二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 雨と涙(東方Project)
- 日時: 2014/04/01 15:32
- 名前: 黒猫 (ID: hQFC8mQi)
序
その場には雨の音のみが盛大に響いていた。目にも見えるほどの大きな雨粒が木々の葉に連続して当たり、ぬかるんだ地面にできた水たまりに波紋を作ってうるさく音を立てる。
かた、かた、雨の音以外に下駄の音が静かに弱々しく聞こえてきた。その下駄を履く少女は茄子のような地味な紫色をした傘を細い両手で決して離さないように握っていた。雨は容赦なく斜めからも少女を襲い、素足にできた無数の擦り傷にしみた。
どこに向かい、なんの目的で歩いているのか分からなくなるほどに少女は空腹と疲労で意識が揺らぐように薄れていた。そして、その場にゆっくりと倒れてしまった。
少女は地の味を身に感じるほどに地面と密接になっていた。瞼が支えを失ったように落ちていき、目を閉じた。涙を流せば、誰かが助けてくれるという考えは人間の幼児の考える発想だ。彼女には助けを求める人物はいない。だから涙は流さなかった。
その場にはもう雨の音のみが聞こえるようになり、少女のこの世に一つしか存在しない、名前である多々良小傘(たたら こがさ)を呼ぶ者も同様に存在しないのかもしれない。
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- Re: 雨と涙(東方Project) ( No.5 )
- 日時: 2014/04/05 15:50
- 名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)
こんにちは、黄昏。です
待ってました!
心情の描き方がとても上手ですね!
羨ましいですw
更新頑張ってください。
- Re: 雨と涙(東方Project) ( No.6 )
- 日時: 2014/04/05 17:58
- 名前: 黒猫 (ID: hQFC8mQi)
黄昏。さん、こんにちわ。未熟な自分の小説を読んでいただき誠にありがとうございます。黄昏。さんもあれほど多くの投稿ができて、素晴らしい世界観をお持ちだと思います。
この作品は次の段落で終わりにするつもりです。次の作品は誰にするかはまだ決めていません。誰か希望などあれば参考にさせていたたぎます。
- Re: 雨と涙(東方Project) ( No.7 )
- 日時: 2014/04/05 18:08
- 名前: 黄昏。 ◆nYYwYkb6HQ (ID: H4NN94uP)
黄昏。です
私的には永遠亭ぐらいが書きやすいと思います…
頑張ってください!
- Re: 雨と涙(東方Project) ( No.8 )
- 日時: 2014/04/05 21:34
- 名前: 黒猫 (ID: hQFC8mQi)
三
あっちにいったぞ、向こうだと村人たちの声があふれかえっていた。若い声から、野太い声、中には老人の声まで混じっていた。その中心にいるのはやはり小傘であった。
薄暗い森の中を一人で獣道でも整備された道でもない木々や落ち葉で満たされたそこをひたすらに駆けていく。背後には無数の松明の黄色い光が徐々にこちらへと近寄ってきており何より下駄では走る速度は彼らと比べれば遅かった。
捕まれば何をされるかは容易に予想がついた。普段は石を投げられ擦れて血が出る程度であったが今回はそれで済むはずがない。農作業で使う鎌や鍬を見ればとてつもない激痛が待っているはずだ。五体をバラバラに切断されようとも生きていられる妖怪にとって痛みで死ねる人間の方がまだ良いと思えるほどの苦しみである。
小傘と彼らとの距離が確実に詰まる中で彼女の脳裏に浮かんだのは水葉の姿であった。だが彼は人間である。そして彼女は妖怪である。その種族の違いが暗黙の了解で彼への助けを求める気持ちを遮っていた。
それでも小傘が気づいた時には水葉の自宅の前にいた。玄関の戸は閉まっており窓からは光が見えるので彼がいるのは確かである。彼女が左手で傘を持ったまま右手で戸にノックしようとしたところで右手が止まった。
彼に助けを求めればこの窮地を脱することができる。だが小傘にとって涙を流し彼に懇願できるほど彼女の痛みは浅くなかった。松明の光はもう目と鼻の先まで近づいていた。
「なんだ、騒々しいな。なにかあったのか」
そう言いながら水葉は玄関の戸を開けた。小傘はどうしたらいいか分からず声すら出せなかった。無言の彼女の不安定な心理状態は子供じみたものにも近かった。怪我をし泣き出す寸前の子供といったところだろうか。
入れ、と水葉は一言言った。えっ、と小傘がもう一度聞き返すと押し入れにでも入ってろ、と彼女の左腕を掴んで家の中に放り込んだ。彼女はすぐに身を潜め、彼は玄関のそこに立ったままで数十秒後に水葉と歳が同じほどの男が一人来た。
「おい、水葉。ここに手配書にのった妖怪が来なかったか。茄子みたいな傘を持った妖怪だ」
「いや、知らないな。見ていないが」
男はそうか、と言って舌打ちをしてからその場を離れようとした所で水葉は口を開ける。
「一つ聞かせてくれないか。あの子が一体何をしたと言うのだ」
はぁ、と何を馬鹿なことをいっているのだこいつはと半分殴りかかりそうな表情で男は言った。水葉は続ける。
「たしかに彼女は妖怪だ。だが我々と同様に息をし、腹をすかし、怪我をし、赤い血を流す。そこに一体何の違いがあるというのだ」
「違い、そんなのは必要ない。あいつは妖怪、それだけで理由は必要ない。それはどうして家畜を殺せるんだ、と聞いてるようなものだ。それは簡単だ。家畜だからだ。奴も同じ、妖怪だから。それだけだ」
男はそう言い捨ててその場を去った。水葉は一息ついて家の中に入ると居間に両手を胸の前でからめるようにして握っている小傘がいた。彼女は一言だけ静かに言う。
「さっき言ったのはあなたの本心ですか」
「ああ。偽りはない、あれは俺の本心だ」
それ以降小傘は言葉を発しなかった。いや、言葉というくくりには属さない感情を声として出さなければ抑えきれなくなった時に出るようなそんな嬉しさと悲しさを溢れ出していた。
水葉の胸の中で涙を出し続けた。止まることなく頬を伝わり彼の衣服を濡らすほどにその涙という液体はあふれ続けるである。<了>
後書き
いやぁ、二次創作は楽しいですね。すぐネタが思いつきますし即興で書けるし楽でいいです。10割本気で小説書くと疲れちゃいますからね。1,2割がちょうどいいかな。次はたぶん進撃の巨人の二次と東方(誰か)を同時並行で書こうかなと思ってます。毎週土曜日更新でがんばって行きます。そんなわけでここまで読んでいたたぎありがとうございました。 黒猫
- Re: 雨と涙(東方Project) ( No.9 )
- 日時: 2014/04/05 21:59
- 名前: ニコ・ロビン (ID: T3.YXFX2)
いい話!グスン・・・。
小傘・・・。
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