SS小説(ショートストーリー) 大会【平日イベント】

red star ( No.71 )

日時: 2020/05/18 08:51
名前: 柑橘 檸檬

遥か遠いこの惑星には多くの人が住み、人間の顔のどこかしらに「星」がついていた。

絵の具で描いたようにも見えるが、赤い色素が定着していて皮膚から取れない。

「星」は一人に一つついていて、一回だけ何でも願いを叶えられる。お願い事をしたら自然と消える。

そういう「星」だった。

皆思い思いに「星」を利用した。人にあげることが出来るため、時には醜い争いが起こった。

でも、大体の人は奪ったものではなく、生まれつきのものがついていた。

だが、私には生まれつき二つの「星」がついていた。バグだ。

私に寄ってくるのはこの頬にある「星」目当ての人ばかり。親でさえ私を利用しようとする。

私は極力人との関わりを避けた。もう嫌だった。

「星」を使ってしまおうかと考えたが、そんなことをしたらどうなることか。親の怒り狂う姿が目に浮かぶ。

(もう疲れたんだよ...)


学校での初めての席替え、でも高校生にもなって、はしゃげるものではなかった。

無言でただただ席を移動する。

「よろしく」

そう言って隣に座ってきた美少年には「星」がなかった。

「えっ...星...」

つい、口から出てしまった。失礼だったかもととっさに口を押さえる。

美少年は微かに笑みを浮かべ、こう言った。

「生まれつきなんだ」

気づかなかった。クラスの人だったのに。

「俺、飯塚。飯塚 楓」

「私、碧山桜...よろしく...」

楓とは、すぐに打ち解けた。趣味の事、勉強の事、いろいろ話した。

だが、数日たっても一つ引っ掛かっていた事があった。

(彼も星目当て?)

こんな風に考えてしまう私は最低な人間なんだと思う。

友達がいない私とも仲良くしてくれるのに。

こんなにも優しいのに。

だが、その優しささえもが、私を欺くための甘い罠に見えてしまうのだ。

「楓は...私の星が欲しくないの...?」

気づいたら、もう口から出た言葉に、辺りは静まり返った。

ガラスのコップを割ってしまった後のような気分の悪い沈黙に包まれる。

でも、知りたかった。本当の事。



「欲しくない」

楓の薄く色づいた唇から出てきた言葉は、今まで聞いたこと無い言葉だった。

そして楓は私の方を見ながら真剣に言った。

「欲しくないよ。本当に。欲しいのは桜だけだよ。星なんていらない」

だんだんと意味がわかってきて顔が真っ赤になる。

顔が熱い。血の巡りが速くなっているのを感じる。

心臓が爆発してしまいそうになる。

「俺と付き合ってくれる...?」

口をパクパクさせながら必死に喋る。

「は...い....」

私が返事をしたとき、スッと楓の頬に「星」が現れた。

そして、私の頬の「星」は一つになっていた。

思いが一つになった時、無意識に「星」を渡していたのだ。

でも、それでも良いと思った。楓になら渡せる。楓になら...

「よっしゃ一個ゲット〜」

「え...?」

今何て...

私がぽかんとしていると、楓は意地悪な笑みを浮かべ、顔を近づけてきた。

「いい?お前は俺に騙されたの。お前に近づくなんて星目当て以外の何者でもないよ」

「嘘...」

頭が真っ白になる。星を奪われた事より、裏切られた事の方が悲しい。

私は愛に飢えていた。誰かに心から愛されたかった。

でも、無理だったみたいだ。

立ち去る楓を見つめて、私は泣き崩れた。

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