二次創作小説(新・総合)
■漢字にルビが振れるようになりました!使用方法は漢字のよみがなを半角かっこで括るだけ。
入力例)鳴(な)かぬなら 鳴(な)くまでまとう 不如帰(ホトトギス)
- 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】完
- 日時: 2019/06/06 18:55
- 名前: 内倉水火 (ID: Re8SsDCb)
- 参照: http://www.kakiko.info/profiles/index.cgi?no=12396
『御尻川スウィーツ様及び御友人の皆様
この度皆様を、本日開業の音楽クラブ、ハウスオブ音羽に御招待致します。
ハウスオブ音羽 支配人』
「ねぇ皆、これ見てよ!」
そう言って招待状を差し出したのは、受け取った張本人であり、竜宮小7年C組の学級委員、御尻川スウィーツであった。
クラスメイトである松田名作、ウィンドウズノキオ、団栗林むすび、F・ボルト、そして今年入学したばかりの1年生、上井つる公が、スウィーツの手に握られたその仰々しい紙を見つめる。
「は、ハウスオブ音羽?」
「うん」
「めっちゃ高そうです…」
「大丈夫! この招待状が有ればタダで入れるんだよ!」
「「えぇ!?」」
スウィーツの爆弾発言に、残る5人の驚きの声が重なった。
「何故だ! 何故タダだ! 答えろ貴様!」
やたらと筋肉質な亀のボルトが、声を震わせる。
「何か脅迫してるみたいだぞ!?」
ツッコミ役の名作はボルトにツッコミを入れながら、内心こう思っていた。
_ディ○ニーに怒られる…!
- Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.53 )
- 日時: 2019/02/21 10:37
- 名前: 内倉水火 (ID: s/G6V5Ad)
妙な不安を煽られたが、ベト達に会いたい気持ちは変わらない。戦兎からの音羽館へ行こうとの誘いに、名作は乗った。
「皆で行きましょう、音羽館に!」
その後帰って来た父親に頼んで、一同は音羽館まで車で送って貰った。
着いてみると、音羽館は古びた洋館であった。何処と無く寂れた様子ではあるが、華やかな音楽が流れて来そうな、そんな印象を感じさせた。
「此処が音羽館かぁ」
名作達が見上げていると、館の扉が中から開かれた。
「あっ…来たんだ」
墨野継義が、開いた扉の隙間から此方を見つめている。
「継義さん」
彼等に軽い会釈をすると、継義は館の中にいる誰かに声を掛ける。
「戦兎達、来たよ。今入れるね」
そうして、手招きされるままに、一同は館に入った。
館の中は決して豪華ではなかったが、照明にシャンデリアが掛かっており、昔は立派な屋敷だったのではと思える。何となく、ハウスオブ音羽を思い出させもした。
直ぐ其処にいた音羽歌苗が、彼等を出迎える。ついさっき継義と話していたのは、彼女だったようだ。
「皆いらっしゃい。来てくれて有り難う御座います。…名作くんも、元気そうで良かったわ」
「はい、ついさっき目覚めたんです」
「まだ寝てなくて良かったの?」
「もう目が覚めちゃって」
2人が話し込んでいると、スウィーツが叫んだ。
「あ! ベトさんとモツさんだ!」
慌てて名作は顔を上げる。
「名作! やっと起きたんだ! 他の皆もやっほー!」
「帽子の小僧と物理学者達か。良く来たな」
ベートーヴェンとモーツァルト。音楽家達もまた現実であったのだ。
- Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.54 )
- 日時: 2019/02/25 18:09
- 名前: 内倉水火 (ID: s/G6V5Ad)
「あぁ、お久しぶりです! 心配かけてすみません!」
名作は慌てて、彼等に頭を下げた。
すると、ベトとモツはこう返す。
「お前が謝る事は無い。元はと言えば…俺達の"ムジーク"が素晴らしすぎたせいだからな」
「そうそう! あれで1人も倒れないのが変だよね!」
「何てポジティブな捉え方!」
予想外の返答に驚き、思わずツッコんでしまった。
しかし、これ程までにポジティブな思考ならば、何も恐れるものは無いだろう。ある意味尊敬出来てしまう。
他の人物達も、心配そうにはしていたものの、名作を気絶させてしまった事に対し、気に病んでいる様子は無かった。
リストには出会い頭に抱き締められ「皆そんな嫉妬の目で見ないで!」、ショパンには会話よりゲームを優先され「せめて此方向いてよ!」、積田兄弟には最早相手にもされず「もう何で来たんだあんたら!」、憂城には良かったと心底安心され「ちょっとは安心…されてる! ややこしい!」。
このような具合で、一部は心配さえしていなかったのである。
しかし、そうではない者が1人。
事態を招いた張本人、シューベルトであった。
彼は部屋の隅に縮こまって、何やら落ち込んでいるようだった。相当気に病んでいるのだろう。
何せ、自分のせいで多くの人を巻き込んでしまった_そう思っているのだから。
- Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.55 )
- 日時: 2019/02/27 18:02
- 名前: 内倉水火 (ID: s/G6V5Ad)
部屋の隅に身体を押し込み、小さくなっていたシューベルト。その姿は、3日前に『ます』を演奏していた時とは比べものにならない程、萎んでいた。
"魔王"を目覚めさせてしまった後悔と、自分自身に対する絶望。彼は目を覚ましてからずっと、負の感情に責め立てられているのだ。
名作達が彼に気付くと、歌苗は哀しげに目を伏せながら、彼について語った。
「シューさん、目覚めてからずっとあのままなの。食べる量も減っちゃったし、口を開けば『ごめんなさい』としか言わなくなって…」
どうしたら良いのか、と歌苗は言葉を詰まらせる。立ち直るまでそっとしておくのが良いのか、それとも激励するのが良いのか、ずっと迷っていたのだ。
すると、シューベルトの元へベトが歩み寄る。顔を僅かに上げた彼に、ベトは話し掛けた。
「…シューベルト、貴様には失望した」
「先輩、ごめんなさ…」
「謝るな!!」
また述べようとされた謝罪の言葉を、ぴしゃりと遮る。その迫力には、館の中の全員が振り向いた。
返す言葉を封じられ、只怯えた目で此方を見る後輩に、再び話し掛ける。
「ごめんなさいごめんなさいと、謝る暇があるのなら、自分自身への贖罪の方法を考えろ! 己の行動で示せ! 口だけで縮まるばかりのその姿勢に、俺は失望したのだ!」
「そんな方法…あるのですか…?」
「あるに決まってるだろうが!!」
ベトに答えられた後、シューベルトは再び俯いてしまった。ベトも、暫く黙っていた。
その様子を見ていた名作の口が勝手に動く。中々答えを見出ださない彼に、ヤキモキしてしまったのだろう。
「奏でてあげて下さい」
予想外の方向から飛んで来た言葉に、シューベルトも驚いたらしい。沈んでいた視線を、名作の方へ向ける。
「"魔王"は、ヒップホップは、自分を黒歴史として放置していた貴方が嫌だったんです。自分を肯定してくれない貴方を恨んでたんです。そんな彼等を肯定するには、貴方が演奏してくれないと駄目なんです。そうしたらきっと、もう彼等はあんな事件を起こす気もなくなる。だから! 演奏してあげて下さい!」
- Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.56 )
- 日時: 2019/03/03 14:27
- 名前: 内倉水火 (ID: xPtJmUl6)
名作が一息に言った後、館の中は暫く静まり返っていた。ある者は彼等を見つめ立ち尽くし、ある者はつまらなげに顔を背け、ある者は目を伏せていた。
そのまま、誰もが微動だにしなかった。
「奏でる…」
シューベルトの口から漏れた反芻が、沈黙を破る。小さな声だったが、音を消した人々の耳にはしっかりと届いた。
一方、名作はというと、この雰囲気が居たたまれなくなってきていた。
短気な性格のせいで、つい偉そうな事を言ってしまったのだ。それも一流の音楽家に。相手も素性を良く知らない子供にこんな事を言われて、どう思っただろう。しかも、大きな声で言ったお陰で、全員何も喋らなくなってしまった。
しかし、後悔に苛まれる名作をよそに、新たに1人が口を開いた。戦兎だ。
「シューベルト、あの時暴れた彼奴は_お前自身だ。紛れもなく、お前の一部だ。お前の中から生み出された、お前の音楽だ。勿論、お前がこの3日間、負の感情に苦しんでいたのは知ってる。お前がヒップホップやレゲエを、誰かに全否定されたのも知ってる。
でもな_お前まで自分自身を否定する必要はない。むしろ、誰かの理想になる為に、自分自身を殺す事は絶対に駄目だ。
誰かの目が恐いかも知れない。自分を過小評価してしまうかも知れない。それでも_演奏を通して、自分も、自分の音楽も肯定出来るようになって欲しい」
強い思いがこもった、説得力のある言葉だった。
もしかしたら、戦兎も似たような事を経験して、成長したのかも知れない。名作はぼんやりと考える。
「ありがとう…」
ふと、一言耳に入った。先程の反芻より、はっきりした発音だった。
振り向いて見ると、シューベルトが立ち上がっていた。
皆の思いが届いた。そう思えた。
- Re: 【クロスオーバー】ハウスオブ音羽【名作くん】 ( No.57 )
- 日時: 2019/03/09 14:27
- 名前: 内倉水火 (ID: 8topAA5d)
「シューさん! 良かった!」
立ち上がった彼を見て、歌苗は涙ぐんでいた。
「大家殿…先輩…他の皆さんにも、ご迷惑をおかけしました」
改めて周囲を見回してみて、館の住人達が自分を気にしていた事に気付いたらしい。シューベルトは深々と頭を下げた。たった今ベトに言われた事が残っているのか、「ごめんなさい」の言葉はなかった。
「これで、あの一件の傷は癒えた…ってか」
様子を見ていた万丈は、安堵の表情で呟く。
すると、彼等の後ろで何者かが手を叩いた。破裂音に近い音だったので、一同は驚いて振り向いた。
見てみると、モツが腰掛けていたソファから立ち上がったところだった。どうやら手を叩いたのはモツだったらしい。
「よし! それじゃあ、シューくんと名作復活記念で、今からパーティしよう!」
その突然の提案に、名作達は再び驚く。
「いやいや! 僕は此処に来れただけで充分ですよ!」
「てか今からって、無理あるだろ」
しかし、モツはこう返す。
「ルーくんが大声で叫んだせいで、空気悪くなっちゃったでしょ? だから此処でパーっと盛り上げちゃおうよ! 折角のダブル復活なんだし!」
「おい! 先輩は私の事を思って叫んで下さったのだぞ!」
シューベルトからの反論もあったが、それはそれとして、パーティ事態には賛成者が多かった。
結果、急遽材料を買って来てたこ焼きを食べるという、即席パーティが行われた。
名作達のドタバタな1日は、たこ焼きパーティで幕を閉じた。
これから、多くの人々を巻き込む、とんでもない日常が待っている。
きっとそれは、まるで名作な人生。
Page:1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12