SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

【秋の〜】第13回 SS小説大会開催中!【夜長】
日時: 2016/12/01 00:07
名前: 副管理人 ◆qMxJS2Fu4U

【〜秋の夜長に〜SS小説大会にご参加いかがですか?】


■結果発表!(2016.11.30 管理人更新)

集計し精査した結果、
壬崎菜音@壬生菜さんの「マッチョ売りな少女」(>>39)が
1位となりました!

壬崎菜音さん、おめでとうございます〜!

今回ご参加くださった皆様、誠にありがとうございます!
投票してくださった皆様にも深く御礼申し上げます!
次回SS大会にもふるってご参加ください。


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【日程】

■ 第13回
(2016年9月3日(土)18:00〜11月26日(土)23:59)

※実際には11月27日00:59ごろまで表示されることがあります
※小説カキコ全体としては3回目のためまだ仮的な開催です
※ルールは随時修正追加予定です
※風死様によるスレッド「SS大会」を継続した企画となりますので、回数は第11回からとしました。風死様、ありがとうございます!
http://www.kakiko.info/bbs_talk/read.cgi?mode=view&no=10058&word=%e9%a2%a8


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【第13回 SS小説大会 参加ルール】

■目的
基本的には平日限定の企画です
(投稿は休日に行ってもOKです)
夏・冬の小説本大会の合間の息抜きイベントとしてご利用ください

■投稿場所
毎大会ごとに新スレッドを管理者が作成し、ご参加者方皆で共有使用していきます(※未定)
新スレッドは管理者がご用意しますので、ご利用者様方で作成する必要はありません

■投票方法
スレッド内の各レス(子記事)に投票用ボタンがありますのでそちらをクリックして押していただければOKです
⇒投票回数に特に制限は設けませんが、明らかに不当な投票行為があった場合にはカウント無効とし除外します

■投稿文字数
200文字以上〜1万字前後まで((スペース含む)1記事約4000文字上限×3記事以内)
⇒この規定外になりそうな場合はご相談ください(この掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」にて)

■投稿ジャンル
SS小説、詩、散文、いずれでもOKです。ノンジャンル。お題は当面ありません
⇒禁止ジャンル
R18系、(一般サイトとして通常許容できないレベルの)具体的な暴力グロ描写、実在人物・法人等を題材にしたもの、二次小説

■投稿ニックネーム、作品数
1大会中に10を超える、ほぼ差異のない投稿は禁止です。無効投稿とみなし作者様に予告なく管理者削除することがあります
ニックネームの複数使用は悪気のない限り自由です

■発表等 ※予定
2016年11月27日(日)12:00(予定)

■賞品等
1位入賞者には500円分のクオカードを郵便にてお送りします
(ただし、管理者宛てメールにて希望依頼される場合にのみ発送します。こちらから住所氏名などをお伺いすることはございませんので、不要な場合は入賞賞品発送依頼をしなければOKです。メールのあて先は mori.kanri@gmail.com あてに、■住所■氏名 をご記入の上小説カキコ管理人あてに送信してください)

■その他
ご不明な点はこの掲示板内「SS大会専用・連絡相談用スレッド」までお問い合わせください
http://www.kakiko.cc/novel/novel_ss/index.cgi?mode=view&no=10001

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平日電車やバスなどの移動時間や、ちょっとした待ち時間など。
お暇なひとときに短いショートストーリーを描いてみては。
どうぞよろしくお願い申し上げます。

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<ご参加タイトル 一覧> ※敬称略

>>1  『宇宙(よぞら)のなかの、おともだち。』 Garnet
>>2  『キミの夢』  霊夢
>>3  『大切な場所』  レオン
>>4  『最後の英雄』   月白鳥
>>5  『星空と秘密の気持ち』 霊歌
>>6  『夕焼け月夜を君と』   PLUM
>>7  『焦がれし子宮』  めー
>>8  『知』   茶色のブロック
>>9  『儚い少女』  茶色のブロック
>>10 『 white lilydie 』  PLUM
>>11 『音を通じて』  奈乃香
>>12 『月下美人。』  鏡杏
>>13 『小さい頃からスキだったの』  ユリ
>>14 『折り鶴』  御影
>>15 『妄想を続けた結果、こうなりました。』  のあ
>>16 『夏の日の物語。』  レオン
>>17 『恋するティラミス』  ゼロ
>>18 『貴女の望むもの』  奈乃香 
>>19 『貧血少女』  PLUM
>>20 『ねぇ』  はてなの子
>>21 『記念日には、貴方の言葉。』  はずみ
>>22 『君も私も爆発だよ☆』  茶色のブロック
>>23 『Reason for the smile』  ユリ
>>24 『彼は未来を見る研究をしていた』  葉桜 來夢
>>25 『Love me only』  ユリ
>>26 『ワタシとアナタ』  はてなの子
>>27 『匿名スキル』  とくだ
>>28 『アナタだけ』  レオン
>>29 『秋の夜長に君を求めて』  蒼衣
>>30 『受け継がれる想い。』  レオン
>>31 『素直になってもいいですか』  たんぽぽ
>>32 『color』  蒼衣
>>33 『二度とない日々へ』  深碧
>>34 『破られた不可侵条約』  たんぽぽ
>>35 『だーれだ』  ろろ
>>36 『堕天使』  鏡
>>37 『複雑ラブリメンバー』  とくだ
>>38 『してはいけない恋……?』  マシャ
>>39 『マッチョ売りな少女』  壬崎菜音@壬生菜
>>40 『空想森の中で。』  ニンジン×2
>>41 >>46 >>49 『あおいろ』(1)(2)(3)  &
>>42 『星の降る日』  安ちゃん
>>43 『この感情は。』  みりぐらむ
>>45 『やさいじゅーす』  とくだ
>>47 『はづかし』  沖
>>48 『Trick or love!』  PLUM
>>50 『月が綺麗な夜』  小色
>>51 『一番は』  草見 夢
>>52 『名前』  草見 夢
>>53 『人が死ぬとき』  草見 夢
>>54-55 『天使と悪魔と』(1)(2)   草見 夢
>>56 『人生最後の現実逃避』  みかん 

                  (2016.11.19 更新)

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お皿の魔神 ( No.93 )
日時: 2017/07/19 19:49
名前: タルキチ

「寂しいと思う事はありませんか。
 誰も分かってくれないと思いませんか。
 誰かを特別に思う事がありますか。
 誰かに特別に思われる事がありますか。
 自分が好きですか。
 自分を誉めてあげていますか。
 自分の長所を答えられますか。
 自分は大切な人間だと思えますか」




 夏は嫌いだ。
 湿度と汗で張りつく服、湿る肌、やたらと乾く喉。なにより暑い。風も生ぬるく、視界はたびたび熱に揺らぐ。四六時中湯船のなかを泳いでいるような気分になる。町全体、いや、もっと広い範囲だ。出口がない風呂場。なんて恐ろしい場所だろう。
 自室のエアコンの冷気で生き返ると、もう一度外出しようという気持ちなどたちまち失せる。
 どれだけ世間さまに後ろ指を指されたって構わないから、夏の間は私を引きこもらせてほしい。

「疲れた……」

 着替えなきゃ。湿った服が気持ち悪いと思うのに、座布団に寝転んだまま立ち上がる気力もない。このままだと汗が冷える。私は胃腸が弱いので、この後の地獄を想像するのは容易だが、着替えるの面倒くさすぎる。
 ああ、お腹すいたな。勝手にご飯できないかな。無茶苦茶な事を思いながら台所をじっと見つめる。洗い物たまってるから片付けしたくないな……。
 着替えたら、洗い物をして、料理をして、食べて、片付けをして、洗濯物を干して、録画していたテレビを見れたら見て、四時にはもう一度出かけないと。待ち合わせに間に合うように。

『私、あのお店行きたいな〜。あと駅前にカフェ出来たって! 千夏も行くでしょ? 店員がイケメンらしくてさ〜。あっ、千夏彼氏いなかったよね、狙っちゃいなよ〜! そういえば私の彼氏が最近〜』
『千夏ちゃんどうする? どこ行く? 私は千夏ちゃんの行きたいところがいいなあ。……映画? あ〜……良いけど、私今月お金なくて……』
『ふーん、でもさ、それよくある事じゃない? そんなに悩むような事でもないじゃん。それよりあたしの方が大変なんだから! 聞いてよ、昨日ほんっとムカついて!』

 待ち合わせ……嫌だな――――。




 私が一人暮らしを始めたのは、県外の大学への進学が決まった去年。親と離れて生活するのは初めての事だった。
 能天気なものであまり不安はなく、薔薇色の大学生活を思い描いていたおめでたい記憶――現実、一人暮らしというものはそんな優雅なものではなかったのだけれど。大学の課題も多いしね。
 才能のなさを感じて趣味に疲れて、大学に疲れて、家事に疲れて、人付き合いに疲れて……自分の人生の色は薔薇色なんて鮮やかなものではないと気がついたら、もう疲れるどころか冷めた。
 何故生きねばならないのか。思考は哲学へと飛ぶ。
 しかし死ぬのは怖いので、惰性で生きている次第だ。




 スポンジを握り、皿を磨いていく。一枚、二枚……。

「ジャーン!!」
「えっなになに怖い怖い怖い、えっ?」

 突如吹き出た煙に驚きシンクに皿を落とした。ガシャンと耳障りな音が鳴る。

「ああっ! ちょっと! 何するんですか!! そんな上から落として割れたらどうするの〜!!」
「こっ怖い怖い怖い怖いんだけどなに」
「ていうかね、そもそもそんな安い洗剤でゴシゴシ洗っていいもんじゃないんですよ! 魔法のお皿なんだからあ!!」
「いやパン祭りの皿だもん! パン祭りの皿が喋ってる!!」

 気のせいじゃない!
 慌てて換気扇を回す。あ、しまった泡つけちゃった……。
 煙が晴れると、私の半分ほどの身長のおじさんが大事そうに皿を抱いていた。私の家のシンクのなかで。小さいおじさんが。泡まみれのパン祭りの皿にハグしてる……。
 目眩がした。これは多分本気の体調不良だ。脳が状況を理解する事を拒んでいるのだろう。

「貴方ね、前から言おうと思ってたけど、お皿の扱いが雑なんですよ! 強いにおいの洗剤でガシガシ洗うわ、汚したまま平気で三日洗い場に放置するわ、電子レンジにかけるわ!」
「パン皿電子レンジ可じゃないの!?」
「魔法のお皿なの! 特別なの! 他よりデリケートなの!」
「め、面倒くさ……」

 よろめき冷蔵庫に寄りかかる私を一瞥し、おじさんはふぅと聞こえよがしにため息をついた。おい、このおじさん性格悪いぞ。

「で?」

 で? ……私が言いたい。私は何を促されているんだ。

「願い事は?」
「願い事……?」
「分かんないかなあ。あれよ、あれ。ランプを磨くと願い事を叶える魔神が出てくるヤツ。僕はお皿の魔神なんですよ。本当はシルクで拭ってくれるまで出てこないつもりだったけど、貴方あんまりにも酷い顔してたから、おじさんサービスね。サービス」

 話ながら、おじさんはシンクから床へどすっと降りた。洗剤の泡が飛び散る。
 私はといえば、台所の掃除しなきゃ、だの、おじさん立っていると中年らしいぽっこりお腹が目立つな、だのをぼうっと考えていた。分かってる、これは逃避。分かるけどこの向き合いきれない現実どうにかならないかな……。

「ちょっと〜? 聞いてます?」
「あ、はい、願い事ですよね。ランプの魔神は三つまで? でしたっけ?」
「ランプはね。けど、僕が叶える願い事は一つだけ。魔神もピンキリな訳よ」
「へ、へえ〜……」

 生返事のお手本のような生返事をした。
 それきり会話は途切れ、おじさんはこめかみを指でほぐしながら私の答えを待っているようだった。分かる、それ気持ちいいよね……。あ、今度はお腹かき始めた……。

「……あの。じゃあ、私、もっと……生きやすくしてください」
「生きやすく? あ〜、なんか貴方見るからに生きにくそうですもんね」

 失礼な言葉にイラッとする。けれど、見てくれから分かるぐらいの不器用さである自覚もあった。つまり図星。二倍腹が立つ。おじさんは悪びれず納得したように頷いている。ええい、もう。

「そう、私ね、生きづらいんです。生きづらいの。友達もいないし、お互い全然好きじゃないけど友達のふりして付き合ってる子達とは話も合わなくて、見下されてて……サークルじゃ私だけ嫌な先輩にキツく当たられて、大学の授業楽しくなくて、バイトもキツいし変な客多いし、道歩いてて向かいから来たおばさんたちは横並びのまま譲ってくれないし、エアコンのかけすぎでお腹壊すし、電気代高いし、ブスだから彼氏なんかできないし。でも私悪くない。だってしょうがないじゃないですか。生まれつき、生まれた場所とか、持ってるものから違うのに、当たり前に比べられて。恵まれた人達と同じようにできなきゃ駄目って言われるんです、それがどんだけ不得意な事でも、おかしくありません?」
「ああ〜、発言がもうね、貴方ホント向いてないね。社会で生きるのに向いてない。いるわ、こういう若い子。おじさんたくさん知ってますよ貴方みたいな子」
「だから、生きやすくしてください。何でもいい。顔でもお金でもコミュ力でもいい。それか、物凄い才能をください。誰にも負けないような天才にしてください。それがいいです」

 おじさんは黙り込んだ。
 何だよ、出来ないとか言うなよ、とおじさんを睨み付ける。凄く虚しくなった。こんな、小さい、ふざけた訳の分からないものにしか強気になれないのか。私は。

「よし、貴方に才能をあげましょう。世の中の人間の顔が全部パンに見える才能です。ジャーン!」
「ハア!?」
「あのね、貴方のそれ、おじさんアカンと思いますよ。『周りよりできてないから駄目』、『もっと凄い人がいるから駄目』、私なんか私なんか……。『こんな人達とは気が合わない、嫌だ、でも我慢して付き合わなきゃ』」
「ちょっと……それ私の真似ですか? キツいんですけど。ふざけんな」
「無い物ねだりの人ってね、例え何をあげたって上手くいかないんですよ。考え方が一番不幸だから」
「おい――」
「嫌だったらやめれば? なんでやめられないの? 何が怖くてやめたくないの? 生きたくなくなるぐらい嫌な事から逃げないでいつ逃げる気でいるんですか。本当に逃げたくないの? 頑張れないんでしょ? どうして無理できる気でいるのかなあ〜」

 もう殴ろうと思った。おじさんをキツく睨みつける。
 殴る、殴る、殴る…………。
 殴ったら、傷害罪になるんだろうか。ぴたりと動きが止まる。

「ほらね。どうせ貴方ぐらいの考えすぎな子は、自分でストップかけられるんだから。自分が良ければいいじゃない! 頑張りなさいよ千夏さん!」

 お皿の魔神ことおじさんは帰っていった。来たときと同様、突然煙に包まれて。私にはどうしようもない。かなり腹が立っていたけど、言い返したい事が山のようにあったけど、シルクのハンカチでお皿を拭っても拭ってもおじさんは帰ってこなかった。言い逃げしやがった。
 四時からの約束はドタキャンした。そして寝た。エアコンとめて扇風機とアイスノンして寝た。翌朝スマホを確認すると、うわべ友達から昨日の動画が送られてきていた――メロンパンと蒸しパンとピザパンが流行りの服を着てカラオケで笑っていた。見てくれどんだけカオスだよ。嫌味らしき言葉も添えられていたけれど、これを打ったのは所詮メロンパン。脱力感。凄まじくどうでも良くなった。

 ランプの魔神はランプのなかから登場するけれど、おじさんの帰る場所を私は知らない。もしお皿のなかに居るなら……と考えると恐ろしいので、おじさんが抱き抱えていた魔法のお皿は簡易な神棚を作って祀っておいた。お供えものは食パン。殴るのは諦めたから、もう一生出てこないでください、と念じながら置いている。
 そして、最近パンを見すぎてご飯派になった。秋の米祭りでご飯茶碗くれるキャンペーンがあれば文句なしなんだけどな。


 おしまい

 読んで頂き、ありがとうございました!

偽りの救世主(メサイア) 前編 ( No.94 )
日時: 2017/08/06 16:33
名前: 流沢藍蓮


 これは、とある世界の忘れられた物語――。
 
 ある国に、エクセリオという若き指揮官がいた。彼は翼をもつ異民族「アシェラルの民」の長であり、「錯綜の幻花」の異名を敵味方問わずとどろかせる魔導士でもある。
 彼は幻影の魔導士だ。ただし、並いる幻影使いとはわけが違う。彼が操り人々を惑わすのは、「実体のある幻影」なのだから。
 通常の幻影が惑わせるのは人の視覚のみで、幻影に触れればその手は幻影をすり抜ける。つまり、「触れればばれる程度の幻影」である。
 対し、「実体のある幻影」とは、触れればきちんとした感触が残り、リンゴなら香りはするし味もする、それなりの重さがある、など、その幻影は人の五感に働きかける。人の体温や鼓動すらも真似出来るのだから、誰がこれを見抜けようか。
 「錯綜の幻花」の名の意味は、「複雑に入り混じって本質を分からなくする幻の花」。「実体のある幻影」使いのエクセリオらしいあだ名である。

「錯綜の幻花」エクセリオが住んでいたのは、小さな村。
 そこは小さな村だけど実力主義で、特に魔法の才能の優れた者は次の村長になれた。
 ――昔々、そこに一人の少年がいた。
 名をメサイア。救世主の名を持つ彼は、天使の生まれたとされる日が誕生日だった。とても優れた炎の魔導士で、誰もが彼に注目し、彼をたたえた。
 彼は幼くして多くのものを与えられ、何をしても褒められ喜ばれ、まさに人生の絶頂期にいた。

――そうさ、エクセリオが生まれて、彼が壊れるまでは――。

 あとから生まれた「錯綜の幻花」はあまりにも優れすぎた。メサイアなんて、簡単に凌駕していた。その才が認められた彼はすぐに、次の村長候補となった。かつてメサイアが何の不自由もなく座っていた椅子を、横から奪うように。
 そしてメサイアは壊れ始めた。救世主として望まれ、その役目を果たし続けた果てに、新入りによってその座を奪われて。
 彼は「救世主」としての生き方しか知らなかったから、堕とされて、何をすることもできなくなった。
 そして、ある日、彼は自殺した――。
 少し何かが違っていたらまだ、何とかなったかもしれないのに。
 かくて救世主は偽りとなり、その名は誰からも忘れ去られた。

  ★

 おれの名はメサイア。名の意味は救世主。本当の名はメルジアというんだが、音はまあ似たようなものだろう。あ、意味は違うぜ? メルジアっていうのは「炎」って意味なんだ。
 おれは「アシェラルの民」の始祖、アシェールの生まれたとされる日に生まれた。そして、この村では最も大切とされる、強き魔法の才を持っていた。
 って、「アシェラルの民」を知らないって? まあ、そこまで有名ではないか。簡単に説明する。
 「アシェラルの民」っていうのは、背に翼をもち、自在に空を舞うことができる人々のことだ。その翼を使えば空を飛べるとか思ってる奴らによって、その翼を求めておれたちは迫害に遭っている。ひどいものだよな、まったく。
 話を戻す。おれが優れた魔法の才を持ってるってところだっけか。ともかくまあ、おれの村では優れた魔導士が村長になるっていう決まりがあってな。村長が元気な時は「次期村長候補」が一人だけ選ばれる。
 で、おれはまさにその規定にぴったり当てはまってたってわけ。
 だからだろうな、みんなには期待されるばっかりだ。おれは何にも言ってない。みんながただ、おれに期待しているだけだ。
 おれはできる限り「いい子」を演じていたけれど、窮屈で仕方がなかったんだ。それでもおれは幸せだった。幸せだったんだ。
 望むものは何だって手に入り、何をしても怒られない。道行けば「救世主様」と人々にかしずかれ、何やかやと敬われる日々。あのとき、おれは栄光のただなかにいた。多少窮屈であれ、これ以上望むべくもない日々の中にいた。そしてそれを、不変のものだと信じていた。
 
 おれは必要とされていた。必要とされていたんだ。
 誰かに認められるということは、本当に幸せなことだった。

 そんなある日のことだった。とある名も知れぬ夫婦が子を産んだ。おれは七歳。七歳だけど、どこか達観していた。周りから寄せられる期待の波の中におぼれ、「救世主」になりきることにおぼれ、そんな日々をどこか遠くで眺めている自分がいた。
 その子は少し特別な感じがした。生まれたばかりの頃から、その手に小さな幻影を遊ばせていた。
 そしておれは危惧したんだ、その子がいつか、おれを超える魔導士になるんじゃないかと。
 それでもおれは「救世主様」だからな。気に入らないという理由だけでその赤ん坊にどうこうなんて、できるわけがない。だからおれはその子を見守っていたのさ。胸の内に危惧を抱えながら。

  そして悪夢は現実となる。

  ★

「我の後継ぎから貴公を除名し、エクセリオとする」
 そんな知らせを告げるために呼び出されたのは、それから八年後のことだった。
 その頃にはおれは十五になり、あの赤ん坊は空前絶後の才を発揮してそれをものにしていた。
 あの赤ん坊――エクセリオの持つ魔道の才は、幻影の魔法。それもただの幻影じゃない。人の五感にさえ働きかけることのできる「実体のある幻影」を、自在に操る奇跡の力。
 おれの「炎の魔法」だなんて話にもならない、あまりにも珍しく強大な力。その力の前に、おれの今まで築き上げていた地位「救世主」は崩壊した。
「嘘でしょう、村長! どうか、もう一度、お考え直しを!」
 敗北を知りつつも叫んだが無駄。
「貴公の炎の魔法など、彼(か)の『錯綜の幻花』に比べれば弱々しいにも程がある。強き者は村長に、これ我が村の決まりなり。あとから生まれた者に負けたということは、貴公はそれまでの男だったというわけだ。――『救世主』メサイア。貴公の時代は終わったのだよ」

  そしておれは、奈落に落ちた。

  ★

 僕の前に、「救世主」メサイアという人がいたらしい。彼は優れた炎の魔導士。前の村長候補だったらしい。
 だった、って過去形で話しているのは、メサイアはもう、候補じゃないから。僕が生まれたせいで、彼は人生の絶頂期から突き落とされてしまったのさ。
 誰かが悪いんじゃない。これは仕方のないことだったんだよ。
 これでも僕は、メサイアを救おうとこっそり動いてはいる。だって、これはあまりにも理不尽だって、心から思ったから。
 これは偽善なのかな? ああ、きっとそうだよ。でも、偽善でもいいのさ。その先に待つ結末さえよければ。
 村長は「救世主」なんかからは興味をなくして僕に夢中だけど。

 ――僕が、助けるから。

 僕はメサイアの悲しみの元凶。それでも。彼に何を言われたって。僕がこの町からいなくなれば、自然、メサイアに地位が戻るはずだろう?
 だから、近いうち、この村から出るのさ。そうすればきっと、みんな笑えるのだろう?
 偽りの「救世主」として、僕があなたを助けるから。
救世主様、待っていてね。

  ★

 あれから一カ月が過ぎた。かつて「救世主」として崇められていた影はいずこ。おれは完全に奈落に落ちた。

 あの栄光の日々との差は、あまりにも歴然としていた。かつては望むものなら何でも手に入り、道行けば「救世主様」と人々にかしずかれていたが、今は……。
 泥の中を這いつくばって物を乞い、道行けば「救世主風情が」と人々にけなされる。
 日々の生活の糧を得るのに炎の魔法は役に立たず、「救世主」以外の生き方を知らなかったおれは途方に暮れ、恥辱屈辱に身を引き裂かれながらも慣れぬ物乞いをするしかなくなった。
 それでも、どんな時でも。父さんと母さんはおれを愛してくれたから。おれは頑張ろうと思う気になったのさ。
 おれの今生きている理由は「救世主だから」と言った聖人のような理由から、「両親のため」と言った俗っぽいものに変わってしまった。
 ――それは、きっと必然だった。おれは――堕とされたからな。
 
 そうさ、これが「救世主」メサイアの末路。
 期待ばかりされて、その挙句捨てられ見損なわれて。

 誰が――誰が信じてくれと言った!!

 期待してくれだなんて、おれは一度も言っていない!

 勝手に信じられ期待され「救世主」として崇められ。そこにはおれの意思なんてないっ!

 「救世主」の烙印を押され、新たなる才が生まれたら捨てられて。

 おれは使い捨ての道具だったのか!? おれのこれまで生きてきた日々は、一体何だったんだっ!

 こんな末路が待つぐらいなら、生まれない方がきっと良かった

 生きる意味もなくして、おれは――? どうなるんだ? どうすれば、何をすればいいんだ?

 顔を上げれば天使像が見えた。おれが生まれた日に買ったらしい。貧困に耐えかねて家財を売り、寒々しくなった家の中。それでもまだ売られずに残っているこれは、おれへの愛の象徴か?
 それでも、やるべきことがあるんだ。

 おれは、覚悟を決めた。

  ★

偽りの救世主(メサイア) 後編 ( No.95 )
日時: 2017/08/06 16:41
名前: 流沢藍蓮

  ★ 

 ――メサイアが死んだ――。

 そんな知らせを受けたのは、僕が次期村長候補になってから二月が過ぎた頃。
 死因は自殺。家の中にある天使像の前で、まるで見せつけるように首を吊って死んだ。
 その家の正面の天使像の前には、「これが『救世主』の末路だ」と、皮肉にも取れる言葉の書かれた紙が縛りつけてあった。
 そして「救世主」は、僕に遺書を遺していた。

 もう一人の「救世主」 「錯綜の幻花」エクセリオへ

 ――おれはお前になりたかった――。

 いきなり言って悪いが、それがおれの本心だ。正直言って、お前が憎かった。今まで座っていた栄光の椅子を、後から生まれたお前が横からかっさらっていったのだからな。これを書いている今だって憎いさ。もっとも、その頃にはおれはこの世にいないと思うがね。余計な検閲がなけりゃ、今頃お前のもとに届いてるはずだぜ。

 これは遺書にして遺書にあらず。簡単に言えば、ただ本心を書き連ねた紙クズだ。かつて「救世主」と崇められ、その果てに「偽りの救世主」として捨てられた、救世主の名を持つ元次期村長候補のね。下らん世迷言かもしれないが、最後だしな、聞いてもらいたいんだ。

 おれはかつて「救世主」として人々に崇められ、持ち上げられていた。でもそれをおれは望んでなどいなかった。みんなが勝手に期待して、おれの意思なんて関係なしにかしずいていただけだ。おれは別に、そんなのどうでもよかったんだ。ただ平穏無事に暮らせれば、それだけでよかった。そのために「救世主」にならなければならないなら、おれはいくらでもなった。

 でも、違ったんだな。「救世主」って、幸せに暮らしてはいけなかったんだな?

 「誰かの不幸をなくすため」、「救世主」として駆けずり回って、結局おれが傷付いても、「怪我の功名です、よくやりました」って、誰も心配してはくれなかった。今思えば、「救世主」って、体の言い不幸のはけ口にするための言い訳だったのかもしれないな。誰かのために献身するだけの、使い捨ての道具。その名前に「救世主」をあてていただけだったのだろうよ。

 おれの本当の名はメルジアなのに、みんなメサイアメサイアっておれを呼ぶ。誰がおれの本当の名を覚えてくれていただろう? 
 結局のところ、みんながおれに見ていたのは「メサイア」――「救世主」ってことだけだったんだ。誰も「メルジア」を見ない。
 
 ふざけんなよな! 勝手に「メサイア」に、「救世主」に不幸のはけ口になることを期待して!

 おれは「期待しろ」だなんて誰にも言ってなかった!!

 普通の、ごくありきたりの日々を幸せに送りたかっただけだった!
 
 なのに結局、周りのせいでこのザマさ!
 
 馬鹿みたいだよな、ああ、本当にバカみたいだぜ。これが「救世主」たる「メサイア」の末路。
 
 笑ってくれ。「メルジア」なんて要らなかった。
 否、最初からこの世にいなかったのさ……。

 だからおれは自殺した。こんな地獄の中でずっと生きるなんて、到底おれにはできやしない。
 そも、「救世主」の道を奪われたおれには、他に生きる道がなかった。
 だってそうだろう? 「救世主」として生まれ、「救世主」として育ち、「救世主」として人々に接した。それ以外のことなんて何一つ教わらず、その必要もなかったからな。そして今のおれには何もない――。

 死ぬしかないのさ。こんな暗黒の中に生きるだなんて、何も知らないおれにはできない。
 ああ、家族は残ってる。みんな(所詮一部分だろうが)を悲しませることになるってのもわかってる。結論、おれは逃げてるんだよ、愚かなことに。
 
 それでも――死ぬことで、わからせてやりたかったんだ。

 一部の人だけでもいいから。自分が「救世主」として期待をかけた少年に、一体何をしてしまったのか。
 「錯綜の幻花」に罪はない。だって、すべてを壊したのは大人たちだからな。お前が生まれなければ、って思ったことは何度もあるが。おれを本当の意味で壊したのは大人たちだから。

 色々と話が紆余曲折したが、ここにおれは、遺言を残す。
 お前のことは憎かったけれど、もしも立場が違っていたら、おれはお前のようになったのかもしれないと時々思う。
 
 だから、聞いてくれないか。
 言いたいことはただ一つ。

《肩書きの前に押しつぶされるな》

 「救世主」の肩書きに振り回されてきたおれだから、言えることなんだよ。これから先のお前には「錯綜の幻花」としての使命やら期待やらが待っているだろうけれど……。どこかおれに似ていたお前に、これを言いたかった。
 お前はおれの次の、次期村長候補でもあるのだからな。
 もしも生まれる時と場所が違っていたらきっと、おれたち、友達になれたのかもしれないぜ?。
 
 以上をもって、おれの「遺言」は終了とする。

 「救世主」の時代は終わったのさ。とうの昔に。

          いつかの「救世主(メサイア)」 メルジア・アリファヌス

 ――僕は、泣いた。

 メサイア、否、メルジアのために何とかしようと思っていた。なのに彼は早まって、その結果死んでしまったのだから。

 彼を死なせたのは僕。頭の中ではどうしようもなかった、あえて言うなら大人たちのせいだととわかっていても、僕は涙と自責の念を止めることはできなかった。

 その三日後にメサイアの父は自殺し、その十日後に母は病死した。

 こうして一連の「メサイア騒動」、別名「救世主騒動」は幕を閉じ、大人たちは何事もなかったように日々を送っている。
 
 子供が一人、自殺したのに。家がひとつ、つぶれたのに。「何事もなかったように」だなんて信じられない。
 大人というものは醜いのだなと、僕は初めて自覚した。

  ★

 それから六年経ち、隣国の侵略によって王国は落ち、その戦い「聖戦」の際に村長も命を落とした。
 そして僕が村長になった。今は亡きメサイアの代わりに。それだけでない。僕が「アシェラルの民」そのものの長となることが決定した。
 これは何の因果だろうか。僕は望まずして、かつての「メサイア」の地位を超えてしまったのだ。

 メサイアの手紙はいつも身につけている。

 戦いが長引く中、僕に「錯綜の幻花」としての過剰な役割を、まだみんなが期待しているから。

 メサイアの手紙は教えてくれるんだ。

《肩書きの前に押しつぶされるな》

 あの言葉はまだ、僕の中に生き続けている。大きな悲しみと、ちくりと感じる後悔とともに。

 「偽りの救世主(メサイア)」なんて必要なかった。彼らに必要だったのは、単なる「はけ口」だったのさ。

 こうしてこの物語は終わるよ。結局言いたいのはね、

 僕の過去にはこんな物語があった、ただそれだけさ。

 偽りのメサイア、否、メルジア・アリファヌスのこと、忘れない。

  (Fin……)

薔薇、棘の傷 ( No.96 )
日時: 2017/08/09 00:10
名前: 葉桜 來夢 ◆hNFvVpTAsY

それは、風の冷たいある冬の日だった。
空は、今にも雪が降り始めそうな曇天であった。
そんな空の下、僕は何をする訳でもなく、一人でフラフラと歩いていた。
他にすることがなかったのだ、何も。
僕以外誰もいない部屋にいるのはとても退屈で、
耐え難い寂寥を感じたので、こうして外に出て歩くことにしたのである。
しかし、寒々しい冬の日に好き好んで散歩をする人間もいないもので、
僕の寂しさは依然、和らぐことはなかった。

―カサ。

僕の足に何かが当たり、しんとした空間に乾いた音が響いた。
見下ろしてみると、そこには在り来たりな花束が落ちていた。
そうー薔薇の花束である。
誰だって一目で分かるその特徴的な花束は、寂しげに空を仰いでいた。
一体どうして、このような道端に薔薇の花束が落ちているのだろうか。
誰かの落とし物ならば、交番に届けた方が良いかもしれない。
まだ僅かに残っていた良心が、僕を屈ませてそれを拾わせようとした。
しかし。
僕は屈むのを途中で止めた。
道に落ちていた花束は、いつの日か僕が貰ったものと同じ店のものであった。
記憶の引き出しがガタガタと音を立てる。
そして、その出来事を僕に思い出させた。

そうだ、あれは丁度、今日と同じような冬の日だった筈。
ここから近い場所にある海辺の公園に、僕は呼び出された。
冬の海は勿論、とても閑散としていた。
周りを見回しても、僕以外には彼女しかいなかった。
僕がそこに現れると、彼女は半ば強引にその花束を渡してきた。
突然の出来事に戸惑った。付き合ってください、とそれだけ言われた。
結果として、僕はその勢いに押し切られてしまった。
僕は彼女とはほぼ面識は無く、呼び出されたのも友人を通してだった。
向こうは一目惚れであったらしい。
それまで誰とも付き合ったことのない僕は、舞い上がってしまったのかもしれない。
だからいけなかったのだ、僕は選択を誤ったのである。

確かに、彼女は顔も整っていたし、性格も良かった。
特に非の打ちどころがなかったのである。
それでも、その交際は僕にとって息苦しいものであった。
何故か?
その当時、あろう事か僕には他に好きな人がいたのだ。
だから、僕は最後まで彼女を好きになれなかったのである。
我ながら、卑怯で最低で情けない人間だと思う。
彼女は華やかな薔薇の花束を僕に渡してくれたのだが、
僕は最初からその花を見ておらず、ずっとその棘に囚われていた。
そしてそれは、双方の心をグサリと刺していった。

―冬が終わると共に、その恋も終わった。
彼女はどうして、と泣いて僕の服の袖を掴んだ。
僕はただ、ごめんと言うしか無かった。それしか言えなかった。
いつでも臆病な僕は、こんな時でさえ本当のことを口に出せず、
そんな僕の言動は、宛ら薔薇の棘であったのだ。

これは拾うことが出来ない、そう思ったから僕はそこで静止した。
拾う資格は僕にはないのだ、きっと。
しかし、これも自分がその思い出に触れたくないだけの言い訳かもしれない。
そう思うと、急に僕は花束から目を逸らしたくなった。
姿勢を元に戻し、空を見上げる。
雪がひらり一片、僕の頬に落ちてきた。
このまま降り続ければ、翌朝には積もっている事だろう。

僕は家に帰るため、また歩き始めた。
花束は、他の誰かに拾われるだろうか、それとも―。
どちらにせよ、僕はもう関わることは無いだろう。
駄目だ、拾え、という良心が最後に僕を振り向かせた。
花束は寂しそうに転がっているだけだった。

……もうどうしようもないのだ、僕も、花束も。

棘の傷は、一生消えることなく僕の心を抉る事だろう。
けれども、臆病な僕はそれを治す術を持っていなかった。
僕は背を向けて、一旦記憶の引き出しをパタリと閉める事にした。

保健だよりができるまで ( No.97 )
日時: 2017/08/28 22:00
名前: ももた

その男子中学生は、養護教諭の前で、A3の用紙を広げた。

「原田くん、これは何?」

「これは、僕がこの世界を放浪し、描きあげた地図です!」

養護教諭は頭をおさえる。この原田という少年は、時折現実世界とゲームの世界を繋げて考えてしまう、空想好きな面があっていただけない。俗に、厨二病とでも言うのだろうか。

さて、彼が広げている冒険の地図だが……彼女の目には、それが学校の構内図に見えている。そこには、ご丁寧にリボンのような見出しで囲って、よく分からない地名がいくつも書き込まれている。

「原田くん、この『復活の泉』って何?」

手始めに、真っ先に気になった場所を指摘した。原田は待ってましたと言わんばかりに語り始める。

「そう、あれは雨季に入った頃のことです。僕は、悪の魔導師デイズパス・ド・ティー2世のかけた毒の魔法により、死の危機に瀕していました……」

「梅雨が始まった頃、2-days-passed……2日間放置したお茶(tea)を飲んで、お腹を下したのね。それで?」

彼女は原田の言っていることがわかるらしく、自分の言語に置き換えながら相槌を打っていた。

「僕は、一度は死すらも覚悟した。でも、旅を止めるわけにはいかなかった。そんな時、この泉が僕の目の前に現れたのです!」

原田はそうまくし立てて、机を叩く。

「泉に入ると、驚いたことに、僕の体から毒がどんどん抜けていくではありませんか!九死に一生を得た僕は、無事に仲間の元へ帰ることができました……」

「下痢になったけど、出し切ったらすっかり治って、無事に教室に戻れた……と。『復活の泉』って、3階の男子トイレのことなのね」

原田はまだ話し足りないようだったが、そこで昼休みの終わりを告げる予鈴が鳴る。彼は大人しく自分の教室に帰っていった。

保健室に残された彼女は、止まっていた作業を再開する。パソコンに向き合い、マウスを動かしながら、何かを打ち込んでいた。

「今月の保健だよりは、食中毒特集ね……」

あなたの学校の保健だよりも、こうして作られている……かもしれない。

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