二次創作小説(新・総合)

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題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編)
日時: 2019/01/22 23:51
名前: 燈火  ◆UJcOcbdIPw

 どうもよろしくお願いします。既に完結した漫画や1作品で完結しているゲームなど視覚的効果を中心とした作品を対象に淡々と展開を追って文章を付け加えていくスタイルで小説を執筆していこうと思い立ち、このスレを立ち上げた次第です。

 パクリと思うかもしれませんがよろしくお願いします。
 基本的には、1つの作品を練習曲エチュードという単位にして、その作品の終了までを完結として物語を書いていきたいと思います。

 ~目録インデックス

練習曲エチュードNo1 ドラゴンクエスト5 天空の花嫁
序幕プロローグ誕生バース

>>1

第1章「少年期編」第1話「凋落城レヌール亡霊レブナント

>>4 >>6 >>7 >>8 >>10 >>11 >>12 >>13

 ~他情報インフォメーション

>>2

 ~お客様カスタマー

 0名



注意アテンション
・公序良俗にもとる表現が対象とする作品によっては入るかもしれません。ご了承願います。できる限り軽めにはする所存です。
・ステマや荒しは徹底的な無視を願います。発見次第最優先で削除依頼します。
・誤字脱字、文章のミスなどのご指摘は大歓迎です。ドシドシお願いします。



――――トリップを忘れたので変更しました(苦笑

Page:1 2 3



Re: 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.10 )
日時: 2019/01/10 15:15
名前: 燈火  ◆flGHwFrcyA

 船着場から出たときは、太陽が高く空を焦がしていた。それが今は傾いて沈もうとしている。青く透き通っていた空は、茜色に黄昏たそがれて心をざわつかす。アベルはこの時間が嫌いだ。魔族が活性化するのとは別の意味で。吸い込まれて消えてしまいそうになるから。夜は嫌いではないのに。
 数百mだろうか。その程度先の地平線に人工物が映る。横数百m続く高さ5mていどの柵だ。魔物から人々を護る防波堤。全ての柵は真樹しんじゅクールムと呼ばれる、魔族にとって毒となる光素こうそを放つ素材でできている。この辺に群生している場所は見当たらないことから、どこかから輸入しているのだろう。
 正面にいる巨大な木槌を持ち茶色の羽織を被ったモンスター・おおきづちと巨大な芋虫のようなモンスター・グリーンワームをパパスは一振りのもと両断。わざとスライムを残しアベルに渡す。アベルはそのスライムに道すがら彼からは預かったひのきの棒で殴りかかり倒す。すでに今日1日で10体のスライムを狩っている。
 最初は嫌悪感と恐怖を覚えた命を奪う行為も慣れてきた。そしてスライムの単調な動きなら完全に見切れる程度にもなったと思う。賢いだけでは嫌だ。強くなりたい。目の前の先駆者のように。父は強大な敵に立ち向かっているとサンチョから聞いた。いつまでも足手纏いの子供ではいられないはずだ。

「もう柵が見えてきたか。増築したようだな。夕刻前につけてなによりだ。夜は魔素の濃くなる時間。奴らの動きも活性化するからな」

 アベルの様子を一瞥しパパスは万感の思いで声を震わす。どうやら昔より少し広くなったらしい。たったの2年で敷地を広くするというのは、この世界では珍しい。なにせ世界は魔族の支配下にほとんどあり、人間たちは僅かな土地をなんとか護っている状況だ。衰退し討滅された場所を訪れたこともあった。

「ややっ! パパス様では! 2年も村を出たまま一体どこに!? ともかくお帰りなさいませ! すぐに皆に伝えます!」
 
 鉄製の門が設けられている場所へと行く。すると見張り台から驚いた様子で、夕焼けでも目立つ紅の鎧を装備した壮年男性が下りてくる。左目には傷があり歴戦の勇士だと感じさせるいかつさだ。肌は良く焼けている。声は大きいがえぐみはなく通りが良い。その男はパパスと一度アイコンタクトするとすぐさま門の内側へと駆け出した。

「ほぉ、君はヨシュア君じゃないか? 試験を突破できないと言っていたが合格できたんだな」

 赤鎧の男が門の中へと入って行ってしばらく立つ。するともう片方の見張り小屋の梯子を下りてくる人物がいた。こちらは水色の鎧を着た少し頼りなさそうな顔立ちの若い男だ。幾分色白で痩身である。

「はい! パパス様が旅に出る直前に教えてくれた技術が役に立ちました! おかげで先輩の負担も減らせて感無量ですよ!」

 パパスに声をかけられると、ヨシュアと呼ばれた男は存外溌溂はつらつとした声で答える。どうやら彼は、父に指導を受けたことがあるらしい。見張りが2人いるからこそ先程の人物は、パパスの帰還を伝えに仕事場を外すことができたのだ。
 
「おーい、皆ぁ、パパス様が返ってきたぞぉ!」
「リガルドは相変わらず良い声を出すな。吟遊詩人ミンストレルなどでもやっていけそうだ」

 パパスがヨシュアとの邂逅かいこうを喜んでいるとき、大きな声が響く。大気を震わせ、どこまでも届くようなしなやかなテノール。それだけで人を引き付ける魅力だと思う。世界には風と会話をできる人物や未来を見ることができる人物などもいると聞く。
 母マーサは破魔の加護という特別な天恵を得ていたとも。リガルドの声もそういった類の特殊能力なのかもしれないなのどと、パパスは思う。確か吟遊詩人やオペラ歌手などは美声の加護というのを得ていた記憶がある。

「ははっ、俺も進めたことがありますよ。さぁ、俺となんか話してないで、皆に顔を見せてやってください!」

 どうやらヨシュアも先輩であるリガルドに進めているらしい。

「なんか、などと卑下するな。まぁ、他の人たちにも声をかけるべきなのは確かだがな。では、余裕ができたら改めで酒場で話でもしようか」
「はい! 楽しみにしています!」

 パパスはヨシュアを才能ある俊英と知っている。晩成型の大器であり、その条件は整っているのだ。ゆえにこそ彼は自己否定的なヨシュアの言動を直したいと思う。だが今はその時ではない。実際にヨシュアの言う通りにするべきだ。彼は1つ会釈して、その場を去った。
 しばらく歩く。村道は石畳で整備されているが、道の広さにしては閑散としている。仕事帰りの時間に当たる黄昏時にしてはなおさらだ。そんな人気のない通りの一角。この規模の集落にしては珍しい5階建てにもなる建物。看板を読むに鳴風なるかぜ亭という集合宿屋らしい。

「おっ! 本当にパパスの旦那じゃぁないか! 生きてたんだね本当に! 子供のほうも随分大きくなって」 
 
 そこにたたずむ白いひげが立派な老人が話しかけてくる。どうやら本気で心配していたようだ。心労を察しパパスは小さく謝辞を述べる。
 
「えっと……叔父さんは?」
「宿屋のラチェット老人だ。覚える必要はないぞ」
「ひでぇよパパスさん。でもまぁ、あんたの旅の話とか聞かせてくれよ。夜にさ」

 初めての場所だから知らない人ばかりなのは当然だ。しかし自意識が目覚めてからというものの、父パパスにとってもそういう土地ばかりを歩いていたためか。父親は知っている人物だというのにはなにか違和感を覚える。思えば根無し草のように放浪してきた。詰られたというのに満更でもなさそうだ。関係がはぐくまれているのだろう。
 宿酒場を後にして、すぐ近くの通りを左に曲がる。八百屋や道具屋が並ぶ。そこでも幾度かパパスは村民たちに声を掛けられそれに答えた。かさねがさね彼は村民たちに好かれているようだ。女性の中には恋慕の情を抱いている者も見えた。筋肉質で整った顔立ち。落ち着いた低い声と成熟した人格。その辺りが高評価らしい。
 しばらく歩いていると、剣や槍といった物を飾っている店に辿り着く。どの武器も高級品とはいえないが、だいぶ手入れは行き届いている。店主の心意気が感じられるいぶし銀の店といった風貌だ。売り子と思わしき銀髪の知的さを帯だ麗人と、黄色のマスクを被った筋骨隆々とした男。後者が主人だろう。気づいたのか店主と思しき男が、店の奥から出てきてパパスに話しかける。

「よぉ、パパス! 久しぶりだな! 喧嘩相手がいなくなって寂しくて仕方なかったんだぜ!?」
「そいつは悪かったな。今度もいつでも相手してやるよベン!」

 いきなり男は殴り掛かり、パパスはそれを利き腕ではない左手で受け止める。空気が震撼するほどの打撃音が響く。おそらくこの武器屋の店主もかなり腕が立つのだろう。そんな主人は手薬煉てぐすねをひきながら、思いのたけを打ち明ける。余裕の態度でパパスはそれに応じる。しばらく滞在するという意思表明でもあるのだろう。2人はしばらくの間、握手をしてから各々の行動へと戻った。

「ふむアベル。協会の近くにあるあの建物が俺たちの家だ。あと少しだぞ」

 村についてからさらに日が沈む。星も2つ3つとまたたき始めた。川をまたいだ先に聖なる十字架を掲げる、この村ではほとんどない石造りの建物が見える。その区画は家が少なく、パパスが指をさした家屋を含めて3か所しかない。つまり集中的に付き合う隣人は十数人ていどということだろう。
 今までのように一期一会いちごいちえではない、濃密な関係を開くことになるのだろうか。そんな予感にアベルは心を躍らせる。新しい出会いの連続は確かに嬉しい。だが集中して1人の人物と付き合うという関係を、アベルはした経験がないのだ。父やサンチョを除いては。

「パパス殿、よくぞご無事で。神の導きに感謝しますわ」
「シスター・エルシア、猫を被るのは止めないか?」
「……今夜、教会の裏で待っていますわ」
「さすがにそういうのは子供の前では止めてくれ」

 教会の前を通る。桃色の髪をしたたれ目の愛らしいシスターが、パパスを出迎える。どうやらこのシスターも彼に好意を寄せているらしい。シスターとは思えない恥じらいのなさで耳打ちするも、すげなく断られる。忸怩じくじたる思いなのだろう、たっぷり数秒うつむき、十字を切った。 
 そのあと少しの間、エルシアと会話をまじわす。しばらくして協会内に入り、教区長や懺悔をしていた知り合いに挨拶をする。ついでに祈りを捧げて教会を後に。そして自分の家へと進む。家の近くにある井戸にサンチョは座っていた。主の姿を視界に入れると、すぐに彼は立ち上がりパパスのもとへ歩き出す。体格に見合わぬ俊敏性だ。

「待たせたなサンチョ。長い間留守をまかせてすまなんだ」
 
 パパスは普段通りの調子で帰りの挨拶をする。

「いいえ、旦那様! サンチョめは……サンチョめは旦那様が帰ってきてくださっただけで嬉しくて涙が。坊ちゃんも少し見ぬ間に成長されて……あぁ、とにかく中へ! 外長い旅路で疲れたでしょう? 温まる料理を準備しますね」

 相当に待ちわびたのだろう。少し鬱陶うっとうしいくらいの調子だ。サンチョが料理の話をすると、アベルはお腹を鳴らす。どうやらもう待ちきれなさそうだ。
 
「久しぶりのサンチョの手料理だぁ。嬉しいなぁ!」
「そう言って貰えるとサンチョも嬉しく思います! ささっ、旦那様も早く!」

 サンチョは料理が得意だ。3人で野営をするときなどはもっぱら、彼が炊事役だった。宮廷料理人の経験もあるらしい彼の、包丁さばきは凄まじい。まるで得物を自分の体みたいに操る。彼の手札はほとんどが故郷である、グランバニア料理だが旅の最中さなかいくつもの町や国を周りレパートリーは相当だ。
 今日はどんな料理が食べられるのか。アベルは思わずよだれをたらす。その様子にサンチョは相好を崩す。扉を開きアベルの手を引く。そして主人であるパパスが先に入ったのを確認すると、彼は軽快な足取りで台所へと向かった。

「おう、サンチョ。いつになく張り切っているな」
 
 張り切る理由は分かる。そう思いながら帰ってきた安堵に厳しい表情を崩す。荷物袋をテーブルの下に強引に置く。

「叔父様、お帰りなさい」
「ん? この女の子は?」
「あたし? あたしはビアンカっていうの。覚えてないの?」

 すると2階から誰かが下りてくる。アベルより少し年上ぐらいのおさげが似合う金髪の少女だ。知らない人物に❝叔父様❞と呼ばれパパスは怪訝けげんに眉をひそめる。すぐに少女は自分の名前を答えた。その名には聞き覚えがある。実際に抱き上げたこともあるのだ。隣町の友人であるダンカンの娘。

「……そうか、2年か」

 随分大きくなった知り合いの娘を見て、パパスは唸った。自らの息子も随分育ったのだから、考えてみれば当然なのだが。子供の成長は早いものだ。時の流れを感じさせるほどに。改めて自分が長い間、サンタローズを離れていたのだということを実感するパパスだった。

Re: 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.11 )
日時: 2019/01/13 17:19
名前: 燈火  ◆flGHwFrcyA

 ビアンカが自己紹介してから少しして、2階からもう1人降りてくる。派手な赤いワンピースが目立つ金髪。胸は大きめで腰は括れているラインが魅力的。顔立ちは基本的に鋭く怜悧な印象を受ける顔立ちの女性だ。彼女はストレアと名乗り、パパスと村に来たいきさつなどを話す。

「成程、ご主人の薬を取りに来たのか。あいつの持病も難しいものだからな。もっと医用技術が成長すれば見込みがあるのだろうが……」

 パパスはストレアの話に得心が行きうなずく。そして望外の念を浮かべつぶやいた。祖国グランバニアは軍事力や防衛力には優れる。だが世界に存在する大国の中では、医療後進国のレッテルを張られていた。人命が思いの外儚はかなく消える現実を握りしめ、彼は憂う。それに対しストレアも思うところがあるのか神妙なおも持ちだ。

「ねぇ、大人の話って長くなるから上にいかない?」
「うん、僕もそうしたい。ねぇ、サンチョ、ご飯できるまであとどれくらいかかる?」

 子供ながらにビアンカとアベルは、自分たちが不要になるだろう話を2人がしようとしていることを察す。

「そうですなぁ。30分ていどかと。そのころにはちょうどお話も終わっているでしょうな」
「じゃぁ、行こう」
「もう、仕切らないでよ!」

 サンチョはアベルの本音を的確に察す。おそらく最初からこうなることを想定して、パパスたちを迎えてから調理を開始したのだろう。ビアンカの手を引こうとするアベル。彼女はバツの悪い顔を浮かべ、彼の手を握った。少女の手は少し冷たかった。船――ストレンジャー号というと、道すがらパパスから聞いた――の階段と比べて、簡素な階段。子供が2人乗るとけたたましく軋んだ。

「私はビアンカっていうの。覚えてる?」
「ごめん、分からないや」

 記憶にない。いくら頭の中をこねくりまわしても思い出せず、申し訳なさそうに言う。

「そうだよね、あなたまだ小さかったものね。私は8歳だから、あなたより2つもお姉さんなんだよ。ねっ、本を読んであげようか」
「うん、お願い。僕、本を読むのを聞くのは好きだよ」

 少し寂しそうな表情を浮かべるビアンカ。強がって正論を口にしてはいるがやはり寂しいのだろう。そんな彼女の提案にアベルは間髪入れず従った。

「素直で良いわね。じゃぁ、ちょっと待っててね」

 機嫌を直したのか、軽やかにスキップして髪を揺らしながらビアンカは書斎へと進む。そしてひとしきり本を眺め赤い羊皮紙で包まれた本を手に取る。分厚くて小さなビアンカには、とても重そうだ。実際、重いのだろう。彼女は唇をかみしめている。

「よしっ、これが良いわ。じゃぁ、読んであげるね。えっと、空に……く……せし……えっと。これは駄目だわ。だって難しい字が多すぎるもの」

 どうやら読めなかったらしい。この書架に蔵書されている本はパパスが集めたものだ。正直、子供向けの簡単な本はほとんどないだろう。父は旅路でも良く本を読んでいた。なぜ本を読むのかと聞いたら、想像力と知識を得るためだと、教えられた。
 ビアンカは書斎に本を戻し、違う本を運ぶ。今度は少し薄めの簡単なつくりをした本だ。しかし最初の本位上に彼女の口調はたどたどしい。どうやら今回引いた本のほうが、先程の書類より難しい字が使われているようだ。

「ビアンカ、そろそろ宿に戻りますよ」

 ビアンカは次々と、本を取り換えていく。しかし、まともに読める本は見つからない。そんなおりストレアの澄んだ声が1階から届く。案外早く話が終わったのだろうか。それとも思いの外、彼女との時間が楽しかったのかもしれない。パパスとストレアの話は終わったようだ。

「はーい、ママ。サンチョさんの手料理食べたかったなぁ」
 
 ビアンカは駆け出す。階段をきしませながら。

「おやおや、そう言えってもらえると嬉しいですな。でも、今日は宿で夕食を頼んでいるのでしょう? 日を改めて」
「そうよね。仕方ないわよね。宿のご飯よりサンチョさんの料理のほうがおいしいのに」

 サンチョの作った料理を食べたかったのか、ビアンカは未練たらたらにその場を去った。彼女たちを外まで見送っていると、サンチョが「食事の準備ができました」とアベルを呼ぶ。

 供えられた円卓に料理が並んでいく。30分ていどで作られたとは思えない、品揃えと盛り付けの美しさだ。手前側に主菜。その少し奥に副菜。左横にサラダが並ぶ。そして主食のグラタンが主菜の横に。もっとも食べやすさを配慮された位置づけといえるだろう。食膳にならぶ献立の多さにアベルは歓声を上げた。外にいるときなどは、酷いときは1日1食で干し肉だけなどという場合もある。船で出された料理と比べても豪勢だ。
 
「さて、グランバニアグラタンと温野菜サラダにコンソメスープ。そしてサンタローズ産の川魚を使用したムニエルにございます。ジェラートはおって出しますので」

 サンチョ本人としては前菜まで用意しコース形式にしたかったようだ。しかし今回は、久しぶりの3人による食卓ということもあり、前菜は省き一緒に食すことにしたのだろう。グランバニアグラタンはサンチョがもっとも得意とする料理の1つ。グランバニアと名づいてはいるが、グラタン自体がグランバニア地方発祥だかららしい。
 おそらくはグラタンに盛り合わせられている野菜などは、サンタローズ産だろう。アベルにとって、もっとも興味があるのはムニエルだ。彼は小さいころから魚が好きで、当地ごとの魚料理は父に良く頼んでもらう。
 サンタローズ産の魚は当然初めて食べるので、楽しみで仕方ない。神への感謝を捧げるとすぐにナイフで小分けして、フォークで口に運ぶ。適度な塩気とパリパリの皮。柔らかくジューシーな白身魚の味わいが口内に広がる。吐息を漏らす。

「なぁ、サンチョよ。アベルは俺似か? マーサ似か?」
 
 おいしそうに食べるアベルを眺めながら、唐突な様子でパパスはつぶやく。サンチョと別れて数か月の間、強く意識するようになったのだ。昔から自分に似てはいないと思ってはいたが、成長するにつれアベルは母に似ていく。それが嬉しくも彼は少しつらい。もし彼にもあの力が有ったらなどと思ってしまう。

「分かりきっているでしょう? 母親似ですよ昔から。ますます、母親に近い顔立ちになってきましたな。線の細い美男とった感じでしょうか」
 
 パパスの憂慮を杞憂きゆうであるとでも言いたげな様子で、サンチョは言い切る。そして彼は強い眼差しをパパスに向けた。それは絶対にアベルを2人で魔の手から守り切りる覚悟。マーサを魔族から奪還する意思も宿っている。パパスは思う。この従者がいるから、数々の協力者がいるから今まで来れた。
 これからもそうでありたい。しかしアベルは守られてばかりを良しとするか。永遠にこの状況が続けられるのかとも思う。もしも魔族たちが本気で自分たちだけを殺戮するために大挙してきたら。護り切れるのか。何より息子自身がそれを良しとしていないのは分かっている。これからはアベルにも力を付けさせたほうが良いかもしれない。

「母親似ってなんだか嫌だなぁ」
 
 少しの間思案気な表情を浮かべるパパスを他所よそにアベルは嫌がる。図らずも違う意味ではあるが、息子と考えていることがあってしまい彼は表情をなくす。アベルはちょうどサンチョのほうに顔を向けていたため見られてはいない。パパスは胸をなでおろす。戸惑いの顔で子供を惑わせてはならない。

「女性は弱い者とお思いでしょうか坊ちゃま? 言っておきますが、マーサ様は旦那様より強かったのですぞ」
「本当!? お父さん!?」
  
 サンチョはアベルを諭す。的確にアベルの心情を理解した発言だ。アベルは女性的な容姿であることにコンプレックスを抱いているのではない。彼の中では女性は男性に守られる存在だという認識がある。つまり母親は弱いという考えだ。サンチョは力が全てでは無いと胸中では思いながら、今のアベルに最も効果のある言葉を選んだ。 

「あぁ、悲しいことに事実だな。マーサの魔法の力は尋常じゃなかった。しかしサンチョ、このムニエル旨いな」
「ふふっ、旦那様たちと別れて4ヵ月、鍛えに鍛えましたからな」
 
  サンチョとしては良いフォローを入れたつもりなのだろうが、パパスは逆に苦虫を噛んだような表情だ。その大きな力が魔族に脅威と映ったから、マーサは奪われた。息子が力のほうまで受け継いでいることを危惧してしまう。そんな焦燥を隠すように、彼は話を逸らす。そうして話は少しずつずれていく。
 気づけばどんな出会いがあったかとか、魔族相手に大立ち回りをしたとかいつも通りの冒険譚に話は変わっていく。サンチョによって運ばれてきたジェラートを食べた辺りで、アベルは疲れて眠ってしまった。
 
 日の光が出始めて、空を薄紅で燃やす。気化熱によって発せられる夜より鋭い寒さを感じさせる清涼な気配が立ち込める。早起きの村人もほとんど起きていない時間。

「サンチョ、俺は少し出かける。アベルのことは任せた」
「いつものあそこですかな。私も……」
「あのていどの場所、1人で十分さ」
 
 パパスは剣1つを片手に、歩き出す。サンチョにアベルを任せて。

Re: 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.12 )
日時: 2019/01/13 19:01
名前: 燈火  ◆flGHwFrcyA

 アベルは武器屋『デッケン』にいた。サンチョには挨拶周りに行ってくるというていにしてある。夕方までには帰るとも。道すがら歩いていると、昼前だというのにやけに寒いと感じた。春も中盤に差し掛かっているのに。寒さに体を震わせながら、武器の品定めをする。何度も武器屋は覗いてきたため最低限の知識はあるつもりだった。

「おいおいパパスの息子。その辺はガキにゃはえぇよ。金銭的にもな」

 しかしすぐにベンに指導してもらうことになった。結局は銅の剣と皮の鎧、木の帽子を購入。得物は思いの外軽い。家を出る前に、サンチョから貰った護石——サンタローズストーンという、この地特有の石らしい。7色に乱反射する魔力を感じさせる石――のほうが重いくらいだ。剣は腰に携帯するのは体格上無理だったので、皮ベルトで背中に固定して貰った。数秒後ベンは店員と思しき、冷静そうな美女に小手投げにされ倒れこむ。

「貴方、幾らパパス殿の身内だからって子供に、剣なんて持たせないの!」
「見てなかったのか? この小僧自身が望んでることだろうが?」

 ベンは頭を抱えながら立ち上がり、憮然ぶぜんとした様子でつぶやく。彼はアベルの瞳にくすぶる渇望を見抜いたのだ。昨日初めて会った時から、嘗め回すように武器を見ていた。おそらく子供ながらに、父親に守られてばかりなのが嫌だったのだろう。さらに「あのパパスさんの」と言われるのも苦痛に感じる年ごろのはずだ。

「……子供が望んだ通りにするだけの親を無能って言うのよベン。戦時下でもないのに。ほら、アベル君。その剣を返しなさい」

 ベンを睥睨へいげいしながら、女性はアベルに近づく。左右前方、アベルがどちらに逃げても捉えられるような隙のない動きだ。彼女自身頭の中では分っている。少年の取り巻く状況は、サンタローズとは違う。そしてパパスとマーサという優秀な両親を持っていることから、才能には溢れているだろうことも。

「嫌だよ。僕が自分で選んで買ったんだから」
 
 アベルは涙を浮かべながら反論した。女性は呻吟を漏らす。護衛だなんだと理由付けをしても、武器とはなにかを傷つけ奪うためのものだ。幼い精神がそれに耐えられるのか。自惚れが取り返しのつかない事態を招き、崩壊を招く。

「ほれ見ろ」
「黙りなさい。過ぎた力に目が眩くらで自殺特攻する馬鹿を量産するのが、武器屋の本懐なの?」

 ふんぞり返るベンを睨みつける。周りの温度が数度下がった気がする。全身に氷の刃を押し付けられたような感覚。睨みつけられたベンも一歩後ろへと後退った。

「剣は買ったけど、僕これを今から使うつもりはないよ。サンチョに預かってもらうんだ」
「そういう問題じゃないわよ。良いアベル君。武器を持つってことは……」

 それでもなおアベルは食い下がる。彼に現実を教えようと女性はおごそかな語調を作る。

「お姉さんに言われなくても僕分ってるよ。父さんと旅して武器が怖いことなんて知ってるもん! 父さんの剣はモンスターの命を奪って、魔物の牙や爪は人の命を奪う」
「どうしても、欲しいの?」

 アベルの頬を涙が伝う。力を手に入れ、正義感に駆られ魔物に挑み殺された幼馴染を思い出す。銅の剣と皮の鎧を身に着けて外に出て行った少年は、翌日死体で発見された。スライムによって捕食されたのか。胴体から上が溶け消えていた。間違いなく少年が買ったと思われる銅の剣がすぐ近くには落ちていた。
 現場には自分も立ち会っている。不条理で好きな人を失う恐怖をこれ以上味わいたくないから、ラインハットに渡り幾つもの武術を学んだ。月に1回行われる城下町の武術大会で5回連続優勝などという偉業もなした。それでも行商人だった家族を失い、力だけでは何も守れないと悟る。

「……なにがなんでも欲しいよ」
 
 女性はたじろぐ。今までも多く武器を求め自殺行為をして逝く者たちを見てきた。武器を持つということは入り口にしか過ぎないのに。身の丈に合わない武器を買い、強すぎる魔物に挑み殺される者。復讐を誓いそこから抜け出せなくなる者。戦争に参加し帰らぬ人になる者たちも沢山いた。
 武器は理性を奪う。人間の最大特徴たる智を失い、欲望に溺れて死ぬ。それもあるていど長く生きた者なら自己責任だ。そこまで生きてその道を歩むと決めたのなら止める気はない。しかし目の前にいるのは、年端もいかない少年だ。

「なぁ、セルカ。お前が今何を思っているのかは分かってる。でもな、俺たちは武器屋だ。ガキに武器を売っちゃいけないってルールはねぇし、客が買ったものを取り上げる権限も俺らにゃねぇ……そいつはその年で覚悟もできてる。もう駄々このねるのはやめて、アベルの道を防ぐのは止めろ」

 ベンの発言は武器屋として正論だった。性別や年齢の区別をつけないのが武器屋だ。それが平等。どこで死に誰を殺すかも自由。セルカは唇を噛みしめた。

「貴方はこの子が死んでも……」
「構わないわけねぇよ? でもな、男が一度決めた道を遮るのは筋違いだ。お前は武器を取ったらそいつは絶対死ぬと思ってるんだろうがよ。それこそ侮辱だぜ」

 それきりセルカは黙り込む。彼らの様子を見ながらアベルは歩き出す。
  
「困ったことになったぜ。親方が薬の材料を取りに行ったまま戻らないんだ。材料はこの村の洞窟に群生しているパルキア草ってのなんだが……」

 教会の後ろにある穴倉式の住居で、アベルはそんな話を小耳に挟む。そういえば、ここ最近は、季節の割には随分寒い日が続くなどという話も聞いた。アベルは洞窟はどこにあるのかを、村人に聞きそこへと向かう。初めて買った武器を試したい。今の彼は剣の魔力に囚われていた。
 地域に住まう魔物の強さは大体似通っている。村の外にいる魔物は低級といって差し支えない程度だ。スライムていどならその辺にある木の枝でも倒せた。まともな武器があれば、後れを取ると思える存在も確認していない。魔物に囲まれないように慎重に進めば大丈夫だろう。
 力を付けるには魔物を倒すことだ。倒した魔物の魔素を光素に返還させることにより、レベルアップが可能なのだ。レベルアップに必要な魔素の量は、個々人の資質によって決まっている。教会の教区長に聞けば教えてもらえるとパパスから聞いた。人助けをしてレベルも上がれば認めてもらえるかもしれない。

 アベルにセルカの憂慮は届いていなかった――

 

Re: 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.13 )
日時: 2019/01/23 18:43
名前: 燈火  ◆UbVDdENJSM

 近くを兵士が巡回していたが、警備は手薄といわざるを得なくてたやすくかいくぐれた。洞窟内はそれなりに整備されており、等間隔でトーチが設置されている。サンチョ曰くサンタローズストーンを中心とした鉱石産業が盛んらしい。それを考えれば、従事者にとっての危険はある程度排除されているとみるのが妥当だろう。
 もっとも炭鉱としては廃されて久しいらしい。モンスターの繁殖も進み、内部はそれなりに危険だと道すがら聞いた。できる限り音を建てず、死角を少なくするように壁伝いに進む。十字路や丁字路が有ったら、途中で止まり曲がり角の部分を確認する。
 そうやって少しずつ進行していくと、モンスターに遭遇した。少し緑色が混じっているが恐らくはスライムだろう。食事中に変色するとサンチョから聞いている。しばらくの間、相手の動きを確認。スライムは温厚で仲間思い。多くのモンスターと共生できる存在だ。他のモンスターがいる可能性は高い。

「スライム1匹だけかな? 試すにはちょうど良い?」

しばらく注視し続けたが、どうやら連れはいないらしい。アベルはそう判断し、スライムが後ろを向いた瞬間を狙い駆け出す。音もなく近づく。しかし後ろから妙な振動音が響いた。壁を背にしながらアベルはそちらへと顔を向ける。そこにはセミの幼虫に似た魔物がいた。

「なんだこいつ?」

 近い。アベルの足で5歩分ていどだ。相手の速度は分からないが、相当な下級魔物でも一息に詰められる距離。スライムからはまだそれなりに遠い。先にこちらを処理する。彼はそう心に言い聞かせ、盾を左に、剣を右に構えた。しかし甘かったのだ。
 アベルの想像より早く相手は距離を詰めシャベルのような爪を振り回す。盾で防ぐ。想像以上の力が宿った攻撃で、衝撃が肩を伝い体中を震わせた。痛みに喘ぎ、攻撃へと繋げられない。セミのようなモンスターは更に第二撃を放つ。彼のみぞおちにそれは命中した。

「うぐっ! がっ……あぁ、ぐっ。痛いっ!」

 弾かれたように吹き飛ぶ。肋骨が軋む。肺が締め付けられて呼吸が苦しい。喉を傷つけたようだ。血の味が口内に広がる。

『これがモンスターの一撃。こんな、こんなの……怖い。怖くない! こんな奴ら怖くない!』

 冷たい地面でもんどりうつ。恐怖が脳裏を過よぎる。それは死への絶望感だ。熱いのか冷たいのか分からない。目すら霞む。あと2回も貰えば恐らく動けなくなるだろう。逃げるべきか。本能が警鐘を鳴らす。だが少年は退く選択をしない。
 死んだら何もかもお終いだと思いながら、目の前の相手に殺されるようならそれまでだとも思う。アベルは銅の剣を杖に立ち上がり、目を見開く。そして柄を本気で握る。爪が食い込むほどに。他に周りに敵がいないか一瞥する。どうやら最初に居たスライム及び他モンスターは見当たらない。

「うおおぉぉぉぉ! くらえぇ!」

 アベルはまず盾をブーメランの要領で投擲とうてき。敵方がそれを盾にもなる爪でガードする。相手の視界はゼロだ。柔らかそうな腹部に彼は刃を深々とさす。呻吟するモンスターの腹を掻っ捌いた。臓物と大量の血が放たれ、敵は1つ痙攣けいれんすると動かなくなった。
 初めて感じる体を裂く感覚。生暖かい血の触感。酸鼻さんびを極める生臭さ。遠目から見ていたから分からなかった悍おぞましさを感じむせ返る。そして膝をつく。だが敵は待ってくれないようだ。アベルの声に気づいたのだろう。今倒したのと同じ種類の魔物が2体。さらにはスライムまでいる。

「これが洞窟……魔物の住処」

 唇をかみしめ立ち上がる。膝が笑いかけた。汗が滲む。だが戦わなければ確実に死ぬだろう。死体と化しすでに砕け始めている先程仕留めた敵を蹴り上げる。まずは眼前に居るセミの幼虫の動きを封じた。そして一番弱いだろうスライムへと一気呵成いっきかせいに攻めより両断。
 セミ型の敵は同族の遺骸を振りほどこうと、あまり器用には動かせないだろう手を動かす。背中を突き刺し下方向へと引き裂く。あとは1体。しかし残りの1体が見えない。猛烈な悪寒が走る。敵の位置や距離を把握できない状況は危険だ。容易たやすく相手にスキを突かれてしまう。
 上下左右を見回す。しかし姿が見えない。後ろから地面が砕ける音がした。アベルは瞬時に背後を取られたことを悟る。振り向きざまに高速の打撃が飛ぶ。咄嗟に盾でガードするが、至近距離から受けたためか前回以上に大きな衝撃が伝わる。吹き飛び石壁に激突したアベルは唾液をまき散らした。

「はがっ、あぐっ……息が」

 背中からくる衝撃が背骨を押し上げ、肋骨と肺が密着する。無呼吸状態に涙が浮かぶ。全身が熱い。焔の中にいるかのような感覚だ。耐え切れず涙を流す。洞窟内は少し肌寒いくらいなのに、玉のような汗が滲む。
 1人の子供が魔物蔓延はびこる地獄に挑むなど自殺行為だと心がささやく。そしてそんなことをしたのだから、今ここで死ぬのは運命だという。安易な方に流されて楽になりたい。そんな諦念が胸中を走る。

「お父さん、サンチョ……嫌だ。嫌だ……じにだぐないぃ!」

 表面の感情が死にたいと警鐘を鳴らす一方、心の奥底は生にしがみつこうとしていた。今まで会った人たちに2度と会えなくなると思うと、今の痛みをはるか超える絶望感が込み上げてきたのだ。敵はすぐ近くまで迫ってきている。苦しんでいる暇はない。
 セミ型のモンスターは弱点の腹部を前足で防ぎながら、突進を敢行する。まっすぐな軌道だ。おそらく相手が回避するなどと考えていないのだろう。普通に突進を食らい倒れこむか、迎撃が来るものだと思っているのだ。アベルは壁を背にしている。相手の攻撃を回避すれば、壁に激突するはずだ。


「今だ!」

 何とかかわす。敵は予想通り壁に激突。しばしの間硬直する。アベルはそのすきを逃さす横一文字に切り裂いた。血飛沫が舞い頬に雫が伝う。唐突に体中の血潮が沸騰した。今までにない力が体を駆け巡る。唐突に盾や剣が軽くなった。

「これがレベルアップ?」

 レベルアップ。それはすべての生物に存在する神の加護。魔族は人間を含む光の眷属の力を一定量吸収することによって。人間たちは魔族の悪意を浴びることにより起こる現象。つまりは力の段階を飛ばした上昇だ。才能や系譜によって能力の上がり方は違うらしい。
 夫々は教会で知ることができるとサンチョからは聞いた。体の痛みも幾分か減った。神の加護により体力値が増したのだろう。アベルは結論付け進みだす。その先も幾度か戦った。黒い体に羽をはやした吸血型の魔物や、体中に棘をはやした緑色の魔物。それらには余り苦戦しなくなった。
 道中にある宝箱や魔物の持ち物から得たやくそうや、2度目のレベルアップによって得たホイミの呪文――低級回復呪文。魔法の習得時、澄んだ女性の声が脳内に響く――により少年は進撃していく。そして下層へと進む階段を見つける。1回には親方と思わしき人物はいなかった。

「行こう。聞いた情報じゃこの洞窟は地下2階まで」

 そう少年は心に言い聞かせて階段を下る。基本的に魔物の力は地底へ行くほど濃くなる。それはつまり少し下に行けば、魔物のランクは上がるということだ。今までより厳しい戦いになるだろう。アベルは心に言い聞かせて進む。下りきった先には一本角の兎と巨大な木槌をもった黄土色の怪物がいた。後者は見覚えがある。波止場からサンタローズに着くまでの道すがらに会ったおおきづちという魔物だ。前者は知らない。
 確かおおきづちは一撃の威力は高いが、攻撃を外しやすい。木槌による攻撃の範囲が狭いことと、視力が低いことが要因だろう。先に情報のある存在から倒して、初めての相手を腰を据えて挑む。アベルはそう判断する。しかしおおきづちが壁を木槌で強くはたくと、数体の蝙蝠こうもりのモンスターと、スライムたちが現れた。

「多いな」

 そんなことを思っていると、すでに一本角の兎が迫っていた。今までの敵とは比べ物にならない速さだ。アベルは何とか相手の突進によって放たれる角の一撃を防ぐ。衝撃は大したことはない。レベルアップの恩恵で得られた体の影響もあるだろう。しかし兎は盾を足場にして跳躍。さらに後ろの壁を三角飛びにして2撃目を放つ。右方向に体を捻転ねんてんさせ、銅の剣で角を弾く。兎の魔物は弾かれた方向に吹き飛ぶ。
 しかし背中に鈍痛が走る。今まで受けた中で最大の衝撃だ。アベルは喀血かっけつする。剣を杖になんとか膝をつくことを防ぐが、次が続かない。眼前に現れた蝙蝠の尻尾による攻撃を受け吹き飛び、さらにおおきづちの一撃を横腹に受けた。脳が揺さぶられるような衝撃とともに吹き飛ぶ。モンスターの数、質ともに段違いだ。膝が笑う。更にスライムの突進を腹部にくらい壁に叩きつけられる。
 兎の魔物がにじり寄ってきた。血走った眼だ。周りの魔物たちを一瞥。止めは自分が刺すという恣意しいを伝えているようだ。恐らくあの鋭い角で体を貫かれたら死ぬだろう。だが体が動かない。兎の恣意を無視するようにスライムが突貫する。衝撃の逃げ場がないサンドバック状態に意識が朦朧もうろうとする。銅の剣が滑り落ちた。コインが落ちた時のような澄んだ音が、空しく洞窟に響く。

『死ぬ……?』

 目を閉じる。自分に止めを刺す存在の形相ぎょうそうを見るのが怖かったから。



 
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 確実に描写のレベルが落ちている気がする。
 戦闘描写もここまで下手になってるとは……というか、エチュードこのペースだと、滅茶苦茶時間かかりそう。900レスくらいかかりそう。展開のスピード上げたいですね……
 
 

Re: 題本のあるエチュード(ドラクエⅤ編) ( No.14 )
日時: 2019/01/23 23:56
名前: 燈火  ◆UbVDdENJSM

  一向に痛みが来ない。意識が残っている。死んでいない。可笑しいと思い目を開けようとするが、怖くて目を開けられない。

「アベル、無事か」

 居るはずのない人物の声が響く。誰よりも聞いてきた声。しかし今は誰よりも聞きたくない声だったと思おう。彼に頼りパなしで、彼のオプションのような存在であるのが嫌だから、力を求めた。彼パパスに助けられては本末転倒だ。激痛で霞む目を凝らす。そうであって欲しくなかった。

「……父、さん? なん……で?」

 目の前には魔物の死体があった。止めの一撃を放とうとした兎は2つに裂かれ臓物を晒している。他のモンスターたちも皆、一撃のもとに仕留められているようだ。血と肉の中心に良く知る人物。浅黒くやけた肌に逞しい筋肉。ライオンの鬣のような黒髪に立派な髭をたずさえた堀の深い顔立ち。間違いなかった。
 アベルは呻く。一方で強い安堵感が去来する。同年代と比べて自分の人生は過酷で多くのことを経験してきたと思う。しかしそれは今まで体験したことのない複雑な感情だった。生き延びたからこそ感じた二律背反の感情を彼は噛みしめ気を失った。

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 保留


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