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「ねぇ、相席いいですか?」俺に話しかけてきた女子生徒。学食の6人テーブルは、俺1人が独占している状態だったので、俺は素直にokを出した。「えへへ。お礼です」そう言って彼女は自分の天ぷらを俺に奉仕してきた。「……ん」俺は礼のつもりで声を出した。俺は学校の嫌われ者。みんな腫れ物を扱うような目でこちらを見てくる。無口で無愛想。ただコミュ症なだけだけど。「同じクラスですよね?」「う……ん」「南蛮煮好きなんですか?」「うん……」「はは」「?」俺は彼女が笑った意味もわからず混乱する。「ははは、カナタ君、全然話せるじゃないですか!」「………え。なま……え……しって……たの?……」誰にも名前は記憶されていないと思っていた。主に覚えられるのは「九頭龍」のヤンキーに間違われる名字の方だし。「だって、同じクラスですよ!あ、私は月鏡 カナです。名前似てるから覚えやすかったのかな?えへへ」「………カナ…?」「カナタ君!」名前、似てるなぁとか思いながら、もうここ以外で話すことはないだろうと少し哀しんでいた。_____________________________「カナタ君おはよう御座います!」「ん……」翌朝学校に登校するとカナが俺の前の席に座っていた。カナが俺に挨拶したことで、クラスメイトがざわめく。どうやらカナはクラスのアイドル的存在らしい。「カナ………お……はよ……」俺は無愛想と言われないように挨拶を返した。_____________________________そんなこんなで1年間。クラスの中も深まり、俺はクラスの話に馴染めなかった1年前を振り返っていた。「カナタ君、楽しかったですね!」「カナ………また、同じ……クラスに……なれるといい」「私も同じ気持ちです」感傷に浸っていたら、カナが切なそうな顔をしているのに気がついた。「カナ……?」「あ、ごめんなさい……なんでもな……いです…」「カナ、何か……あった…ら…言ってよ……」「カナタ君……いいえ、なんでもないんです!」ならいいけど。カナは電車で学校へ来ているので電車まで送ることにした。_____________________________「バイバイです、カナタ君」「カナ……また、3年生で……?」「……………」「カナ……?」カナのいつもの場違いなほど明るい声が聞こえない。俺は不思議に思ってカナの顔を覗き込む。「カナ……?何か言って……?」「カ………ナタ…君……」カナは泣き出してしまった。カナの介抱をすること数十分。落ち着いたカナが話し出した。「私、おばあちゃんに勝手にお見合いを勧められてたみたいで……顔も見たこともない人と結婚するんです」「……………そう」「だから、もう、みんなと会えない。相手の方からは専業主婦になれと言われて……学校に行けません」「……………そう」「……………カナタ君」「?」「話したら、落ち着きました。もう、受け入れなくてはいけなかったのですね」「カナ……」「これが、月鏡の名字を継ぐということです。私、諦めはいいほうですから!」「カナ……。うん」カナはまだ悲しそうだったけど、カナが大丈夫と言っているのなら多分大丈夫だろう。話している間に電車が来た。俺はカナを見送るために白線の外側でカナをにっこりと見た。あれ………?「笑……え…ない……」「カナタ君?」「カナ……?」俺は、どうして泣いているのか。「カナ……ごめん、情け……な…」「カナタ君、何かありましたか?」「カナ……」「カナタ君、さっき、カナタ君が私にしてくれたように、私もカナタ君の話を聞きます」「カナ…………俺……」この、悲しい気持ちはきっと失恋の気持ち。という事は……涙は一滴しか流れなかった。ていうかむしろ、カナのほうがつられ泣きしている。「カナ、俺、カナの事、好きだった」「ドアが閉まります。ご注意ください」俺の言葉のすぐ後に無機質な声がホームに響く。俺は、現実を見るのが辛くて目を閉ざした。「私もです。カナタ君」「え?」目を開けるとカナがいた。カナが………。「月鏡なんて、ばっくれですね。私、カナタ君が好きです」「…………!俺……?」「そうです!」俺は、このままじゃダメだと思い、もう一度告白する事にした。「俺に毎日、天ぷら食べさせてください」「はは、なんですかその告白!……okですよ!」
「好きでした、ずっと前から____」去年のクリスマスイブの日。ずっと好きだった女の子から告白された。「僕もっ、好きでした!」その日から、僕と女の子は付き合うようになった。女の子の名前は渚。明るくて優しくて、一番はよく笑うところが好きだった。そしてそれから僕と渚は両方の親にお互いを紹介したり、結婚を考えるようになっていた。とにかく幸せな日々をおくっていた。…はずだった。「渚さんの彼氏さんは、重い病気にかかっています。しかも、いまだに治療法が解明されていないような、難病で助かる見込みはありません。」「そんなっ…!」渚はその日、ずっと泣いていた。ずっとずっと。自分のことのように____でも、渚は僕の前では笑顔を絶やさなかった。それと難病の事は僕には絶対に言わなかった。僕の中から笑顔が無くならないように。しかし、僕の体調は急変した。「いやっ、死んじゃいやだよっ!」渚は、笑っていなかった。ずっと今にも死にそうな僕の前で泣いていた。当たり前だ。こんな状態で笑えるわけがない。けど、僕が最期にみたいのは、こんな顔じゃない。渚の輝いたようなあの笑顔が見たいんだ。「渚…笑って?キミが笑ってくれたら、僕は思い残すことはない…から…」「うっ…」渚は、泣きながらも僕に向かって精一杯の笑顔を送ってくれた。僕はその日、息をひきとった。でも、最期にキミの笑顔が見れただけで僕は幸せだよ、渚。だから、幸せに暮らして_____
私には生きる意味も生きる価値もない。大して可愛くもない、綺麗でもない。大人しくて優しいけど、その実、心の中で人の悪口や罵詈雑言を吐きまくっている。そんな私の存在を、ある人は肯定した。 その男の人はとても優しくて、裏があるのかと思ったら全然なくて。そう、いわゆる完璧な人間なのである。彼が優しすぎるが故に、彼の言葉は私の心に突き刺さる。「どうしてそんなに卑下するの?」事実だからだよ。「凄く可愛いよ?」嘘つき。「君の優しいところ、好きだな」ただのまやかしだよ。「――何で、泣いてるの」……嬉しいからだよ。 優しげな彼の目に私の不細工な顔が映って、生暖かい液体が私の目から零れて、ぼやけた視界の中彼は私の頬を撫でた。 自分自身で蔑んでいる『私』と言う存在を、彼は本心からほめてくれている。これに喜ぶ自分と、そうではないと否定し続ける自分がいる。「泣かないで」私の頬に彼の手が触れ、伝っていた涙を拭っていく。彼の目はとても悲しそうで、心配しているように見える。 これも、まやかしだ。心配しているように見えるだけ、心配なんてしてないんだ。そうなんでしょ?分かったから、お願いだから、抱き締めないで。私みたいな無価値で最低な人間が、貴方のような素晴らしい人に惚れてしまう。 でも彼の抱き締める力はとても強くて、抱き締めるその手はとても温かい。「好き」短いその一言で、私は彼に心を奪われた。
「………吸血鬼?」 なんで現実味のない言葉。 別に怖くて言ったんじゃない。確認するために言っただけ。 そう自分に言い聞かせたところで、震える膝は隠しようがない。「そうです。でも、貴方を驚かせに来たのではありません。それに……」 吸血鬼は、私の姿を一瞥して、呆れたように言う。「ここで私が手を離したら、貴方は奈落へ真っ逆さまですし」 そう、私は崖から落ちそうなのを、吸血鬼に救ってもらっていた。「あの、早く地面に…」「あぁ、はい」 吸血鬼さんは私を素早く下ろすと、 笑って言った。「なんで崖なんかに落ちてたんですか?」 何でって……「………死にたかったからです」 間をおいて答えた。「………それにしては私に怯えているようですが?」 確かにそうだったけど……さ。「………ろしてください」「?」「殺してくださいっ!」「………はぁ」 吸血鬼さんは一息ついて言った。「最近は命を簡単に考える若者が多い……我々吸血鬼は、綺麗な女性しか襲わないので貴方は別に」 なんか失礼なことを言われた気がするけど……気にくわない……「じゃあ、私が綺麗になったら殺してくれますか?」「………その時は」 そこから、私たちの変な関係は始まった。 その1、お互いの私情は何も質問しない。その2、一定の場所にとどまらない。その3、半径100m以上離れない。 この3つをルールとして、私たちは生活した。その1は2人とも話したくなかったから。その2は吸血鬼さんは憎まれる存在、私は……ちょっとした有名人だから。その3は、迷子にならないように。 こうして2人で生活していくうちに、私はすくすくと育って15歳になった。 不思議と吸血鬼さんは年を取っても姿が変わらなかった……。「吸血鬼さん、私そろそろ綺麗になったと思いません?」「?新手のおねだりですか?」「いいえ、もう殺してもらえるかなぁーっと思って」「………まだまだ綺麗になれますよ」「えぇー………」 私の綺麗になるための修行は、ほとんど自分の内面を磨くものだった。その成果あってか、最近は街に行くと必ず声をかけられる。 まぁ吸血鬼さんが全部追っ払っちゃうんだけど……! ある日の夕暮れ時、その時に住んでいた街に、吸血鬼が出た…らしい。 私たちは疑われる前に、それぞれ離れ離れになって逃げた。 それから2年。吸血鬼さんを私はまだ見てない。「………」 私は、吸血鬼さんと最初に会った崖にいた。 今私は17歳。自分磨きも怠ってなかったので、多分綺麗なはず。「吸血鬼さん、今なら殺してくれますか」 吸血鬼さんとはもう2年も会ってないんだということを重々承知で漏らす。「………今なら死んでも……」 理想の死に方とは違うけど、と思いながら足を崖に伸ばす。 止めて、と思いながら止めないで、と思っていた。「おや………懐かしい姿が」 聞こえたのはあの声。「………!吸血鬼さん?」 でも私は落ちる寸前。せっかく会えたのに……。「………貴方は。まだ死にたいのですか?」 吸血鬼さんは何事もなかったように私を地面へと動かす。 また、助けられてしまった。「………ありがとうございます」「いいえ。久しぶりですね」「はい」 会話が続かない。 私は思い出したように言った。「吸血鬼さん、私、綺麗になったでしょう?」「………ええ。とても綺麗になりましたね」「………殺して」「まず、私の話を聞いてください」 私を制するように吸血鬼さんが話し出した。「私は、貴方と離れて旅をする過程で、貴方が隠していた過去のことを知りました。 確か10年前、私たちはここで出会いました。その頃、確か街の方で、化け物の大量出現が問題になってましたね。 犯人は7歳の少女、顔は銀髪に碧眼……貴方のことですね。 銀髪も、碧眼も……貴方は、エルフ。化け物の大量出現は、貴方が吸血鬼を撲滅するためにやったのが、人間に被害を出してしまった。 以上です」 私はゆっくりと微笑んで言った。「そう。だから私は、エルフから追放されたんです。エルフは、20も生きれば死にます。どうせ後3年。 できれば吸血鬼さんに殺してもらいたかったです」 吸血鬼さんは微笑んだ。「………仕方ないですね。でも、私は貴方ともう少し一緒に居たかった……ハッピーエンドは……ないのでしょうか」「………辛くなる前に……」 吸血鬼さんはうつむきながら私に近づいて来た。私は覚悟を決めて、吸血鬼さんの思うがままにした。 吸血鬼さんが私の首に牙を立てた。そしてゆっくりと歯を首筋に入れ込んでいく。「綺麗に……なりましたね。よく出来ました」 私は、吸血鬼さんのその言葉を聞きながら、目を閉じた。
家のトマトが赤くなった。ついに、この日が来たか。ド田舎の私の家。食料のほとんどは、家の畑で採れた野菜。中でも、大好物はトマト。真っ赤なトマト、甘酸っぱいトマト。私は密かにトマトを「恋の実」と呼んでいた。こんな田舎じゃあ、理想的なロマンチックな恋とかない。長身茶髪の人気者とか、少なくとも私の学校にはいない。別の学校に彼氏つくってる子がいるとか聞いたことあるけど、私にはとてもじゃないけどそんなことできるとは思わない。そんな恋愛には無縁な私だから、野菜を自分の手で育てて、実がなったらおいしくいただく…という全くもって女子力のないことに幸せを感じてしまうのだ。だから、仮に将来結婚できるとしたら、野菜のおいしさをわかってくくれる人と結婚しよう。最も、結婚なんて次元の違う夢のまた夢。なんか苛立って真っ赤に染まる丸々とした大きな実をかじる。おいしい。今までのどんなトマトよりおいしい。あまりの感動に、涙が…「そのトマト、おいしそうだね。ってあれ、泣いてる!?」「いや、あまりにもおいしくて…」はた。誰だこいつ…?「僕は君の家の隣の家の孫。東京から参りました!今までは部活忙しくてこれなかったけど今年弱くて引退試合一回戦負けしちゃってさ。でも悔いてないよ!…おかげで君に会えたから」てへぺろ☆と言わんばかりに、眉毛をハの字にして舌を出した君の笑顔に、涙も止まって私は思わず赤面した。―――家のトマトより赤くなった。
「今夜、ペルセウス座流星群が来るんだって」キミはそう言った。朝からずっと曇ったままの空を見上げながら。こんな天気じゃ星なんて見えないだろ、と僕が言うと、「ぶー。つまんないの。そんなんだからくー君はつまんないんだよ」と、僕に対する不満を述べながらぽかすかと殴ってきた。まあ、痛くはなかったけれども。「見に行こうよー。ほんの少しでいいからさー」と、キミは僕の服の裾を引っ張った。こうなると、僕の意見なんてお構い無しになってしまう。やれやれ、仕方ないか……服が伸びてしまうのも嫌だし。今晩は、付き合ってあげることにしよう。「きっと願い事いっぱい叶うよー!いっぱいだよー!」ビルが鬱陶しくなるほど乱立した都会から抜け出し、僕は星がよく見えるあの場所へと車を走らせていた。キミは助手席で楽しそうにはしゃいでいた。どんな願い事をするんだい、と僕が聞くと、「ちっちっちっ、女の子の願い事を聞くなんて罪な男ですなぁ」と返してきた。なんだその人差し指を左右に振る動作は。妙にイラっとする。「でもまあ、くー君になら教えてあげてもいいかなっ」どうやら教えてくれるようだ。一体どんなお願いをするのだろうか。「あとで教えてあげるね」―星がよく見えるあの場所が、近づいてきていた。空は曇っていた。そんなことは朝からずっと分かっていたことだが。「ねえくー君。ここに5年前に来たときのこと、覚えてる?」勿論覚えている。そのときも、ペルセウス座流星群を見に来たんだったか。この丘で。キミと寝転がりながら。「早く行こっ、くー君」何言ってんだ、曇ってるじゃないか―そんな僕の言葉にも構わず、キミは駆け出していった。後を追う僕。「よしっ、ここら辺でいいかな」キミは丘に寝転がり、空を見上げた。勿論、流星群なんて見えっこなかった。「くー君は、あの日のことを覚えてるって言ったよね」じゃあ目を閉じればいいんだよ、とキミは言った。「私はいつでも思い出せるよ。あの日の空を」なるほど、そういうことか……想像、いや、追想か。思い出せる。あの日見た流星群を。この瞳の裏に。キミが立ち上がる気配がしたので、僕はそっと目を開いた。キミは、空を見上げていた。その綺麗な長い髪が風に揺れていた。「ねえくー君。私の願い事、だけど」そう言えば、まだ聞いていなかったな。「私の願い事はね」そう言いながらキミは微笑んだ。「くー君と、ずっと一緒にいることだよ」その願い事は、5年前のあの日と同じものだった。
私は貧血を起こし病院に来ていた来たついでにと色々検査をしてもらうことになった久々に検査を受けながら思い出す昔から体が弱くって外で遊べない私に気遣っていつも隣に居てくれた幼馴染のことを思い出す今もその幼馴染は私の隣で私を支えてくれてるそんな彼に私は惹かれ恋い焦がれているしばらくして検査の結果が出たらしく私は病室に呼ばれた医者はどこか迷ったように困ったように私に「今から言うことを冷静に聞いてくれ」と、前置きするその言葉にすごく嫌な予感がした「君は重い病気にかかっていて、長くてあと一か月しか生きられない」その言葉を聞き終わると同時に音が遠のいていく、視界が眩むそして、君の笑顔が思い浮かぶそれから気が付くと私は自分の部屋に居たどう帰ってきたのかも、帰ってきてからどれくらいたったのかも分からないそんなことはどうでもいい私はこれからのことを考えなきゃいけない冷静になった頭で下に降り親に話を聞いた入院すれば一か月は何とか生きられるらしいでも、入院しなければ短くて一週間、長くて二週間しか生きられないらしいそれを聞いて私はすぐに答えが出た二週間、いや、一週間でもいい、少しでも長く彼と居たい親は私の意思を尊重してくれた彼にはこのことを伝える気はない優しい彼ならきっとどうにかしようと頑張ってくれるだろうでも、私はありのままの彼と日常を最後まで味わっていたいのだそれから私は少し彼に積極的になった大好きだって気持ちは伝えないまま彼と一週間楽しく過ごした日に日に体は病気の浸食によりぼろぼろになっていった自分の体だからこそ分かる、明日が最後になるだろうだから、明日はずっと笑顔でいなくちゃ最後に君が見る私が美しいように日はのぼり朝が来た学校に登校して授業をうける当たり前だったこの景色も習慣もこれで最後放課後になって私は彼を誘って原っぱに向かった原っぱの上で最後のおしゃべりをしたそして夜になり星を見ながら私が切り出そうとしたとき、彼が先に切り出してきた「なあ、お前俺になんか隠してるだろ」正直驚いた、でも、すごくうれしかった「・・やっぱり、××には隠し事できないね」うれしくて、悲しくて、涙がこぼれそうなのをこらえて私は立ち上がり彼のほうを向き話を始めた「私もう、××と一緒に居られないんだ、もう、お別れしなきゃいけないんだ、だから最後だから笑顔で言おうって決めたのに、やっぱり駄目だね、涙がこぼれちゃう」涙を拭い、一拍置いて、私は今私にできる最高の笑顔で言った「さよなら××、ずっと好きだったよ」彼は呆然とするその隙に私は逃げるように帰った次の日私は息を引き取った
僕には名前が無かった。この世に生まれ堕ちたとき、僕はただの林檎だったのだ。 母の腕に抱かれ、林檎は胎児になる。赤い肌が白くなり、僕は赤ちゃんになった。『翔平』 それがはじめに与えられた名前だった。母の青い唇が、愛おしそうに、何度も何度もそう動く。このときから僕は、翔平になった。 大きくなり、やがて仲間ができた。自分と同じような形をしているのにまるで違う彼らを見て、僕は少し戸惑った。しかし、そんな僕に背中を押す母は和やかに笑っていた。『しょーへー』 これが彼らが僕に与えた名前だった。もじもじとその場を動けない僕の手を彼らの1人がぐい、と引っ張り、遊ぼうぜ! と言った。彼らに連れられて、走り回る。このときから僕は、翔平としょーへーになった。 月日は流れ、僕には愛する人ができた。笑顔の可愛い、優しい女性。僕はその笑顔を、一生守ってあげたいと思ったのだ。『あなた』 これが彼女が僕に与えた名前だった。美しい声で囁かれたのは、たった三文字の言葉。しかしそれは、僕を縛りつけるのに十分なものだった。このときから僕は、翔平としょーへーとあなたになった。 めまぐるしく動く時間の中、彼女は僕との子供を産んだ。真っ赤な女の子だった。やはりはじめは林檎で、次第にその子は人の形を象っていった。『お父さん』 これが子供が僕に与えた名前だった。まだあどけない声と口調で一生懸命呟き、彼女は満足げに笑う。このときから僕は、翔平としょーへーとあなたとお父さんになった。 過ぎ去っていく穏やかな日々。名前に溢れた自分。親しい友人。愛おしい人。名前の無かった僕が名付けた子供。僕は幸せだった。 事故に遭った。幸いにして命に別状は無かったが、僕は記憶を失った。 自分が誰かわからない。僕の名前は、何? 一向に思い出せず、僕は発狂した。『お父さん』 娘のその声で、記憶の欠片が蘇る。僕は、お父さん。**の、父……『あなた』 私の身を案じる美しい声で、愛おしさが蘇る。僕は、君の夫。ただ1人の、あなた……『しょーへー』 元気の良いその声で、明るさが蘇る。僕は、彼らの仲間。親しいしょーへー……『翔平』 最後に、母の声で、名前が蘇る。蚊の鳴くような、心細い声だった。僕は、母の息子。お腹を痛めて産んだ、翔平…… 翔平、しょーへー、あなた、お父さん。 すべての名前が揃ったとき、僕はすべてを思い出した。 僕に名前を与えてくれた大切な人たち。彼らを忘れることなどできなかった。 そして今、僕は新たな名前を手に入れようとしている。『お祖父ちゃん』 これが、孫が僕に与えた名前だった。 僕はまた、大切な人を手に入れた。
「・・おぉ!アイデア湧いてくる!」 それはあなたの口癖で、私を困らせる一言でもある。 「先輩・・・あなたはまたこんな所で・・・!」 いつも、いつも私があなた探す・・・それが日課になってしまうほどに。どんな方なのか、どんな人なのか、いつも考えた憧れの人。初めて会った時の私の期待を裏切った・・・その“姿”。…私の理想を見事に打ち砕く、破天荒で、神出鬼没で、それでも憧れの“人” 「だって、アイデアが!」 「“だって”ではありません!!先輩の散らかしたのを!片付けを!“私が”しなければいけないのですよ!」 「あぁ!もう新入りの所為で無数の物語が!もう、宇宙の損失だぁ!」 「くぅ!私の名前は桜木茜です!いい加減覚えてください!」 「ごめんって、そんなに怒るなよ・・・」 泣き出したいくらい、それでも、それでも探してしまう・・・あのキラキラ輝く金色の髪。神に与えられたと言っても過言ではない、眩しいくらいの・・・人を寄せ付けるようなスカイブルーの瞳。全部全部凄いのに、なかなか好きになれない・・・この破天荒な“部長” でも少しずつ、話という話はしていないがそれでも話して分かったのが一つ。ただこの人は、見た目に反して“臆病”で“寂しがり屋”の“普通”の人。他の人に、天才と言われても。それを自分自身認めていても・・・他の人と全く同じ。 「・・・私はただそんな、あなたのそばに。」 「うーん?新入りなんか言った?」 「いえ何も。それより、片付けを手伝ってください!」 そんなやり取りを未だに咲きそうにない桜が見守っていた。 ◆◇◆◇ 桜が舞い散る公園。休日にも関わらず人気が少ないお気に入りの場所。隣には、近くにずっと居られるとは思ってもなかった・・・“あの”輝く金色の髪、何年たっても人を惹きつけるようなスカイブルーの瞳。私にとってもう・・・隣に居なくてはならない存在の“大切な人” 「あの、ここを見ていると思い出しませんか?」 「・・・うーん?何をだ?」 「・・・あなたを探した・・・“学園の日々”をです。」 ふと足を止めて、見上げた桜。淡い色でもう見頃は終えただろうに、それでも“私を見ろ”と主張するような、自身の名前にもあった“桜” 「そうか?・・・俺はどちらかと言うと、お前が告白してきた事を思い出すな〜。」 「なっ!そんな事は思い出さなくていいんです!」 「そんな事ってなんだよ。俺にとって大切な思い出なんだぞ!」 あの“日常”から、もう何年かたった。それでも私はこの方と一緒にいる。破天荒だった“部長”は・・・また自分の仲間のために武器を持ち、戦場へと帰ってきた。そして、少しずつ少しずつ、近づくその距離に戸惑いを見せながら私はこの方に、憧れ以外の感情があると知った。友人曰くそれが“恋”だと解るのに・・・そう時はいらなかった。 「・・・それにしても、もうそんなにたつんだな〜。改めて、俺はお前の事が大好きだ!」 「知っています。私も改めてあなたの事が大好きです。先輩いえ…天音さん」 「それも知ってる。愛してるよ・・・アカネずっと一緒にいような。」 「はい私も・・・」遠くから私たちを呼ぶ声がする。幼く、頑張って私たちのもう一つの名を紡ぐ声が「お母さん〜!お父さん〜!早く!」 今はただこの体温を一番近くで感じられる事が嬉しいよ ・・・そして桜はそんな彼らのやり取りを誇らしげに見守っていた。
邪神(っぽいの)とそれに取り憑かれた女子高生のマイペースなあれそれ。-*-*- 結論から言うと。 私、赤間成美は悪魔に取り憑かれてしまったのです。『よくわからないものには触ってはだめよ。危ないかもしれないでしょう?』 昔曾祖母が口をすっぱくして言い聞かせてくれた言葉を何故数分前に思い出さなかったのだろうか。いや、蔵の荷出しなのだから古い本の一つ二つ、触らない方がおかしいと言えばおかしいのだが。 しかし現実は小説よりも奇なりという。人生はめちゃくちゃなことが起きても不思議はないし、有り得ないということは有り得ないのだから、危機管理を怠ってはならないのだと痛感した。例えばこんな何もないが沢山あるド田舎だとて例外ではなく、まるで何かの漫画のような鮮やかさで、非日常は、少年の姿をして私の目の前に降って涌いたのだった。 黒く長い髪に浅黒い肌、爛々と光る深紅の瞳に、獣のようにやけに鋭いぎざぎざの歯。上半身はほぼ半裸(辛うじて肩から胸の辺りまでは襤褸で覆われている)で、下はやたら豪奢な飾り(金属製らしく、時折じゃらじゃらと音がする)で飾られたサルエルパンツ(っぽいズボン)に裸足。腹の辺りにはびっしりと幾何学模様の刺青(よく見ていたらうねうねと動いていた。きもい)が施されているその姿。それは奇抜なコスプレと言えばそれまでだったが、残念ながら不可解にも、たまたま私が触れてしまった本の中から飛び出してきた少年の物である。ちなみに、さらりと告げているが纏ってる雰囲気はヤバい。どのくらいヤバいかというと、先程まで呑気に近くの木でチュンチュン鳴いていた雀はあっという間に飛び去り、縁の下で欠伸していた呑気な猫が飛び起きて走り去っていったレベルである。確信を持ってヤバい。 しかしそのヤバい少年はお利口さんにちょこん、と私の前に正座して何やら上機嫌に私を見上げているのが居た堪れない。切実にやめてくれ。 少年はアーリマンと名乗った。後で偉大なるグーグル先生の御力を借りたところによると、ヘヴィメタルミュージシャンの──ではなく、ゾロアスター教とかいう聞いたことがあるかないか怪しい神話の邪神の名前らしい。とはいえ、その大本の存在から切り離された側面を模した悪魔を言葉にして再現したものとかいうよくわからない存在なのだと何故か照れながらアーリマン本人(人でいいのか?)は補足してくれた。なんだその本人の兄弟と同じクラスだった奴の妹の隣の席の奴みたいな近いようでめっちゃ遠い関係性。突っ込むべきか否かを悶々と考えるのは多分、思考回路がキャパオーバーして現実に追いつかなかった結果なのだろう。だがこれが不味った。曖昧に頷くしかない私に、アーリマンはいい笑顔で告げる。「そういうわけだから、今日からオマエに取り憑きました」 どういうわけだ。◇◆◇ どうやら我が家にはそういう曰く付きな品があれこれあるらしく、何代かに一人はなにがしかそういう珍妙なものに好かれ、取り憑かれるらしい──と、16年生きていて初めて祖母からぶっちゃけられた。なんでも祖母の祖母は妖精に好かれていたとか、ずうっと祖先には刀の神様に気に入られていたひともいるとかいないとか。それはともかく、だからといって「アンタは悪魔に好かれるのねえ、血筋を感じるわあ」などとほけほけ笑われても困るのだ。妖精だの妖怪だのならまだしも、悪魔に好かれるという字面は凶悪さしか感じない。可愛い孫が今にも魂が抜き取られるかもわからないというのに、少々呑気が過ぎないだろうか。 「暫く出てなかったから生きてる間にはお目にかかれないかと思ったわ」「次はいつになるかしらねえ」などとちょっと珍しい野鳥並の感想で終わらせられると少し空しいものがあるのだが。ちなみにこの間、問題の悪魔アーリマンは私の背中に張り付いて退屈そうに欠伸をしていた。「狼狽えすぎじゃネ?」……誰のせいで混乱しているのか分かっているんだろうかこの悪魔。 兎に角、他の家族に話しても終始こんな調子であったため、家族は頼りにならないと早々に見切りをつけることにした(断じてちょっとドライな対応に心が折れた訳ではない)。となると頼るのは友人だ。この際滅茶苦茶に馬鹿にされても構わないので、悪魔が取り憑いている現状が異常事態であることを理解して貰いたい。 だが期待は脆く破れ去ったのである。不躾に無料通話アプリの電話を繋いで、必死に状況を説明した私に友人から返ってきた言葉は『あっそ』の一言である。「やっぱ信じられない?」『いや、信じてるけど?寧ろなんでそんな慌ててるわけ?』 おーまいごっど。我が家の体質は近隣住民の間では常識だったらしい。無料通話とはいえパケット料金はかかるから、と早々に電話を切った薄情な友人の態度から察するに、他の人からもそんな感じで軽く流されるだろう。 思わず遠い目になった私の肩を、すっかり定位置になったのか背中に張り付いたアーリマンがぽんぽんと軽く叩いたのだった。 ほんとに、誰のせいだと。