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三話「不幸」
「じゃあ、グレイいこっか。」
ルドがグレイの腕を引いた。
グレイは俯いたままだ。
「…どこに?」
「どこって、マグノリア。君のいたフェアリーテイル。」
グレイは俯いていた顔をすぐにあげた。
その顔は恐怖と怒り、そして悲しみが入り混じっている。
「な、何する気だ!!!」
「何って…壊しに行くんだよ?」
あっさりと言われた。
グレイの目はみひらかれ、暴れだす。
「やめろ!!あいつ等は関係…」
「あるさ。」
ルドの声が低く、冷たくなった。
グレイは体を震わせる。
「君はもう、フェアリーテイルにいちゃいけないんだ。」
「な、んで…?」
次の瞬間、グレイは後悔した。
「君は人を不幸にする。」
「え………。」
「だってそうだろ?母も、父も、ウルも…。」
グレイは耳をおさえる。
手首に繋がれた鎖がジャラリと音を立てた。
「い、や…嫌だ…!!」
「だってさ、君がいる所には不幸ばかりおきるだろ?今回だって…」
「言うな言うな言うな言うなああああああ!!!」
グレイは泣き叫ぶ。
もうここ何日泣いただろうか、とルドは笑った。
「じゃあさ、先にギルドを辞めるよう言っちゃえばいいんだよ。」
「不幸じゃ…無くなるか…?」
「うん、だから行こう?」
ルドは手を差し出す。
グレイはルドの手を握った。
―ナツ達―
「だー、くそ!アイツどこにいやがる!!」
ナツ達がいたのは大きい湖。
ナツが先に走るからここにたどり着いてしまったのだ。
後ろでエルザは目を見開く。
「ここは…、イスバンの湖か?」
『そうだよ…君達は頭首のお友達?』
優しい、それでいて凍てついたような声が全員の耳に響いた。
ナツは声がする方、湖の中心に話しかけた。
「お前、神様か?」
『…まあ、ね。願い事は叶えられないよ?君達のは。』
なるほど、とエルザは頷く。
子供の神様だから、普通の人の願いは叶えられないのかと。
「グレイだけは願いを叶えられるのだろうな。アイツはこの神にまつわる一族だろう。」
『頭がいいなぁ、エルザ・スカーレット。』
「!!?何故私の名前を…!?」
『僕、一応神様だもん。』
自慢気に語る神、メモリーはナツのほうに向く。
『君は、イグニール君の子だよね?ナツ・ドラグニル。』
「!!お前イグニールどこにいるか知ってるか!!?」
『まぁ、ね。でも教えられないよ?教えるのも願いに入るから。』
ナツは悔しそうな顔をする。
目の前に攻略法があるのに、手が届かない。
『ルーシィ・ハートフィリア、可哀想な子供だよね。かまってもらえなかったなんて。』
ルーシィは顔を俯かせる。
エルザは、レヴィに通信ラクリマで連絡をとった。
「レヴィ、お前はグレイの一族は分かるか?」
【うん!あのね多分グレイは東洋の氷昌の一族の頭首。そしてもしかしたら―】
プッとラクリマの声が消えた。
エルザはラクリマを叩く、が治る気配はない。
(…フェアリーテイルに何があった…?)
エルザが悩んでいると、メモリーが呟いた。
「電波混線だね、マグノリアでは襲撃がおきてる。」
「なに!!?誰が…!!」
エルザは慌てて、遠隔映像ラクリマをみる。
そこには、壊れているマグノリアの建物。
その中心に――
「………!?」
グレイがいた。
「エルザ?」
「どうしたの?」
ナツとルーシィがエルザを見る。
エルザは電源を消し、笑顔になった。
「な、なんでもない!はやく行くぞ。この湖の下に、反応がある!」
「うん!!」
「おう!じゃあ、メモリーここ通せ。」
メモリーは少し悩んだが、笑顔になる。
『いいよ!!面白そうだし、ね。』
エルザは俯きながら走る。
(あんなの見せたら、助けに行くとナツが言いすれ違う可能性が高い。
なら、ここで待っていれば…!!)
三話・終
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