二次創作小説(新・総合)

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敵中横断二九六千光年
日時: 2019/04/20 12:00
名前: 島田イスケ

個人リメイクによるオリジナルとは別の『ヤマト・イスカンダル編』。
古代進が最初は貨物輸送機のパイロットとして登場します。武装のない輸送機でサーシャを追うガミラスと遭遇、危機を切り抜けカプセルをヤマトに届けるという展開です。

この作では〈人類滅亡まで一年〉の定義を『最後のひとりが死ぬとき』でなく『すべての女が子を産めなくなるとき』及び『すべての子供が白血病に侵されるとき』であり、そのリミットが共にあと一年であるとします。ヤマトが九ヶ月で帰還できるならまだ生きている人のほとんどを救えるのですが、しかし一日遅れるごとに十万の子が病に倒れ、百万の女が出産不能になる設定です。ゆえにヤマトはこの作では、子を救うための船としてイスカンダルを目指します。

なお、同じ作品を二次小説サイト〈ハーメルン〉と〈2.novelist.〉にも投稿しています。

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Re: 迎撃不能 ( No.24 )
日時: 2019/09/02 00:08
名前: 島田イスケ

「次に来るのは、地平線の上には決して姿を出さないと思います」〈ヤマト〉第一艦橋で、新見が恐怖の表情で言った。「その手前で地に潜って、そこからここまで掘り進んでくるものと――」

「冗談だろ」南部が言った。「それじゃ狙いようがない……」

「沖縄基地はこいつに殺られたんですよ!」

森が、「何か迎撃法はないの?」

「無理だよ!」と南部。「高角砲に実体弾を込めて撃っても、10キロ上まで届いちまって落ちてくるのに時間がかかる。すぐ終端しゅうたん速度に達して、風に流されちまうから、弾道の予測なんてしようがない。三分後にてんでデタラメなところに落ちるだけだ! 第一、砲弾が上向いちまって信管が働かない!」

「落ち着け!」沖田が言った。「時間がかかるのは敵も同じだろう。新見君、ドリルはどの程度の速度で来るのだ」

「わかりません。データがありませんので……確かにそんなに速いはずがないとは思いますが……せいぜい人が走る速さくらいではないでしょうか」

「だろうな。まあ十分くらいは時間があるということだ。その間になんとか手を打つしかない」

島が言う。「いざとなれば、ケーブルを切って飛び立つのもできなくはありませんが……」

「メインエンジンの始動前にそれはできん」

「それはそうです。しかし――」

そうなのだった。〈ヤマト〉はまだ、外部からの電力供給を受けている。船内で必要な電力ならば、補助エンジンが今は生み出してくれている。だが外宇宙へ行くための肝心の波動エンジンがまだ動かせていないのだ。いま飛ぶことは、できるのはできる。だがその後は、消し飛んでしまうこの場所の代わりに世界中から電気を集めるステーションを再びどこかに一から造り上げねばならず、姿をさらしてしまった船をそれまでヨタヨタ浮かせ続けねばならなくなってしまうのだ。

〈ヤマト〉は重い。同じ大きさの他の船よりはるかに厚い装甲と、はるかに強力な武装を備え、人が他の動物より大きな脳を持つように電子機器を山と積んでいるのだから。おまけに長期航行のための野菜農場などというものまで抱え込んでいる。

〈ヤマト〉はすべてが波動エンジンありきで設計されていた。ゆえにそれがないのなら、《ボクを蹴って》と背中に貼ったただの浮き砲台だ。

太田が言った。「十分以内にエンジンを始動させる他にない……」

「他に手はなさそうだな」と沖田は言った。

Re: 接続 ( No.25 )
日時: 2019/09/06 20:02
名前: 島田イスケ

「わかりました。すぐエンジンをつなぎます」

真田は画面の沖田に応えた。徳川も横で同じ話を聞いていた。

「あと十分以内でか」

「厳しいですが、状況がそうであるならここはやるしかありません」

エンジンに向き直る。アナライザーが火薬の真鍮薬筒にへのへのもへじやコックさんを落書きしているところだった。

「諸君、聞いてくれ。エンジン始動を早めなければならなくなった。十分以内にメインエンジンを回さねばならん」

「オウ! 野郎ドモ、ココガ気合ノ入レ時ダゾ!」

とアナライザー。どうも真田の助手という地位を与えられたせいか、古代といた時より威勢がいいようだ。

「全員位置に就け!」

徳川の号令で、「はい!」と叫んで機関員がそれぞれに散る。メーターの並ぶパネルを睨む者。クレーンでも動かすような台座席に登る者。〈大砲〉とでも呼ぶしかないエンジン始動接続器のコードを引くのは藪の役目だった。全員、ヘルメットと共に、耳を保護するイヤープロテクターを当てている。

「アナライザー、装填を手伝ってやれ。まず一発での始動は無理だ」

「アイサア!」

とアナライザーは、自分の頭の上にあるトサカのような放熱板にイヤープロテクターをあてがうと――このロボットにそんなものが必要なわけはないのだが――藪の元に走っていった。

そして真田は、艦橋から送られてくる情報を見張る役となる。17基のミサイルがついに地に潜ったことを地震計が示していた。位置や速度は、それから概算するしかない。

「時速40キロ前後か……〈ヤマト〉まで何分だ?」

「メインエンジン・チェック完了、エネルギー充填百パーセント!」「回路よし、始動シリンダー準備よし!」「主動力線、コンタクト! メインエネルギー、スイッチオン!」

機関員らが叫ぶ。メインエンジンが唸りを増した。

「補助出力100……200……」

徳川により、メーターの目盛りが読み上げられる。その数字が上がるごとに、機関室内の振動が強くなっていくのがわかった。

「600……900……1200……」

「撃発コード、安全装置解除」藪がレバーをひねって言った。〈大砲〉のコードを掴む。

「2500……3000。波動エンジン回路、接続!」

「接続!」

コードが引かれた。途端、すさまじい爆音が機関室に鳴り渡った。〈砲〉の尾栓がガクンと飛び出してくる。

――が、同時に、すべての音も振動もんだ。エンストを起こしたクルマそのものだった。メーターの針がどれもこれも瞬時に落ちて、ランプが消えていってしまう。

波動エンジン始動接続――その一回目の試行はやはり失敗だった。

「気を落すな!」真田が叫んだ。「わかっていたことだ。チャンスはまだ何回もある。すぐ二回目にかかれ!」

「はい!」

同じ手順があちこちでまたガチャガチャと始められた。真田は状況に目を落とす。〈ドリルミサイル〉は明らかに〈ヤマト〉への輪をせばめていた。

「どうかね」と徳川が聞いた。

「おそらく……あと二回が限度……」

だが何よりも、アナライザーと藪だった。藪が機械のハンドルを回すと、煙を吹く真鍮の筒が排出される。それはやたらと騒々しい楽器のような音を立て、ガラガラと床を転がるのだ。素手で触れば火傷やけどするのは間違いない。

「ワワワワワ」

とか言いながら、アナライザーが次発を手渡す。装填。

「接続器準備完了!」

「了解。補助動力スタート!」

またエンジンが唸り出した。「補助出力100……200……」

そして3000。

「波動エンジン回路、接続!」

ドカン! だが、二回目の試行も失敗だった。

くじけるな! 続けて行け!」

――と、そのとき艦橋からの森の声が、全員の耳当ての中の通信機に入ってきた。

『〈ドリルミサイル〉が速度を増しました! なんらかのブースターを|用《もち》いたようです。〈ヤマト〉到達まであと二分!』

「ひっ」と藪が、急に喉が詰まったような声を出した。動きが止まり、そしてガタガタと震え出す。「そんな……も、もうダメだ……」

「おい、しっかりしろ!」

徳川が叫んだ。しかし藪は、どうやら排筒ハンドルもまともに回せなくなってしまった。それどころか斜めの床に立ってることもできなくなりそうに見える。

「藪! 気をしっかり持て!」

「アナライザー!」

真田も叫ぶ。アナライザーは三発目の薬筒を抱えていたが、それを下ろしてハンドルに手を伸ばそうとする。しかし藪は、どうにかそれを掴み直した。震えながらもしがみつくようにしてハンドルを回す。

薬筒がガシャンと落ちた。

「ワタシガ入レマス」

「た……頼む……」

排筒ハンドルはそのまま次発装填ハンドルとなる。藪は一度握ったそれに手がくっついてしまったようになってるらしい。〈接続器〉――もちろんそれが〈大砲〉の正しい呼び名であるのだけれど、しかしどうも――の受け皿にアナライザーが薬筒を入れた。藪は震える手でハンドルを回転させる。

三度みたびの手順が開始。徳川が数字を読み上げる。

「補助出力100……200……」

同時に森の声が聞こえる。

『ミサイル、あと千メートルにまで到達……』

「600……900……」

『九百……八百……』

そして、「3000。波動エンジン接続!」

「うわあああっ!」

藪が叫びつつコードを引いた。

轟音。しかしエンジンはまたガックンといった感じに動きを止めた。

静寂が機関室を包み込む。一同の顔に絶望が広がった。

エンジンが止まったのは艦橋でもわかったらしい。真田が見る画面の中でドリルミサイルは〈ヤマト〉まで四百メートルに迫っているが、その数字を読み上げるはずの森の声もなかった。

「そんな……」

藪がつぶやいた。へたり込んで床に手を着く。

その手が小さくブルブル震え出していた。

「え?」

と彼はまたつぶやいた。そのブルブルは身の震えではなかったのだ。彼を震わせるのは床の振動だった。そしてそれはみるみる高まってくる。

波動エンジンが始動していた。最初は低く、だんだんと高く、やがて獣が威嚇の叫びを上げるように、鋭い笛のような響きを立てて巨大なシャフトがエンジン内で回り出すのが外からでもはっきり知ることができた。薄暗かった機関室が、次々とともるランプに明るく照らし出されていく。

「う……動いた……」藪は言った。「動いたぞ!」

Re: 始動 ( No.26 )
日時: 2019/09/12 19:12
名前: 島田イスケ

「う、動いた! 動いたぞ!」

同じ言葉を艦橋で叫んだのは島だった。彼の前の計器板でも、今まで眠っていたランプがいくつも光り出していた。

だが喜ぶヒマなどない。「ミサイル、百メートルまで到達!」と、間の三百と二百を飛ばした森が叫んだのだ。

沖田が言った。「宇宙戦艦〈ヤマト〉、発進!」

次の瞬間、かつて〈坊ノ岬沖〉と呼ばれた海の底であった地に巨大な火柱が噴き上がった。

Re: 離昇 ( No.27 )
日時: 2019/09/22 07:18
名前: 島田イスケ

『いま映像が入りました! 皆様、おわかりになれますでしょうか。これです。これが〈ヤマト〉です! 噴煙から姿を出したこの船。これが、宇宙戦艦〈ヤマト〉であるということです! あの爆発を受けながらまったく無傷のように見えます。これが人類が救われる最後の希望なのでしょうか!』

アナウンサーが机からもう少しで前に転がり落ちそうになって叫んでいる。古代はそれをテレビで見ながら、今度こそ完全に自分は気が狂ったのかと思った。一体全体なんやねんなあのドカーンちゅう騒ぎは。それからなんやの悪いエレベーターに乗ってるような気がするで。と、思っていたらテレビが映し出したのがこれだ。ひょっとするとこの部屋、何かドッキリ仕掛けのドタバタハウスなんとちゃうのか。

こんな今どき子供向けのアニメでもようやらないようなこと、大のおとながマジメな顔してやってんのか。おれはその主人公にだけはなりたくないな。ハハハ……戦争ごっこもたいがいにしたらええのんちゃうかい。

そうは思うが、体が震える。いや、床が揺れてるのだが、そればかりでもなさそうだった。むろん、武者震いなんかじゃない。それだってことは絶対にない。だいたい、人類救済だとか、地球を元の青い星にとか、そういうのにはまったくこれまでついていけなかったのだ。そりゃあ、思うよ。なんとかしたい。なんとかしなけりゃいけないだろうと。でもそのなんとかをやるひとりに自分がなどと考えると、途方に暮れてしまうのだ。

この船に乗ってるやつら、全員が、本気で自分が人類と地球を救おうと考えているわけだろうか。そうなんだろなあ、うん……やっぱり。冗談じゃないよ。それならボクは、この船にいるべき人間じゃありません。輸送機飛ばしのただのトラックうんちゃんですから。

そうか。あの艦長というヒゲのおっさんは言ったな。おれを、航空隊の隊長って……あれはひょっとして、ひとりしかいないがんもどき隊の隊長ってことかな。そうだよなあ。こんな船でも運送屋くらい要るだろうしな。そう言やただ逃げるのがうまけりゃいいみたいなこと言ってたもんな。

でもヤだ。がんもどき乗りなんて、そうでなくてももっとでっかい輸送機乗りに小突かれるのに、この船にはきっと特攻野郎Aチームなカミカゼ部隊があるに違いない。そんなやつらがおれを見たなら一体どんなイジメを食うか。

ましてやこいつで何ヶ月も旅するなんて冗談じゃないことですよ。ええと、なんて言いましたっけ。〈イスカンダル〉? そこに何かを取りに行くと。ははははは……なんかおかしな宗教で全員頭がクルクル回ってるんじゃないのか。

そうでなければ、と古代は思った。わざわざ船をこんな昔の軍艦まんまの形にしたりはしないんじゃないかな。だいたいなんだ、〈やまと〉ってえのは?

『ええ、戦艦〈大和〉と申しますのは、本来が250年前に海に沈んだ軍艦であるということです。政府は波動エンジン船の建造にあたり、この残骸をカモフラージュに活用することにしました。これはエンジン始動に莫大な電力が必要なことから地球以外で発進させるのは考えられず、といって地下深くからでは外に出せないことから生まれた苦肉の策ということです。なお建造にあたりまして、ビームの砲身などは擬装したものを夜間に取り付けたものの、それ以外は沈没船を内側から、皮一枚残すように……』

「ははは」古代は力なく笑った。「絶対にバカだ」

Re: 反応 ( No.28 )
日時: 2019/10/22 22:10
名前: 島田イスケ

古代同様、多くの地球の一般市民もこの報道にア然としていた。過熱していたのは軍や政府関係者と、マスコミだけといっていい。むしろ彼らがアツくなるほど、大衆は冷めてしまったようだった。〈ヤマト〉? 〈イスカンダル〉? 〈コスモクリーナー〉? そのおかげで計画停電? 何をギャンギャンわめいてるのだ。オレが心配しているのは、あした食べるための米をどこで手に入れるかということなのに……そう思っていたところに出たのがその映像だった。17基のミサイルの爆発による巨大な黒い煙の中から、現れた突拍子もない形の軍艦。それは昔の沈没船が脱皮したものであるという。

話についてこいというのがどだい無理な話だった。軍人どもはとうとうホントに頭がおかしくなっちまったな。国が敗れるというのはこういうことなんだな……多くの人はそう考えた。もういいや。あすは競輪でもやりに行こう。パンがなければケーキを食べればいいじゃあないか。

十億人と少しになった地球人類の多くはやはり、降伏すればガミラスは命は救けてくれるなどとはまるで期待していなかった。この一件も、なんとか女に子を産ませようとする政治家どもが、またバカなこと始めたか――そんなふうにしか受け止めなかった。男より女の方が敗けいくさに強いという。しかし今の地球には、それはあてはまらなかった。

日毎ひごとに濃度を高めていくと言われる水の放射能。しかしコップをながめても、それは眼ではわからない。ただ噂が聞こえるだけだ。どこの誰の頭の毛が抜け落ちた。誰の子供が奇形で生まれた。どこかの家がまた心中で全員死んだ。何も猫まで殺さなくてもよさそうなのに……。

西暦2199年。それが地球の地下都市だった。乾坤一擲けんこんいってき起死回生きしかいせい。そんな言葉におどる者などイカレた右翼団体のたぐいか、とにかく自分が120まで生きられるなら他はどうでもいいとわめく頑固じいさんくらいなものだ。

そこへ今のあれである。ねえ見ましたか。例のナントカ。困りますよね、畑に光を当てないなんて……自然のものと違うのに、そんなことして大丈夫かしら……。

船務長の森雪が聞いたらイスカンダルなんか行くのはやめてこのクルーだけの星を探そうと言うかもしれないような会話が、されてしまうのが現実だった。そして一方、一部の者はすぐさま言い出し始めていた。〈コスモクリーナー〉? 騙されるな。あの船は、あいつらだけで地球を逃げる気に違いないぞ……。

むろん、強硬な降伏論者が考えを変えるはずもない。公開された映像は暴動に火を注ぐだけだった。引き返させろ。いや、ガミラスにくれてやれ。〈彼ら〉は実は地球を恐れているだって? はっ、バカらしい。だったらなおさら、絶対服従のあかしとして、そのナントカ計画を放棄すればいいだろう――。

さてところで、このように多くの反応があるなか、しかしたった一点だけ、誰もがほぼ一致する見解を持ったことも忘れず付け加えておかねばならないだろう。それはこのようなものだった。

いずれにしても船のたった一隻で、何をどうできると言うんだ……。


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