二次創作小説(映像)※倉庫ログ
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- 劇場版 風林火山プリキュア!
- 日時: 2017/07/18 22:01
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode=view&no=31192
初めまして、愛です。
今日からしばらくの間は、私が書いているオリキュアの風林火山プリキュアの劇場版という名目の、中編小説を書かせていただきたいと思います。
ちなみに、原作の風林火山プリキュアはURLを貼ってあるので、是非そちらからどうぞ。
あと、この小説に登場するぴろんぬというキャラクターはリア友から頂いています。
だから、もしかしたら世界観に合わない可能性がございますが、ご了承ください。
それでは、よろしくお願いします。
- Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.12 )
- 日時: 2017/07/20 20:38
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode
「誰……?」
フレイムがそう聞くと、男はニヤリと笑いながら歩いてくる。
それに、ぴろんぬは怯えた表情を浮かべたので、すぐにフレイムはぴろんぬと男の間に立つ。
「ほう……? ぴろんぬを守る、か……」
「グロル、待って、違うの! これは……」
「違う? 何が違うんだい?」
「それは……」
「プリキュアにトドメを刺さず、あなつさえ、守られて」
「待って……違う、違うの……すぐに、プリキュアを倒すから……だから!」
「……まぁ良いさ」
そう言って立ち止まり、ニヤリと笑った。
「だって……プリキュアを倒せばちひろを生き返らせるなんて話……嘘なのだから」
「な……!?」
「レジェンドクロックッ!」
ぴろんぬが驚くのと、フレイムが叫ぶのはほとんど同時だった。
激しい光と共に現れたレジェンドクロックを受け止めると、すぐに、サンダーブレスを掲げた。
「侵掠の業火よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! フレイムバーニングッ!」
その言葉と同時に、巨大な業火がグロルと呼ばれた男の所に向かう。
グロルはそれに嘆息し、片手を構えた。
その手に触れた瞬間、炎は霧散する。
しかし、フレイムはそれに、すぐにレジェンドクロックを床に投げ捨て、グロルの元に駆け寄る。
「はぁぁぁぁッ!」
殴る、蹴る、蹴る、殴る、殴る。
怒りのあまりに考えることすらやめているのか、単純すぎる動きで攻撃をする。
グロルはそれを容易く避けながらため息をつき、フレイムの腹に手を当てる。
直後、黒い光がそこから発生し、フレイムの体は爆音と共に吹き飛んだ。
「朱莉ちゃん!」
地面に倒れるフレイムに、すぐにモンテが駆け寄る。
その間、状況を未だに理解が出来ていないぴろんぬは、ただ俯いていた。
グロルの追撃からフレイムやぴろんぬを守るために、咄嗟に、二人の間にウィングとフォレストが入り、それぞれ戦闘態勢を取る。
その様子に、グロルはため息をついた。
「完全に守られて……全く、お前のちひろへの愛は本物だったから、利用すればプリキュアくらい倒してくれると思ったのだが……やれやれ。年頃の女は感情的でいかん……」
その言葉に、誰も、何も言わない。
ウィングやフォレスト、モンテは、何か言い返せるほどの立場ではないと自覚しているから。
フレイムは、グロルの一撃で満身創痍。ボロボロの状態で、意識を保つのがやっとだから。
当の本人であるぴろんぬは、未だにショックを受け入れられず、精神的な余裕などないから。
そんな五人の様子を見つめながら、グロルは鼻で笑い、腕を上げる。
「まぁ良いさ。催眠音声のおかげで、国民たちから貴様等に対する怨念が溜まっている。それでパワーアップすれば、俺は、この国の支配者になれる……!」
「まさか……まだ、パワーアップするっていうの……!?」
フレイムを抱き起しながら、モンテは言う。
彼女の言葉に、グロルは陰鬱な笑みを浮かべた。
それとほとんど同時に、四方八方から、グロル一人に集まるように、怨気が流れ込んでくる。
「何、これ……すごく、嫌な感じ……!」
「こんな膨大な怨気、初めてです……! しかも、これが全部私達への怨気……!」
「とりあえず、一回避難しないと!」
フレイムに肩を貸して立たせながら、モンテは言う。
その時、顔を上げたフレイムが、ぴろんぬに視線を向けた。
「ぴろ……んぬ……」
「……私、ずっと、ずーっと騙されてたんだ……なのに、あんなに舞い上がって……」
「ぴろんぬッ!」
フレイムが必死に呼びかけても、ぴろんぬは反応しない。
咄嗟にウィングが駆け寄り、ぴろんぬの体を抱えた。
フレイムが投げ捨てたレジェンドクロックを拾ったフォレストは、それを構える。
「徐かなる森林よ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! デュアルコンフュージョン!」
そう叫んだ瞬間、二つの光が突き進み、壁を貫通していく。
やがて、巨大な穴が空いたのを確認して、フォレストは振り向いた。
「皆さん! 行きましょう!」
それに、モンテとウィングは頷き、フレイムとぴろんぬを連れて外に出た。
全員が外に出るのとほとんど同時に、彼女等がいた屋敷が吹き飛び、巨大な怨気に包まれる。
やがてそこには……巨大な怪物が、存在していた。
- Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.13 )
- 日時: 2017/07/20 21:35
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode
「……わ、何、あれ……」
ボロボロだったフレイムは、そこでちょうど、多少回復したのか声をあげた。
それに、ウィングは「巨大なオンネーンね……恐らく……」と言った。
彼女の言葉に、フレイムは「あれがオンネーン……?」と聞き返す。
「流石に巨大すぎます……恐らく、私達が普段戦っているオンネーンとは、込もっている怨気の量も、素材になった対象の力も段違いだから、かと……」
「目の前のオンネーンより、気になることがあるんだけど……」
ウィングはそこまで言うと、ぴろんぬに視線を向けた。
目の前に現れた巨大なオンネーンを見たからか、多少は冷静を取り戻した様子で、ウィングからの視線にビクッとした。
ウィングはぴろんぬの前でしゃがみ込み、優しく語り掛ける。
「ねぇ……全部話してもらえる? 話によっては、私達はあの化け物を放置して帰ることになるかもしれないし」
「まぁ、流石にあれはね……」
オンネーンを見上げながら、モンテは肩を竦めた。
その反応に、ぴろんぬは涙目で俯きつつ、口を開いた。
「ひろちゃんは、昔から体が弱かったの。でも、命の別状が出るほどではなくて、大きな運動とかさえしなければ、ごく普通に生きていけたハズなの……あの、グロルが来るまでは……」
そこまで言って、ぴろんぬは服の裾を握り締めた。
込み上げてくる涙を何度か拭って、続ける。
「グロルが来た時にね、ただでさえ、精神面で不安定になってる時に、アイツが、ひろちゃんをオンネーンにしたの……他にも何人かオンネーンにされた人がいたんだけどね? それで、オンネーンを元に戻してもらう代わりに、この国の支配権をあげちゃったの……しょうがないよ。あのままじゃきっと、オンネーンにたくさんの人が倒されてたから……」
「……それで、オンネーンを元に戻したら、ちひろちゃんが死んでいた……?」
モンテの言葉に、ぴろんぬは頷いた。
「うん……それで、私はグロルをすごく恨んだ……だから、殺してやろうとした時に、プリキュアを倒したら生き返らせてやる……って」
「それで、私達の世界に……」
「うん……よく考えたら、そんなに上手くいく話、ないに決まってるのにね……でも、藁にも縋る思いだったから……」
そこまで言うと、ぴろんぬはしゃがみ込み、顔を手で覆った。
「ごめんなさい……皆、関係無いのに、危険な目に遭わせて……ごめんなさい……!」
涙ながらにぴろんぬがそう語っていた時、フレイムが静かに、ぴろんぬを抱きしめた。
ぴろんぬはそれに目を見開き、フレイムを見た。
「ありがとう、ぴろんぬ。ぴろんぬが謝る必要なんてない。私だって、もし蜜柑が同じ目に遭ったら、きっと、同じことする……皆も、そうでしょ?」
フレイムはそう言って、他の三人に目を向けた。
それに、モンテはフレイムを見て頷き、ウィングとフォレストはお互いを見合ってから、頷いた。
その反応にフレイムは笑い、ぴろんぬの頭に手を置いた。
「だから、ぴろんぬが謝る必要なんて無いよ。悪いのは全部……」
そこまで言うと、フレイムはぴろんぬの頭から手を離し、フラフラと立ち上がり、巨大化したグロルを睨んだ。
「アイツなんだから」
ドスの効いた声。
それに、ぴろんぬは一瞬、怯えた。
「皆……行くよ」
フレイムの言葉に、三人は静かに頷き、フレイムの横に並ぶ。
そして、手を掲げ、口を開いた。
「「「「今、大いなる伝説よ! 我等に力を貸し給え! レジェンドクロック!」」」」
四人がそう叫んだ瞬間、激しい輝きと共に、レジェンドクロックが現れる。
すぐに四人はレジェンドクロックを囲い、言葉を紡ぐ。
「侵掠の業火よ!」
「疾き烈風よ!」
「不動の豪山よ!」
「徐かなる森林よ!」
「「「「今、四つの力よ! 我等に集い、力と成れ!」」」」
すると、巨大な手裏剣が出てきて、四人はそれに乗って飛んでいく。
やがて、超巨大オンネーンの頭上に行くと、同時に叫んだ。
「「「「プリキュア! オールターンオフイリュージョン!」」」」
そう叫んでから四人が手裏剣から離れると、それはゆっくりと落下していく。
四人はそれに背を向けて着地し、胸の前で指を組む。
「「「「忍ッ!」」」」
普段なら、ここで爆発音と共に、オンネーンが浄化されるところまでがテンプレートだ。
しかし、次の瞬間、バチィンッ! という音と共に、光の手裏剣が弾かれた。
「な……!」
「オールターンオフイリュージョンが……破られ……!?」
そこまで言った時、オンネーンの口に、黒い巨大な光が輝く。
首を小さく振ると、それらはフレイム達の元に、静かに飛んでいく。
「皆! 逃げて!」
咄嗟に、ぴろんぬが叫ぶ。
しかし、ただでさえ、今までの戦いで疲労困憊していた四人にそれを躱すほどの体力は無く、数瞬後、その場所に、巨大なエネルギーが着弾し、爆破した。
- Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.14 )
- 日時: 2017/07/20 22:21
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode
ドゴォォォォォォォォォォォォォォッ!
腹に響く爆発音。霧散していく怨気。
直撃ではないため、かなり近い位置で見ていたぴろんぬは、少し吹き飛ばされて擦り傷を負う程度で済んでいる。
しかし……直撃したプリキュア達は?
「ぐぅ……! あかりん!」
すぐに立ち上がったぴろんぬは、爆発が起きた場所の中心地に進んでいく。
足元の地面は焼け、近くにあったハズの屋敷の瓦礫すらも粉末状になっている。
そんな焼けた地面をしばらく走っていくと、やがて、その中心で倒れ伏す四人の人影が見えた。
「あかりん! ちーたん! みかにゃん! さっきー!」
名前を呼びながら、焼け土を駆けていくぴろんぬ。
すでに四人の変身は解け、さらに、全員傷だらけだった。
「ぐぅッ……ぴろ……んぬ……?」
掠れた声をあげる朱莉に、ぴろんぬは頬に涙を伝わせながら駆け寄る。
ただでさえ、すでにグロルからの攻撃を受けてボロボロだった朱莉は、最早、話すのがやっとという状態だった。
ぴろんぬはそれに、涙を何度も袖で拭いながら、朱莉の顔を覗き込む。
「あかりん……しっかりして、あかりん!」
「私は大丈夫だよ……強いから……それより、蜜柑が……」
「何言ってるの! あかりんが一番重傷じゃん!」
ぴろんぬの言葉に、朱莉は、口を噤んだ。
その時、ほとんど体を引きずるようにして、蜜柑が近づいてきた。
「朱莉、ちゃん……良かった……生きてて……」
「朱莉には、もう、戦わせられない……後は、私達三人で……」
腕を押さえながら言う千速に、ぴろんぬは目を見開いた。
「そんな……! もう戦えないよ!」
「でも、ここで諦めたら、この国は崩壊してしまいます……三人でも、諦めなければ……」
そう言いながら、落ちていたアウラシュリフトロレを拾った皐月は、自分の持つアウラシュリフトロレを見て目を見開いた。
だって……それが、黒く染まっていたから……。
「な……!」
「まさか……!」
蜜柑と千速も、すぐに自分のアウラシュリフトロレを見た。
どちらも黒く染まっていて、皆、青ざめた顔をする。
「まさか、朱莉ちゃんのも……」
「ぐぅ……あぁ、マジだ……」
なんとか自分のものを見た朱莉は、そう呟いた。
それに、ぴろんぬは俯く。
「……私のせいだ。私が、あんな奴に騙されたから!」
「ぴろんぬは、悪くない……! 悪いのは全部、アイツだよ……!」
必死にそう言葉を紡ぐ朱莉に、ぴろんぬは唇を噛みしめた。
そして、涙を流す。
「お願い、神様……ひろちゃんを生き返らせられなくても良い……もう、過去も振り返らない……ただ、新しくできた友達を、もう、失いたくない……!」
そう呟いた時だった。
ぴろんぬの胸元が光り、やがて、持ち手がピンク色で、光る部分が白いライトが出てきたのは。
「これは……?」
そう呟いて、スイッチをつけてみると、小さな光の粉が朱莉に掛かる。
すると、微かにだが、朱莉の傷が癒えた。
———でも、たった一本じゃ、量が足りない……。
そう思っていた時だった。空に満天の星が煌いたのは。
「何あれ!?」
よく見るとそれは、星じゃない。
ぴろんぬの胸から出てきたライトと同じものが、キラキラと空で広がった。
「フフッ……ご都合主義にも、程がありますね……」
苦笑混じりに言う皐月。
やがて、空から降り注いだライトは、町にいた国民達の手元に落ちていく。
やはり、突然現れた巨大怪物に野次馬が集まっていたのか、少し遠くから、ざわめく人々の声がした。
「そうだ……! みかにゃん。ちょっとあかりん任せていい?」
「えっ……うん!」
力強く頷いた蜜柑に朱莉を私、ぴろんぬは妖精の姿になって浮かび上がった。
そして、ライトを持って呆然とする国民達に向かって叫んだ。
「このライトの光がプリキュアを回復させるんぬ! このライトを振って、プリキュアを応援するんぬ!」
その言葉に、最初、全員呆けた。
しかし、一人の青年が「プリキュアー! 頑張れー!」と叫びながらライトを振るのを見て、一人、また一人と、プリキュアを応援する人たちが増えていく。
その光は空中で少しずつ集まり、それらが一つずつ、巨大な光となっていく。
「すごい……綺麗……」
朱莉の上空で集まっていく光を見つめながら、蜜柑はそう呟いた。
それはとても幻想的な光景で、皆、目を奪われた。
やがて、集まったその光は、金色に輝く巻物と化す。
「あれは……アウラシュリフトロレ……?」
掠れた声で呟いた朱莉は、自分の上空にあるアウラシュリフトロレに手を伸ばす。
それに指が触れた瞬間、光はさらに強くなり、朱莉を包み込む。
すると、朱莉の傷は瞬く間に消え、ゆっくりと立ち上がった朱莉は、アウラシュリフトロレをしっかりと握り締めた。
「プリキュア……フィフスオーラチェンジ」
そう呟いた瞬間、アウラシュリフトロレが展開する。
金色の文字が宙を舞い、朱莉の身を包んでいく。
普段着ている忍者のようなコスチュームではない。
洋風のドレスのような、可愛らしく、派手な服。
背中からは白銀に輝く翼が生え、服も、眩しく感じるくらい強く、光り輝く。
上空に飛び上がった朱莉は、翼を羽ばたかせながら、叫ぶ。
「未来を照らすこと、光の如し! シャイニングフレイム!」
- Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.15 )
- 日時: 2017/07/20 23:04
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode
「シャイニング……」
「フレイム……?」
千速と皐月がそう呟く。
それに、すぐに蜜柑が立ちあがり、朱莉を見上げた。
「朱莉ちゃん……」
「蜜柑……ヘヘッ」
笑顔でピースをするフレイムに、蜜柑はホッと息をつく。
フレイムはそれにニカッと笑って、オンネーンを見た。
オンネーンは、すぐに口を開き、黒い光を溜め始める。
それに、フレイムは動じず、手を構えた。
「ガァァァァッ!」
咆哮と同時に、黒い光がフレイムに向かって飛んでいく。
フレイムはそれにニヤリと笑い、ゆっくりと腕を構える。
「バァンッ!」
そう叫び、正拳突きのように拳を突き出すと、黒い光が全て、霧散し、消えて行った。
突然のことに、オンネーンは目を見開いた。
「何……!」
「へっへーん……一気に決めるよぉ!」
そう叫ぶと同時に、フレイムはゆっくりと腕を上げながら言葉を紡ぐ。
「未来を照らせし煌きよ! 我に集い、力と成れ! プリキュア! シャイニングフレイムゥゥゥゥゥゥ……」
そこまで言うと、上げた腕をオンネーンに向け……
「バァァァァァァァァンッ!」
そう叫ぶ。
すると、巨大な光がオンネーンに向かい、突き進む。
オンネーンは、咄嗟に黒い光を口から出すが、少しずつ、白い光に押されていく。
「馬鹿な……! 俺が、貴様のような、人間に……!」
「朱莉ちゃんだけじゃないよ」
その言葉に、フレイムは目を見開く。
地面では、ライトを持った蜜柑達がいた。
「な……! いつの間にそのライトを!」
「その辺に落ちてた!」
「えぇ!?」
驚くフレイムを他所に、蜜柑はライトをオンネーンに向けながら叫ぶ。
「その攻撃には、朱莉ちゃんの気持ちだけじゃない!」
「私達……いいえ、私達だけでもなく、ぴろんぬさんや、国の皆さん……」
「アンタ以外の全員からの怒りが、そこに詰まってるんだから!」
「皆さんは良いですねぇ! 楽な位置からそうやって敵を煽るだけ煽れて!」
フレイムの言葉に、三人は苦笑しながら黒く染まったアウラシュリフトロレを見せる。
それにフレイムは軽く眉間に皺を寄せつつ、オンネーンに視線を向ける。
「聞いたでしょ! グロルさん、だっけ? アンタがどれだけ強いのかは知らないけどねぇ……!」
そこまで言うとフレイムは一度両手を下げ、ニッと歯を見せて笑う。
そして、口を開いた。
「どんなに強い力でも! 勝てなきゃ意味はないッ!」
そう叫び、両手を思い切り突き出す。
すると、光は一気に強くなり、オンネーンの体を包み込んだ。
「ガァァァァァァァァァァァァァッ!!!!!!」
鼓膜が破れそうなほどの叫び。
やがて、オンネーンの体は消滅し、少しずつ辺りに充満していた怨気が晴れていくのが分かった。
同時に、四人のアウラシュリフトロレからも怨気が消え、元の鮮やかなピンク色を取り戻す。
すると、ドレスのようなコスチュームは消え、上空に浮かんでいた朱莉の体は、ゆっくりと降下していく。
「朱莉!」
咄嗟に千速がその下に駆ける。
しかし、それより先に、妖精の姿のぴろんぬが朱莉の下に回り込み、人間の姿になり、しっかりと彼女の体を受け止めた。
疲れ果てたのか、安らかな顔で眠る朱莉に、ぴろんぬは苦笑した。
「それじゃあ……短い間だったけど、本当にありがとう」
出会いがあれば、別れがある。
元の世界に帰らなければならない朱莉達と、この世界に残るぴろんぬにも、それは言えることだった。
出会いが、忍ヶ丘でのコスモス畑なら……別れは、こちらの世界でのコスモス畑で。
別に、こんな細かいことを気にする必要は無いのだろうが、なんとなく、その方が格好がつくという話で、コスモス畑の前で別れることになった。
「ぴろんぬ……本当に私達の世界に来ないの?」
「誘ってくれるのは嬉しいけど……ここにはひろちゃんもいるし、一人にはできないよ」
「……そっか……」
寂しそうに言う朱莉に、ぴろんぬは微笑んだ。
そこで、蜜柑はとあることに気付き、ぴろんぬの手首を見た。
「あれ? ぴろんぬちゃん。手首のコスモス、取れちゃったんだ?」
「え? あぁ……多分、戦いの時に外れちゃったのかな……」
「そういえば、花冠も無くしたみたいだし」
「あぁ、あれは皆が逃げた時に捨てた」
「「「「捨てた!?」」」」
声を揃えて驚く四人に、ぴろんぬは「冗談だよ」と言って笑い、コスモス畑の柵の一部を指さした。
見ると、その柵には、コスモスで出来た花冠がかかっていた。
「あの後で妖精の姿になったからさ。落としたらやだなって思って、掛けておいたの」
「でも、あの時からすでに私達のこと騙してたんでしょ? それなのに、なんで……」
「……コスモスは、ひろちゃんとの思い出の花だからさ……なんとなく、ね」
そう言って柵からコスモスの花冠を手に取ったぴろんぬは、朱莉に近づき、彼女の頭に優しく乗せた。
突然の出来事に、朱莉は不思議そうに首を傾げた。
「えへへ……せめてもの、お土産」
「私からすればチュロスの方が嬉しいけど……あの屋台のすごく美味しかったし」
「朱莉ちゃんってば……」
呆れたように呟く蜜柑に、朱莉は「冗談だって」と言って笑った。
その様子にぴろんぬはクスクスと笑い、そして、手を差し出した。
「それじゃあ、本当に……ありがとう。あっちの世界でも元気でね」
「ぴろんぬこそ。頑張ってね。色々」
朱莉の言葉にぴろんぬは微笑んでから、ゆっくりと手を掲げた。
すると、大きな穴が空間に出来る。
もう、別れに言葉はいらない。
想いは伝え合い、ぶつけ合った。
朱莉は、穴に入る前に、一度振り返ってぴろんぬを見た。
ぴろんぬはそれに微笑んで、軽く手を振る。
朱莉もそれに手を振り返してから、穴に入った。
四人が穴の中に消えると、その穴は静かに消えた。
- Re: 劇場版 風林火山プリキュア! ( No.16 )
- 日時: 2017/07/20 23:14
- 名前: 愛 (ID: fYNkPhEq)
- 参照: http://www.kakiko.cc/novel/novel7/index.cgi?mode
あとがき
劇場版 風林火山プリキュア!〜守れ!コスモス畑の約束〜
ひとまずこれで完結です。
なんで書き始めてから三日で完結するんですか。そして今日の更新数9話くらい書いた気がするんですけど気が狂ってるんですかおかしいですよ何ですかこれは!!!
皆さん書き溜めを少しずつ放流してたとか思いますか?
いいえ、リアタイで書いてました。
1時間も経たずに2000文字とか平然といくの自分でも怖かったです。
20分弱で1000文字書いた時は流石に引きました。
まぁ、完結できたので良かったです。
正直この劇場版の誕生秘話はとても軽いです。
プリキュア好きな友達が自分の理想を詰めたキャラクターとして見せてくれたのがぴろんぬです。
私「これ風林火山プリキュアに出そうか?www」
友「マジで?www」
私「本編だと他の妖精に比べて名前浮くから劇場版として書くわwww」
友「やったwww」
これが劇場版を書くきっかけです。四月か五月くらいの出来事だったと思います。
それから想像していく内に色々設定が膨らみなぜかこうなりました。
ちなみに友達が考えたぴろんぬの設定では人のことを「童貞諸君」とか「おい」とかだったり、自分のことを「私くん」とか言ったりしてたので、少なくともそれよりは可愛く描けたと思います。
ちなみにその友達の将来の夢はおかあさんといっしょで歌のお姉さんをすることなので応援してあげてください。
明日からはまた本編の更新を再開したいと思っていますので、是非、そちらもまたよろしくお願い致します。
では、本当に読んで下さってありがとうございました。
また別の作品で会いましょう。さようなら。