉のような口調で言う。
セシルは当然そうに返した。
「私は、ただのキラーパンサーではない。賢く、偉大なキラーパンサーなのだ。知っていて当然さ」
「……喋る魔物って、どうしてこうも尊大な態度をとるかな」
エルニアの素直な感想にシャウラは心の中で同意する。セシル、おおきづち、ザバン。どれもこれも、人を見おろす態度をとる魔物ばかりだ。
不意にごほんと、ザバンが咳払いをする。
「話はすんだかの?わしは、腰が痛むので帰りたいのじゃが」
ザバンは水掻きが付いた手で背中を叩く。人間でいう腰に当たるらしいが、下半身は魚であるためいまいち実感が伴わない。
(さ、魚に腰ってあるのかしら?)
シャウラはザバンを見ながら首を傾げた。その横でセシルが、ぼそりと一言。
「……あれほど騒いでおいて、何が腰だ。老がいめ」
セシルの悪口に気付かなかったザバンは、話を続ける。
「一つだけ、水晶の持ち主に言伝てを頼む。"むやみやたらに滝に物を捨てるな"、とな!」
「分かったよ」
エルニアが了解すると、ザバンは満足そうな笑みを浮かべ、背を向けた。頭を抱え、痛いと悶える。
「……っ! 今日の戦いのせいで、古傷が痛むわい!」
頭を抱えながら滝壺に飛び込むザバン。水しぶきを残し、今度こそザバンは消えた。その際、全員離れた位置まで避難したので水はかからなかった。
ザバンを見送ると、エルニアはシャウラと目を合わせる。
「ねえ、キミ。ドルマゲスに会ったって話、詳しく教えてくれないかな?」
「何故ですか?」
シャウラはエルニアの気持ちを図るように、じっと見つめる。エルニアは、微苦笑を浮かべた。
「ずいぶんと慎重なんだね」
「……色々ありすぎましたから」
シャウラは、エルニアから視線をそらした。端から見るとほぼ無表情だが、唇だけはきつく結ばれている。
しばしエルニアは、シャウラが口を開くのを待ったが、進展がないので、
「さて、一度外に出ようか。——リレミト!」
呪文を唱えた瞬間、エルニアたちの姿は、拳程の丸い光の玉へと変わった。光の玉は徐々に小さくなり、やがて点のような大きさになる。そして、ぱっと光の玉は弾け、消えてしまった。
〜つづく〜
- Re: ドラゴンクエスト8-光を求める者 ( No.245 )
- 日時: 2013/12/04 16:33
- 名前: 朝霧 ◆CD1Pckq.U2 (ID: 9kyB.qC3)
ふと気が付くと、冷たい風がお下げを揺らしていた。振り向けば、滝の洞窟に続く入口がぽっかりと口を開けている。
降り仰げば、空は鮮やかな夕焼けの色。巨大な火の玉のような太陽が、大地を紅に染めながら地平線に沈もうとしている。
その空の色を見て、シャウラは一昨日のことを思い出していた。広場にドルマゲスがいたのも、こんな夕暮れの時だった。
エルニアの言葉で一昨日の出来事を思い出していると、遠くからしわがれた声が聞こえてきた。
声の方を振り向けば、魔物が馬車から降り、こちらに向かって手を振っていた。
「これー! エルニアー! ヤンガスー! 娘さんたち! わしをどれだけ心配させれば気がすむのじゃ!」
魔物の近くにエルニアとヤンガスが駆け寄る。その背中をぼんやりと見ながら、シャウラは魔物と馬を改めて観察する。恐らく、ドルマゲスの話に合った呪われたであろう王と姫。王は分らないが、白馬は言われてみると姫君のようだと納得がいく。白馬は、馬とは思えない上品な雰囲気を纏っていた。例えるなら可憐な百合のような。
そこに存在するだけで人々の視線を引く美しさをその馬は持っていた。
魔物は笑顔を順番にエルニア、ヤンガス、シャウラに向け——硬直した。シャウラのすぐそばにいたキラーパンサー姿のセシルを見て、悲鳴を上げる。
「な、き、キラーパンサーではないか!? エルニア、こやつを切り捨てるのじゃ!」
エルニアは魔物をなだめる。
「陛下。このキラーパンサー、性格は悪いですけど、無害ですから」
「む、そ、そうなのか?」
魔物はおっかなびっくりセシルに近いた。
セシルはめんどくさそうに口を開く。
「おい。私と会うのは、二回目だろう。いい加減に慣れろ」
その言葉に魔物は不愉快な顔つきになる。
「な、なんじゃ魔物ふぜいが偉そうな口を聞きおって……まるで、牛人間が呼んだキラーパンサーのようじゃの」
そこまで言って魔物ははっとした顔になり、
「お前さんは、先刻のキラーパンサーなのかの?」
「さっき、会うのは二回目だと言っただろう」
セシルがうんざりして言うと、魔物は感嘆の声を上げた。
「おお! あの、魔物使いのキラーパンサー……名は確か、セシルと言ったかの」
状況が理解できないエルニアとヤンガスが、シャウラとセシルを交互に見比べる。
「は? これが魔物使いのキラーパンサー? どうなってるでげすか?」
「じゃあ、キミが魔物使いの一人なの?」
シャウラは俯いていたが、やがて意を決したように顔を上げた。
「疑問には後でお答えします」
ドルマゲスの話をすればひどく長くなる。今は、ゆっくりしている場合ではない。
「……早くトラペッタに戻りましょう。特にエルニアさんは早く教会に行くべきかと」
シャウラは鳶色の相貌を静かにエルニアに向ける。
毒の治療は、教会の担う仕事の一つである。多少のお金は取られるが、格安で本格的な毒の治療をしてくれるので有難いものだ。
一応、手当てはしたが、あれは応急措置に過ぎない。エルニアはぴんぴんしているので大丈夫だとは思うが、シャウラは不安でたまらない。
が、当の本人は手にまかれたバンダナを見ながら、渋い顔をした。
「……嫌だ。トラペッタの教会なんて行きたくない」
あの神父なんかに、と憎々しげに呼び捨てにしている辺り、相当な恨みを感じられる。
そういえば、魔物騒ぎがあった時。トラペッタの神父は魔物を滅するべしと言って、民衆が魔物に敵意を持つよう煽っていた。言わばあの騒ぎの主導者の一人と言っても間違いはない。
大切な人——今は魔物だが、を傷つけた人間を許せないのだろう、とシャウラはようやくエルニアの気持ちに気が付いた。先ほどまでは敵意を持たれていたのも、このせいだったのだろうとようやく理解する。
が、それに気が付くと同時に、シャウラは説得できないことを悟る。先程の問答から、エルニアは自分の主張を簡単に変えない性格であることは分る。多分、何を言っても聞かないだろう。
ならば、とシャウラは魔物を利用することにした。魔物には逆らえないらしいので、魔物が命ずれば大人しく教会に行ってくれるのではないか。そう考えたシャウラは、洞窟の中で起きた出来事を知らず、首をかしげている魔物に向き直り、
「エルニアさんは、魔物から毒の攻撃を受けました」
「な、なんじゃとう⁉」
魔物が驚いて叫ぶと、エルニアは『余計なことを言うな』と鋭い眼差しでシャウラを睨み付けた。見るだけで人を圧巻するような強い眼力だが、シャウラにはどうということもなかった。狂気に満ちたドルマゲス、人々におそれられるドラゴンであるオデット。彼らに比べれば全然怖くない。たった数日でシャウラは恐ろしく逞しくなっていた。
「ですから教会に行かないと危険です」
シャウラの説明に納得したらしい魔物は、エルニアを叱った。
「エルニア! 早く教会に行き、手当を受けてこんか! お前の体に何かあったらどうするのじゃ⁉」
狙い通り魔物の言葉には逆らえないらしい。エルニアは俯き殊勝な態度で魔物の話を聞いている。最後には渋々、といった感じでうなずいた。
「……わかりましたよ」
さあトラペッタに行こう、とエルニアはくるりと踵を返した。その背中はやけに小さく見えた。
〜つづく〜
思うところがあり、詰めてみました。読みづらい…でしょうか?
- Re: ドラゴンクエスト8-光を求める者 ( No.246 )
- 日時: 2013/12/04 17:01
- 名前: 朝霧 ◆CD1Pckq.U2 (ID: 9kyB.qC3)
トラペッタに戻ったシャウラは魔物と馬、そしてセシルを残して町に入った。魔物がセシルに興味を持ったらしく、話したいと言われたので置いてきたのだった。
ヤンガスとシャウラが付き添う形でエルニアを教会に連れていき、毒の治療を受けさせた。応急手当てが早かったらしく、今日一日安静にしていればいい、と神父に告げられ、ヤンガスとシャウラはほっとした。
そのまま、来たついでに、とシャウラたちは水晶を届けに行くことにした。
家々がひしめくように立つトラペッタの奥。そこがユリマとルイネロの住居だった。
扉を開けると、ルイネロが既に待っていて、シャウラたちを驚かせた。
ルイネロは椅子に座って、目を閉じていた。騒がず、動かず。ルイネロが纏う静かだが張りつめた空気にシャウラたちは、気圧されそうになった。歓迎はされていないのは明らかだ。
部屋には紫の布に覆われた円形のテーブル、その上に透明な球体が置かれていた。手に入れた水晶と大きさこそ同じだが、濁ったような透明さで水晶ではないと分かる。
ルイネロは黒い髭を蓄え、爆発したような個性的な黒髪を持つ中年の男性だ。
ややあって、ルイネロがゆっくりと目を開け、シャウラたちを順々に見た。
既に何かを悟ったような顔。その瞳に宿るのは、静かな怒りだ。鋭い眼光がシャウラたちを射る。
「……ようやく、来たか。待ちくたびれたぞ。この水晶がガラス玉だとしても、そのくらいのことは分かる」
ルイネロは前に置かれたガラス玉に目をやる。
オデットのことを言い当てた力は確かにあるのだ。
「ユリマに頼まれた品を手にいれたな?」
ずばり言い当てられたエルニアとヤンガスは、驚きで言葉を失った。 恐らく、半信半疑だったのだろう。シャウラは身動ぎもせず、ルイネロを見つめ返す。
ルイネロはゆっくりと立ち上がると、だんと強く机を叩いた。ガラス玉が微かに跳んだ。
顔を怒りで歪めながらエルニアに近付くと、彼の肩を乱雑に掴んだ。今までの物静かな態度と打ってかわって、非常に荒々しく、今にも殴ってきそうな勢いだ。
水晶を誰が持っているかも分かっているらしい。
「さあ、大人しく水晶を渡してもらおうか!生憎、必用としていないのでな」
大きく声を張り上げ、ルイネロは水晶を渡すよう威喝する。エルニアは僅かにたじろぐが、負けじと、
「あ、そうだ。伝言です。滝壺に水晶を捨てないで下さい」
「滝壺に水晶を捨てるな? なんのことだ。訳が分からんぞ!」
一応約束したので伝えたが、ルイネロはザバンのことを知らないらしく、理解してもらえなかった。
ようやくエルニアから手を離すと、ルイネロは三人を睨んだ。全く、と呆れたように大きなため息を吐く。
「おぬしら、わしが何故水晶を捨てたのか分かるか? ……おせっかいもいいところだ」
そして、再度強い口調でルイネロはエルニアに迫ってきた。シャウラとヤンガスが間に入り、ルイネロをなだめようとするが効果はない。
「さあ、水晶玉を渡せ。あんなもの、粉々に砕いてくれる!」
「嫌です」
はっきりとエルニアが断り、ルイネロの顔がひきつる。ルイネロの両手がガラス玉へと伸びる。
さすがに危ないと思ったシャウラは得意のラリホーの詠唱を初め、
「止めて、お父さん!」
突如ユリマが現れた。叫びながら、エルニアとルイネロの間に割って入る。潤んだ瞳でじっとルイネロを見た。
突然のユリマの登場に一同が呆けている中ユリマは、青い瞳から輝く雫をぽたぽたと落とす。
「もういいのよ。私、ずっと前から知っていたわ。お父さんが、どうして水晶を捨てたのか」
さあ、とルイネロの顔から血の気が失せる。先程までの高圧的な態度は消え、狼狽し始めた。
「ユリマ、まさかお前……」
視線をユリマに向けたまま、ルイネロは凍りついた。口が言葉を紡ごうとするが言の葉にならず、ルイネロは飲み込んでしまう。次に出す言葉を躊躇っているようだ。しばらく迷った後、ルイネロはようやく震えた声を出した。
「本当の両親のことを?」
ユリマは瞳を濡らしながら頷く。雫がまた零れた。
ふ、とルイネロは自嘲するような笑みを浮かべ、
「なら、わしを憎んでも構わないのだぞ?」
「お父さんは、ただ占いをしただけよ。悪くないわ」
静かにユリマは自分の気持ちを打ち明け、袖で目をごしごしと擦った。にこり、と優しく微笑んで見せる。その笑みに恨みの感情など何処にも存在しない。全てを許した、優しい笑み。
「お父さんの力は凄かった。だから、逃げていた私の両親の居場所を言い当てしまったのよね」
ふう、とルイネロは長いため息を吐いた。当時を思い出すかのように、遠くへと視線を投げかける。
「あの頃のわしは世界中に名が知れた占い師。有頂天になり、占えることは片っ端から占ったものだ」
そして、ルイネロは爪が食い込みそうな程強く拳を握り、悔しそうな顔になる。瞳からいくつもの涙が頬を伝った。身体が小刻みに震えていた。
「……だから、わしは近付いてくるヤツが善人か悪人なのか考えもしなかった!」
己への怒りとも強い後悔とも取れる、ルイネロの悲痛な叫びに、ユリマは静かに首をふる。ゆっくりとルイネロの元へ歩み寄ると、両の手でルイネロの拳を優しく包み込んだ。まるで大丈夫、と言うように。
「でも、お父さんは一人ぼっちになった、赤ちゃんの私を育ててくれたじゃない」
「……ユリマ」
弱々しくユリマの名を呼ぶと、ユリマは笑った。
「お父さん、一つだけわがまま言ってもいいかな? 私、昔のようなお父さんを見てみたいな。高名で自信に満ちたお父さんの姿を……!」
ユリマは穏やかな表情で、しかし強い声音ではっきりとルイネロに告げる。
その瞬間、ルイネロははっとした顔付きになった。そしてふ、と零れる息と微笑。
ゆっくりとエルニアに身体を向けると、
「気が変わった。水晶を渡してくれ」
「え、じゃあ……!」
声を弾ませるエルニアに、ルイネロはゆっくりと頷く。その顔に今までの後悔は何処にもなく、晴れ晴れとした表情だった。まるで憑き物が落ちたようだ、とシャウラは思う。
本来の明るく自信に満ちたルイネロの復活したのだ。
「ああ、占い師ルイネロはここに復活を宣言する!」
ルイネロが高らかに宣言し、ユリマがルイネロに抱き付く。
「ありがとう、お父さん!」
父親に一層強く抱きつきながら、ユリマは涙を流す。ルイネロは何も言わず、ユリマの頭をそっと撫でていた。その姿は本来の親子のようだ。
黙って事の成り行きを見つめていたエルニアたちは思いもいの顔でユリ間を見ていた。
エルニアは羨ましそうに目を細め、シャウラは口角を持ち上げ、よかったねというように静かに微笑んでいる。親子愛に感激したのか、ヤンガスは泣いている。感動したでがすよ、と独り言を言いながら腕で涙を何度も拭いている。
「皆さんも本当にありがとう!」
ユリマがシャウラたちに頭を下げ、エルニアたちはお互いに顔を見合わせて笑みを浮かべた。
〜つづく〜
一気に進みました。
後はシャウラが旅に出るまで、で終わるはず(長くなりそうだが
- Re: ドラゴンクエスト8-光を求め ( No.247 )
- 日時: 2013/12/04 19:40
- 名前: 水恋 (ID: 66F22OvM)
ユリマちゃん、、超感動だ!
- Re: ドラゴンクエスト8-光を求める者 ( No.248 )
- 日時: 2013/12/04 21:00
- 名前: ユウ (ID: viAVUXrt)
ククール「腐敗してるってなんだ!?」
ゼシカ「文字通りよ。」
マルチェロ「私は腐敗などしていない。こんなやつと一緒にしないでくれ。」
ミーティア「呪いは・・・・きついですよ。とくに解かれた跡が・・・・。」
エイト「地獄に叩き落としたいな・・・・。」
チャゴス「庶民が何か言ったか?」
エイト「ナニモイッテマセン。」
チャゴス「僕に文句があるなら牢へ入れてやるからな!(エッヘン)」
サラ「(ボソッ)威張るな。」
セシルかわいい。
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