二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/02/17 12:31
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

夏の一大イベントを終え、高野洋平は夏休みを謳歌していた。
9月に突入したある日、友人たちに誘われて"最強だった男"は神保町にある古書店街へと繰り出すと、そこで偶然出会った女性から奇妙な依頼を頼まれる。
「自分には関係ない」と一蹴する高野だったがその直後に見せられた1枚の写真に、強く動揺してしまう。

「ゼロットが再び決起しようとしている」
「新たな戦力を手にし、アラビアの砂漠で不穏な動きを見せている」

そして突きつけられた、彼らを捉えた写真。
確かにそこには、大学のサークルの友人が写っていて……。

自らを"エシュロンの人間"と名乗る2組の男女と共にデッドラインは、アラビア半島はルブアルハリ砂漠へと向かうため遂に海を越える!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-

Ep.1 第一の道、片翼の天使>>448-456
Ep.2 第二の道、力与えし神>>458-


~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

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Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.455 )
日時: 2020/02/17 11:11
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「予定……変わっていないか?」

高野は日が沈んだ景色を窓から見つつ、ホテルの一室で呟いた。

「話違くね!?」

「仕方が無いだろ。ルラ=アルバスはまだ到着出来ていないんだ」

リヤドを出て4、5時間車に乗ったかと思うと突然降ろされた。
なんでも、オマーンから来る予定のルラ=アルバスが未だサウジアラビアに着いていないとの事だった。
なので、本日は陽も落ちた事もありこれ以上動いてもどうにもならないとの事でこちらに立ち寄った次第だ。

「明日こそは空軍基地に向かう。そこで皆と合流して調査開始だ」

空港で出会い、ここまで案内してくれた男が今後の予定の為に部屋に来ていた。
今日この部屋を使うのは高野1人のみである。
レイジとミナミはそれぞれ別室だ。

「調査だと?結局俺たちは何をやらされるのかも分かっていないのに、どうしろと言うんだ」

「簡単な話だ。砂漠内で奴等と戦い、捕まえる。それだけの話さ」

この男、イクナートンと自称した男は簡単な仕事を伝えるかの如くスラスラと言ってみせる。
果たして、Sランクの組織の人間を相手取るという事をこの男はよく分かっていないようだ。

「砂漠である必要性は?そもそも戦う理由は?捕まえるにも相応の言い分が無ければ駄目だろう?」

「本当にお前は面倒な奴だな……日本語でここまで付き合っている俺の身にもなれ」

やれやれだとジェスチャーで示したイクナートンは念入りに部屋をキョロキョロと見回したあと、ベッドに座っている高野に合わせてか屈むとやや小声でこう言った。

「奴は"アードの民"の末裔だ。少なくともそれを自称している。何かを求めて例の砂漠に来ているのは確かでな……。その為の砂漠での戦闘だ」

ーーー

時刻は1時を過ぎていた。
吉川はその眩しさに、目を眩ませていた。

(一体……俺は何を見ているんだ?)

彼の眼前にはまず海が広がっていた。
9月も過ぎて波も高くなっているというにも関わらず、命知らずな若者たちがはしゃぎながらダイブする姿が映る。

次に見えたのは、友人たちの姿だった。
決して人前では脱がずにひたすら風景の写真を撮る岡田翔、体が砂に埋もれた北川弘、その北川を埋めようと砂を盛る高畠美咲と豊川修、早速波に飲まれて水中でひっくり返っている香流慎司、そして。

「みんなー!用意出来たよぉー!ビーチボールやらない?」

荷物を預けている海の家で空気を入れて膨らませて来たのだろう。
平均的なサイズのビーチボールを持ったメイがやって来た。
水着の上に、派手な暖色のパレオを穿いている。

これのせいで、吉川の目が眩しかったのである。

「やるやるー!混ぜて混ぜてー」

「おいちょっと待て、北川の胸が微妙なほどアンバランスだからもう少し砂盛れって」

「ちょっ、オイ高畠ぁー!普通に放置すなー!」

「うっわーダメだこれー。逆光のせいで江ノ島上手く撮れねぇや」

「いやぁ〜頭底にぶつけちゃったよ〜……今日の波ヤバいね?」

「相変わらず好き勝手やってんなオメーらァァァァァ!!」

吉川は構わず叫んだ。
本当にこいつらは自由だなと思うと叫ばずにはいられなかったのだ。
今まで、特にサークルの行事として何処かへ出掛けるとなると顕著になるのだが各々が好きなように、それも勝手に行動し出す。そこに集団行動の文字は存在しない。

それが今になっても表れたのだ。

すると、突然吉川の顔面にボールが当てられる。

「ぶはっ!!」

「え?なに?吉川、やるの?やらないの?」

柔らかいビーチボールをぶっ放したのはメイだった。
額を抑えながら吉川は転がっていくボールを拾いにいく。

「……やるに決まってんだろ」

ニヤリと笑いながら吉川はメイに向かってお返しとばかりに腕力に任せて強く打つ。

「させるかあぁぁーーー!!」

と、砂山からの封印から解き放たれた北川がメイの真ん前に躍り出るとジャンプしながら打ち返す。

「香流ぇー!きみに決めた!」

向かってきたボールを、今度は豊川が香流のいる方向へボレーし、香流もここぞとばかりにシュートの姿勢を取るものの。

ぶん、という風を切る音と共に空振りし、ボールは可愛い音を立てて砂の上に落ちた。

「何やってんだおめーは」

「ごめーん……こっちバレーとか苦手でさ……」

「って言うかコート!!範囲!!何も決まってない中普通に試合しちまったじゃねーか。自由すぎんだろーが!」

「あら?今のは些細な練習代わりでしょ?本番はこれからよ」

メイがボールを拾い上げると不敵な笑みを吉川に向ける。
この時の全員の心の声が必然的にも一致したのは言うまでもない。

体力がもたない、と。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.456 )
日時: 2020/02/17 12:01
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


高野はイクナートンが離れた部屋の中で1人、話の整理を始めた。

かつて戦ったSランク組織、ゼロット。
その長キーシュが隙を見て暴走をし始めている。
キーシュの本名はキーシュ・ベン=シャッダード。
その意味は『シャッダードの息子キーシュ』。
彼は古代アラブ民族アードの末裔。またはその自称。
キーシュは"何か"を求めに徒党を組んで砂漠に居るらしい。

『アードという名前はイスラム教の聖典クルアーンに見られる滅ぼされた民族だ。俺の勝手な予想だが、キーシュは復讐の為に行動をしているとみている』

高野洋平は先程のイクナートンの言葉を思い出す。
全く理解に及ばないが、どうやら自分の知る由もない歴史が拗れて今に至っているようだ。

「益々俺がすべき事が分からねぇ……最優先は山背と石井。これのみだな」

興味が湧かなければ歴史を学ぼうとする意思は生まれない。
キーシュがどう生きたとか、キーシュの祖先がどうだったかなど、自分の一切に関係がないためか正直な話どうでもよかった。

仲間の安否以外何の興味もなかった。

ーーー

夕陽に空が、地上が染まる。
約4時間という短い時間だったが、目一杯遊びに遊んだ吉川は沈みゆく太陽とそれに光る海を眺めていた。

「ありがとう。突然だったのに来てくれて」

シャワーを浴びて着替えも済ませたメイが吉川の隣に座って同様に夏の終わりを彷彿とさせる景色を見つめ始めた。

「話は聞いたわ。まさか……あんな事になるなんてね」

「……俺ずっとへこんでたんだ。事実が受け入れられなくて……。だから嬉しかったよ。アポ無しとは言え皆と集まって楽しむ事が出来た。疲れたけどな!」

「私も嬉しかったわ。苦労して皆の連絡先集めた甲斐があったわ」

他愛も無い会話。
だが、暫くすると吉川のすすり泣く声が波の音に紛れて聴こえてきた。

「もう……来ないんだろうなぁ……。こうして、全員が集まって遊ぶことが。あんな、……あんな事になっちまったから急遽皆集めたんだろ?せめて……せめて最後にいい思い出を残そうって事で9月に入ったにも関わらず海に来たんだろ?そうだろ!?」

メイは少し戸惑った。
グズグズに泣く男の姿を見るのは好意を持たれた男を振って以来だったからだ。故にそれを思い出させる。

「……私はサークルの人間じゃないから、これから先どうなるかは分からないけれど……これだけは言えるわ。未来はどうとでもなるって」

「どうとでも?俺に何が出来るって言うんだよ……。石井は、山背はもう……帰って来ないんだぞ!?俺みたいな無力な人間には何も……出来ねぇよ」

「でも、だとしても。だからこそ、今レンが動いてくれている」

その間、吉川が一瞬睨んだ気がした。
そこでメイは察した。
吉川が高野に対して抱いている感情を。

「今、レンはアラビアに向かっているわ。何も知らない土地で、友達を助ける為だけに。それがどれだけ大変なことか……想像するのも難しいわ」

「だが、アイツのせいで石井も山背も闇堕ちしちまった……!アイツが居なければこうはならなかったはずだ!」

「それは間違っていないわ。レンがこのサークルに来ることがなければ、少なくともこのような悲劇を迎える事はなかった。だから、彼も責任を感じている……」

メイは自身の記憶を甦らせる。
大会期間中に垣間見た、高野洋平の過去の記憶について。

過ぎてしまった過去は変えられない。

だが。

「レンほどの人間だったらね、本来であれば無数に居る手下に任せて自分は安全地帯で待っていればいいものなのよ。そういう組織はザラにある。でも、レンはどういう訳か自ら前線に赴いて行動しているの。どうしてだと思う?」

「ど、どうしてって……」

メイは迷った。
ここで高野の過去を暴露すべきかどうかを。

「レンはね、過去に過ちを犯した事があるの。決して赦されない過ちを。でも、その過程でレンは強い決意を持ったのよ?」

『光の世界の人間を守る為に闇に生きる。決して闇の世界に光の世界の人間を招き入れる事はしない。許さない。すべての愛する者のために』

「だから……彼をあまり責めないで?レンもきちんと理解しているから。自分のせいでこうなった事をね」

「俺は……どうしたらいいんだ……」

とうとう涙が止まらなくなった。
吉川は優しさを求めてメイに抱き着きたくなったが、メイはするりと身を躱して代わりに彼の両肩を優しく掴んだ。

「一緒に待っていようよ。無事に皆が帰ってくる事を。レンが無傷でこの国に戻ってくる事を」

過去は変えられない。
未来は変えられる。

ハッピーエンドになるもバッドエンドになるも本人次第。
その為の行動をせよとメイは暗に示した。

だが同時に察知してしまった。
吉川が自身に対して好意を持ってしまった事を。
これまでの行動は、落ち込んだ吉川を励ます為の行動だった。そのため、それ以上をメイは求めていない。

吉川は目移りが激しい事でサークル内でもそれなりに話題になっていた。
それが今回になって石井からメイに移った。

勘が鋭いメイはそれを理解するも、応えるつもりは更々無い。
だからだろうか。

彼に対する憐れみという感情が強くなった気がした。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.457 )
日時: 2020/02/17 12:31
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


予言者の回顧録


私は只の相談役でしかなかった。
民の話を聞いて回る内に評判が上がったらしく、当時のカリフ直々に命令を与えてくださった。

『南西の砂漠の果てへと赴き、ウバールの乳香とその住民アアドをイスラム教徒として連れて来ておくれ』

私は命令に従った。
駱駝に乗り、ルブアルハリを延々と歩き続けた。

水も果てた。
私にも限界が訪れた。

死を覚悟した。
そうして、ゆっくりと目を閉じて熱を帯びた砂の上に倒れた。

しかし、私は死ななかった。
通りがかったバダウィーが私を助けてくれたのだ。
彼は言った。

『ここには誰も居ない。去れ』

私は言った。

『ウバールの地とその民を求めにやって来たのだ。それまでは帰らぬ』

彼は言った。

『アアドの人間はもう居ない。みな死んだ』

私は何故かと問うた。
彼は教えてくれた。
それはもう過去の姿だと。
どうしても見たくばシバールという土地を目指せと伝えてくれた。

私は再び旅に出た。
シバールという地を求めて。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.458 )
日時: 2020/02/18 11:23
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


第二の道、力与えし神

紙片の一部の解読に成功した。
その内容は、アードの地を訪れようとした予言者の回顧録だった。

その内容とは、イスラムの指導者に気に入られた回顧録の作者が、信者と乳香を手にアードの地へ行くよう命じられた場面だった。

だが、気になるのはその言語。
どういう訳か、エジプトの古語であるコプト語で書かれていたのだ。
そのせいで、1ページ読むのに途轍もない苦労を要した。

「それがお前の求めていたものか?」

「あぁ。やはり俺の目に狂いは無かった。予言者フードは確かにアードの地を求めにやって来たようだ」

現代語に書き写した紙をくるくると丸め、掌で弄び始めたのはひと仕事を終えたキーシュだ。
ドバイの露天商から交渉を続けて受け取った紙片がまさか自身の先祖に関するものだったとは最早奇跡以外の何ものでもない。

そんな感想を抱きつつ、

「だが、まだ足りない。俺様が本当に欲しているのはこんなモノではない」

「……次は、何処に行くつもりだ?」

薄暗い部屋の中でキーシュの仲間、バラバはごくりと唾を飲み込む。

「本来であれば……ウバールの遺跡に行きたいところだが、どうやら邪魔が入ってきたようだ。ベドウィンのキャンプで各地にバラ撒かれた紙片の続きを探しつつコイツらの迎撃をするとしよう」

キーシュの持つ予言者の回顧録。
それは、完全な状態では無かった。
彼は今1冊の本として纏まっている物を持ってはいるものの、所々のページが存在しない。
曰く、意図的に散逸させたとのことだ。

当然、その理由は未だ分からない。
しかし、紙片の目星は付いている。

「俺様の希望的観測だが、失われた紙片はすべて見つかる。俺様の手元に、"例のレーダー"がある限りはな?」

「だが、見つけたところでどうする?それがお前の野望に直結するのか?」

「さぁてな。まだ分からん。だが、俺様の先祖がどのような道を辿ったか……。それを知る事も野望の1つに入ってはいる」

「仲間全員が納得するのか?それで誰かが死ぬような事になったら……。それでもいいのか?」

バラバの懸念に、キーシュは小さく笑う。
いつまで経ってもその心配性は治らないものだと懐かしい記憶を思い起こさせながら。

「何を言っているんだ?俺様に力を貸した神が居るんだ。だからこそ今回行動を移した。いや、移すことが出来た。違うか?」

その言葉を聴いて、バラバは黙り込んでしまった。
その恐ろしい力の片鱗を垣間見た彼だからこそ、その言葉の意味が分かるのだ。

「今こそ怒りの鉄槌を下ろす時だ。全世界の愚かな人間共に……俺様たちの先祖が受けた苦しみを受けてもらうぞ」

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.459 )
日時: 2020/02/19 13:36
名前: ガオケレナ
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


朝になって叩き起されると、すぐ様出発するから準備しろと何の予告も無しに言われた。
そのせいか、準備が遅いとイクナートンに怒られもした。

そんな気分の悪い1日の初めを迎えて、高野洋平はイライラしているのが丸わかりな顔で行きとは違う車になっているジープに乗る。
勿論そこにはレイジとミナミ、そしてイクナートンの姿が。

「……あの、大丈夫ですか?」

ピリピリとした空気を感じ取ったレイジが、高野に向かって声を掛ける。

「気分が優れないのですか?」

「別に、何ともねーよ……。クッソ、めんどくせぇ……」

高野はボソリと呟きながら窓の景色を眺める。
砂と岩石の山と時折建つ店と適当に生えている植物以外何も無い光景だ。

すると退屈でもしたのか、高野はスマホをいじり始めた。

「何かありました?」

「そうじゃねぇよ。とりあえず応援を呼ぶ。今この段階で俺たちはゼロットと戦うのが目に見えているんだ。俺たち3人だけじゃ幾ら強くても無謀すぎやしないか?」

確かに尤もだが、ここは海外である。
通信など出来る訳がないとミナミが2人の会話に口を挟んできた。

「どうやら他人に迷惑を掛けているという自覚があるみたいでな……Pocket WiFiを貸してくれた」

「あぁ。本当に申し訳ないと思っているよ。どうやら飛行機がお好きなようだからな」

盗み聞きしていたイクナートンが皮肉を込めた、全く謝罪の意思がない謝罪を繰り広げる。
だが、高野も高野でこんな所で面倒な口喧嘩はしたくなかったのか、軽いため息をわざとらしく吐くのを最後に車内は静けさに包まれた。

(ひとまずハヤテとケンゾウに連絡を入れてみよう……。簡単な事件の概要と、要件だけ伝えればあとはあいつらが勝手に理解し、応えてくれる)

彼らに対し、メッセージを送信してスマホをしまうと、まだ少し残っていた眠気を体から追い出すために高野は軽く目を閉じた。

しかし、運命というものに悪戯は付き物である。
車が曲がりくねったかと思うと停車した。

「お前たち、一旦降りてくれ。食糧の買い出しだ」

またも、高野の眠りはイクナートンに邪魔をされた。

ーーー

今週末に控えていたサークルの旅行が延期になった。
その報せが吉川裕也の元に届いたのは、バイトの休憩中の事だった。
薄々予想はしていたが、改めて公式の情報が届くと落胆してしまう。

恐らく、昨日の海での集まりの段階でほぼほぼ決まっていた事だったのだろう。
そもそも、宿の手配をしていたのが今や日本を離れてテロ活動をしている石井真姫なのだから当然だ。

複雑な感情を心に溜め込みながら吉川はスマホを叩き割りたい気持ちを抑えつつ仕事場へと戻って行った。

ーーー

とにかく驚きの連続だった。
まず、日本ではインドカレー屋でしか見られないナンがずらっと並んでいた。
こちらの国の料理には欠かせないのだろうひよこ豆が袋に入って売られていた。

キロ単位で。

「物価安くねぇか!?こんなモンなのか?」

「日本とは大違いですね〜。飲み物のラベルもほら、紙ですよ。しかも多言語まで書かれていて本当に海外にいるんだと思わせてくれますよね〜」

「う〜ん……お菓子無いのかなぁ。なんか甘いのが食べたい」

「悪いがお前はあんま喋るな」

高野は日本のテンションのまんまでいるミナミに注意を促した。
サウジアラビアと日本では女性の扱い方がまるで違う。
ましてや、家族でもない男と共に歩き話している姿を周囲に見せるのは向こうの事情からして良くないらしい。と、言うか本来は禁止されている。

「お菓子ならありましたよリ〜ダ〜っ!ほら、砂糖を固めたものだとか……」

「ちょっとそういうのは違うかな〜」

「お前らいつまで居るつもりだ?早く乗れ。行くぞ」

荷物を車に詰め込んだイクナートンが彼らを急かす。
レイジはその言葉に急いだせいでその辺にあった日本のものと比べると甘すぎるチョコレートと、ミントの主張が激しいガムを買うと車に飛び乗った。

「ひとつ、お前たちに今日これからの予定を伝える」

助手席に乗ったイクナートンが後部座席に座る3人にはっきりと喋り始めた。

「今日の夜頃かな。その時までには空軍基地に到着するつもりでいる。その時まではこの車の中でひたすら移動すると思ってていい」

「聞いてた予定と随分違うようだが?大丈夫なのか?」

「……それでこの後は4時間から5時間の間にベドウィンの中継地で休憩する。それまでは好きにしていろ」

高野の不満をまるで無視したイクナートンだったが、ここに来てやっと今後の行動が見えてきた。
それでも4、5時間はこの車の中に居ることになるが、寝るなりポケモンを育てるなりの事ぐらいならば出来る。
高野は今度こそは暫く邪魔が入らないと思うと、安心して眠りに入った。


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