二次創作小説(新・総合)
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- 赤ずきん -ダークサイド-(完) 【感想募集中!!】
- 日時: 2018/03/13 21:30
- 名前: 全州明 (ID: CJrJiUcR)
はい、二年ぶりでしょうか。全州です。
今回は、【原作者:CHARON様 原題:赤ずきんダークサイド】における六つのエンドをすべてつなげるという暴挙に出ました。
上記フリーゲームの二次創作政策には許可も報告も必要ないとのことですので、記載させていただきます。
(参照:○ttp://nekocharon.web.fc2.com/)○の部分をhに変えて検索してください。
何らかの問題が発生した場合、直ちに削除します。
以上です。どうぞよろしく。
※一部話が飛んでいたので直しました。ナンバー3だったと思います。ごめんなさい。
- Re: 赤ずきん -ダークサイド- 【感想募集中!!】 ( No.5 )
- 日時: 2018/02/27 21:20
- 名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: CJrJiUcR)
カゴへ侵入してきた蛇のようにひょろ長い腕は、中のものを手探りで掴み取ると、カゴから乱暴に引っ張り出しました。しかしそれは、ブドウ酒などではありませんでした。
「――――ひぇっ!! な、なんだよこれ!?」
突然、長身の男が悲鳴を上げ、持っていたものを投げ出しました。腰を抜かしたのか、そのまま足を滑らせ尻もちをついてしまいます。無理もありません。男が手に取ったのは、血だらけのきんちゃく袋だったのですから。
「なんだ? 大袈裟な……うっ!?」
拾い上げようとした背の低い男も、すぐにべったりとついた血のりに気づき息をつまらせました。呆気にとられて固まる二人。赤ずきんは、しげみの中へ逃げ込みました。
「――――あ、おいっ! 待てぇ!!」
怒声を背中に受けながら、赤ずきんは木の根の這はい回る森の中を走り続けました。ただでさえ歩きにくい上に、雨で濡れ、滑りやすくなっていましたが、赤ずきんの小さな足では大して苦になりませんでした。
置き去りにした馬車のこともあってか、しつこく追いかけられることはなく、背後の足音はじきに聞こえなくなりました。
そのうち木の根が背の高い雑草に取って代わり、足を取られることもなくなりました。
ですが、ほっと安堵したのも束の間、赤ずきんは雑草のせいで段差に気づかず、足を踏み外してしまいました。倒れこんで雑草を顔に受け、次の瞬間視界が晴れたかと思うと、そこは、崖の向こうでした。
段差はその境目だったのです。
――――赤ずきんは、なすすべもなく転げ落ちてしまいました。
*
赤ずきんは、落ち葉のじゅうたんの上で目を覚ましました。大粒の雨に混じって、時折ときおり枯葉が落ちてきます。身を起こすと、すぐ近くで雷鳴が響きました。
赤ずきんのほっぺたを、冷たいしずくが伝います。両目から流れ落ちるそれは、雨ではありませんでしたが、赤ずきんには区別がつきません。
膝ひざをついて立ち上がると、少し離れた場所に、カゴとブドウ酒が転がっていました。カゴにかぶせてあった花柄の白い布は、破けてボロボロになっていました。赤ずきんは、凍える手でカゴを掴み上げます。
石のつまったきんちゃく袋も、売人に渡すためのブドウ酒も、もう入っていませんが、それでも、ずっしりとした手ごたえが返ってきました。
顔を上げると、立ち込める霧の中に、青い煙突屋根の小屋がかすんで見えました。
幻か、それとも……
赤ずきんは、虚うつろな瞳でかすかに笑い、当初の目的を果たすため、また、歩き出しました。
耐えがたい頭痛とともに、朝の出来事を思い返します。
『――――絶対に、よりみちしてはいけませんよ?』
布で中身が隠された、ずしりと重いカゴ。『何が入っているの?』と、首を傾かしげる赤ずきんに、お母さんは、にっこりと笑って答えました。
『――――』
「きゃぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーぁぁっっ!!」
頭を抱えて叫び声を上げる赤ずきん。泥だらけの地面にうずくまり、やっとの思いで呼吸を整えました。それでも、胸の鼓動はおさまりません。
- Re: 赤ずきん -ダークサイド- 【感想募集中!!】 ( No.6 )
- 日時: 2018/03/01 19:42
- 名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: CJrJiUcR)
*
ノックをすると、返事が返ってきました。木製の扉を開き、ゆっくりと覗き込む赤ずきん。
ベッドの布団が大人一人分ふくらんでおり、他に人影はありませんでした。安堵して、足を踏み入れます。ベッドのそばまで近づくと、おばあさんが顔を出し、身を起こしました。
「おお、赤ずきん。遠いところをよく来てくれたね。おばあさん、とっても嬉しいわ」
言って、にっこりと笑うおばあさん。
「あぁ、そうそう、おなかが空いているでしょう? となりの部屋のテーブルにごちそうを用意しておいたから、たくさん食べなさい」
赤ずきんは、促うながされるままとなりの部屋へ向かいました。とは言え、ここは小さな小屋の中。となりの部屋とは名ばかりで、扉はなく、ただ、薄い木の板でできた粗末な仕切りがあるだけです。となりの部屋は、小さな丸いテーブル一つでほとんど埋まってしまっています。
それでも、赤ずきんは、テーブルの上に所狭しと置かれたごちそうに目を奪われました。気の緩んだおなかが、思い出したように空腹を訴えてきます。
手を合わせるのももどかしく、赤ずきんは、並べられたごちそうに飛びつきました。と言ってもほとんどが肉で、野菜や果物、魚などはほとんど使われておらず、控え目に言ってもひどくバランスの偏かたよったものでしたが、赤ずきんは気にも留めません。すぐとなりで聞こえた舌舐めずりにも、気がつきませんでした。
文字どおり無我夢中で食べ続け、しばらくしたのち、満腹になった赤ずきんはようやく手を止めました。ごちそうはまだ半分ほど残っていましたが、ふくらんだおなかにはこれ以上入りそうにありませんでした。
赤ずきんがベッドまで戻ると、おばあさんの毛糸で編まれた丸い帽子から、大きな耳が飛び出していました。赤ずきんは、不思議に思ってたずねます。
「えぇ? 何だって? ……私の耳が大きい?」
耳に手を当てて聞き返すような素振そぶりが、どこかわざとらしく映りました。
「それはね、お前の可愛い声を聞くためだよ」
呟くおばあさんの目が、大きなまばたきをしました。
「何、私の目が大きいって? 怖がることはないよ。お前の可愛らしい姿を、よく見るためさ」
視線を感じたのか、聞いていないのに答えると、おばあさんはやけに大きな手で赤ずきんの頭をなでました。首をかしげる赤ずきん。
「なんだい、今度は。……私の手が大きい? そうだよ。大きくなくては、お前を抱いてあげる事が出来ないものね」
にっこりと笑うおばあさんの口が、大きく広がりました。その奥から、鋭い牙がのぞいています。
「まだ何かあるのかい。……私の口が大きいって? それはね、赤ずきん――――」
そこまで言って、口ごもるおばあさん。
「――――お前を食べるためさぁ!!」
ふとんをがばりとめくりあげると、突然飛びかかってきました。
- Re: 赤ずきん -ダークサイド- 【感想募集中!!】 ( No.7 )
- 日時: 2018/03/05 10:52
- 名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: CJrJiUcR)
「きゃあっ!?」
咄嗟に振るわれたカゴをまともにくらい、おばあさんの姿をした化けものの体はベッドの向こうに転げ落ちました。赤ずきんは恐怖におびえながらもとなりの部屋に駆け込み、丸テーブルの下に隠れます。その後すぐに扉から外へ逃げだすべきだったと思い直しましたが、もう後の祭りです。
薄い壁の向こうから、化けもののうめき声が聞こえてきました。手元を探るような物音が続いた後、床が大きく軋みます。化けものが立ち上がる気配が伝わってきました。
『……赤ずきん?』
驚くほど近くでくぐもった声が聞こえ、背筋が凍りつくようでした。床の軋む音が断続的に響き始め、おばあさんが部屋のあちこちを歩き回っているのがわかります。
あの化けものが、赤ずきんがとなりの部屋へ駈け込んでいくところを見ていたかはわかりませんが、どちらにせよ、見つかるのは時間の問題でした。
不意に軋む音が大きくなり、ずんずんとこちらに近づいてきます。
「……赤ずきん。そこにいるのは、わかっているんだよ?」
間を隔てていた壁がなくなり、おばあさんそっくりの声がはっきりと耳に届きます。部屋の入口から中をのぞきこんでいるのでしょう。
――――もはや赤ずきんに、選択の余地はありませんでした。
抱きしめていたカゴを床に置き、覆いかぶさった白い布を取ると、赤ずきんは、下に敷かれた赤い布をどかしました。
そうして、底に隠されていたものを手に取ると、ずっしりと重い手ごたえが返ってきました。
「……見ぃつけた」
「ぁぁーーーーーっっ!!」
テーブルを覗きこむ二つの瞳に、赤ずきんはそれを横なぎに振いました。
「ごふっ!?」
ごりっという骨を削ぐような生々しい感触がして、化けものが顔から床に倒れ込み、ひっくり返ったテーブルの上の皿がおばあさんの上に降り注ぎました。
「ぎゃぁぁーーーーーーっっ!?」
破片が背中に突き刺さり、化けものはうつぶせに横たわったまま悲鳴を上げました。慌てて立ち上がり、テーブルに頭をぶつける赤ずきん。食べ残したごちそうが床に散らばり、足元を汚しました。
「うぅっ……」
化けものが、おばあさんの声でうめきながら顔を上げました。その時赤ずきんの目に飛び込んできたものは、流れた血で赤く染まり、ズタズタになった顔面。それが、赤ずきんの中で、ランプの火を浴び焼けただれた猟師の顔と重なりました。
「――――っ!?」
悲鳴を飲み込む赤ずきん。握りしめた血だらけのオノが鈍く光り、頭の中で、にっこりと笑うお母さんの言葉が蘇ります。
- Re: 赤ずきん -ダークサイド- 【感想募集中!!】 ( No.8 )
- 日時: 2018/03/08 18:05
- 名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: CJrJiUcR)
『――――そのカゴの中には……』
「いや……」
震えようと、
『……お見舞い用のブドウ酒と、』
「……やっ!」
おびえようと、
『……お弁当を入れたきんちゃく袋と、』
「……いやっ!」
頭を抱えようと、
『……オノが入っています』
「いや!!」
痛むほど響く言葉から、逃げ出すことはできません。
『――――早く、あのババアを殺しておいで』
「――――いぃやぁぁーーーーーーーーーーーーーーーぁぁっっ!!」
助けを求め伸ばされた腕を振り払い、赤ずきんは赤い光沢を帯びたオノを渾身の力で振り下ろしました。ごすっ、とカボチャが割れるような音がして、飛び散った生暖かい液体が両手を濡らします。どろりとしたそれは手の甲を伝ってそでの隙間に入り込み、蛇のようにからみついてきました。
真っ青になった赤ずきんは、再びオノを振り下ろしました。
何度も何度も、振り下ろしました。
どろりとした赤黒い液体は、そのたびにまたまとわりつき、奥へ奥へと侵食してきます。
赤ずきんは、もっともっと振り下ろして、割れたカボチャをこなごなにしました。そのうちに青ざめた肌は赤く染まり、やがて真っ赤になりました。からみつく蛇ももういません。しびれたようにぼんやりとした熱が、腕全体に広がっていました。
それでも、赤ずきんは止まりません。こなごなになったカボチャをぐちゃぐちゃにして、オノの刃が床に届いても、赤ずきんは、その手を止めませんでした。
振り下ろすたび、どろどろになった手のひらに、不思議な感触が広がるのです。赤ずきんはやみつきになってしまいました。やめられなくなってしまいました。
- Re: 赤ずきん -ダークサイド- 【感想募集中!!】 ( No.9 )
- 日時: 2018/03/13 21:28
- 名前: 全州明 ◆6um78NSKpg (ID: CJrJiUcR)
「――――アハッ!」
どうしてか、おなかの底から笑いがこみ上げてきました。自分で自分が怖くなり、口元を手で覆います。しかし、どれだけ必死におさえても、指の隙間からこぼれ出る声を、抑え込むことはできませんでした。
「……アハハ、アハ、――――アハハハハハハハハァハハハアアァァァハハハハッ!!」
それは、笑い声とはほど遠い、狂った調子の嬌声でした。そうしてひとしきり笑い転げると、赤ずきんは、食べたものをすべて吐き出してしまいました。
血の赤で満たされた床を、どろどろに溶けたごちそうが塗り替えます。空っぽになるまで出し終えると、赤ずきんは胃が飛び出してしまいそうなほど激しくむせ返りました。
のどがカラカラになるまでかわききり、ようやく落ち着いた後も、両手にこびりついたあの奇妙な感覚が頭の中で渦巻いています。
おばあさんを殺させた後、身売りの商人たちに赤ずきんを引き取らせて証拠を隠滅する。それこそが、お母さんの本当の目的だったのかもしれません。
しかし、赤ずきんにはもう、どうでも良いことでした。
「――――早く、殺さなきゃ……」
呟くと、入口の扉が誘うように騒ぎ出しました。死体を跨いで開け放つと、吹き荒れる風にのって大粒の雨が舞い込んできました。外では、嵐が吹き荒れていました。
はためき、はだける赤いずきん。すぐ目の前の木に雷が落ち、刻まれた笑みにどす黒い影を作ります。
「――――お母さんを、……」
――――真っ赤になった赤ずきんは、真っ赤なオノをたずさえ、歩き出しました。
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