二次創作小説(新・総合)

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ポケットモンスター REALIZE
日時: 2020/07/18 13:54
名前: ガオケレナ (ID: 0.ix3Lt3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12355

◆現在のあらすじ◆

ーこの物語ストーリーに、主人公は存在しないー

夏の大会で付いた傷も癒えた頃。
組織"赤い龍"に属していた青年ルークは過去の記憶に引き摺られながらも、仲間と共に日常生活を過ごしていた。
そんなある日、大会での映像を偶然見ていたという理由で知り得たとして一人の女子高校生が彼等の前に現れた。
「捜し物をしてほしい」という協力を求められたに過ぎないルークとその仲間たちだったが、次第に大きな陰謀に巻き込まれていき……。
大いなる冒険ジャーニーが今、始まる!!

第一章『深部世界ディープワールド編』

第一編『写し鏡争奪』>>1-13
第二編『戦乱と裏切りの果てに見えるシン世界』>>14-68
第三編『深部消滅のカウントダウン』>>69-166
第四編『世界終末戦争アルマゲドン>>167-278

第二章『世界プロジェクト真相リアライズ編』

第一編『真夏の祭典』>>279-446
第二編『真実と偽りの境界線』>>447-517
第三編『the Great Journey』>>518-

Ep.1 夢をたずねて >>519-524
Ep.2 隠したかった秘密>>526-

行間
>>518,>>525,

~物語全体のあらすじ~
2010年9月。
ポケットモンスター ブラック・ホワイトの発売を機に急速に普及したWiFiは最早'誰もが持っていても当たり前'のアイテムと化した。
そんな中、ポケモンが現代の世界に出現する所謂'実体化'が見られ始めていた。
混乱するヒトと社会、確かにそこに存在する生命。
人々は突然、ポケモンとの共存を強いられることとなるのであった……。

四年後、2014年。
ポケモンとは居て当たり前、仕事やバトルのパートナーという存在して当然という世界へと様変わりしていった。
その裏で、ポケモンを闇の道具へと利用する意味でも同様に。

そんな悪なる人間達<ダーク集団サイド>を滅ぼすべく設立された、必要悪の集団<深部集団ディープサイド>に所属する'ジェノサイド'と呼ばれる青年は己の目的と謎を解明する為に今日も走る。

分かっている事は、実体化しているポケモンとは'WiFiを一度でも繋いだ'、'個々のトレーナーが持つゲームのデータとリンクしている'、即ち'ゲームデータの一部'の顕現だと言う事……。




はじめまして、ガオケレナです。
小説カキコ初利用の新参者でございます。
その為、他の方々とは違う行動等する場合があるかもしれないので、何か気になる点があった場合はお教えして下さると助かります。

【追記】

※※感想、コメントは誠に勝手ながら、雑談掲示板内にある私のスレか、もしくはこの板にある解説・裏設定スレ(参照URL参照)にて御願い致します。※※

※※2019年夏小説大会にて本作品が金賞を受賞しました。拙作ではありますが、応援ありがとうございます!!※※

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Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.522 )
日時: 2020/07/16 23:42
名前: ガオケレナ (ID: OSvmcRAh)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


それから四日後の朝。

ルークは駐車場に自慢の車のフードを開いては中のエンジンを凝視している雨宮を見つけた。

「よう。どうだ、調子は」

「当然だが全然違うな。タイヤひとつ変えただけで車の止まり具合が全然違う」

ルークは車を持たないので彼の気持ちはいまひとつ分からないが、だとしたら何故今度は違う所を訝しげに見ているのか。

聞いてみると、

「いや、さっきオイルを足していたんだが……特にトラブルは無いのだが不思議と見とれていてな」

「機械にか?よく分かんねぇな」

「ただの機械と同じにすんな。コイツは心臓だぞ?」

雨宮は誇らしげに言いながらバン、という激しい音と共にボンネットを閉めた。

「お前こそどうした?何か用か」

「あぁ。またリョウを連れてドームシティに行きたいんだが……此処から行くとちょっと面倒でな」

「要するに足が欲しい訳か」

「お前もたまにはどうだ?最近ポケモン使ってねぇだろ」

というルークの誘いを空を見ながら彼は少し考えた。
ルークの言う通り、雨宮は例の大会以降ポケモンをまともに操っていなかった。
長い間療養していたという側面もあるのだが、空間を伴うポケモンバトルとは日頃の慣れも非常な重要な要素である。

ルークはその点も案じていたのだ。

「どうかな……。だが、これからもあるのか?あんなふざけた戦いが……この後も」

「あるだろ。現にジェノサイドの野郎が疲れ切ったふざけたツラして戻ってきたろ?」

今思い出してもイライラする。
ルークは高野洋平の憔悴した顔に嫌悪感を抱かずにはいられない。

「こうして基地に居ても奴と鉢合わせしそうで嫌だ。って訳でいつものメンバーで行こうぜ?」

「奴は今大学だろ……。でもいいや。折角だし行こうかな」

ーーー

度々渋滞に揉まれること40分後。

群青色のスポーツカーは"桜ヶ丘ドームシティ駐車場"と立てられた看板の傍を通り抜けて若干埋まりつつある駐車場に無事に停まる。

「やっぱダメだ。この街は好きになれねぇ……走っててイライラするわ」

「まぁそう言うなよ。野猿街道なんて夜中以外は混んでるもんだろ」

車から降りてドアを閉めて早々に雨宮が不満をあらわにする。
リョウはそんな二人の会話がつまらな過ぎたのか、はたまたこの会場が好きなのか、一目散に駆けてはその姿を見失わせた。

「そんで?今日はここで何を?」

「そうだなー……俺とバトルするか?」

「はぁ?」

雨宮は間抜けな調子で叫ぶ。
チームメイトで且つ実力も上なルークが彼と真面目に戦うのは滅多に無いし、かと言ってそういう仲でも無かったのでその提案は意外だった。

「正直此処に来たからって満足のいくバトルは中々出来ねぇもんだ……。見ろよ」

雨宮はつられてドーム周辺の景色を見る。
しかし、まだ昼にも達していないせいか人気は少ない。
ルークが何を言っているのかよく分からない。

「ここは学生の聖地だ。ポケモンを使っていない人でも此処では外食を済ます事が出来るから尚更学生が多い。故に"ガチな奴"も中々居ねぇもんだ。ライトな層が多いからそういう意味では張り合いは無いかもな」

「だったら何で退屈な運転させてまで連れて来た?」

「たまーにお前深部だろって言うような奴も紛れて来る。そういうのと戦えるところが利点かな。ほら、深部の人間と戦うと大体組織絡みになるだろ?」

街中で突然絡まれない限り、深部の人間は他の深部の人間と中々戦う事が出来ない。
それは言い換えてしまえば組織間抗争の一因にもなり得てしまうからだ。

「ノーリスクで戦えるって事か……」

「そういう事だ」

そんな二人の会話とは裏腹に、リョウは早速周りの学生を巻き込んでバトルを繰り広げている。
本当に同じ深部の人間かと思うほど楽しげに、大はしゃぎで戦っているせいで目立ちがちだ。
むしろ、それを狙っている節もあった。

ーーー

「っつー訳だ。一勝負付き合ってもらうぜ」

「あんま乗り気じゃねぇんだけどなぁ……」

ルークと雨宮の二人は20分ほど経ってやっと空いたコートに立った。

「試合形式はどうする?一対一?三対三?六→三か?」

「三三にしてくれ。後は面倒だ」

「オッケー!」

そう叫んだルークは同時にフレフワンを繰り出した。
それを見た雨宮は軽くため息を吐く。

「まーたそれかよ……」

'トリックルーム'の始動役。
つまりそれは、背後にエースが控えているという事だ。

雨宮はそれを見越してハガネールの入ったボールを投げる。

「これってよぉ……意味あんの?」

「あぁ?」

「仲間な訳だから使うポケモンも知ってるだろ?対策しちまえばつまらないバトルになっちまわねーか?」

「それは……工夫次第だ」

ハガネールはメガシンカをせずに突っ込んで来る。
見下ろしていた首を突如として天を仰いだかと思うと突然ジャンプをした。

'ヘビーボンバー'だ。

400kgという重量を誇る巨躯がちっぽけに見えてしまうフレフワンに襲いかかる。
防御が半端なフレフワンでは"きあいのタスキ"でも無い限り一撃で沈む事は間違いないだろう。

しかし。

直前でその技は外れてしまう。

「!?」

「早速上手くいきやがったな……」

技が当たる直前にチカチカと妙な光が灯ったようにも見えた。
そもそも、'ヘビーボンバー'の命中率は100。
相手が余計な事をしない限りは外れない技だ。

「"ひかりのこな"か……ふざけたチョイスだな?」

「だが実際翻弄されてないか?」

そう言っている内にフレフワンの'トリックルーム'が展開されていく。

二人と二匹を包むように、空間が捻じ曲げられて不可思議な様相を見せてゆく。

その直後にルークはフレフワンをボールへ戻した。
唯一の欠点。退場技が無い。

代わりに出てきたのはランクルス。
恐らく今回のエースだ。

「ランクルスだァ?お前フェアリー統一じゃ無かったのか?」

「それは昔の話だ……今の俺なら何でも使うぜ?」

結果的に互いの手持ちを把握し切れず、妙な読み合いを展開して予想外に進むバトル。

長丁場になるだろうと一人呟いたリョウは少し離れた位置に置いてあるベンチに座って二人のバトルを眺めようと腰を降ろそうとしたその時だった。

「あの……すいません、ちょっと……いいですか?」

それは突然だった。
リョウは、声も顔もその姿も知らない、全くの他人から声を掛けられた。

「いいけど……どちらさん?オレはー……ちょっと君を知らない気がするんだ」

「あ、あのっ!多分お互い知らない人同士だと思いますが……いや、わたしは知っているのですけれど、ね……」

その人は少女だった。
まだ真新しさがにわかに残っているところを見るに、今年入学した歳なのだろう。

「えっと……高校生?」

「はい!保科ほしな萌花もえかって言います」

「あぁ……名前ね」

リョウは何が何だか分からなかった。
知らない人に声を掛けられたかと思うと一方的に自己紹介されたのだから。
とにかく反応に困る。

「あの……お願いがあるのですが、よろしいでしょうか?」

はじめは下手な逆ナンかと思った。
だが、誰も予想など出来なかった事だろう。
ここからひと騒ぎ起きるなどと。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.523 )
日時: 2020/07/17 20:58
名前: ガオケレナ (ID: OSvmcRAh)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「ランクルスっっ!!'きあいだま'だッ!!」

ルークは勝ち誇るように叫び、呼ばれたポケモンは即座に動く。

全身に力を込め、長い腕の先に一点へと集められ、凝縮された"気"が一つのボール大の大きさになると途端に打ち出された。

まるで技のスピードにもトリックルームが掛かっているのではないかと錯覚してしまうほどだ。

巨大が故に隙だらけのハガネールにその技はぶち当たる。
直撃の余波として妙なエネルギーの残滓がその周囲に吹き渡った。

「っざけんなァァ!ハガネールの特性は'がんじょう'だっつーの!!」

乗り気でなかったはずの雨宮が勝負に燃えて口調も乱暴になってゆく。
深部の人間の性とでも言えるものだろうか。
結局のところ、どんな人間でも極みに至ってしまえばその根底には万人に共通する"思い"があるのだ。

ポケモン勝負が好き。
それ故に彼らは上位とも言える立ち位置を手にしたのだ。

「やり返せ!'ヘビーボンバー'!」

再びハガネールは地上に向けて小さく、軽くジャンプする。
動きの鈍いランクルスではそれを避ける事は出来ない。

地響きのような音を鳴らしてハガネールはフィールドごと潰す。
ランクルスは戦闘不能。
このような状況でも死なないという点が不思議でならない。

そう思いつつルークはポケモンをボールへ戻した。
代わりにニンフィアを出す。

「結局フェアリーかぁ?」

「'でんこうせっか'」

「チッ……」

その一言で雨宮のポケモンも倒れる。
雷光の如き動きでニンフィアはハガネールに一撃を込めた。

次に彼が出したのはドサイドンだ。

「お前って重量級好きだったっけか?」

「俺は特に縛りはしねぇよ。偶然だ」

と言いつつこれまでに使ってきたポケモンは二体とも地面タイプである。
恐らく練習も兼ねていたのだろう。

「'ハイパーボイス'」

「'じしん'」

トリックルームはまだ続いている。
先に動いたのはドサイドンだ。

意図的に揺れる地響きと衝撃にニンフィアは翻弄される。
動くはずだった足は止まり、目眩を起こしたようにフラっと倒れ込んだ。

「お?一撃か?」

「んな訳あるか。急所に当たらなければな」

ルークの予想通り、ニンフィアはすぐに立ち上がると負けじと衝撃波を放った。
本来であればノーマルタイプの技だが、

「やっぱり'フェアリースキン'かよぉぉっっ!!」

威力が増幅された不可避な技にドサイドンは飲み込まれる。
だが、堅いのはお互い様のようでそれだけでは倒れない。

トリックルームが残されたターンはあと1つ。
つまりそれは、ドサイドンが先に動く事が確実だという事だ。

「'じしん'……」

「飛べ、ニンフィア!避けるんだっ!!」

「と、見せかけて'がんせきふうじ'だ!」

ニンフィアが飛んだ方向に腕を向けていたドサイドン。
穴の空いた掌から岩が数個打ち出された。

動きを封じるかのように視界を遮るその岩は、

「'ハイパーボイス'だ」

実体の無い衝撃の前に粉々に崩れ去る。
その技は見事なまでにドサイドンの元へと届き、突き刺さり、遂には倒れるに至らせる。
しかし、ドサイドンの技も終わっていなかった。
タイムラグで発射された幾つかの岩の塊はニンフィアの四肢に直撃し、痛みに悶えた。

「あと一匹か……アギルダー、行けっ!」

雨宮は最後のポケモン、アギルダーを場に出した。
相手は虫の息にして素早さの下がったニンフィア。

「'でんこうせっか'」

「'むしのさざめき'」

トリックルームは終わった。
しかし、先制技は健在だ。

ニンフィアの性格の下降も相まって決して高いとはいえない威力だが、その体当たりは素早いアギルダーを捉える。
だがそれで見逃す雨宮とアギルダーではない。
ゼロ距離からの音波を発した特殊技が残り少ないニンフィアの体力を削り、

「……やられたか」

「お前のニンフィア化け物だろ……。残りはフレフワン……だが、」

ニンフィアは静かに倒れる。
入れ替わるようにフレフワンが再び舞い戻った。

その持ち物は"ひかりのこな"。
技が当たるかどうかは運試し。

「'むしのさざめき'!」

果たして、広範囲に広がる音技はフレフワンの耳を刺激してよろめいた。

「よし、まずは当たったな!?」

「'ムーンフォース'」

フレフワンが祈るようなポーズをすると、はるか上空にうっすらと視える月が一瞬、ときめいた。

そして。

バトルコート全域を包むようにして、眩しい光線が降り注いだ。

「はあっ!?こんなん避けられるかっつーの!!」

速いアギルダーでも全方位から迫れば余地はない。

眩い光に包まれたアギルダーはタスキを失ったせいでそのまま倒れた。

「対戦ありー」

「チートかよってレベルだな……」

やや不満げな雨宮は呟きながらアギルダーをボールに戻し、こちらの試合を眺めていたはずのリョウを確認すると、

「テメェェッッ!!試合そっちのけでナンパかぁ??おぉん!?」

せめて自分たちの戦いを参考にするものかと内心感心しかけただけにいらぬ苛立ちを覚える雨宮。

ダッ、と砂埃でも立ちそうな勢いで走り抜ける。

「ちっ、違う違う!!逆!むしろオレが声掛けられたからっ!!」

と、相手が見知らぬ人間だけに必死に説明するリョウ。
そうしている内に怪しいものを見る目付きでルークも戻って来た。

「……本当に知らねぇのか?」

「知らないって!」

「その割には楽しそうに会話してなかったか?」

「相手へのペースってものがありますしね〜」

無理に作り笑いをしているリョウだが、相手の少女はどうも自分を見ているらしかった。

「あのぉ……あなたがルーク……さん?ですか?」

「何で俺の事を知っている?」

「ポケグラの模様をテレビで見ていましたっ!」

「あぁ……」

しくじったと彼は思った事だろう。
夏に開催された大会は地上波で放送されていたらしい。
その時にテロップか何かで自分の名前、それもエントリー時のものが流れていたようだ。
深部の人間からすれば対象者を判断するいい材料以外の何物でもない。

「やられたな……」

「えっ?何が?」

「何でもねぇよ」

ルークは改めて少女を見た。
薄い橙色、眉が軽く隠れる長さの前髪、しかし肩にかかるほどにも満たない全体的に短い髪型だ。

その目は大きく裏表が無さそうな正直者を表すように眩しく、高校の制服は新しさがまだ残っていた。

総じて元気で活発そうな、純粋そうなイメージを持ちそうな子であった。

「保科萌花って言います!」

「俺はルーク。こっちは仲間の雨宮、そしてこっちのナンパかましてたのがリョウだ」

「ちょ、オレはナンパしてないって……」

冗談のつもりだったのだが、勝負の結果に不満を少なからず抱いていそうな雨宮の鋭い視線と殺意を感じ取ったリョウは、彼の本意に気付く余裕がなかった。

「それで?何で俺を知ってまで声を掛けたんだ?」

ルークはつまらない冗談のやり取りを強制的に止め、保科に問いかける。

「は、はい!実は……ちょっとお願いがありまして……」

「それは俺じゃなきゃダメか?」

「はい!どうしても強い人じゃなきゃ駄目なんです……」

意図が読めない。
そのせいで、迂闊に行動に移すことが出来ない。

敵対心を抱かれている別の深部組織のスパイの可能性が頭に浮かんだルークは、

「どうする?」

雨宮に察しろと言いたげな視線と共に雨宮に投げる。

「どうしろって……基地に連れてきゃいいんじゃねーの?」

「お前さぁ……」

ルークはそうじゃねぇと大きくため息を吐いた。
しかし、雨宮にも考えはあるようで、

「仮にスパイだとしてもだ。基地に放り込んで人質にしちまえばいいんだ。その間にお人好しな性格のリーダーに投げちまえばいい。洗脳させてこっちの陣営に引き込んじまえ」

と、少女に対して聴こえないように、回れ右をしてルークに小さく耳打ちをした。

「お前……えげつない事こんな短時間でよく思いつくなぁ?」

面倒な役回りは勘弁なルークはその意味では思いが一致している雨宮の意見には賛同気味だ。

「なぁ悪い。決してヤバい意味では無いから誤解しないでもらいたいんだが……」

仮にスパイでなくとも、ルークより強い人間は他にもいる。
そういう人たちに任せたかった彼等は早速行動を開始する。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.524 )
日時: 2020/07/18 02:30
名前: ガオケレナ (ID: OSvmcRAh)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


「それで?」

赤い龍のリーダー、ミナミはしかめっ面をして基地の出入口を塞ぐようにして仁王立ちをしていた。
連絡を受けてルークらの帰りを待っていたのだ。

「あー、だからなァ?この子は訳あって強い人を探しているらしい。誰か紹介するなり話をするなり何かしろ」

「それがウチに頼む態度なの!?」

本気でダルい。
何でこんな先の見えないやり取りをしなければならないのかとルークは酷く困惑する。

「フツーに考えろよ。得体の知れない男共に囲まれてんのと、同じような人と話すのだとどちらか楽って話だ。圧倒的に後者だろーが」

「……そうじゃなくてぇ、無言で基地から離れたり突然素性の知らない人を連れて来るところが……」

「あーハイハイ。サーセンしたぁーってな」

雨宮がミナミの言葉を遮り、叫ぶ。
彼は中途半端に停めてきた車を駐車場に移動させる為にそちらへ向かい、その隙にルークも足早に自室のある方へと去っていった。

残ったのはミナミとリョウ、そして連れて来られた保科の三人だ。

「えーっと……。ごめんね?名前はー……」

「保科です。保科萌花」

「じゃあ"もえちゃん"で!」

「あのー、オレもそろそろいいっすよね?」

と、リョウは別の棟の窓を指した。
戻らせてくれ、と暗に示している。

「アンタはダメ。二人は勝手にどっか行っちゃうし、一番はじめに話しかけられたのもアンタだって言うじゃん?とにかく……何が起きているのか話してもらうわよ?」

「うわぁ……逃げればよかった」

「もう一度言ってみて?」

ゴメンナサイナンデモナイデスと小声かつかなりの早口で念仏のように唱えるリョウ。
三人が今話し合いのために談話室へ行こうと入口を潜ろうとすると、

「あっ、」

一人の新たな影が迫って来た。

「レン。おかえり」

「お、おう。ただいま……」

大学の講義を終えた高野洋平が帰って来た。

「火曜ってサークル無かったっけ?行かなかったの?」

「あんな事があった直後だ……気まずくて行けねぇよ」

さらっと言うと三人の隙間を抜けてそそくさと建物の中へ入ってゆく。

異国での一件以降、彼は元気が無かった。
この世界に通じていない人間が「あの人は嘗てこの世界で最も強い人だったんだよ」と知らされると恐らく誰もが驚く事だろう。それ程までに面影はもう無かった。

ーーー

基地に戻ってから三時間程が経過した。
ルークと雨宮が一つの部屋に集まってゲームをしているのは、ついさっきのバトルが少なからず影響しているのだろう。
時折会話を挟みつつポケモンの育成に励んでいた。

時計を見れば十五時を過ぎたところだった。

ノックもせずにリョウが入って来る。

「もう〜……勘弁してくれよ〜〜ルークぅ……雨宮ぁ……」

ハットが頭からズレた状態で、長時間重い荷物を肩に背負った後みたいな顔をした彼が開いた扉に背中を預けて寄りかかった。

「お前どこに居たんだ?」

「どこに居たじゃないよずーっと話してたんだよ!!さっきの女の子とさ!!」

「へぇー……」

既に二人の興味は失せていた。と、言うより目の前の画面に移っている。
リョウは、なんて奴等だと内心で思いつつハットの位置を元に戻す。

「ミナミちゃんが色々聞いてくれたよ。何処から来たのかとか、何を求めたりとかさ」

「あっそ」

「……」

そんな単調な返事しか出来ないのならばいっその事無言で聞いていてくれと言いたくなる気持ちを抑えつつ、リョウは続けた。
ちなみに彼の体勢がそのままなので、ドアは開けっ放しである。

「保科萌花……。言いにくいな、もえちゃんでいいや……。その、もえちゃんは都内の高校在住の一年生で、なんて言ったっけなー。ちょっと難しそうな名前の学校の……えっと……稜爛高校!そこの一年生なんだとさ!」

「なんだと?」

ルークは反射的にゲームを操作する指の動きを止め、見開いた目でリョウを見た。

「オマエ、今何て言った……?」

「えっ、だから……りょうらん高校って……」

「稜爛高校だと?俺の知っている制服じゃなかったぞ?」

「えっ、そこォ!?」

3DSを閉じてルークは立ち上がった。
口元を手で押さえて、あたかも悩む仕草をしつつ。

「制服のデザインが変わっただけか……?いや、言っても2年だろ……?たまたま変わっただけか」

「あのー、ルーク?どうしたの?」

「俺、その高校出身だわ」

思わず雨宮も手を止めた。
リョウも間抜けな顔を曝け出して驚く。

「え、ええぇぇぇっっ!?」

「だが妙だ……。奴は一年だろ?俺は二年前に卒業している。何処で知り得たんだ?」

「あっ、それに関しては〜……」

リョウが三時間掛けて得た情報のため説明を始めた。

稜爛高校には夏の大会にも出た程のポケモンの強い同好会があるのだという。
"ある理由"でそこを訪ねた保科が、『ポケモンの強い人は誰か』を訊いたとのことだった。

「そこの会員曰く、『それはジェノサイドだ』って言ったんだが、もえちゃんはそんなの知る訳がない。明確な答えを出せなかった会員たちは悩んだ挙句、そんな彼と大会時同じメンバーだった女の子?とルークの名を挙げたんだとさ」

「おいちょっと待て。……じゃあ何だ?本来であればジェノサイドの野郎が適任だったって事か?」

とんだとばっちりを食らったようだった。
本当にポケモンの強い人を求めるのならば高野の元へと行けばよかったのだが、どういう訳か、果たしてどのような手がかりを掴んだのか、こうして自分たちの前に姿を現した。

「なんだそりゃ……。それで?目的は?」

「目的はー……。何だかなぁ……。もえちゃんが持つ、ポケモンの中古ROMの元の持ち主を探して欲しいとかで……」

「はぁ?それ強い弱い云々関係ねーじゃん!!」

決してリョウは嘘を言っている訳ではない。
言われたこと、聞いたことをそのまま彼らに伝えているに過ぎないのだ。
なので、ルークが怒りや不満を示しても、リョウにとってはどうしようも無いしどうも出来ない。

「でも実際にもえちゃんはそう言ってるぜ?」

「おい、それって持ち主を探しに色々出掛けるってことか?」

珍しく雨宮が口を開く。

「それで車出せなんて言っても……無理だからな?」

「そこまでは言ってねぇだろうが」

長時間移動するとなると車の負担も掛かるしガソリン代などの金も掛かる。
持ち主ゆえ雨宮は少し嫌な予感を覚えたのだ。

「んで、それからお前はどうしたのさ?」

「オレ?オレはミナミちゃんが戻っていいって言うから今此処に来ただけさ?その後は二人で少し話をしたらしいぜ?」

「そぉかよ……」

ルークは少し考え、遥か彼方の景色を見つめるような、遠い目をして軽く息を吐く。

「よし、俺も色々尋ねたい事があるしな……。少し話でもするかな」

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.525 )
日時: 2020/07/18 13:52
名前: ガオケレナ (ID: 0.ix3Lt3)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


少年とも青年ともいえる男は確かに虜になっていた。
学のない彼が、演奏されている曲が何なのかまでは知らないし、使われている楽器がヴァイオリンでなければ答えられなかっただろう。
音と音楽の違いすらも知らないし理解しようともしなかった。

しかし。

何も知らない人間であっても。
何も知らないからこそ。

予備知識なく、ただ純粋に音楽に感動する事が出来るのだ。

半開きの扉という狭すぎる入口を恨んだ。
出来ればもっとはっきりとその世界が見たい。
自分の目の前で聴いていたい。

だが、自分のような爪弾きをされた人間が忍び込めば、たとえ望んでいなくとも他者の世界は簡単に壊れてしまう。今までに何度もそんな光景を見てきた。

だから隙間からじっとして見ることしか出来なかった。

もしもその手の世界に詳しい人間がいたとするならば、例えば音楽の教師がその場に居れば仰天していた事だろう。
使用楽器はヴァイオリン。
奏でている曲はアルカンジェロ・コレッリの『ラ・フォリア』。

かなり難易度の高いものを、一人で悠々と奏でていく。それはまさに狂気だ。

不思議な音色だった。
緩やかに優しく包み込むような柔らかさを掻き立てる反面、"フォリア"の名の如く荒々しく騒がしい。
聴いていて心地よくなると共に不安を抱きそうな、何とも言えない思いを抱かせる。

うっとりと聴き惚れていたせいだろうか。
扉を押さえていた手に力が篭ってしまい、その意に反して徐々に、気付かぬままに二人の間に築かれていた境界線が消されていく。

「あっ、」

青年は体のバランスを崩し、音楽室へ倒れるように侵入してしまった。

異音に気が付いた少女はピタリと演奏を止めると、静かにゆっくりと振り向いた。

「だ、誰……?」

くっきりとした二重、大きな瞳。
その目は琥珀色に輝いていた。
外国の出で立ちを思わせるも、鼻はそこまで高くない。
まさに居るだけで浮きそうな、異質な姿だ。

追及されることを恐れた青年はそのまま走り去ろうとバタッと上履きから軽やかな音を発するも、

「ちょっと待ってよ。聴いていたんでしょ?いいよ!もう少し聴かせてあげる」

てっきり授業を抜けている事を厳しく言われるものかと思ったが、そういう訳ではないようだ。
見れば少女も同じ制服を着ているあたり、教師ではなく生徒のようだ。
つまり、彼女も授業を抜けている。

終始目を丸くしていた青年だったが、もうしばらくそこに留まることを決めた。

それが、始まりだったのだから。

Re: ポケットモンスター REALIZE ( No.526 )
日時: 2020/07/20 22:20
名前: ガオケレナ (ID: InHnLhpT)
参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no


Ep.2 隠したかった秘密

7日の早朝。
珍しく早起きできたルークは、涼しい風を浴びに部屋から外へ出た。

だが、予想以上に10月の朝というものは肌寒いものであり、これといって特にやる事がなければ屋内に戻るつもりであった。
彼は朝の日差しをゆっくりと浴びるような性格ではない。

そこに、保科萌花さえ居なければ。

「よう。お前も起きてたのか」

ルークは団地の敷地内にちょこんと設けられた公園内で、背伸びをし腕をうんと伸ばしながら日光浴をしている彼女を見つけ声を掛ける。

「おはようございます!本来は学校のある時間ですからねっ!」

その発言といい、彼女の身なりといい、ルークからすると怪しい点しか浮かんでこない。
なので、思い切って彼は尋ねた。

「昨日少し話をしたつもりだが……まだ分からねぇことがあるんだ。お前、学校は?」

「……」

一転して彼女の表情が曇った。
恐らく言いたくない事の一つ二つがあるのだろうが、ルークからすればスパイの可能性のある人間でもあるのだ。相手の心境などを気遣う余地は無い。

「行ってないんです。もう……何日も」

「それは何故だ?何かやましい事でもあったのか?」

「いえ……そんな事では……」

俯きながら否定はするも、嘘であることがバレバレだ。
こちらを見ようともしないし、人に聴かせる事を念頭に置いた声色でもない。

「大体なんだよその髪……。染めてんのかよ?それで注意とか受けねぇのかよ。戻せ、それくらい」

特に目がいくのが彼女の髪色だった。
光の加減によっては白や銀髪にも見えなくもない薄い橙色。
世間的に見ても珍しい色だ。

「あの……これ、信じてもらえないと思うんですけれど……地毛なんです」

「はあっ!?」

これも嘘なのだろうか、とルークはまたも疑った。
相変わらず目は逸らしっぱなしだが、だとしても嘘をつくメリットが無さそうにも見える。
いたずらに不信感が募るばかりだ。

「これのせいで何度も嫌がらせを受けました。学校からも注意を受けました……でも、事情を話したら特別に許してくれたんです」

「だとしても……かなり目立つだろ?」

「はい……」

ルークの過去にも似たような境遇の人間が居た。
あまりにも偶然が重なり過ぎて出来過ぎた話のようにも見えるし、気持ち悪くもなってくる。

「まぁいい」

これ以上プライベートな話は望めないとふんだルークは、

「昨日あの後にリーダーや仲間と少し話をした。……なんでも、探しものがあるんだってな?」

本題へと入った。
一瞬身構えたようにも見えた保科だったが、途端にハキハキとしだす。

「は、はいっ!人を探しているのでどうしても時間は掛かってしまう分迷惑をかけてしまって申し訳ないのですが……」

「ンな事はどうでもいい。問題は何処まで行って何をするかだ。それによっては仲間の動かし方も変わる」

「……と、言うと?」

「車で行くかそれ以外で行くかだ」

ルークの脳裏に、雨宮のスポーツカーがよぎる。
目的地にもよるが、彼の速い車ならば早く済ませそうでもあるし、人員も変わってくる。

だが、彼の中では早く終わらせたい。

その一心しかなかった。

ーーー

「つー訳で車出してくれ」

「嫌だよ。何で俺が……?」

朝食を食べに来ようと食堂に降りてきた雨宮にルークは頼み込むも、秒で拒否される。

「本当だったら組織の人間何人かで行きてぇよ?俺としても。だが、そうはいかねぇだろ。この組織も暇そうに見えて小競り合いかましてるんだし、それならお前の車に四人まで乗っけて戦える人間の最低限だけ確保しようってな」

「結局は都合のいい足が欲しいだけじゃねぇか……」

雨宮が本気で嫌そうな顔をするあたり、協力したいとは思っていない事が明白だ。
確かにルークにとっては便利な交通手段が欲しかったのはある。

だが。

「あー、分かった。じゃあ協力してくれたらサーキット連れてってやる」

「はぁ?」

「四人で行動する途中でも、終わった後でもいいからサーキットで走ってこいよ」

「ふっざけんなよ……だったら俺が勝手に行くわ」

「費用は全部出すぜ」

「なに?」

「それだけじゃねぇ……保科の探しもので費やした交通費……ガソリン代から高速代その他諸々……全部俺が出す。これでどうよ?」

甘い誘惑でしかない。
しかし、雨宮からすると、一切金の掛からない旅というのも悪くない。
自分は好きな運転だけしていればよいのだから。

「つまり……テメーは車走らせてろ、って言いてぇのか?」

「そうだな。自分以外に三人居て多少は重いだろうが……荷重移動を駆使出来るいい機会じゃねぇか?」

人間と荷物やパーツの類とは重さのベクトルが違うと反論した雨宮ではあったが、だとしても断る理由が無かったのも事実だ。
答えは最早決まっていた。

「ところで、四人って言ったな?お前と、俺と、保科とかいう女とあと一人は誰だ?」

「誰でもいいが……まぁ、リョウあたりかな」

珍しくルークにしては適当な返事が返ってきた。


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