二次創作小説(映像)※倉庫ログ

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逃走中♯1 〜nostalgia〜
日時: 2017/05/20 15:06
名前: 灯焔 ◆/.5aaSlLPY (ID: G/Xeytyg)

そこは、小さな哀愁の街。
優しくも儚いピアノの音が、街を包んでいる。


ピアノの音に耳を傾けながら、『紅い青年』は静かに街を見つめていた。
少女と青年は、小さな子猫を追って『参加者』を探し始める。
うさぎと猫と少年は、紅い青年の頼みを聞き『鍵の子猫』を探し始める。
六つ子の上3人は、子猫を追いかける。
魔法使いは瘴気の謎を追って、哀愁の街を駆ける。


〜これ以上はページが破られて見られないようだ〜



♪逃走者情報♪

<pop'n music>シリーズより 3人
・ミミ
・ニャミ
・ナビ

<???????>シリーズより 3人
・???
・???
・???

<おそ松さん>より 3人
・松野おそ松
・松野カラ松
・松野チョロ松

<????????>より 3人
・??????
・??
・???

<?????????????>シリーズより 3人
・???
・????
・????

<QMA>シリーズより 3人
・レオン
・ルキア
・アイコ

以上 18人


※物語で詳細が分かり次第こちらに追記予定

Page:1



Re: ♯1 〜nostalgia〜 ( No.1 )
日時: 2017/05/12 20:34
名前: Pastel’s GM ◆TEj2Pj1qIE (ID: TdwH/e73)
参照: http://nazr.in/ZFs

h・・・灯焔さん生きていたんですね!
お久しぶりor初めまして!
物語の中の『紅い青年』さん初めまして!

内容の書き足し前で申し訳ございませんが・・・

TX(Tr01)が逃走中NSの募集を行っています!

Re: ♯1 〜nostalgia〜 ( No.2 )
日時: 2017/05/12 17:43
名前: 灯焔 ◆/.5aaSlLPY (ID: LIJSamtZ)



『———私は、また間違えてしまったのだろうか』


街中に佇む小さな家。
そこの窓から、青年は———小さく呟いた。






ここは、哀愁の街『ノス・トス』。
かつては『ノスタルジア』と呼ばれた地。
音楽———特に、ピアノを使用した音楽がかつて流行り、そして衰退していった。
現在は『廃れた街』という意味を込めて『哀愁の街』と呼ばれている。
街に住む人口も少なく、貿易をする場もあまり存在しない為、街の住人は自給自足で日々を暮らしている。元々の人口が少ない為か、住人は暮らしには特に困っていないという。


青年が小さくため息をつき、ゆっくりと腕を伸ばし、窓を閉める。
窓を閉めたと同時に、外にそよそよと吹いていた風が少しばかり強くなったような気がした。
閉めて正解だったな。彼はまた小さくため息をつき、後ろを振り向く。
そこには、『実体のない、ホログラムのような身体の少女』がいた。


「どうしたんだいGM。最近はため息ばかりつくじゃないか」
「その名前で呼ぶなと言っているだろう。それに…私は完全に、貴方に協力すると決めたわけではない。———殿」
「この姿でその名前を言わないでもらえるかな?今は高性能コンピュータシステム、『RADIUS』なんだから」


少女が青年をからかうようにくつくつと喉を鳴らして笑う。
それを見て、青年は癪に障ったのか少しだけむすりと顔を歪ませた。
『以前の君ならばそんな顔はしなかったと思うがね』彼女がそういうと、彼は『色んな意味で君のせいでもおかげでもあるがな』と、呆れ顔で返した。


ふと「みゃあ」という小さな鳴き声が聞こえた。
2人が声に気付き声の方向を向くと、そこには尻尾をゆらゆらと揺らしながらこちらを見ている小さな子猫がいた。模様からして虎猫だろうか。
こちらに気付いたのが嬉しかったのか、子猫は「みゃん!」と嬉しそうに青年の元へ駆け寄る。
青年が手を伸ばすと、子猫はぺろりと指を舐める。青年が彼の知っている人物だと分かったのか、その手をぽんぽんと叩き、子猫は乗った。


「…はは、くすぐったい。……とら」
「君のそのネーミングセンスはどうかと思うがね、グレン君」
「…あまり本格的な名前をつけても彼が困るだけだろう。それに…彼には『本来の名前』があるのだから」
「本来の名前、ねぇ。ならば何故それで呼んであげないんだ?つくづく愚かな男だよ、君は」
「好きに言うがいい。彼の正体は———それに、彼女の『存在』は、誰にも知られるわけにはいかないのだから」
「君も今頃飛行島のギルドに捜索願出されてるところじゃないか?」
「私の存在など…むしろ、いなくなってせいせいしているのだはないだろうか」
「減らず口を。君を大切に思っている奴らがいるなんて、君自身にも分かっていると思っていたのだがね」


言葉の投げ合いを行う。グレンは、目の前のホログラムの少女にいたく図星を突かれ言い返す言葉が思いつかなかった。
確かに彼には『彼を大切に思ってくれている仲間』がいる。———それを犠牲にして、自分だけのうのうと生き残った事実も。
あの時、自分が選択を間違っていなければ。自分が犠牲になっておけば。彼らは『奪われることは』なかったのではないか。そんな考えさえ彼の中をよぎっていた。


「…さて、そろそろ招待状で呼んだ人達が来る頃じゃないかい?GM」
「本当に、来てくれるのだろうか。元は私の我儘に付き合うだけなのを依頼する招待状だ。あんな非現実的な文面で来てくれるはずがない」
「いや、来るよ。彼らは好奇心旺盛だし、それに招待状の差出人…『君の事』も気になっているはずだ。もしかしたら金に釣られてくる奴もいるかもしれないね」
「…………」
「ボクは最大限君のサポートをさせてもらうよ。君の『あるもの』をいただく約束をしたからには、君の手の届かないところはボクがやらないと、ね」
「…本当に、助かるのだろうな」
「ん?」


招待状の話を彼女は持ち掛ける。途端、彼の指が小さく震えたような気が彼女にはしていた。自分の蒔いた種は自分で回収しなければならないという気持ちはとても誇らしく思えるが、やはり成功するかどうかは『参加者』にかかっている故、確信が持てないのだろう。
そんなこともあってか、グレンは彼女に向かいそう漏らす。
すると、彼女はキョトンとした顔でこう言い返した。





『それは、君の頑張り次第と、参加者がどれだけ楽しめるかにかかってるんじゃない?』





ふと手元を見てみると、それまで撫でていた感触が無い。子猫が彼の手の中から消えていた。
きっと話している間に撫でられるのに飽きて、どこかに飛び出してしまったのだろう…。街は大きくないとはいえ、外に出ていたら探すのも一苦労だろうな…。グレンはそんなことを思っていた。
そして、青年と少女が『企画』していたものも…そろそろ始まりそうな予感がどこかでしていた。


「とらを探しておいでよ、グレン。それまでにボクは準備をしておくからさ」
「分かった。…準備が出来次第、私に連絡をしてほしい」
「了解」


短い言葉を交わした後、グレンはとらを探しに家から出て行った。
そんな彼の姿を見送りながら…





『……これがどんな『逃走中』になるのか…。楽しみだねぇ。
 期待しているよ、皇子』




少女はニヤリと笑みを浮かべ、そんなことを呟いたのだとか。


Re: 逃走中♯1 〜nostalgia〜 ( No.3 )
日時: 2017/05/14 21:40
名前: 灯焔 ◆/.5aaSlLPY (ID: 0vtjcWjJ)



『哀愁の街ノス・トスとうちゃ〜〜〜く!昔はピアノが盛んな街だったんだって!どんな音楽と巡り合えるか楽しみだなぁ〜!』
『ニャミちゃんニャミちゃん、ピアノが盛んだったのは昔で、今はそんなに聞こえてないんだからね?大丈夫?』
『オーパーツの新アイテムがここにあるって聞いたんだけど、どこにあるのかな?』


哀愁の街の交差点近く。
うさぎと猫と少女、そしてプロペラのついた少年がふよふよと街を歩いていた。






「それにしても変な手紙だったよね。差出人もなかったし、中を開いてみたら『逃走中参加者募集中!3名程ご参加お待ちしています!』とだけ書かれた手紙と、ここの街の地図だけが入ってたんだよね」


そう呟くウサギの少女は『ミミ』。
ポップンミュージック、というアーケードゲームのマスコットキャラクターである。
自分の担当する音楽ゲームを広げる為、ニャミ、ナビと一緒に日々活動を続けている。


「もしかして誰かの犯罪に巻き込まれたとか…。いや、それはないか。だって紅い蓮の刺繍がついた封筒なんて、そんな綺麗なもの悪い奴が使ってくるわけないし!」


ミミの言葉に続けてそう言葉を発した猫の少女は『ニャミ』。
ミミと同じく、ポップンミュージックのマスコットキャラクターを担当している。2人とも耳以外はよく似ているが、若干ニャミがつり目、ミミが垂れ目になっている。
彼女も担当する音楽ゲームを様々な人に知って貰う為、日々活動を続けている。


「ぼくの名前が書いてあったこともびっくりだよ〜!でもぼく走れないけど、大丈夫なのかなぁ?」
「プロペラ回しながら走るポーズしとけばいいんじゃない?」
「ニャミちゃん、それはちょっと格好悪いよ…」


ニャミの言葉の後、楽しそうにゆらゆら浮かびながらそう零したのは『ナビ』。
彼女達がスチームパンクの世界に行った時に出会った、頭にプロペラのついた少年である。成長すると様々な性格になることが出来るらしいが…真意は定かではない。
自らも歌を歌ってゲームを盛り上げるなど、彼女達と共に日々活動を続けている。




そんな彼女達がこの哀愁の街にやってきた目的…。それは、『差出人不明の招待状の謎を解きに来た』ことである。
勿論、招待状を出したのは紅い青年と白い少女であるが、それが分かる記載が、封筒にされていなかったのだ。代わりにあるのは、隅にある小奇麗な『紅い蓮の刺繍』。
『もしかしたら誰かが自分達に助けを求めているかもしれない…』。招待状が届いた時、彼女等3人はそう思った。もしかしたら罠かもしれない。そんな声も上がった。だが…。わざわざ自分達に届くように差し向けているのだから、何か『理由があるのだろう』彼女達はそう結論付けた。
…そうして、彼女達はここにやって来たのだ。


「そもそも『逃走中』ってどんなイベントだったっけ?テレビで確か見たことはあったんだけど…」
「もう!ミミちゃんったら鈍感なんだから〜。『逃走中』ってのはね?一定時間逃げ切れば沢山のお金がもらえる鬼ごっこみたいなもんだよ!
 でも、鬼ごっこだから捕まったらそこで終わりだけどね」
「鬼…玉藻さんのところの鬼さんみたいな人なのかな?」
「うーん、黒スーツの男の人だと思うよ…」
「ミミちゃん、それは知ってるんだね」


街の中を歩きながら、3人は『逃走中』について話し合っていた。
ポップンミュージックのマスコットキャラクター…即ち、その世界の宣伝部長でもあるミミやニャミはそのイベントことをにわかに知っていた。ナビが興味津々そうに逃走中について説明を求めると、覚えていなかったミミの代わりにニャミがそう説明した。
ナビは説明を聞いて『ぼく、走れないけど大丈夫かな?』と先程と同じ台詞を漏らす。2人はそれを聞いて、この招待状を送って来た人を早く見つけて『飛んでも走ってることになるか』ということを聞こうと固く決心したのだった。




「すまない…少し、いいだろうか?」


そんな話を続けていると、背後から声をかけられる。
振り向いてみると……。最初に目に飛び込んできたのは、『紅』。
普通の赤色よりも鮮やかで、そして不気味さを覚える、そんな紅色。ミミ達は彼にそんな感想を抱いた。
目が覚めるような紅い髪を持った青年がそこにいた。


「急に声をかけてしまってすまない。その封筒を持っていたので———つい。私はグレン。よろしく頼む」
「あ、ご丁寧にありがとうございます。私はミミ。で、こっちがニャミちゃん」
「よろしくお願いします」
「ぼくはナビだよ!」
「で、グレンさんも封筒を貰ってここまで来たんですか?」
「ん…と、そういうことにしておいてもらえると嬉しい。それはそうと、ここいらで子猫を見なかっただろうか」
「子猫?それがどうかしたの?」
「実は先程手元から逃げてしまって…。今探している最中なのだ。良ければ探すのを手伝っては貰えないだろうか?」


青年———グレンの頼みというのは、街中にいる子猫を探してほしいというものだった。どうやらこの街に来た時、彼から離れて逃げてしまったらしい。
紅髪が怖かったのだろうか?一瞬誰かの頭の中にそんな考えがよぎるが、すぐに首を振りその考えを否定する。ここまで一緒に来ているのだから、彼に懐いていないはずないのだ。
彼女達は思った。青年の頼みを聞いてあげたいと。だが…彼女達には『手紙を送って来た差出人の謎を明かす』という別の目的もある。彼女達は迷った。どちらを優先すべきかと。


しばらくの沈黙が続き……それを破ったのは、ナビだった。ナビは2人に頼むように、こう言葉を発する。


「ねえ、グレンさんの猫探し手伝ってあげようよ!」
「わたしも手伝ってあげたいけど…わたし達にはやることもあるでしょ?」
「それもあるけど…。なんか、グレンさんを手伝えばその謎も分かるようながするんだ、ぼく…。ただの、カンなんだけどね」
「確かにグレンさんは『この手紙の存在を知っていた』。もしかしたら、同じ参加者としてここに来たのかもしれないしね。あたしはナビくんに賛成だよ?」
「うー…。ニャミちゃんまでそう言うか…」


ナビが訴えると、それに乗っかるようにニャミが肯定する。
一方、ミミは未だに迷っていた。確かに封筒の存在を知っていたのであれば、関係者もしくは参加者の可能性が高い。それに…彼のあの言い方に、彼女は妙に引っかかるものを感じていた。


——————————————————————————————


「ん…と、『そういうことにしておいてもらえると嬉しい』。それはそうと、ここいらで子猫を見なかっただろうか」


——————————————————————————————


もしかしたら…彼が、『差出人』? だとしたら、彼の頼みを断る理由はないのではないか。そんな可能性が彼女の中で生まれていた。
…だとしたら、選択肢は一つ。断る理由など…ない。自分の考えを2人を伝えると、2人は嬉しそうな表情になって「うん!」とだけ答えた。


「猫探し、手伝います!本当は別の目的もあるんだけど…グレンさんが困ってるのに、見捨ててどこかへ行くほどわたし達は非情じゃないからね」
「ミミちゃん、その言い方だとあたし達がいつもは非情みたいな感じに聞こえるよ〜?」
「え〜?ぼく悪者じゃないよ!」
「そんな風には言ってないよ〜!」
「ほ、本当か?ありがとう…。正直、私一人では限界を感じていたのだ。ご協力、本当に感謝する」
「そこまで改めなくていいですよ〜」


頼みを聞き入れることをグレンに話すと、彼はあからさまに嬉しそうに微笑み、彼女達の手を握る。その手はほんのり暖かくて…まるで『小さな炎』に触られているかのようだった。


「それで、子猫の特徴はどんな感じなんですか?」
「茶トラ柄の子猫なのだ。尻尾に鍵がついているから、見つければすぐに分かると思う」
「『茶トラ柄』と『尻尾に鍵』、ね。分かった、見つけたらまたグレンさんに連絡するよ!」
「ありがとう。では私はもう少しそちらを探してみる。君達も…どうか、御武運を」


グレンはそれだけ伝えると、彼女達のそばを静かに走り抜け、街の中へと消えてしまった。
そんな彼の姿を見て、ミミ達はまた話し始める。


「グレンさん、凄くカッコよかったね。喋り方も気品があって王子様みたいだったよ!」
「クトゥルフ神話TRPGで言うなら…『APP18』ってところですな」
「それだと某冒涜的な神様の可能性、ないかな?」
「神様?MZD?」
「いやいやいやあいつとは違うでしょ…。あいつも、もう少し神様オーラ出してくれればね〜」


冒涜的な神、というフレーズを聞いて、彼女達は自分達の知っている神を思い浮かべる。
フレンドリーな神のことを思い出しながら、彼女達は早速子猫を探しに彼が走り去った方向とは逆の道を歩き始めた。







「ところでさ、ミミちゃん」
「どうしたのニャミちゃん」


『子猫見つけたところで…どうやってグレンさんに連絡するの?』
「……あっ」



……子猫探しの道のりは遠そうだ。


Re: 逃走中♯1 〜nostalgia〜 ( No.4 )
日時: 2017/05/16 19:11
名前: 灯焔 ◆/.5aaSlLPY (ID: mkDNkcIb)



『地図の通りだと…ここだよね。哀愁の街『ノス・トス』』
『フッ…哀愁の街、か。孤独と静寂を愛するオレには相応しい街だな。そうは思わないかBrother?』
『そんなことより早く『逃走中』の会場探そうぜ〜俺もうくたびれて歩きたくねぇ〜!!』


同時刻、哀愁の街の商店街沿い。
ミミ達と同じ封筒を貰った同じ顔のような3人組が、会場を探し歩いていた。





「つかヤバくね?1時間ハンターから逃げ切るだけで金たんまり貰えるって。普通考えたらありえねーって!これはお兄ちゃんの底力見せるべきでしょ!」


『金』というワードに心躍らせながらそう話すのは『松野おそ松』。
六つ子の長男であり、心と頭が小学生のまま大人になってしまった『奇跡の馬鹿』と呼ばれる男である。
本能と欲望のまま六つ子を引っ張るリーダー格。起こした騒動は数知れず。


「そんな虫のいい話どこにあるんだよ!!そもそも封筒に宛名なんてないし、ただのイタズラの手紙かもしれないんだよ?!兄さんは気楽すぎるんだって」


おそ松の放った言葉に呆れつつそう返すのは『松野チョロ松』
六つ子の三男であり、六つ子の良心で常識人…と思いきや、女性が絡むとポンコツになる、童貞代表のような男である。
今回も2人を止めに来たはずが、ちゃっかり自分も会場を探している辺り六つ子である。


「フッ…この松野カラ松の名を世のカラ松girlに知らしめる為ならば、逃走中でもなんでも利用してみせるさ。世界がオレの名に轟くんだぜ…Understand?」
「理解してないしする気もない」
「…………」


2人の後ろをぶつぶつと独り言を言いながら歩いているのは『松野カラ松』。
六つ子の次男であり、厨二病かつナルシスト。なるべく関わりたくないタイプの男である。
異常過ぎる優しさを持つが、それは『自分に対して』なのか『他人に対して』なのか。分かるのは彼だけである。




彼らがこの街にやってきた目的。各々に個別の目的はあるが…大元は『逃走中に参加すること』であった。
六つ子の行動概念は『楽して生きること』。各々の感情はあるが、結局は六つ子。『金』という大きな目的がある以上、この街へ足を運ばない理由は無かった。
正直、この街へ来るも一苦労であった。彼らの故郷である『赤塚町』にはここへ真っ直ぐ向かうバスがない。まずそこで六男と四男が拒否し、五男も一緒に残る、ということで上3人がここまでやって来たというわけだ。
金を手に入れた後、何をするか?———それは…六つ子に詳しい君達ならば、分かるはずだ。


「あーもう!会場どこにあるんだよ!地図に一緒に書いてあったっていいじゃねーか!」
「もしかしたらその『会場を探すこと』が選抜対象になってるのかもよ?会場にすら辿り付けないとか参加者の資格すらない、ってやつだよ」
「んだよそれ!!人の事誘っておいてそれかよ!!」
「フッ…だが我がBrotherの言っていることはあくまで『仮説』…真実など…誰にも分からないものさ。この†オレ†を除いてな!」
「だったらカラ松が会場見つけろよな。俺ら後ろついていくからさ」
「えっ」
「真実が分かるってんなら、会場の場所も見当ついてるんでしょ?ほら連れていってよ」
「そ、それはないだろBrother?!」


逃走中に参加することを決めてここまでやって来たのはいいものの、肝心の『会場』が見つからない。先程まで2人を止める為に発言していたチョロ松ですら兄にならってカラ松に道案内をせがんでいるところを見るに、やはり六つ子である。
上3人はどうしても金が必要だった。日々を楽に過ごす為。憧れに近付く為。娯楽に使用する為。目的は実に様々だったが、その目的を果たす為彼らは血眼になって会場を探していた。途中からその役目が次男に押し付けられた形になったのは、自業自得か否か…それは、誰にもわからない。


カラ松が辺りを見回していると、ふと目線の先に小さな『モノ』が見える。
目を凝らしよく見てみると、そこにいたのは……猫だった。
遠目でも分かる、茶色で縞模様の子猫。尻尾は不自然に色が変わっており、そこには『鍵』らしきものがついている。
どうやら猫はこちらに近付いているようで、時間が経つにつれ猫の鳴き声がはっきりと聞こえてくる。


「猫…?」


彼がそう漏らすと、おそ松とチョロ松は不思議そうに彼を見つめる。
『どうした?』と聞くと、彼は『目線の先に猫が』と言う。指差した先には何もない。『幻聴でも見たんじゃないの?』チョロ松が呟く。だが、カラ松には確かに見えていた。幻聴ではない。あれは『本物の子猫だ』と。


『にゃあ!』突然、足元から元気のいい鳴き声が聞こえる。
下を見てみると、そこにいたのは先程の子猫。カラ松の足元に近付き、身体をすりつかせている。彼がしゃがむと、目線が近づいたのか彼は『にゃ!』と驚嘆の声をあげた。
彼に合わせおそ松とチョロ松も猫に近付く。


「こんなところに猫?どこかの家猫なのかな」
「なんで一松でもないのにそんなことが分かるんだよチョロちゃん」
「だってさ、初対面の相手…しかも話しかけられたくないタイプの人間に警戒心も持たないですり寄れるなんておかしいでしょ!余程人懐っこいか、人間に慣れているかのどっちかだと思うんだよね」
「それにしてもcuteだな、君は」


そう呟き、カラ松は子猫を抱き上げる。抱き上げられたのに驚愕したのか、子猫はきょとんとカラ松の方を向いている。
そのまま顎を優しく撫でてやると、子猫は気持ちがいいのか甘えた声で『ふにゃあ』と鳴く。3人は思わず顔がほころんだ。


「にしてもカラ松、猫の扱い慣れてるね。一松の受け売り?」
「フッ…猫をも魅了させてしまう、このオr『真面目に答えて』……一松に前、猫を触りたいと言ったらこのやり方を教えて貰ったんだ。後日一人で猫に触ろうとしたら一松に殴られたがな」
「そりゃ一松が可愛がってる猫ちゃんに勝手に触られたら怒るよなアイツ」
「へぇ、そうなんだ。あ、僕にも触らせてよ!」
「ああ。いいぞ」


チョロ松が自分も触りたいと、子猫に手を伸ばす。
彼が子猫を近づけると、知らない人間の顔が近くに来たのか『ふにゃ』と声を漏らす。チョロ松もカラ松にならい、顎を優しく撫でてやると『敵意は無い』と判断したのかそのまま身を委ねた。
その顔に思わずへの字口だったチョロ松の顔が緩む。


「ちょっとちょっと二人とも、お楽しみの時間俺にもちょうだいよ〜」
「そんな紛らわしい言葉言うなクソ兄貴!!折角この子に癒されてたのに台無しだよ!!」
「フッ…オレの癒しが必要ならいつでm『カラ松のはいらない』……」
「俺にも貸してみろって!お兄ちゃんがやさしくしてあげるからね♪」
「だから!!!紛らわしいこと言うな!!!」


チョロ松の制止も聞かず、おそ松はカラ松から子猫をひょいと持ち上げる。
その行動にびっくりしたのか、子猫は固まったまま動かない。
そのままおそ松は子猫の尻尾に手を伸ばす。
興味本位だった。ただそれだけだった。尻尾の柄が違う子猫なんて見たことが無い。ならば、尻尾を触ればもっと喜んでもらえるのではないか。おそ松はそう考えただけだった。


「ちょ〜っと失礼しますよ〜♪」
「お、おそ松、駄目だ、尻尾は」
「え?何だよカラ松邪魔すんなよ」




『ふしゃー!!』

「んぎゃ?!」


一瞬だった。バリバリと音がしたかと思うと、次に気が付いた時には子猫の姿はなかった。引っかかれた人物のものであろう血の跡が点々とついていることから、逃げ去った方向は大体見当がつく。
引っかかれたのだ。さっきまですりすりと顔をこすっていたあの子猫に。冷静になった頭でそう考える。……彼の心の奥底からなにやら怒りのようなものがふつふつと浮かんでくるように弟2人には見えた。


「この野郎……!!このカリスマレジェンドの顔をひっかきやがるなんてー!!」
「尻尾なんて触るから!おそ松兄さんの自業自得でしょ?」
「見つけたら倍返しどころか3倍返ししてやる…!!」


『あっ!さっきの子猫構ってた人達だ!!おーーーーい、すみませーーーん!!!』
「向こうから誰か来るよ?」


おそ松が怒りに震えていると、猫が逃げ去った方向とは逆から声が聞こえてきた。
向いてみると、こちらに向かって走ってくる3人組の姿が。うさぎと猫耳の少女、そして頭にプロペラのついた少年だった。


「急にすみません!!!実はさっきの子猫探してて…!!あれ、いない?」
「ごめんね。実はこのクソ兄貴が子猫逃がしちゃって…」
「クソと言わずカリスマレジェンドと呼びなさいチョロ松くん」
「あ、いいんです追ってるのは私達なので!どこら辺に逃げて行ったか分かりますか?」


はぁはぁと息をつきながらうさぎの少女がそう尋ねる。表情からして、あの子猫は元々誰かの飼い猫だったらしいと判断できた。
チョロ松がそれについて返答しようと口を開くと同時に、おそ松が声を荒げた。


「あーーーーーもうめんどくせえなあ!!!このカリスマレジェンドを差し置いて人気の茶トラ猫だァ?!許さねぇ、絶対に捕まえてやる……!!
 ウサギちゃん!ネコちゃん!俺も追いかけるの手伝うぜ!!」
「その吐き捨てから手伝うセリフ?!」
「えっ、でも…」
「あぁいいのいいの、気にしないで。僕達もきっと君達と同じ目的だろうからね。同じ柄の封筒、持ってるんでしょ?」
「あっ!紅い蓮の刺繍!ってことは、もしかしてこの人達も…」
「手伝ってもらった方がいいかもしれないね!それじゃあ、お願いします!」


互いに紅い蓮の刺繍が描かれた封筒を見せあうと、互いは確信する。『彼等も逃走中の参加者』なのだと。
目的が同じならば協力しない理由もない。そう判断した一同は、一緒に子猫を追いかけることにしたのだった。





「ところで…赤いパーカーのお兄さん、顔血だらけだけど大丈夫?」
「自業自得だしほっときゃ治るから気にしないでいいよ」
「傷ってそんなものなの…?」

Re: 逃走中♯1 〜nostalgia〜 ( No.5 )
日時: 2017/05/20 15:00
名前: 灯焔 ◆/.5aaSlLPY (ID: G/Xeytyg)



『よし、ついたー!グリモワールにも記されてない場所、なんてあるのね。やっぱりトーキョーは面白い場所がいっぱいあるのね!』
『ちょっと浮かれないでよ〜!私達は『この街に現れた瘴気の原因を探る』為にここに来たんだよ?……なんでこの3人なのかは凄く気になるけど』
『先生は『体力とひらめきが重要』って俺達3人を選んだんだよな。でも、クイズ以外にそんなものが必要なこと、なんてあるのか?』


同時刻、街の中心。時計台前。
先程の6人と同じ封筒を手に持った、マゼンタと茶髪の少女。そして赤髪の少年が歩いていた。





「確か、ここにグリムのような反応があったって先生言ってたよな。でも、見た感じだとそんなものあるように見えねえんだけどなぁ…」


言葉を放ちつつ、辺りをきょろきょろと見回しているのは『レオン』。
クイズマジックアカデミーの生徒で、彼の場合は大賢者である父親を見返す為、彼を超える為に学校に入学した少年である。
燃える様な赤い髪が特徴的な、熱血勝負師である。


「それにしてもトーキョーにこんな神秘的な街があったなんてびっくり!まるで私達が元々いた世界にある場所みたいだよね〜」


レオンの隣でそう言葉を発し歩いているのは『ルキア』。
彼女もマジックアカデミーの生徒で、偉大なる大賢者を目指し日々頑張っている元気印のポジティブ少女である。
その豊満な胸は男子ならば誰もが一度は凝視するだろう。それくらいの大きさを持つ。


「う〜、こんな綺麗な場所だったらわたしじゃなくてマヤちんが来た方が良かったんじゃ…マヤちんこういうの好きそうだし…いやでもわたしが選ばれたんだから頑張らないと駄目だし…」


2人の近くでうんうんと唸りながら歩いているのは『アイコ』。
元々第七アカデミーの生徒であり、諸々あった末ルキア達と同じ学び舎で学ぶことになった、「普通」が最大の取り柄となる少女である。
親友であるマヤがマジックアカデミーに入学するのをきっかけに、彼女も学び舎への門を叩いたという逸話がある。




彼等は歩きながら『グリム』という存在について話し合っていた。
『グリム』———。彼らが住んでいるところとは別の世界に発生した、いわば『瘴気』が形を成した存在だと言われている。レオン達マジックアカデミーの一部の生徒は『暁の賢者』と呼ばれる存在であり、彼らはその『グリム』を倒す為以前トーキョーへと足を運んだことがある。現在も彼等に似ている新しいグリムが現れた為、彼らを封印する為に世界各地へと飛んでいるという。
今回この街へやって来た目的も、今までやっていたこととなんら変わりは無かった。『この場所に瘴気の気配がある。その調査をしてきてほしい』と、この紅い蓮の刺繍がついた手紙と共に先生から渡され、この場所へと飛ばされてきたのだった。


「それにしても、こんな綺麗な場所にグリムなんているのかな?」
「油断しちゃ駄目だよルキア!こんな時こそ油断大敵って言うじゃん!前もフジサンにあいつ、現れたみたいだし」
「俺に似てたあの人相悪い奴だよなー。くーっ、あの時は散々間違われて酷い目に合ったぜ…」
「普段のレオンも割と似た感じよね。特にセリオスとの決勝に勝てなかった時とか」
「なっ?!俺はあいつとは全然ちげーだろ!!仲間は否定しないし友情も否定しない!!確かにセリオスにあとちょっとのところで負けたのは悔しいけど!って悔しい思い出を思い出させるなよ!!」
「はいはい、グリム探すよー」


彼等が歩いてきた限り、グリムのような気配を感じることはなかった。
そもそも彼等がここへと派遣されてきたのは『調査の為』である。つまり、グリムすらおらず『瘴気に似ている何か』を察知しただけの可能性もある。無駄足になるかもしれない、ということで自分達が選ばれたのだとしたら、先生も大概だ。歩きながら誰かがそういう。
確かに彼らは22人の中では頭が良い訳ではない。だが、『手紙の内容からして、体力がある人間でないとならない』と先生は言っていた。だから自分達が派遣されたのだと。『彼等にしかできないこと』を先生は見抜いていたのかもしれない。今はその思いを胸に、ひたすらグリムを探すことだけに集中をしていた。


「あれ?今何か横切らなかったか?」


レオンが突然そう呟く。彼の声にルキアとアイコも彼の声を出した方向を見る。
近付いてみてみると、それは『血の跡』だった。方向からして、左に真っ直ぐ駆けて行ったものだと思われる。血の跡が小さいものから、人間ではないのだろうと彼らは確信した。


「レオン、どうしたの?急に声出して」
「今何かが横切った気がするんだよなー…。近付いてみたら地面に血の跡があるだろ?きっと動物が向こうに駆けて行ったんだと思うぜ」
「動物…?グリムの一種かな?」
「グリムがこんな小さいわけないよ!少なくともわたし達より3倍は大きくなくちゃ…」
「そんなこと言ってる場合かよ?!もしかしたら俺達が見たことがないかもしれないだけで、サイズの小さいグリムだっているかもしれないだろ?」


グリムにしてはあまりにも足跡が小さすぎる。
もしかしたら新種のものかもしれない。……が、予測が外れてただの動物だったら元も子もない。だが、追いかけないとその『正体』も分からない。
彼等が判断に悩んでいると、後ろから6つ程の足音が聞こえてくる。


『この野郎、あいつすばしっこすぎるんだよ…!!』
『猫だから素早いのは当たり前だろクソ兄貴!元凶なんだからほら足動かす!!』
『おそ松さん、本当に長男なの…?』
『ああ見えるが長男なのは本当だ』
『ああ見えるって何だよああ見えるって!!』


足跡はどうやらこちらに近付いているらしい。しばらくそれを聞いていると、向こうから6つの人影がこちらに近付いているのが分かった。
3つに関しては彼等も知っている。残り3つについては初対面だった。


「あっ、レオンくんにルキアちゃん、それにアイコちゃん!久しぶり〜、の暁のサマーイベント以来だっけ?」
「ミミちゃん!ニャミちゃん!久しぶりね!元気してた?」
「うんうん、あたし達超元気〜!最近グリム退治頑張ってる?」
「最近はわたし達に似てるグリムが出現してるんだけど、なんとか頑張ってるよ!」
「カワイコちゃんが2人…うち1人はパイオツねーちゃん…なーなーこれから合コンいかね?その後は…」
「ちょっと!!初対面でそれはなしでしょ!!それに彼氏らしき人がいるんだから誘わない!!」
「お、俺は彼氏じゃねえぜ?」
「フッ…両手に華、というわけか。RedBoy。中々にお洒落で素敵ではないか」
「こいつは何を言ってるんだ…?」
「無視していいよ」


うさぎと猫の少女については、以前『SummerDIARY』というイベントで会ったことがあった。それ以前にも何回か彼女達とは共演したことがあり、顔見知りでもある。
確かに再開は嬉しかったが、何故彼女達が一緒に行動しているかも気になった。そこでアイコがこんなことを聞いてみる。


「ねぇねぇ、どうしてみんな一緒に行動してるの?」
「実はね?とある人に猫探しを頼まれてて…。それで、この人達が構ってた猫がそうなんじゃないかって思って、子猫を追ってたんだよ」
「ある人?」
「そういえば聞いてなかったね。どんな人なの?」
「ええっと…赤いアシメヘアーの、すっごくカッコいい人。カッコイイ、というかは…『綺麗』って言った方がいいかな。とにかくその人から頼まれたんだよね。この『刺繍の手紙』のことについても知ってたみたいだしさ」


そう言いながらニャミは例の手紙を取り出す。レオン達はそれに驚き、同じ手紙が来ていることを伝える。すると、6人は更に驚きを深めた。
『レオン達も逃走中の参加者として招待された』のではないだろうか?6人の頭の中にそんな考えが浮かぶ。


「えっ?なんでミミちゃん達も?!」
「なんでかは分からないけど…もしかしたら他にもいるかもしれないね。『手紙を持ってる人』」
「なんだよそいつら見つけて会場の場所聞けばよかったじゃねーかよ〜」
「見つけたからといって、彼らが会場の場所を知ってるかは分からないよ?ミミさん達だって知らなかったわけだし」
「『逃走中』…?学校の授業でもたまに問題として出てたけど、それなのかな?」
「でも、同じものを持ってるなら一緒にあの猫を追いかけた方がいいんじゃないかな?グリムって可能性はかなり低くなっちゃったけど、もしかしたらこの『手紙を送って来た人』に会えるかもしれないしね。それに私、ミミちゃんやニャミちゃんと久しぶりに話がしたい!」
「確かに人数は多い方がいいよなあ…。よし分かった、俺達もついていくぜ」
「じゃあ決まりだね!みんなであの子猫を探そう〜!」


3人が猫探しに協力すると答えると、6人は嬉しそうにお礼を言った。
レオンが先程見つけた血の跡は、彼の目線の先まで続いている。おそ松の怪我はいつの間にか治っていたが、どうやら深く引っかいてしまったようだ。
ともかく、手掛かりはこれしかない。もしかしたら猫を追いかけた先に、他の参加者もいるかもしれない。
彼等はそんな希望を胸に抱き、血の跡を走って行ったのだった。






———同時刻。



『……あれ?今子猫が通り過ぎなかった?』
『わたしには見えませんでしたよ?レクトさんの見間違いでは…?』
『いんや、あたしにも見えた。……それに、あの『鍵』…。どっかで見たような気がすんだよな〜…』


9人の近くで、別の『彼等』も動いていた。




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