二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2019/12/10 17:15
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355


◆現在のあらすじ◆

最後の決戦と呼ばれた戦いから半年。
深部の世界が変わろうとしている中、それは始まった。
「日本一」
その称号に、全国のポケモントレーナーは立ち上がった。ジェノサイド'だった'人間もその内の一人である。
史上初にして大規模のこの大会は、人々を、若者を、真夏を熱狂へと導く。

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-
Ep.1『戦いの果てに』>>280-291
Ep.2『旧友との再会』>>293-302
Ep.3『Pax-準備期間-』>>304-330
Ep.4『夏のはじまり』>>332-345
Ep.5『繋がり始めた点と線』>>347-408
Ep.6『時間と空間の漂う中で』>>410-
行間(時空の狭間)>>279,>>292,>>303,>>331,>>346,>>409

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、若しくは解説・裏設定スレにて御願い致します。※※

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Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.427 )
日時: 2019/11/27 18:36
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


高野洋平は動き出した。
逃げるように走りながら、その際彼の存在を見つけてやって来た面々の名前を叫んだり、肩を叩きながらすぐ近くの店の裏側に回って隠れた。

彼の後ろをついて回ってきたのは香流と吉川と岡田、稜爛高校の3人とメイだ。

「なんだよ……レン……急に走らせるなよ……」

タバコのせいで最近運動をしだすと息切れが酷くなってきた吉川が苦しそうに呟く。

「お前さっきまで走ってただろが」

「あの〜……高野さん?急にどうしたんですか?」

店の表方面からはルークの、「ジェノサイドォォ!!テメェ何処消えやがった!!」と怒鳴っているのが聞こえたがそんなものは無視しながら高野は、全員の目を見ながら意を決した。

「みんな。俺だけじゃどうしようも無いんだ。こんなザコの為に……力を貸してくれ」

ーーー

バトルドームにて変化があった。

逃げ惑うように、大量の人々がわっと押し寄せて来たからだ。

「えっ?……えっ!?」

やはり、ただ事ではないのを見て取ったリッキーはこれから予定していた試合を運営の答えが来るよりも前に独断で中止させる事を決め、近くのスタッフにそれを伝え、その様を眺めた。

誰も彼もが、怯えたような、強い恐れを抱いているようだった。
中には怪我をしている人までいる。

「一体……何が起きているんだ……?」

何度同じような言葉を呟いたか自分でも分からなくなっていたリッキーは、避難してきた人とたまたま目が合った。

その人は、女性で、助けを求めているような目をしていた。

「リッキーさん!助けて下さい……っ!外でポケモンが……。ディアルガとパルキアが暴れています!どうかこれを……ラジオで……」

「な、なんだって!?」

ーーー

一通りの説明を終えた。
主に、テルから、敵から与えてもらった情報をそのまま彼らに伝えただけの簡単なお仕事だったが。

それぞれが異なる目をしていた。
困惑している者。すべてを受け入れた者。逆に諦めた者。認めなかった者。そもそも理解出来なかった者など。

「分からねぇよ……何が何だか……」

頭を抱えていたのは吉川だ。

「レンの仲間だった人が……育てた奴がコレを引き起こしていて世界を滅ぼす?意味が分かんねーよ……」

深部こっちの話は理解できないかもしれないけれど……恐らく今の話は本当だ。アイツは良くも悪くも正直だから」

「そうじゃなくて!!いっぺんに大量の情報が入ってこられたらキツいんだよ!!何だよ!?世界が終わるって!?何だよ!?ポケモンの正体が人工知能って!!」

「吉川……気持ちは分かるんだが今は……」

「レン……つまりそれは……前にも似たような事が起きたってこと?」

香流は鋭かった。
彼はこの景色を見るのは2度目になるからだ。

半ばパニックに陥り、頭を抱えてしゃがんでいる吉川を、岡田が肩を叩きながら慰めのような言葉をかけていた。
そちらは彼に任せて、香流の言葉に応える。

「あぁ。前の時も……バルバロッサの仕業だった。奴の思想は丸ごと今のアイツらに引き継がれているんだろうな……」

「レン!何か手はあるのか?このままじゃあ本当に……」

「あぁ分かっている。まずは1つ頼みたい。豊川と山背を呼んで欲しいんだ。もし、出来れば石井も。もしも此処に居るのなら……先輩にも。みんなポケモンが使える。もしもの時にと戦いに備えるように伝えて欲しい」

高野の提案に、吉川は顔を上げる。

「この戦いに石井を巻き込むのかよ!」

その実直すぎる叫びは高野の心を突き刺した。
たとえ大学の仲間であったとしても、ポケモンが使えるのならば、自分の代わりに敵と戦って欲しいという彼の本音を揺さぶったのだ。

「そう……だよな。そう、なるな……」

「レン。とにかく連絡だけはするよ。あとは……こっちたちはどうしたらいい?」

ディアルガの'はかいこうせん'がすぐ近くに墜ちた。
本来聞こえたはずの悲鳴は爆発音に掻き消される。

舞散った土埃が顔に付く。
高野はそれを手で軽く払った。

「本当だったら……共に戦ってほしい。敵の数が多すぎる……。俺は今から此処に必ずいる首謀者の元へ行ってコレを止めに行く。その足止めに来る敵を倒して欲しいんだ」

「でも、アレはもう止められないってさっきの人は言っていたわよね?」

メイの放った事実に、苦し紛れの解決策が崩れてゆく。

「じゃあどうしたらいいんだ……」

再び高野の思考は止まった。

そんな緊迫した状況をよそに、そもそも何が起きているのかよく分かっていない東堂は空を、ディアルガとパルキアを見つめていた。

「あー……やっぱカッコいいなぁあのポケモン」

「ちょっとキー君何処を見ているの?」

「いやあのさー。あのポケモン見てたらアレ思い出してさ。いやぁー。あの映画そっくりの姿してるよなぁー」

「あの映画って……?」

相沢は東堂の馬鹿さ加減に呆れながらも、話に付き合う。それは現実逃避に似ていた。

「ほら、ダークライの映画だよ。小学生の頃吉岡と観たっけなぁ。最後のあの曲がカッコよかったんだよ!!ほらーえっと……"オラが春"って名前の……」

「とーうどーう……それを言うなら"オラシオン"だろ〜……」

吉岡が重いため息を吐いた。
こんな状況でも東堂は東堂だと己の仲間の図太さにはただ驚くのみだ。

「オラシオン……?それだっ!!」

高野はたまたま盗み聞きしていた彼らの会話をキッカケとし、俯いていた顔を十分なまでに上げさせた。

人の思考回路とは不思議なものである。
どんな困難な状況でも、少しでもヒントとなるワードが飛び込めば突然加速するドラッグマシンの如く脳が活性化し、留まることなく回り続けるのだから。

今この瞬間がスローモーションしているのではないかと思うぐらい、数多の単語や言葉、発想、そして記憶が生まれては消えを繰り返し、遂にそれは突破口を見出す。

「みんな、1つ……思い付いたんだ。やってみないか!?」

覚悟を持ち直した瞬間。
守るべきものを見つめ直したその男は。

絶対に諦めてはならない事を思い出させた彼は。

高野洋平は、抗う事の出来ない存在へと、戦いを挑む事を決意する。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.428 )
日時: 2019/11/30 18:26
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


彼らは駆け出した。
それまで建物の裏で隠れるように息を潜めていた彼らだったが、高野の「走れ!」という合図で各々動いてゆく。

高野とメイは仲間達が繰り広げている戦いの中へ、香流と岡田と吉川はそれぞれ友人やサークルの先輩へ連絡をするためその場に留まりながら命を守り、高野について行かんと吉岡と相沢と東堂も混乱の渦へと自ら突っ込んで行った。

突然舞い戻った高野の姿を見てルークは吠える。

「テメェ何処に居やがったっ!!」

そんな事を言っている間にルークのポケモンはアルマゲドンと思しき人間たちを5人いっぺんに技を使って弾く。

「あぁ!?ちょっとした作戦会議だ!そういうお前こそ何でこんな状況って分かったんだよっっ。あまりにも動きにキレがあるんじゃねぇの!?」

もっともこれは、ルークに限った話ではない。
高野は、「どうして事情も知った訳でも無いのにまるで想定していたが如く戦えているのか」と言いたかったのだ。

ルークは鼻で笑ったあと軽快に答えた。

「リーダー気取りのアホ娘の指示だ。あいつ……何も出来ない雑魚だと思っていたが事前に不穏な動きを察知するとはなぁ!!良いリーダーを持って幸せモンだぜ俺はっ!」

恐らくミナミの事を言っているのだろう。
大混戦の群れの中から彼女の声で「うるさいっ!」と聞こえたのでその通りだ。

高野はモンスターボールを2つ取り出し、空へ向かって投げた。

それぞれゾロアークとリザードンだ。

「っつかテメェこそ今更どうした?作戦会議とか抜かしやがってよ。何か突破口でも開いたってのかよ?」

突如としてメガシンカしたメガリザードンYと、それの放った'だいもんじ'を眺めながらルークが高野に尋ねる。

「一応な。今どうなっているのかの説明は後でするから……とにかく今俺は会わなきゃならねぇ人がいる……」

高野はドームへ続く道を真っ直ぐ見つめた。

敵味方入り乱れて思うように進めそうには見えない。
距離は目測でおよそ500メートル。
直線とはいえ一気に駆け抜けるのは不可能だろう。
足を踏み入れれば別の戦いに巻き込まれるか敵に捕まるかのどちらかだからだ。

「だからァ……。そこを……、どけえええぇぇぇぇぇ!!!!」

叫ぶ。

高野が走ったのを合図に、ゾロアークも技を放つ。

実体のある'ナイトバースト'と、実体の無い地割れだ。

それまで目の前の障壁となる人間全員が目で見た訳では無いが、ある者は闇の光線に飲み込まれ、またある者は地響きに恐れて逃げ出した。

一瞬にしてモーセの海割りの如くドームへと通ずる道が完成した。

リザードンとゾロアークが敵を薙ぎ払っている間に高野はとにかく走り続ける。
体力の無さを憂う暇はない。

とにかく、波が戻るまでに走り切る。
それが今彼に課せられた使命だからだ。

「う……うおおおああああああっっっっ!!!」

無意識に心の内からの叫びを放っていた。
それは、昂りすぎている精神を落ち着かせる応急処置でもあり、本来迎えるはずの限界を一時的に超える為の本能的な反応であった。

徐々にドームの扉が近づいてくる。
あと少し。

あと2、3歩踏み出して手を伸ばせば届くという位置で。

上空からの裁きの刃が振り下ろされた。

ーーー

「だーいじょうぶですかーぁ?我が愛しのリィィダァァァ!!!」

「うっさいわバカっ!いいから戦いに集中しなさい!」

おフザケが一切許されない生と死のラインを歩いているミナミは仲間のレイジから毎日必ず言われるであろう言葉を聞いて、つい本気になってしまった。
と、言うのも普段は彼のこの言葉を聞いた時は軽くあしらうか無視していたかのどちらかだったからだ。

「ホンットにアンタってばアホよねぇ?こんな時に戦い以外に集中する事ってあるのかしら?」

ミナミのエルレイドが相手のナットレイを殴り飛ばす。
少しづつだがこちらが押しているかに見えるようだった。

「当っったり前じゃないですか〜〜。私にとって1番大事なのはズバリ!!大会でも戦いでも明日のご飯よりもアナタですよリーダーァァっっ!!」

などと言って興奮のあまりその場でグルグル回っていた白装束の男レイジは敵のチャーレムの'れいとうパンチ'を直に受けて「ぶべら!!」などという間抜けな声を発しつつ余計に回転しながら宙を舞った。

「ほら言わんこっちゃない……」

ついレイジの居る方へ余所見していたミナミはその時、真上の光に気付くことはなかった。

悪寒が走り、見上げた時は遅かった。

ディアルガが今まさに'はかいこうせん'を自分に向かって発射したその時だったからだ。

呼吸が止まり、体も固まる。
死を覚悟した瞬間。

ぐいっ、と胸の辺りに手を回されて思い切り体が引っ張られる。

「……えっ?」

何が起きたのか分からなかったミナミは、自分の声がブレて聴こえたような錯覚を覚えながら、すぐに地べたに放り投げられて痛みを感じながらすべて理解した。

「あっ……雨宮……?」

「しっかりしろよテメェ……。こんな所で死なれたら俺ら全員も生きていけなくなるって事を自覚しやがれ……」

彼女は助かった。
衝突の寸前、真後ろにいた雨宮が自身の腕力ひとつで彼女を引っ張り、救ったのだ。

「助けて……くれたの?ありがとう……。でも、」

今まで喧嘩腰だった彼からすると有り得ない行動。
何か裏があるのではと読めてしまうものの、それよりも気になった事が彼女にはあった。

幼気いたいけな女の子の体を放り投げるってのはどうなの!?足が痛いんですけどー……」

「テメェ助けて貰ってふざけた事抜かすなっっ!!テメェ俺が助けなかったら死んでたんだぞ!?っつーか自分で幼気とか言うな俺はいつまでもテメェの胸に手が当たってたのが嫌だったんだよ!!」

「ちょっ……アンタ、ウチの……」

どすっ、と2人の間に割って入るようにドラピオンが地面に向かって'クロスポイズン'をぶち当てる。
それが功を奏してか(?)2人ともピシャリと口を閉じた。

「ちょっと黙ってよーぜ。おふたりさん♪︎今どんな状況だい?」

ドラピオンの主はモルトであった。
戦いそっちのけで隙だらけの2人に対し怒りの鉄槌を振るう。

ーーー

「ハァ……ハァ……。クソっ、たれが……ッッ」

高野はよろめきながら立ち上がるとゆっくり歩き出した。

頭を打ったせいでほんのちょっと前の記憶が遅れて戻ってくる。

パルキアの'あくうせつだん'に呑まれるその瞬間、自身のゾロアークに蹴飛ばされて射程圏内ギリギリを抜け出したかと思ったのも束の間、大地に穴を開ける程のその技の衝撃波は避けられず、そのまま前へ前へと吹っ飛んだ彼はバトルドームのガラスを生身で突き破ってしまったのだ。

衝撃で吹っ飛んだ際に体が若干丸まったお陰で大した傷にはならなかったが、それでも皮膚の至る所は切れて血が流れ、ワイシャツも所々赤いシミで染まっていた。

「……まぁ、結果オーライっちゃそうなるけどさ……」

高野は目当てのドームの中へ突き進み、人混みを押し退けて前へ前へと歩く。

バトルフィールドに恐らく目当ての人物が居るはずだからだ。

見れば、建物内は人で埋まっていた。
怪我をして医務室に運ばれた者や単に避難している者など、人によって様々だ。

何故かコートに通ずる扉が閉められていた。
高野は立ち塞がっている係員を突き飛ばして勝手に開く。

そこで繰り広げられていた光景は、

バトルの最中でもなければ昼休憩の途中でもなく。

ただひたすらに自分の命を守る為に逃げてきた人々で埋め尽くされていた。

「な……。こんなにも人が居たのかよ……っ!?」

最早そこは輝かしい戦いの舞台の面影はなく、まるで大災害が起きた時のような、地域の避難所の様相を思い起こすかのようだった。

観客席は先着順で既にすべて埋まり、確保出来なかった者たちがその場で怯えたり休みながら本来はバトルフィールドであった敷地に腰を下ろしている。

「おいっ!!君何をやっているんだ!勝手な真似は止めなさい!」

先程突き飛ばした男性係員に肩を掴まれ、動きを止められる。

だが、高野は事情を知らない人間に1からすべて話す暇も余裕も優しさも今は無い。

「うるせぇ!今それ所じゃねぇんだよ!」

「避難したい気持ちは分かるがそれは皆一緒だ!とにかく整理するまでは扉の向こうで待っていなさい!」

高野を避難してきた人と勘違いしている係員は注意しながら肩を掴んだ指の力を強めながら退出を促す。

そんなおかしな光景を見たせいだろうか。

「ん?」

高野のもとに、見知った人が近寄ってくる。

「君は……一体どうしたんだい?怪我をしているじゃないか!?」

避難所と化したドームを見つめながら、今後どうしようか考えていたリッキーが高野を見つけ出したのだ。
高野も長い間探していた落し物を見つけた時のような顔をしてこう言った。

「やっと……やっと会えた……。少しお話したいんですが、よろしいですか?」

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.429 )
日時: 2019/12/04 19:58
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


リッキーはひたすらに困惑した。
1度か2度くらいしか顔を合わせたことの無い知り合いから、突然「世界を救って欲しい」と言われて素直に引き受ける事など出来るわけがないからだ。

高野洋平は今起きている事のすべてを話した。
深部に一応は通じている彼なら香流や吉川あたりとは違って理解の質にも違いが見られる。
いちいち遮って固有名詞に対する質問が一切無かった点からそう思った。

だが、リッキーはその話のすべてを信用する事は出来なかった。
あまりにも突飛で、非現実的だからだ。

「リッキーさん……お願いがあるんです。今すぐラジオを使って……」

「高野くん……で合ってたっけ?出来れば協力したいんだがー……その、申し訳ないが本当の話とは思えなくて、ね」

「ちょっ……この状況見てまだそんな事言ってんのかよ!?」

高野は驚き目を丸くした。

「今外で仲間達が戦っているんだ……。確かにアルマゲドンがどうとか、宗教観とかそういうのが理解できないってのなら分かるが、」

「そうじゃないんだ。いいかい?高野くん。シンギュラリティとか、技術的特異点だとかっていうのは近年騒がれ出しただけであって、本当に予想通りの結果になるとはほとんど思われていないんだ。それに……」

「あらゆるポケモンを再現した量子コンピュータがあるんだぞ!?」

「その量子コンピュータを個人が持っているのも普通におかしい!そのコンピュータは実在するのか!?」

その問いに、高野は怒涛の言葉の連鎖が止まり、口を閉ざす。

「それだけじゃない。君はその話を、敵の人間から聞いた。特に尋問した訳でも、無理矢理喋らせた訳でもない。そこに罠が無いと思う方がおかしい。何らかの意図を持って全く違う事実を抱えていると思った方がいいだろうね」

「それじゃあ……どうしたらいいんだ!」

「とにかく今の僕は君たちに協力出来ないっ!此処の対応で手一杯なんだ。君は……真実を見出した方がいいと思う。その上でまた僕の所に来てくれ」

「そんな……」

どん底に突き落とされた気分だった。
死に物狂いでやって来たはいいものの、返事はNoときた。
これまでの苦労とか、これからの策もすべて潰えた。

リッキーの言い分にも一理あるものの、バルバロッサやアルマゲドンの面々の思想を1番理解しているのは高野洋平。彼自身だ。

わざわざ聞こえるようにわざとらしく大きく舌打ちをして高野はコートを、ドームを出た。

建物から外へ出ると、仲間達が、3人の高校生とメイが出迎えてくれた。

「どうだった?」

「どうもこうもねぇよ……。話を信じてくれなかった……。どうしようもねぇよ」

1歩外へ出て状況を見ようと高野は少しせのびをする。

ドームへ繋がる直線上……つまり、今彼らが立っている周りには敵は既に居なかった。
全員倒れているか離脱している。

「今ルークたちは追撃の為にこのドームシティからは離れていっているわ。この緑地周辺に敵はまだいるみたい」

「だからお前たちはここで待つことが出来たんだな……」

こうなると脅威は上に鎮座するディアルガとパルキアのみだがそれぞれ空を優雅に飛びながら時折何処でもない方向へ技を放っている。

「あなたはどうするの?」

メイの声だ。

「俺はこれから……もう1人のアルマゲドンの人間に会いに行く。そいつは、俺の事も知っているし何より誰よりもバルバロッサに近かった奴だ。と、なるとこの騒ぎについてもよく知っているか、そもそもの発端であるかのどちらかだ。……そいつと話す。んで、事実を携えてもう一度リッキーに伝える。"オラシオンをラジオで流せ"とな」

周辺が静まった事を受けて出歩いても無事だと思ったのだろう。
それまで隠れていた香流たちが姿を現すとこちらへ向かって来た。

「オラシオン?どうしてですか?」

相沢がよく分かっていない風な表情をして聞いてくる。
もしかしたら、ポケモンの映画を観ていないのかもしれない。

「なんて事は無い。ただ単にポケモンの感情を歌で刺激するだけさ」

香流たちが到着した。
手にはスマホを握っている。

「レン……。先輩たちは今は此処には居ないようなんだ。それで、石井と豊川それから、山背にも連絡はしておいたよ。皆ドームの中に居るって」

「よし分かった!それじゃあ皆はドームの中に居て避難している人たちを守っててくれ。いつ上空からディアパルが攻撃してくるかも分からないし、中に敵が紛れているかもしれない。俺の注意を引くために一般人を惨劇に巻き込む……というのは十分考えられるからなぁ……。だから香流と吉川と岡田。お前たちはここの守備を任せたい。まぁ本当は戦わないのが一番なんだけどな……」

「ほんとだよ……深部の戦いに……巻き込みやがって……」

と、いう吉川の小声が聴こえた。
高野はそれを無視しようと思ったがたまたまその耳が捉えてしまったので言わざるを得なかった。

「すまない、吉川……。だが、今回は世界を、この世全てを巻き込んだ戦いである事には変わりないんだ。世界を救うため、守る為に共に戦って欲しい」

しかしここは男の吉川裕也である。
英雄になりたいと男なら誰もが1度は願ったその想いを未だに持ち続けている彼は、その言葉につい心が揺らいでしまう。

すると、今度は一通りの戦いを終えたためか、ミナミとレイジがこちらに駆け寄ってきた。

「レンっっ!」

「ジェノサイドさんっ!お元気でしたかぁー?」

「お前ら!?こっちに来て大丈夫なのかよ!?」

「もうウチらが撃退したからねー。とりあえずは」

「いやぁ〜吹っ飛ばされた時はあっ、死んだなって思いましたけど何とか生き延びれましたよ〜。これもリーダーを思っての奇跡ですね!」

こうして言葉を交わしたのも久しぶりだというのにレイジは相変わらずのリーダー愛に溢れているようだ。
逆に高野はそれを見て安心した。

「そうか。じゃあついでだ。お前ら2人もコイツらと一緒について行ってくれ。知り合いの助っ人とか頼もしい以外の何物でもないだろ」

「高野さん〜。僕たちはどうすれば?」

吉岡が手を上げる。
そちらには、きょとんとしている表情をした3人が彼を見つめては言葉を待っているようだった。

「そっか……お前らか……」

高野は悩んだ。
深部の人間とはいえ、まだ高校生だ。
自分と共に首謀者を探すのも、ルークたち赤い龍のメンバーに混ざって戦うのも危険に思えてならないのだ。

「任せる」

「えぇっ?」

「3つの選択肢があるから、お前らで話し合って決めてくれ。1つ、俺と共に首謀者の元へ行くか。その際ディアルガとパルキアに最も近付くから1番危険だ。2つ、赤い龍の構成員と共にアルマゲドンと戦うか。今は追いやっている途中だからこちら側が有利といえば有利だが。3つ、コイツらと共にバトルドームで待機するか。選べ」

その言葉の後に3人で円陣を組むように顔を見合わせながら話し合う中、高野は最後に残された人影へと視線を向けた。

「メイは俺と来てくれ」

「えっ?私が?」

「この中で俺の次に実力があるのは香流だが……だからと言って死なせる訳にもいかねぇからな。その次に実力があって尚且つ死んでも良さそうなのがお前だしな」

「ちょっ、私に死ねと!?」

状況も忘れて高野洋平は笑い出した。
迫り来る危機と、それによって押し潰されそうな精神が、周りで繰り広げられている彼の日常を思わせるかのような面白おかしい交わし合いとのギャップが彼をおかしくさせたのだ。

自分が放った冗談に対するメイのガチトーンが面白かったというのもあったのだが。

「ちょ……レン?大丈夫……?」

「ははっ……大丈夫だよ。ちょっと……笑いたくなっただけで……くくくっ……」

笑いすぎて涙が出たようだ。
彼は手で拭うと気を改めて「よし!」と言った。

「決めたようだな」

「はい!僕たちは〜……。ドームに行きます」

言うと思った。
そこが1番安全だからである。

「それでいいと思うよ。俺としては本当は戦いに混ざって欲しかったが、だったら最初からそう言うからな。俺としても迷ってたんだ。だから自分たちで決めた事に対して俺からも感謝するよ」

言い終えて、さっさと行けと示すように手をドームの方向に向けて手をはらう仕草をする。
それを合図と読み取った彼らはそちらへ向け走り出した。

「さて、と……」

高野は空を見る。
相変わらずの金色の空に2体の伝説のポケモン。
そして、何処かにいるであろう首謀者ことレミ。

「この戦いは……恐らく誰かが死ぬだろうな」

ため息を軽く吐く。
思えば、誰かが死ぬ程の大きな戦いをするのも、自身の死を予感するのも共に久しぶりだった。

「それは、此処に居る誰かかもしれないし、俺かもしれないし、今戦っている奴の誰かかもしれない。だが、俺たちは死んではならない。死ぬ訳にはいかないんだ。誰かが犠牲になって平和になる世界なんて間違っている。そいつの死を悲しむ奴がいる時点で平和な訳がないからだ」

高野はこの場に残っているミナミ、レイジ、メイの顔をそれぞれ見た。
各々強い覚悟を持ったり、不安を抱いていたり、そもそも、愛しき人を常に見つめているなど全員が違う目をしていた。

「俺はデッドラインであり赤い龍ともジェノサイドとも関係が無いが、たった今宣言するぞ。デッドラインと赤い龍を合併させる。その上で命令する。死ぬな。いいな?」

その言葉を合図に、全員が頷き、走り出さんと1歩踏み出した。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.430 )
日時: 2019/12/08 18:16
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


高野とメイはそれまで自分たちが戦っていた場所まで走り続けた。
とにかく、情報が欲しかったからだ。

「ねぇ、一体どうするのよ?」

後ろを走るメイの声だ。
だが、高野はそれを無視する。すぐに解決するからだ。

高野は目当ての場所へ近寄り、徐々に速度を緩めてゆく。

「おい敗北者……。俺の質問に答えろ」

高野は戦いに敗れてアスファルトに直に座ってボーッとしていたテルに話しかける。
当のテルは疲れ切った顔をこちらに見せた。

「この事件の首謀者……レミは何処だ」

「答えると思うか?」

ジェノサイドが自身の仲間の名を知っていた事に意外にも感じたテルだったが、顔色ひとつ変えずにそう言う。

いかにも、怒りを滲ませているんだぞと言いそうな顔をして、高野はテルの胸倉を掴んだ。

「言え。今起きているこの異変を何としてでも止めてやる……。奴が此処に居るのは分かってんだ。言え!!さもなくば殺すっっ!!」

文言通りの表情にテルは思わずくすりと小さい笑みを零した。
奴はいつもそうだと。
脅すだけで決して人の命は奪わないと。
そんな事を知っているからだ。

「殺せよ。俺はもう役目を果たした……。本当だったら世界が変わる様を見たかったが、こんな状況だしなぁ?ほら、言わないのなら殺すんだろ?殺せよ。殺してみせろよ?」

物騒な言い草の割にはその顔には余裕が読み取れた。
今更彼が自分を殺すとは思えないし、今自分が死んでもあまり意味は無いからだ。

高野は腕を震わせると、テルを突き飛ばす。
舌打ちをしながらスマホを少し操作し、出現したモンスターボールを頭上へと投げた。

出てきたのはシンボラーだ。

「何を……するつもり?」

「こうなる事ははっきり言って分かりきってた。そう都合良く敵がペラペラとバラすはずがねぇからな……。だからコイツを使う。コイツは俺の意識とシンクロさせることで、コイツの視た情報が俺の意識にも写る。つまり、何処に誰が居るのか分かるのさ」

既に主人と意識が繋がっているのか、何の指令も無しにシンボラーは翼を羽ばたかせて上昇していった。

上空からの景色が、状況が、そのまま高野の意識に、目へと視界へと入り込んでくる。

サーモグラフィーで見ているかのように、人が立っている地点だけ赤く反応しているようだ。
シンボラー越しに、自分やメイ、そしてその場に伸びているテルや彼の仲間が次々に見えていく。分かってゆく。

自分自身が空に浮かんでいるようだった。
目に見えるものが上から捉えたものなのだから。

「これは……?」

上へ上へと登るその途中、不自然な場所で不自然な反応を見つけた。

そこは、どうやらバトルタワーの屋上のようだった。
人影がひとつ、赤く輝いている。

「待て……誰か、居る……」

誰なのかまだよく分からない。
そちらをしっかり捉えるよう、シンボラーにテレパシーのように念を送る。

しかし。

ブツっと、それは突然途切れた。

「ぐああっっ!!」

突然の事に、高野は目を押さえて地面へと倒れ込んだ。

「ちょっと!どうしたのよ!?」

メイが心配そうに駆け込み、彼の体を支えながら改めてうえを見た。

どうやら、シンボラーがディアルガと衝突したようだった。
思い切り弾き飛ばされて地上へと強く叩き落とされる。

ガン、と聞くだけでも耳が痛くなりそうな音が響いた。

高野は呻きながら手を離し、目をゆっくり開ける。

「ねぇ、大丈夫……?」

「シンボラーが……落とされたようだな……。でも大丈夫だ。痛みまでシンクロはしないから」

今自分は地上に居るんだと改めて強く意識に働きかける。
少し酔ったような嫌な気分になってしまったが、ヨロヨロしながらゆっくり立ち上がり、歩くとシンボラーをボールへと戻す。

「バトルタワーの上に……誰か居た……」

「もしかして……」

「いや、まだ分かった訳じゃねぇが……こんな状況でディアルガとパルキアに1番近い距離に居るなんて少しおかしいもんな……。その線は大いにあると思う」

そこにレミが居るか居ないかはもうどうでもいい。
怪しいものは片っ端から調べ尽くす。

もう、そうするしか無かったのだ。

「行くぞ。ゴールはきっとそこにある」

ーーー

「オラァくたばれやクソ雑魚共ォォ!!!」

わらわらと無限に湧き出る敵対組織の人々に向かい、ルークは叫んだ。

呼応するかの如くサーナイトの'はかいこうせん'が放たれる。

既にルーク含む赤い龍の面々はドームシティを下り、街へと繋がる長い坂道の途中に居た。
このまま下ってしまうと聖蹟桜ヶ丘駅に到達してしまう。
果たして市街地のド真ん中で戦いを繰り広げてもいいものなのか本来であれば多少は悩むものの今はそんな事をしている暇も余裕も無い。

迷いは即死だからだ。

敵味方入り乱れての大混戦。
ポケモンが、人が、それぞれを奮い立たせてはせめぎ合う。

「ルークッッ!どうすんだ!?このままじゃあ奴ら街になだれ込んじまうぞ!?」

仲間のモルトの声だ。
ドラピオンが倒れたのか交代したのかまでは分からないが、今度はその代わりにドラミドロが毒を周囲に撒き散らしている。

「知ったことかァッ!それが嫌なら今の内に殲滅させる事だなァ!!」

言っている内に、彼のポケモンのチラチーノが回転しながら'ロックブラスト'を放っては人もポケモンも纏めて宙へと飛ばしてゆく。

「チマチマと戦っていられっか!!全員まとめてぶっ殺してやるっっ!!」

チラチーノとサーナイトだけでは飽き足らず、今度はフレフワンとクレッフィをも呼び出さんと2つのボールを取り出した。

「おいっっ!アレ見ろ、ほら……ナントカって奴!!」

すると。

何やら肌の茶色い大男がこちらに向かって叫んでいるような気がした。

が、彼はそちらを振り向かない。
眼前に移る敵を屠るのみだ。

「ケンゾウ……ナントカって誰だよ……。ルークだろ?」

「あぁそうだルークだルークっっ!」

「あァ!?」

やはり茶色い大男は自分に対して何かを言っているようだった。
こんな忙しい時に何なんだと怒りを込めた目で彼もといケンゾウを見る。

ケンゾウはルークの視線に気付くと、強く主張したげに空を指した。

そちらへ目を向けてみる。

「なんだ……?ありゃあ……」

異変が発生してから1時間は経とうとしていた。

明らかに新たな異変が起きているようだ。

空に、1点に光が集まっている。
白く眩い光が1箇所に集中し、更に強く輝いているように見えた。

まるでそれは。

天国に繋がる門のようだった。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.431 )
日時: 2019/12/10 17:14
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


高野とメイはバトルタワーに向けて走り出した。
最早一刻の猶予も無い。
そもそも、これは事件解決に直接関わりのあるものではなく、第三者に説得させるための作業なのだ。
残り3時間となった今、ゆっくりせずにはいられなかった。

「ねぇ、レン……。また何か起きたわ」

メイが指し示した方向、遥か上空に、白く輝く光が集まっていた。
しかも丁度バトルタワーの頂上付近と来ている。

「クソっ……また何か始まったな……」

「彼らの言葉を当てはめる限りだと、あそこからアルセウスが出てくるのかしら?」

「知らねぇよ!!ンなもん今考える事じゃねぇだろっっ!!」

2人はバトルタワーの扉付近へと辿り着く。
ドームの時と同じく自動ドアが2人に反応して開き、そのまま入場する。

「ここも……避難している人がいるようね」

メイは自分らがいる1階付近を見た。
ドームほどでは無いが外の異変から逃げて来た人で溢れ返っていた。
向こうとは違って1つの空間に限りがあるので更に満杯になっているように見える。

「どうする?このままじゃあ人混みに紛れて上に着くのは大分時間が掛かりそうよ?」

メイは隣に居たはずの高野に向かって話しかける。
しかし、彼女が振り向いた時には彼はそこには居なかった。

高野洋平はと言うと、

「すいません……屋上のヘリポートに行きたいんですが……」

近くの大会運営スタッフに話し掛けていた。
スタッフも、突然の騒ぎのせいなのか苦々しい表情をしているように見える。

「何か、用でもあるのかい?」

「ラジオ局に勤めている友人が機材を置き忘れたとかで……」

「?」

即興の嘘なせいか、相手もよく分からないと言った顔をしている。
見兼ねたメイが、手に何かを持って2人に近付いた。

「塩谷議長の命令なんです。通して下さい」

その手に握っていたのは、手帳のような本だった。
左端には、議員がよく見せびらかしているバッジが縮小されて付けられている。

スタッフの男性は少し怪しみながら、不満な表情をしつつ2人をエレベーターのある方角を指した。

「アレだけでは屋上には行けないよ。行けるのは20階まで。そこからは関係者用の別のエレベーターがあるけれど、今は使えない」

「何故ですか?」

「マスコミ関係の方々を上の階で避難、保護しているからだ」

その、あまりの優遇っぷりに高野は思わず「はぁ?」と声を上げる。
しかも、この異変を異変としてしっかり見ているにも関わらず、だ。

これではリッキーが言っていたことと反している。

ある種の闇を垣間見てしまった高野ではあるが、

「行くとしたら……非常階段かな?」

またも、嫌な予感が駆け巡る。

ーーー

「最っっ悪だ……」

高野洋平の勘はまた1つ当たってしまった。

エレベーターで20階まで登ったところ"まで"はよかった。
彼は、2階に相当する距離を登ったところで1度立ち止まる。

息が切れたのだ。

「あなた……大丈夫……?そんなのでこれからディアルガとパルキアを止めるつもりで居たのかしら?」

「うるせーなー……。階段だけは駄目なんだって俺……。ってかさぁ!!」

高野は見上げた。
今まで自分たちが登った距離の半分はあったようにも見える。
単純に見て10階。その内の2階なので残りは8階というところか。

「なんでこんな目に遭うんだ俺は!!」

「……あなたが訳の分からない事言うからじゃない。今からでも作戦を変えるとか……」

メイの言っているそばから。

高野洋平が突如駆け出した。
体力の無さを憂う暇は無い。

先程までの気弱な面はどこに行ったと言わんばかりに足音を大きく響かせて全速力で走る。

「ちょ……ちょっと!大丈夫なの!?」

傍から見ても無理しているのは分かりきっていた。
本来ならばこれ以上のスピードは出せないにも関わらず、あと少しの距離だからと苦しいのを承知で走るゴール手前のマラソンを思い起こすかのごとく。

心臓が張り裂けそうだ。
普段は聞かない、耳で捉えただけでも縮こまりそうになるほどの、早すぎる鼓動。
それでも、止まる訳にはいかない。

あと少し、今ここで少しだけ無茶をすればすべての片がつく。
そう信じて。

「レンっ、危ないっっ!!」

通過しようとした階の非常扉が突如高野の目の前で開く。

中から現れたのは、銃を手にしたアルマゲドンの人間だった。

ーーー

爆弾の落ちるような爆音は未だ止まなかった。

見ると、互いに抱き合って怖がっている子供たちや、そわそわとウロウロしている大人が居る。

香流慎司はそんな混沌とした状況を見つめることで精一杯だった。

「香流ぇーーっ!!大丈夫だったか!?」

北川弘が観客席の方からやって来るのが見えた。
香流は大丈夫だという合図として手を振る。

「さっき……一瞬だけど外に出て戦ってたって聞いたんだが……」

いきなり走り回ったのだろう。
北川はぜーはーぜーはーと苦しそうだ。

「あぁ。でも、こっちは大丈夫だよ。今レンの仲間たちが外で戦っている」

「怪我は無いか!?」

「うん。大丈夫」

その言葉を聞いて北川はすっかり安心したようだった。
一緒に外に出ていた岡田と吉川も自分の目に見える範囲にいるのが分かったのでひとまず彼の中の不安は消え去った。

石井と高畠も、久しぶりの再会ということでミナミに抱きついている。

「レンは?あいつだけ居ないようだが……」

北川もこういう時は鋭いなと香流は頭の中で思いつつ、これまでの出来事を話す。
今彼はこの異変を止めるべく動いていると。

「そうか……あいつ、深部辞めたと思ったんだけどな……」

「レンはもうジェノサイドじゃないよ。その……たまたま色々な事に巻き込まれちゃうだけで……」

香流も彼の言葉を聞いて少し不安になった。
この大会にしてもそうだ。

高野洋平は自分たちよりも、深部の人間と動いている時の方が多い。
正当化出来る言い訳を並べても、楽観的に考えても何処かでまた、新たな不穏な種が出てくる。

「ねぇねぇー。香流。豊川は?」

女子3人で固まっていた高畠美咲がこちらへ話しかけてきた。
香流は、「あれ?」と思い辺りを見回すも、それらしい人影はない。

「あれー……。こっちはさっきまで皆と一緒に居るとか、ドームの中に居るって聞いたけれど……」

しかし、仲間も誰もが彼の存在を否定する。
確かに、バトルドームの中に豊川修は居なかったのだ。


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