二次創作小説(映像)※倉庫ログ

夏目と櫻華
日時: 2016/07/17 13:43
名前: 幽谷澪掎 (ID: KS1.rBE0)

〜櫻華side〜
ー逃げなければ。少しでも遠くに、一刻でも早く。
体中が悲鳴を上げている。数日前からまともな睡眠など取ってないし、一日中ほんの少し休憩をとる以外は動きっぱなしだ。
しかし、櫻華にとってはそんな事どうでもよかった。彼奴らに捕まることを考えれば、睡眠を取っていないことも、それによって体が悲鳴を上げている事も、関係なかった。何時もなら此処まで体力や気力を消耗することは無いのだが、今回は彼奴らから逃げるために能力を使った為疲労が激しかった。体が鉛を飲み込んだように重く、耳鳴りや頭痛が酷くなる。
ー……っクソ……体が……思うように動か、な…………。
そう考えた時、ふと昔の記憶を思い出した。
ーあぁ……そういえばあン時もこんな感じ、だったっけか……。
右脚の腱を切られて、色々な事を試されたときもこんな感じだった。
いよいよ体がいうことをきかなくなり、側にあった木に手を付く。
ーもう……駄目、かもしれないな…………。
櫻華はらしくもない事を考えた自分に、ふっ……と自嘲の笑みを漏らした。
ー馬鹿馬鹿しい。そんな事とうの昔に分かっていたじゃないか。……思い出したくもない、あの日から。
少しでも前に進まなければ。この能力は彼奴らにだけは使用《つか》わせてはならない。……彼奴らのように己の欲望を満たそうとする奴等にだけは使用わせてはならない。
一歩でも歩みを進めようと脚を一歩踏み出した瞬間、体がグラリッと前のめりに傾いた。そして、そのまま地面に向かって、倒れていく。
ーあぁ……やっと俺は……
死ねると思った時、若い青年の声がふいに耳に突き刺さった。
「危ないっ!」
声が聞こえたと思った瞬間《とき》には、倒れ掛けていた体が細い腕によって支えられていた。
「なんで……あと少しで……死ねた……の、に……」
ーなんで、なんで邪魔をするんだ……もう、この世界を生きるのは……。
胸の内にある疑問が解決する前に、櫻華は闇に引き込まれるように意識を手放していた。

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