二次創作小説(旧・映像)

【完結】風林火山プリキュア!
日時: 2017/08/01 13:12
名前: 愛
参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31539

初めまして!愛と言います!
今日からは、オリジナルのプリキュア、通称オリキュアの小説を書きたいと思います!
初の試みなのでグダグダとかになると思いますが、暖かい目で見てやって下さいw
よろしくお願いします!

追記:上記URLにて風林火山プリキュアの劇場版という名目の中編を載せています。良かったらそちらも見てやってください。

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Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.349 )
日時: 2017/09/16 23:19
名前: 愛

風林火山外伝「雷と陰の話」9

「侵掠すること、火の如し! キュアフレイム!」
「疾きこと、風の如し! キュアウィング!」
「動かざること、山の如し! キュアモンテ」
「徐かなること、林の如し! キュアフォレスト!」
「動くこと、雷霆の如し! キュアサンダー!」
「「「「「レジェンドプリキュア!」」」」」

 名乗りを終えた瞬間、大量のオンネーンが襲い掛かる。
 私達は咄嗟に後ろに跳び、距離を取る。

「雷香!」

 その時、名前を呼ばれる。
 振り向くと、そこにはこちらに顔を向ける火燐の姿があった。

「雷香、私と風音でここは食い止める! その間に、向かって!」
「で、でも……!」
「林檎と山那は雷香の援護! オンネーンが雷香を攻撃するとは思えないけど、念の為!」
「で、でも……!」

 不安そうに聞き返す山那に、火燐はすぐに口を開く。

「影津を止められるのは雷香しかいない! だから、私達で全力で援護するんだ!」
「でも、火燐ちゃん達だけで時間稼ぎなんて……!」

 山那の言葉に、火燐は笑顔を浮かべ、風音の手を握った。

「大丈夫! だって、私には風音がいるもん!」
「火燐……!」

 火燐の言葉に、風音は驚いたように目を見開く。
 しかし、すぐに優しく笑うと、火燐の手を握り返した。
 ……風音の笑顔なんて、初めて見た。

「うん……ここは、私達で何とかする! だから、三人は早く影津を!」
「……分かった……絶対に、死なないでね」

 林檎の言葉に、火燐と風音は頷き、オンネーン達に向かう。

「侵掠の火よ!」
「疾き風よ!」
「「我に集い、力と成れ!」」

 二人がそう声を合わせると、火を纏った風がオンネーン集団を蹴散らしていく。
 目の前に道が広がるのを見て、私はすぐに走り出す。
 あくまで山那と林檎は援護役。
 私が自分から走って……影津を止めに行かなければ!
 そう思っていた時、目の前にオンネーンが躍り出る。

「しま……!」

 驚き、咄嗟に立ち止まりそうになる。
 しかし、オンネーンは私の顔を見た瞬間、すぐに私の目の前から離れ、山那や林檎を攻撃した。
 ……まさかこのオンネーン……私を攻撃しないだけでなく、邪魔もしないのか?

「ッ……山那! 林檎! 後のことは頼んだ!」

 全部説明する時間はない。
 私はそれだけ叫ぶと、オンネーンの相手に手こずる二人に背を向け、奥に駆ける。
 あの四人がオンネーンに殺されるより前に、影津をどうにかしなければ!
 そう思いしばらく走っていると、やがて、歪で巨大な靄を見つけた。

「……影津……?」

 咄嗟にそう名前を呼んでみるも、返事は無い。
 ただ、黒い靄が近くにある物に付く度に、オンネーンを生み出す。

「影津ッ!」

 咄嗟にそう名前を呼び、私は影津の体―――オンネーンを生み出す怨気―――に触れた。
 指先が触れた瞬間、どす黒い感情が流れ込んでくるのが分かった。

「うッ……!?」

 その瞬間、世界の全てが憎くなる。
 戦争を繰り返した村人達が。
 私と違って、大切な人との未来が約束されている火燐達が。
 そして……私を置いていなくなった、影津が。

「ぅッ……ぁあッ……影津ッ……!」

 負の感情の激流に流されそうになるのをなんとか堪えながら、私は必死に影津の体である怨気に抱きつく。
 その瞬間、気味の悪い感触が私を襲う。
 鳥肌が立ち、氷塊を服と肌の間に投げ込まれたような寒気が背中を這いずり回る。
 しかし、なんとか堪え、私はさらに強く影津を抱きしめる。

「影津ッ……もう止めてッ……!」

 そう叫ぶ。
 叫びながら、私は、ひたすら強く影津を抱きしめた。

「影津……本当は、こんなことしたくないんでしょ!? 大好きな皆を傷つけたりしたくないんだよね!?」

 ―――……イ……―――

 一瞬、声が聴こえた。
 私はすぐに影津から体を離し、彼女の声に耳を傾ける。

 ―――ニクイ―――

 しかし、その声は、私の期待とは大きく違った。

 ―――スベテニクイ―――
 ―――ケシタイ―――
 ―――キエロ―――

 その声は、影津の声に雑音が混じったような声だった。
 まさか、これは、影津の心の声……?

「影津……確かに、私も皆憎いよ。村の人達が戦争なんてしなければ、影津はこんな姿にならずに済んだ。火燐達の存在が、影津の心を追い込んでいたなら、火燐達がいなければ良かったって思う。……私が、影津の気持ちに気付いていれば……こんなことにはならなかったかもしれない」

 そう言いながら、私は腕を黒い靄の中に突っ込んだ。
 さらに気味の悪い感覚。
 でも、これが全て影津なら……愛する者による痛みなら、私は耐えられる。

「でもさ、恨んでも、物事は解決しないよ? だから、一緒に帰ろ? 帰ったら……一緒に、全部滅ぼしちゃおうよ」

 ―――ァァ―――

 影津の声を聴きながら、私は深呼吸をする。
 これで決める。
 全身全霊を込めて、影津を浄化して……彼女を取り戻す。

Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.350 )
日時: 2017/09/17 20:42
名前: 愛

風林火山外伝「雷と陰の話」10

「行くよ、影津。……ちょっと痛いかもしれないけど」

 私の言葉に、影津は答えない。
 でも、それで良い。
 これ以上彼女の声を聴いたら、きっと、私は思いとどまってしまうから。

「動く雷霆よ! 我に集い、力と成れ!」

 そう叫んだ瞬間、腕に雷が纏う。
 ちょっとした雷じゃダメだ。もっと、巨大な雷じゃなければ!
 私は拳を握り締め、さらに力を込める。
 すると、体から力を吸い取られるような感触があった。

 ここで死んでしまっても良い。
 影津が、それで楽になるか、元に戻れるなら……。
 私の全てを、この一撃に懸ける!
 だから、その気持ちに応えてくれ……アウラシュリフトロレよ……。

 選ばれた者の気持ちに応え現れる伝説の書……アウラシュリフトロレ……。
 そのアウラシュリフトロレによる長い伝説だとか、堅苦しい事柄はよく知らない。
 ただ、もしコイツを使って影津を元に戻せるかもしれないのなら、私はそれに賭けるしかない!

「今、大いなる伝説よ! 我等に力を貸し給え!」

 そう叫んだ瞬間、暗い闇の中に眩しい閃光が煌いた。
 数瞬後、両手で持てるくらいの、固い感触と確かな重みがあった。
 深く考えている場合ではない。
 これを使って、影津を元に戻す!

 すでに満身創痍。
 足から力は抜けそうで、意識も朦朧とする。
 でも、ここで気を失うわけにはいかない。
 せめて、影津をどうにかするまでは!

「影津うううううううッ!」

 叫びながら、私は手に持った固い何かに力を込める。
 すると、さらに光は強くなり、闇を打ち消していく。
 やがて、巨大な雷がその固い何かを中心にして……弾けた。

「ひゃぁッ!?」

 巨大な雷に体を弾かれ、私はその固い何かから手を離した。
 地面を転がり、体を打ち付ける。
 いつの間にか、変身は解けていたようだ。
 鈍い痛みを感じながら、私は影津の方向に視線を向けた。

「影津ッ!」

 そこには……影津の姿はどこにも無かった。
 辺り一面の地面は黒く焦げていて、焦げ臭いにおいが辺りに充満していた。
 私は鼻を押さえながらフラフラと立ち上がり、ゆっくりと、雷の暴発の中心地に向かう。

「……何、これ……」

 そこには、金色に輝くからくり時計があった。
 時計の針は、長針も、短針も、秒針も。全てが十二時をさした状態で、止まっている。
 何だ……これは……。

「雷香!」

 その時、名前を呼ばれた。
 一瞬影津を期待して振り向くが、そこには、こちらに向かって覚束ない足取りで走って来る火燐達の姿しかなかった。

「皆……」
「さっきの雷は……一体……それに、影津は……!」

 火燐の問いに、私はもう一度時計に視線を向けてみた。
 さっき、この時計から出た雷が、影津を消してしまった。
 よく見れば、周りにいたハズのオンネーン軍団も消えている。
 まさか、消えた……? 影津も……オンネーンも……。
 そう思っていた時、林檎が私の隣に来て、時計をジッと見つめた。

「林檎……?」
「雷香……この時計は?」
「え……えっと、雷の書の力、使ったら……出てきた」
「……そう……」

 林檎はそう呟くと、時計を持ち上げた。
 すると、先ほどまでの輝きが消え、白と金で装飾されたごく普通の時計に変わる。
 それと同時に、体中を何かに舐め回されるような不快感が駆け巡った。

「林檎ちゃん……それ危ないやつだよきっと……」

 怯えた表情で山那はそう言い、林檎に後ろから抱きつく。
 腰の辺りに腕を回し、林檎の肩に顎を乗せて、林檎が持つ時計を見ている。
 そんな山那の頭を撫でて、林檎は微笑んだ。

「大丈夫だよ、山那。……多分だけど、これ、怨気を閉じ込めているんじゃないかな」
「怨気を?」

 私が聞き返すと、林檎は頷く。

「多分、この時計は、怨気を閉じ込めていられる時間を表しているんだと思う。普通の時計での一秒が、この時計でどれくらいの時間で表せるのかは分からないけど」
「……そっか……」

 私がそう返すと、林檎は微かに目を伏せ、時計を地面に置いた。
 とりあえず、この時計の処遇は大人に任せよう。
 まぁ、危険なものだし、最終的にはどこかで保管することになるんだろうけど。
 でも、一つだけ分かるのは……。

「……影津には……もう二度と会えないって、ことだよね」

 私の言葉に、全員が顔を上げた。
 私はそれに何も言わず、空を見上げた。
 影津。もし貴方が死んだのなら、今頃、どこかで私を見守ってくれているのかな。

 ……影津。
 会いたいよ、影津……。
 どうしたら……貴方に会えるかな?

Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.351 )
日時: 2017/09/19 23:21
名前: 愛

風林火山外伝「雷と陰の話」11

 あれから大人達の判断で、影津を閉じ込めた時計は封印することになった。
 まぁ、それが妥当だろう。私達も、それを了承した。
 でも、封印する場所は私の意見を貫かせてもらった。

 それは……影津との、秘密の場所だ。
 彼女がいなくなった今、すでに、秘密にする意味もない。
 そこに祠を建てて、中に時計をしまった。
 縄を複雑に編んで、簡単には解けないようにした。でも、原理さえ分かれば、簡単に解ける仕組み。
 この縄を解く時。それは……影津を完全に浄化する力を得た時。

 火燐達がまた浄化技を掛けることが出来れば良かったのだが、彼女達の力も雷の力の暴発により、失われた。
 ただ、不幸中の幸い、彼女達のアウラシュリフトロレはただの巻物に変わっただけで済んだ。
 あくまで憶測の話だが、このアウラシュリフトロレは私達の気持ちによって生まれたものだから、私達のように、何かを守りたいという気持ちに呼応して、きっとこの巻物はまた力を取り戻してくれる。
 もう私達にそれほどの気力は無いから、いずれ、私達の同等の強さの気持ちを持った少女達が現れることを期待するしかない。

 問題は……私のアウラシュリフトロレ、雷の書だ。
 影津を封印する時に暴発させたせいで、恐らくアウラシュリフトロレごと破裂してしまったらしく、跡形もなく消えていた。
 ライコウがなんとか雷の力の残骸を集めてくれたが、器も無いし、適当に捨てておくように言った。

 ……今の私に、守りたいものはない。
 今更、何かを守るための力など……必要無い。
 だって影津は……もういないから。

 影津の相棒だったカゲロウは、悲しみに暮れていた。
 そりゃそうだ。我が子のように大事にしていた影津の末路が、あんな……異形の化け物なのだから。
 でも、きっとカゲロウは大丈夫だ。
 だって……もうすぐ、同じ悲しみを持った仲間が増えるから。

 夜も更け、皆が寝静まった時間、私は屋敷を抜け出し、祠がある二人の秘密の場所に向かった。
 林の中は足元もままならず、何度も木の根に足を引っかけて転んだ。
 でも、なんとか、祠の元へと辿り着く。

「……会いに来たよ、影津」

 私がそう声を掛けても、反応は無い。
 分かっていた。でも、諦めたくなかったんだ。

「……月が、綺麗だね」

 そう呟きながら、私は夜空を見上げる。
 満天の星空。そして……綺麗な満月。
 私は祠を撫で、微笑んで見せた。

「ねぇ、影津……私、影津がいない人生なんて、嫌だよ……」

 気付いたら、私の頬を涙が伝っていた。
 もう、嫌だよ……こんなの……。
 影津と一緒に大人になりたかった。影津と一緒に笑い合いたかった。
 でももう……彼女はいないのだ。

「だからね、私決めたよ。影津」

 語り掛けながら、私は……懐に隠していた包丁を取り出す。
 コッソリ持ってきたのだ。
 私はそれを首筋に当て、祠に向かって笑って見せる。

「私……死ぬ。そしたら、影津に会える気がするんだ……」

 だからね、安心して、影津。
 影津をあの世で、一人ぼっちになんてしないよ。
 私が……付いていてあげるからね。
 だって影津は……私が守るんだから。

 私は首に、包丁を突き刺した。
 息が苦しくなり、私は地面に倒れ込む。
 ちょうど頸動脈の辺りを切ったようで、地面に倒れた衝撃で包丁が抜けた途端、血が溢れだした。
 地面に広がる血だまりを見つめながら、私は瞼を閉じる。

 瞼の裏に、影津との思い出が蘇る。
 笑う影津。泣く影津。怒る影津。
 影津。影津。影津!
 そこで、私はとんでもないことに気付いてしまった。
 なんて私は馬鹿なのだ。なんでもっと早く気づけなかったのだ。

 影津は……死んでいないじゃないか。
 影津はずっと、あの怨気になっているんじゃないか!
 死の瀬戸際に立たされて、冷静になって気付かされた。
 このまま私が死んだら、影津が本当に一人ぼっちになってしまう!
 確かに、これで怨気を浄化することができれば、影津は死という形で終われる。
 死ぬのはその後にするべきだった。死ぬにはまだ、早過ぎた。

「ぁぇ……づぅ……」

 なんとか影津の祠に手を伸ばしながら、私は声を振り絞る。
 まだ生きている。まだ動ける!
 止血しなくちゃ。影津を一人にしたらいけないのに!
 私は、最後の最後まで……最後の最後まで、影津を、一人にすることしかできないのか!
 影津の孤独に気付けず、彼女を無意識の内に傷つけることしか、できないんだ。

「ぁ……」

 意識がだんだん遠退いて行く。
 私の体は動かなくなり、呼吸も少しずつ苦しくなっていく。
 寒い……まるで冬みたいに、寒い……。
 図々しいかもしれない。でも、もしも私の願いが一つだけ叶うなら、最後に……――影津に抱きしめられたい。

 しかし、私の願いが叶うことはなく、意識は闇に落ちた。
 最後に見えたのは……黒髪の幼馴染の、可愛い笑顔でした。

Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.352 )
日時: 2017/09/20 18:39
名前: 愛

風林火山外伝「雷と陰の話」12

<影津視点>

 暗い……何も、音がしない……。
 目の前に広がる暗い空間を眺めながら、私は心の中でため息をつく。
 実際につきたくても、今更この体では、何も出来ない。

 目前に広がるのは、真っ暗闇。
 正直、自分が瞼を閉じているのか、開けているのかもわからない。
 しかし、実際のところ、私には瞼も眼球も無いので、今私がいる祠が暗いだけなのだろう。

 これから私は……どうなるのだろう。
 それこそ、このまま永久にこの暗闇に閉じ込められるのであれば、この闇に発狂することも可能だろう。
 いっそのこと、発狂してそのまま自我を失うことさえできれば、どれだけマシか。
 しかし、それは出来ない。なぜなら、私の体は全ての人間に僅かに宿る怨念を通してその人の目に映る世界を見ることが出来る。
 また、その怨念を取り出して人間に見えない形で外に飛ばすことで、自由に飛び回ることもできるのだ。
 いざ闇に狂おうと思っても、どうやら精神的にそういう面には無意識にセーブが掛かるらしく、発狂しそうになる直前で外の世界の方に意識を向けてしまうのだ。
 おかげで、狂うこともなく、ただ茫然と外の世界を見つめて暗闇に身を潜める時間が長くなった。

 そんな日々を繰り返していたある日の夜、いつものようの夜闇を観察していた時、林の中から飛び出してくる人影が見えた。
 月夜に照らされる『彼女』の顔を見た瞬間、私は歓喜に打ち震えた。
 ―――雷香ちゃんだ!
 かなり久しぶりに見た雷香ちゃんの顔。
 やはり辺りが暗いからか、彼女の顔色を完全に伺うことは出来ない。

 でも雷香ちゃんだ。
 ずっと私を守ってくれた優しい雷香ちゃんだ。
 最後は雷香ちゃんに浄化されてしまったけれど、それはしょうがないことだと思う。

 あの時私は怨念の感情エネルギーに支配され、全ての村人を打ち滅ぼすことしか考えられなくなっていた。
 唯一、雷香ちゃんだけは守ろうと意識はしたが、それが限界だった。
 でも、後悔はしていない。だって、雷香ちゃんのことは傷つけずに済んだし、今でも村の人達を殺したいという気持ちは変わらない。
 もし今こうして封印されていなければ、今頃私はまた村人たちを殺しに行っていただろう。
 それだけの力が、今の私にはある。

「……会いに来たよ、影津」

 その時、雷香ちゃんがそう声を掛けてくれた。
 雷香ちゃんが、私の為に……?
 その事実に、私はとても嬉しくなる。
 もし今の私に顔があったなら、今頃にやけていたかもしれない。

「……月が、綺麗だね」

 彼女の言葉に、私は夜空を見上げる。
 ……そうかな。
 毎日見ているから、別に何とも思わない。
 あんな満月なんかより、雷香ちゃんの方が百倍綺麗だと思う。
 そう思っていた時、雷香ちゃんが私の封印されている祠を優しく撫でた。
 ……あぁ。あぁぁぁ。
 まるで、雷香ちゃんに撫でられているかのような感覚に、私は言葉を失う。

「ねぇ、影津……私、影津がいない人生なんて、嫌だよ……」

 震えた声で紡がれた言葉に、私は雷香ちゃんの顔を見つめる。
 雷香ちゃん……泣いてる……?
 私の……ために……?
 そう思っていた時、雷香ちゃんが懐から何かを取り出した。

「だからね、私決めたよ。影津」

 満月の光を反射しながら輝くそれは……包丁。
 嫌な予感がした。
 今の私は、体には実体がない上に、石の祠に封印されているから攻撃のしようがない。
 じゃあ、あの包丁で、この場で刺せる相手は……一人しかいない。

「私……死ぬ。そしたら、影津に会える気がするんだ……」

 雷香ちゃんは、笑顔で自分の首筋に包丁を当てて、そう言って笑う。
 ―――やめてッ!
 ―――そんな馬鹿なことはしないでッ!
 口が無い私の叫びが彼女に届くことはなく、雷香ちゃんは自分の首に包丁を突き刺した。

 噴き出す鮮血。溢れ出る生命。
 赤黒い染みが地面に広がっていく。
 これは……何?
 目の前で倒れ伏すのは……誰?

 ―――ぁ……。
 ―――ぁぁ……。

 目の前が、真っ赤に染まっていく。

 ―――死んだ。
 ―――雷香ちゃんが死んだ。
 ―――誰が殺した。
 ―――私だ。
 ―――雷香ちゃんは、私がこんな姿になったせいで死んだ。
 ―――じゃあ私をこんな姿にしたのは何だ。
 ―――戦争だ。
 ―――戦争は誰が起こした。
 ―――人間だ。
 ―――じゃあ、雷香ちゃんを殺したのは、私と人間だ。
 ―――殺す。
 ―――全ての人間を殺す。
 ―――こんな世界滅ぼしてやる。
 ―――だから、安心してね。雷香ちゃん。
 ―――雷香ちゃんの仇は、私が取るから。

 そう思って祠を出ようとした瞬間、鋭い痛みが体中に走る。
 いいや、違う。これは、雷香ちゃんの雷の力だ。

 ―――なんで?
 ―――なんで私の邪魔をするの?
 ―――私は雷香ちゃんのために人間を殺そうとしているのに。

 とはいえ、この雷の力も永遠に続くわけでは無いようで、微量だが少しずつ弱まっているようだ。
 このまま年月を待てば、いずれは祠から出られそう。

 ―――そうしたら、次こそ雷香ちゃんの仇を取ろう。
 ―――この世界を支配して、全ての人を殺す。
 ―――だから、安心してね。雷香ちゃん。
 ―――雷香ちゃんの分まで、この世界を恨むから。
 ―――雷香ちゃんの分まで、この世界を憎むから。
 ―――雷香ちゃんの分まで……この世界を滅ぼすから。

Re: 【完結】風林火山プリキュア! ( No.353 )
日時: 2017/09/20 18:54
名前: 愛

あとがき

風林火山プリキュア外伝、いかがだったでしょうか。
いやぁ、初めてこんな鬱展開書いた気がします。
元々は「雷×陰の百合良くね!?」的なノリだったんです。
なぜこうなった()

まぁ、本編ですでに影津ちゃんの運命は決まっていたようなものですからね。
バッドエンド不可避だったとは思います。
しかしここまで鬱展開になるなんて思わなかった。

あと、本編の方はやはり『プリキュア』という枠に当てはめられた世界なので、私にも手加減というものはありました。
例えば、出血描写をしないようにするとか、死ぬ・殺すなどの野蛮な言葉は使わないだとか、プリキュアの設定を忠実に再現するように気をつけていました。
しかし外伝になった瞬間弾けましたよね。
なんでかは分かりませんが、「これは外伝だからプリキュア関係ない! 自由に書いてやるぜ!」ってなりました。

でも今思うと、最近こうしてオリキュアとかハッピーエンドの作品ばかり書いていたので忘れていましたが、私の本領はシリアスなんですよね。一応。
元々文章の参考にしている小説が救いようのないバッドエンドですし。
だからって……これは無いよ……。
風林火山プリキュアをpixivにまとめる時はタグに「子供向け」のタグを使っているのですが、流石に今回は外したいと思います。いや、これを子供に読ませたらいけない……。
代わりに「ヤンデレ」と「百合」のタグを付けたいと思います。

あと弾けたと言えば、百合もかなり弾けました。
なんでですかね(^ω^)
私の中でのイメージは、「雷香ちゃんは影津ちゃんがいなくなるまで恋心に気付いていないけど、いなくなった途端気付くレズ」「影津ちゃんは生粋のレズ」って設定考えて遊んでました。
いや、まぁ……流石に今回の外伝はガチレズすぎますよね。反省はしません。

あと、この外伝で、私は風林火山プリキュアから手を引きたいと考えています。
完結作品にずっと構っているのもなんだかアレですし。
確かにこの作品は初のオリキュア小説。そして初の金賞受賞作ということで思い入れはあります。それこそ、我が子のように。
しかし、いつまでも過去に構ってはいられません。
朱莉ちゃん達のように、私も先に進みたいと思います。

では皆さん。またどこかで会いましょう。

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