二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 東方自然癒—一枚の葉と幻想郷—【第一節終了】
- 日時: 2014/11/28 20:29
- 名前: 幻灯夜城 (ID: 3mZ8rXZz)
- 参照: http://tohosizenyu.iza-yoi.net/
〜お知らせ〜
参照3000突破感謝です。
※あてんしょんっ!※
・この作品は、現在フリーゲームにて配信中の東方project二次創作作品「東方自然癒」の二次創作、すなわち三次創作品となっております。苦手な方はご注意下さい。
・この作品には現在フリーゲームにて配信中の「東方自然癒」のネタバレががっつり含まれております。未プレイの方は十分注意してお読み下さい。
・原作「東方project」には存在しないオリジナルキャラクターが登場したり、一部の人物の設定の解釈が違っている場合がございます。
——
皆様、世界のどこかからこんにちは。
本日も、皆様のどこかに何かを齎すべく世界のどこかからこの地へ作品を届けに参りました。
シリアス・ダーク板で連載している「Lost memory」と同時並行で「東方project」の二次創作品「東方自然癒」の三次創作、これを真ENDまで書き上げていきたいと思います。
√は今の所魔理沙、霊夢√の予定です。
上記の※あてんしょんっ!※に同意していただける方のみ、お進みください。
※参照URLにありますは、東方自然癒のサイトとなっております。是非プレイしてみてはいかがでしょうか。
-目次-
第零章「生まれたての葉と幻想郷」>>1
第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」>>2-4 >>7-20
幕間「もう戻れない」>>21
- 第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」14 ( No.17 )
- 日時: 2014/05/23 16:45
- 名前: 幻灯夜城 (ID: 6BbhaqaU)
——やはり、"ヤツ"は元の位置から動いていなかった。
水色の鳥はやはりその位置を動かず、その巨体を道のど真ん中で我こそが征服者と言わんばかりに鎮座し続けている。その鋭い眼光は並みの妖怪を一睨みすれば逃げ出してしまいかねないほどに輝いている。
そして挑戦者達もまた、新たなる武器を構えてこの地に戻ってきた。
金髪の少女——魔理沙はその手にスペルカードを構える。
「……今度は、思いっきりやれそうだな」
その後ろから——殺意を包み隠さず放出し続ける黒い笑顔の霊夢が、同じくスペルカードを手にして妖怪に微笑みかける。
「手間かけさせたことを後悔するのね」
何だろう。
魔理沙は兎も角霊夢が尋常じゃなく怖い気がする。
「一番手、貰っていいな?」
「ええ、どうぞ」
それだけの承諾を貰い、魔理沙が一歩前に歩み出る。
そして妖怪にスペカを見せつけ高らかに発声した。
「心置きなくいかせてもらうぜっ!
恋符
『ノンディクショナルレーザー』っ!! 」
さて、ここでスペルカードルールのおさらいだ。
スペルカード (Spell card)通称「スペカ」とは、幻想郷内での揉め事や紛争を解決するための手段とされており、人間と妖怪が対等に戦う場合や、強い妖怪同士が戦う場合に、必要以上に力を出さないようにする為の決闘ルールである。
対決の際には自分の得意技を記した「スペルカード」と呼ばれるお札を一定枚数所持しておき、すべての攻撃が相手に攻略された場合は負けとなる。また、カード使用の際には「カード宣言」が必要であるため、不意打ちによる攻撃は出来ないとされる。
その他、細かな取り決めでは
決闘の美しさに意味を持たせる。
意味の無い攻撃はしてはいけない。
事前に使用回数を宣言する。
このルールで戦い、負けた場合は負けをちゃんと認める。余力があってもスペルカードルール以外の別の方法で倒してはいけない。
-ニコニコ大百科「スペルカードとは」より。
魔理沙が手にしたそれから放たれるのは無数の光球。
そして鳥妖怪もまた空を滑空して彼女を追い詰めにかかる。
「ピィイィーーッ!!!」
上空より、捉えたと言わんばかりに鳥が落ちてくる。対する彼女は動かない。いや、"動く必要は無い"。
その瞬間だった。
「甘いんだよっ!!」
光球がカッと輝いたかと思えば——それが鳥の周囲を取り囲むように巻き無数の光線を辺りに撒き散らす。それはさながらサーチライトのように。しかし激しいソレは鳥の動きを鈍らせ、羽を僅かに焼き行動を阻害する。
そこへ。
もう一人の少女の声。
「 夢符『封魔陣』 」
何が起きたのか——鳥の眼に映るもう一人の紅白の少女が札を構えた時には既に遅い。乱射されるレーザーの中で迂闊に身動きが取れない。そこを狙って。
「やあぁぁあぁっ!!!」
——"陣を通して霊夢が上空より鳥目掛けて降って来た"。
これには流石にたまらない。身動きの取れぬまさに"格好の的"状態となっていた鳥の背に当たる部分に直撃。
そのまま、大地へと叩きつけられ少女の自重に乗せられたためか嫌な音まで響く。
——そのまま、鳥は動かなくなった。上に乗っていた紅白巫女こと霊夢はそこよりひょい、と飛び立ち鳥の様子を見る。
「……大人げ無いなおい」
「私は、私の邪魔をするヤツを絶対に許さない性質よ」
そんな、他愛の無い言葉を交わしていると何時の間にやら逃走したのか。鳥がこの場より消えていた。
圧倒的で——しかし、幻想的な戦闘。何かをするまでも無く何も出来なかった葉が己の不甲斐なさに少々どもりながらも、しかし進むべき道を切り開けたので安堵する。
「やっと……魔理沙さんの家へ行けますね」
「そうだな」
意気揚々と、先へ歩みだそうとする二人。
しかし霊夢の足だけはやや遅い。何かを考えているように。
(……それにしても、強力な妖怪が何でこんなところに? 異変でも起きたのかしら……?)
"おかしいのだ"。
最初からまるで仕組まれていたかのように、それは此処に鎮座していた。近所に何かがあるわけでもなく、格別餌が取れるとかそういうわけでもない。ましてこの森は人間は余り近寄らないので餌という餌も来ないはず。
明らかに、あの鳥は妖怪としての理念から外れた行動をとっていた。
だとしたら、自身の知らない所で何か大きな——。
なんて、考え事をしていたら。
「そぉいっ!!!」
「わっ!?」
後ろからドツかれた。魔理沙であった。
「……いきなり何するのよ」
文句の一つでも言ってやろうとすると——「しーっ」と魔理沙が人差し指を口元に当てて前方にいる葉を見やる。
「……あの子?」
「……あんま難しい顔すんじゃねーよ。お前がそんな顔すると、葉が心配するだろうが」
「……は?」
——もしかして。
「……魔理沙、アンタも気付いてるの?」
「当たり前だっつーの。でも、ここで私たちまで深刻な顔したら葉がもっとしんどいだろ?」
「……」
今の魔理沙の発言は、意外だった。何時もなら躍起になって異変解決だの弾幕だのに乗り出す彼女がここまで他者を気にかけた発言をするなんて。
そんな霊夢の心情も露知らず、魔理沙はにかっと笑った。
「今までだって、何とかなってきたじゃないか。だから今は、平気な顔してよーぜ?」
「……お優しいことで。モテる女性は違うって?」
と、ここまで来て二人の世界に入っていたことに気付いたのだろう。不自然なところで立ち止まっている二人に葉が問いかける。
「あの、一体何を……?」
「ちょっと、猥談をな」
「わ、わいd「なんでよりにもよってアンタと猥談しなきゃいけないのよ!!」
「お望みなら、葉にもしてあげるぜ?」
「するなバカ。さっさと行くわよ」
言うなり、霊夢が進行を再開してさっさと行ってしまう。
「短気な巫女相手だとヤレヤレだぜ」
呆れたように笑いながら——魔理沙もまた、その後ろをついていった。残された葉はただ一人、呆然とその背を見送って……。
「……ごめんなさい。そこの草木から聞いちゃいました……」
静かに、両手を合わせ。
「……。ありがとうございます」
遠くから、「どうしたー!? 私の家はすぐそこだぞー?」と聞こえてきたので。
「あ、はい! 今行きます!」
再び、葉もまた待つ二人の下へ歩き出した。
- 第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」15 ( No.18 )
- 日時: 2014/07/06 01:33
- 名前: 幻灯夜城 (ID: nG1Gt/.3)
さて、魔理沙の家に無事についたはいい。ついたは、いいのだが。
全員が中へ入ろうとするが、その前に霊夢が葉に念入りに言い聞かせる。
「いい?」
「な、何でしょうか?」
巫女から立ち上る今にも火山が噴火する寸前であるかのような気迫。これから一体何を言われるのだろうかと思わず身構えてしまいそうになるような鬼気迫る感じに若干葉がたじろいでいる。
しかしそんなものは巫女にとっては何ら関係の無いことである。慣れている人間なら兎も角この世間知らずの小娘は知っておかなければならないことが多すぎるのだ。
「魔理沙の家は、相当アレだから覚悟しておくことね」
「……へ?」
「おーい、何吹き込んでるんだー?」
「何でも無いわよ」
早口に矢が流れるように継ぎ足されてゆく会話。
そんな中で葉は一体何故己が覚悟しておくように言われたのかがいまいちよく分からず、もしかしたら何か怖いものでも——? というちょっぴり好奇心とちょっぴり恐怖を抱きながら霊夢と魔理沙に続いて家の中へと入っていく……。
——
——
そして、葉はようやく霊夢の言っていた意味を理解した。
「こ、これは……」
魔理沙が苦笑いし、霊夢が呆れ返る。
眼前に広がるのは積み重なった本の山、山、山!!!
あちらこちらに散らかった何だかよく分からない道具達。
後何か埃を被っているものもちらほらと見受けられる。
近年稀に見るゴミ屋敷か。
「……ちょっとは掃除しなさいよ」
「いやぁ、すぐこんな風になると掃除する気も……な?」
おまけに魔理沙が自分から"掃除してもすぐこういう風"になるというのだから余程整理整頓の習慣がついていないのだと見て取れる。
「……さて、葉」
「……はい」
「アンタが言ったんだから責任持って探しなさいよね」
驚きでそのまま硬直していた葉であったが。
「……は、はい」
苦笑いと共に、本棚の方面へと歩んでゆく。
- 第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」16 ( No.19 )
- 日時: 2014/11/25 21:45
- 名前: 幻灯夜城 (ID: RSr7AuJO)
……どうしよう。
ああも張り切って言ってしまったはいいが、実際どうすればいいのか全く以って分かっていない。山積みになった本といい投げ散らかされたレポートといい悲惨極まりないその有様。いるものといらないものを判別する人間がいたらどれだけ片付けられるのだろうかと考えてしまう風景。
しかも、もっと不味いのが葉がその本が"何であるかを聞いてない"。借りた物が何であるかが分からないままにそれを探すのは無謀極まりない判断だった。
(……そ、それでも)
言ったからにはやるのだ。それが私だ。諦めるなよ私。こんな本の山程度に屈してどうする。頑張れ頑張れ頑張れ頑張れ!!!
自分を奮い立たせながら書斎に一歩足を踏み入れた。
——……むぐ……——
「……?」
それは完全な第三者の声。それも葉にしか聞こえない声であった。何かに圧迫されているのかそれは酷く苦しそうな様子であった。
「どうしたの? 葉」
「いえ……、今、どこからか声が聞こえたんですけど……」
——……むぐ……むぐ……!——
「何も言ってないぜ?」
そりゃそうだ。葉にしか聞こえていないはずのこの声。それを他の誰かが発声していたとかそういうのは決してない。
葉はその音源。少し苦しそうなその声を探すべく書斎を歩き回る。
「……確か……こっちから……」
その声に、少しずつ、少しずつ近づいていく。
そして大分その声が近くなった時、葉の視界に入ったものは一冊の分厚い辞書。そしてその下から声が聞こえてくる。
葉はそれをそっと持ち上げて……笑った。重たい辞書の真下に雑草が床を突き破って生えているのが見えたからだ。
「やっぱり! 草さんがいました!」
「どんだけ汚いのよここ!?」
有り得ない。実に有り得ない。普通の住居でもこのような事態になるわけがない。
「結構生える」
とは魔理沙の談。思わず霊夢は呆れ気味に溜息を付きながら「掃除しなさい」と告げるのであった。
「いや、結構食えるんだぜ。煮たり焼いたり」
「アンタの家は山じゃないんだから」
何てやり取りが交わされているのを他所に、ぜーはー、と苦しげな息をつきながら「重かったのよ!」と文句を垂れる草の小言を聞き流していた葉は、妙案を思いついた。
「そうだ!」
——何よ?——
「草さん、魔理沙さんが借りてきた本が何処にあるかわかりませんか?」
——借りパクしすぎてもう際限がないけど……一番新しい本でいいなら、多分あっち側よ。アイツ、何時も読み終わると奥の方にポイ投げするから多分そこじゃない?——
「ああもうそれで潰されるこっちの身に……」と悪態を付き始める草に葉は「ありがとうございました」と礼を述べてから魔理沙達へと向き直った。
「わかったのか!?」
「はい。魔理沙さんはいつも読み終わると奥の方にポイ投げするから、奥の方にあるだろうって。それに潰されるから大変だって」
「へぇ、植物もよく見てるのねぇ」
「植物の声が聞ける能力か。意外と便利かもしれないな」
我々の認識の片隅にある植物という存在。身近にいながらも身近ではない彼らだからこそ、多くが見えるのかもしれない。
「とりあえず、探してきますね」
- 第一節「葉っぱと巫女と魔法使い」17 ( No.20 )
- 日時: 2014/11/26 19:47
- 名前: 幻灯夜城 (ID: cTzH0pQB)
奥の本段をあーでもないこーでもない、と得た情報を頼りに探している葉。その懸命な姿を眺めていた霊夢は彼女の能力に付いて考えていた。
今だ不明瞭な所が多い彼女の能力。便利ではあるが……同時に、何処か不自然なものも感じる。
「植物の声……っていうよりは、意思を汲み取るって感じね」
「でも紅茶は普通に飲んでたぜ?」
「お茶も普通に飲んでたし、相手は生きてる植物だけってことかしら……」
それを聞いていた魔理沙が何か思い出したように。
「そういえば、結界が弱まった時に植物も色々あったよな?」
「あれは別に植物の元気がなくなるってわけじゃなかったし……。病気じゃないとしたら、何が原因なのかねぇ」
「……まぁ、こればっかりはなんとも。困った時に頼れるのが知識人だぜ」
原因が全く分からない。原因がいる前提で起きている異変の所在を突き止めるのは、詰め将棋式に簡単なものだ。道中道を塞ぐ相手を倒していき情報を搾り出す。
だが、今回ばかりは少し面倒臭い。まず何が原因かすらもハッキリ分かっていないのだ。あらゆる病気を操る例の蜘蛛であれば、植物だけに作用する病も作れるだろう。だが、これは病気ではない。
(……)
おかしい。何かがおかしい。
あんまりにもあんまりな、符合の一致。植物が元気を無くしている時にやってくるのが、植物の意思を汲み取れる少女。通常、ナズーリンならば鼠とコミュニケートできる。といったように近い存在同士でなければ成立しない能力のはず。
そして、凶暴化の兆候を見せ始めた小妖怪。
(……それに……)
霊夢が気にかかっているのは妙に現実的な"あの夢"。幻想郷が崩壊し何もない中空を漂っていた世界の夢。少女が懺悔と祈りを捧げ続けている夢。
ただの悪夢だと片付けるには異常に気持ちが悪かった。
(……杞憂であってくれればいいんだけど)
「あっ、これかな……?」
思案にふける霊夢を葉の様子を見守る魔理沙。
そんな彼女達の元へ、一冊の本を手に抱えた葉がやってくる。
「魔理沙さん。この本ですか?」
それは妙な言語で書かれた書物。魔理沙はこれを見ておお、と久々に出会えた旧友に対する感情をもって本を眺める。
「懐かしいな、それだそれだ。サンキュー」
「さて、じゃあ」
早速返しに行きましょう——そう告げようとした時だ。
「おっと待ちたまえ紅白巫女」
「まさかあんたにそう呼ばれる日が来るなんてね」
魔理沙がそれを引きとめた。「まぁまてよ」とでも言いたげなその様子は恐らくまだ何かをたくらんでいるのだろう。彼女はもう一度葉に対して頼みごとをする。
「実はまだもうちょっと探して欲しいもんがあるんだけどなー?」
嫌な予感がした。
———
——三時間経過。
「はぁ、はぁ、こ、これで全部、ですか……?」
「ああ」
息も絶え絶えな様子の葉。
眼前に道具を山積みにした魔理沙。
「……あんた頼むだけで一回も手伝わなかったのね」
「いやぁ私が弄ると余計手間がかかりそうだったからな」
それはごもっともと言ってやりたいが三時間は流石にない。霊夢は暇して適当なものでかちゃかちゃと遊んでいた。近くに転がされていた知恵の輪は既に二つ目の解体に入っている。
それを無視して魔理沙は葉を手招きした。
「さて、んじゃ、葉。ちょっとこっちに寄ってみな?」
「え、まだ何か……?」
「違う違う。お前もスペルカードを用意しないと色々危ないだろ? 教えるから、ちゃちゃっと作るぜ」
こうして彼女達はスペルカードの作成に没頭する。
魔理沙の様子が何時になく生き生きとして見えたのは気のせいか。ちらりとその様子を見ながら知恵の輪を弄って。
かちゃ。
「あ、外れた」
——
——更に五分後。
「ん〜……、何かパッとしない感じだなー」
「あんまりはかどって無いわね」
「いやぁ、こいつセンスないみたいだ」
「ご、ごめんなさい……」
いい加減飽きたので知恵の輪を元の位置に戻して様子を見てみれば、スペルカード作成レクチャーがまだ終わってない。葉の足元には数枚のまだ未完成のスペルカードが置き去りにされている。そのどれもが萌ゆる緑に近い色合いを保っていた。
「っていうか、あんたが拘りすぎてんじゃないの?」
「その、とりあえず私が原因、みたいな流れはもうやめてくれよ」
霊夢がチラっと未完成のスペカを見る。それから、魔理沙のお手本用のスペカを見る。彼女の型は基本"花火"に近い。どっかんどっかん打ち上げて人を魅せつけて、火力も増大させる。パワー型だ。
もしかしたらそれが葉にとっては相性が悪いのかもしれない。
「葉、ちょっと自分だけで作ってみたらどう? 一応魔理沙のやり方を応用すればできるはずよ」
「は、はいっ!」
「えーっとこれをこうして」。霊夢が自分で作るようにと葉に言ってから、一秒、二秒。三秒が経過。
「で、できたーっ!!」
「……。一瞬で出来たぞ」
その手にある萌ゆる緑が舞い散る札を片手に、はしゃぎ回る葉の姿がそこにあった。五分かかって出来なかったとは何だったのか。
「人並みのセンスあるじゃない。やっぱり魔理沙の教え方が……」
「でもいいのか? そんなんで。弱っちぃぞ。戦っていけるのか?」
「こ、これからがんばります!」
確かにそれはある。
魔理沙の言うとおり彼女の手元にあるのは攻撃向きではない。攻撃性能が少しでも付随していたならばまだマシであったのだが、今の彼女のスペカはそれですらない。
"回復"。傷を癒すことだけに特化した存在だ。
「……。ま、いいか。使いたくないスペルカード作っても仕方ないからな」
「さ、じゃあ紅魔館へ向かうわよ」
——こうして、彼女達は魔理沙の家を後にし、紅魔館へと向かうのだった。
そこで起きている恐ろしい異変のことなど知る由もなく。
——To be continue
- 幕間「もう戻れない」 ( No.21 )
- 日時: 2014/11/28 20:28
- 名前: 幻灯夜城 (ID: 3mZ8rXZz)
草木も眠る丑三つ時という言葉が存在する。
その言葉は幽霊共が跋扈する時間帯であり、古来……といっても極300年位前までは恐れられていた時間帯であった。人は闇を恐れる。その傾向が風習となり、やがては亡霊を見たなどという逸話が横行する。
しかし、幻想郷においてその常識は通用しない。
夜だろうがなんだろうが、植物は眠らない。
深く、深い、森の中。
入る事を躊躇われるような世界の中。
——葉様が、博麗の巫女、ならびに魔法使いと接触しました——
「……そう」
奥深く。暗い、暗い、夜の中。月明かりのみが差す場所に紫色の少女はいた。彼女は物憂げな顔で、植物下級妖怪からの報告を聞き頷く。
——今後も、監視を続けますか?——
「ええ、お願い。出る時期位は見極めておきたいから。ただ、気をつけてね。姿を晒したらあっという間に倒されちゃうよ」
——……肝に銘じておきます。■■様も、あまり気に病みすぎることのないよう。貴女様が体調を崩されましては、今回の策は元も子もなくなるのですから——
かなり高い位にいる下級妖怪なのであろう。本当に彼女の身を案じるその姿に、少女はくすりと笑って「大丈夫よ」とだけ答えた。
その後に姿は消えた。他の者達に伝令を回しにいったのだろう。
月を見上げて、思う。
私はどうすればよいのかと。
こんな残酷な運命をあの子に背負わせた私は、酷い裏切り者なのではないかと。できるなら代わってやりたいと。
「……ごめんなさい」
ぽつり、とそれだけを呟いて彼女は森の奥へと消えていった。
残されたのは寂しげに灯る月明かりのみ。
一陣の風が木の葉を揺らし、漣立ててゆく……。
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