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フェアリーテイル ―雪国の氷―  完結
作者: ハヤチ  (総ページ数: 65ページ)
関連タグ: FAIRYTAIL グレイ・フルバスター 二次創作 微グロ 
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*53*

本編に〜


「これが、核か?」

茨の向こうにあるのは棘だらけの黒い何か。
茨が絡まって、迂闊に触れないようになっている。

「茨を燃やすか…。」
「いや、その必要はねぇ。」

グレイはスゥ、と息を吸う。

「氷古龍の嵐豪!!!」

ズドォォンッと激しい音がした。
だが、茨が少し凍てついただけで、びくともしていない。

「だめだ、完璧に防御体勢になってやがる。」
「ここをくぐるしかないのかぁ…。」

すると、茨がグレイを絡めとった。

「!!!?んむっ!」
「グレイ!」

茨は棘の無い部分で、グレイの口をふさぐ。
次にナツまでも絡めた。

「っくそ!この茨っ!」

シュルシュルと茨が体に纏わりつく。
グレイは必死に抵抗するが、失敗に終わった。

「んぐぅ…!んむっんー!!」
「グレイ!くっそぉ、邪魔だああ!!」

ナツは茨を燃やす。

(あれ?何で燃やせるんだ?)
『ナツ…火竜の子。貴方に古龍の力を…渡します…。』
「アイシーガ!!?」
『お願いします…。私はここでくたばらない様、耐えてみます。』
「…おう!」

ナツは拳をにぎる。
そして、グレイに纏わりつく茨を次々と燃やした。

「ん…!………っぷはぁ!」
「これで、よし…。」


すると優しく、凍てつく様な声がした。
それは、ナツは聞き覚えがあるあの神の声。

【核を壊しに来たの?】
【頭首様もいるね。】
【そうだ。】
【面白いもの見せてあげる。】
【記憶。】
【彼らの、記憶。】

瞬間、ナツ達の視界は空になる。
下は、どこかの街の様だ。

「幻影か?」

グレイがぽそりと呟く。
すると、下で騒ぎが起き始めた。

「避難させろ!」
「こっちだ!行こう!」

そこに居たのは、幼い頃のエーガ、ギル。
そして、街の向こうにいるのは。



「デリオラ…だっけ。おい、グレイ、」

ナツはグレイを見る。
グレイの顔は青ざめていた。

「おい、グレイ―」
「この街…!」

グレイは奥を指差した。
黒い着物が、ゆれる。
指差した奥にいるのは―



「あれは、俺だ。」



「デリオラに挑んだ、俺だ…。」

今、目の前に映るのは。
グレイの最も苦しい過去の情景だった。
下で、子供の声がする。


「やだよ!せっかく楽園の塔からにげたんだ!ここで死にたくない!」

赤髪、エーガだろうか。泣きながら町の外に出た。
ギルは無口のまま走る。泣きながら、ただ走る。
その目は憎しみにぬれていた。

「あの黒の子供が、不幸をよんだ?」

憎しみを持つまま、ただ走った。


「や、だ………。」

ナツはグレイを抱きしめる。
グレイはカタカタと震えていた。

【この際、少年の記憶も見せようか。】

ルドのことだろうか。


また視界は一転する。
今度は古びた家だ。
どうやらここは、東洋のようだ。

「言う事を聞け!」

パシンと頬を叩く音。
下にいるのは、黒髪の少年。

「ルド…?」

ルドは哀しげに顔を歪ませ、外に飛び出した。
一緒に走っていく黒髪の少女。
恐らくグレイの母だろう。

「よしよし、子守唄歌ってあげようか?」
「いい…。」
「よしよし、よしよし…。」

少年は思ったのだろうか。
この頃から姉に歪んだ恋を抱いていたのだろうか。

また一転した。

ルドだ。18くらいの。
正装をして誰かと話している。
そして、その誰かに魔法をかけた。

グレイは目を見開く。
ルドが話していた少年は。
ルドが魔法をかけた少年は。




「レイガ…。」

ルドに記憶を消された哀れな少年。
年月がかかるにつれ、グレイと言う単語を思い出した哀れな少年。


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