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もし明日地球が滅びるとすれば、俺は一体何をするだろう?
作者: 裕  (総ページ数: 10ページ)
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*1*

 もし明日地球が滅びるとすれば、俺は一体何をするだろう?

「あーあ。あちーし、だりぃし…何もしたくねぇ…。てーか、お前ここで何やってんだよ?」
「え?お前って?」
「お前だよ、お前!」
「名前、呼んでもらえます?生ちゃん。」
「俺のことちゃん付けで呼ぶな!!」

幼馴染の螢とのこのやり取りはもう慣れた。昔から何かと俺のことをいじるこいつは、頭が良いわけでも、運動神経が良いわけでもない。逆に、成績は最低で、極度の運チ。男の俺の方が何倍も成績が良いのは、俺自身も不思議だ。
もともと親が居ない螢は、お婆ちゃんと暮らしてた。けど、3年前にそのお婆ちゃんも死んだ。今じゃ一人ぼっちのさみしい奴。けどこいつはそんなことは関係なしに生きている。

「(何でこいつは…笑って生きてられんだろう?変な奴…。)」
「あ。そうだ、生ちゃん。」
「だから、俺のことちゃん付けで呼ぶの止めろ!!」
「まあまあまあまあ。そんな怒らないでぇ…。」
「誰のせいだ!!」
「それよりも、見てこれ。」
「あ?ニュース?俺はニュースなんか見ねぇの。替えろ。」
「ああ!待ってぇ!少しで良いから!ね?」
「ったく…。…。」

それは、明日地球が滅びることを断言したニュースだった。
よくある話で、どこだかの先祖が書き残したものの中に、
「○○年後、地球は滅びる」と書いてあった。 
とかそういうのだ。所詮、迷信に過ぎない。今までだって、実際にそうなったことは無いじゃないか。どうしてそこらの人間は、こういうのを直ぐに信じるんだろう。あほらしい。

「くだらねぇ。」
「でもさ、でもさぁ!本当だったらどうする!?」

こいつは何でも信じるタイプだ。噂、友達の悪口、喧嘩した時に自分に浴びせられる言葉。螢は耳に入ったものは何でも信じる。

「明日皆死んじゃうんだよね?じゃぁさ、じゃぁさぁ!天国に居るお母さんとか、お婆ちゃんに合えるってことだよね!?ねぇ!?生ちゃん!」
「…。はぁ…。」

呆れる。どうすればこうポジティブに物事を考えることができるんだよ。俺にはこいつの考えが全く理解できない。というか、出来る奴は居るのだろうか?こいつのポジティブさにはむしろ、尊敬までしたいくらいだ。しねぇけど。

「螢ちゃーん!」
「あ、玲央。どうしたの?」
「いやぁ、今テレビ見てたら明日地球滅びるって言うじゃん?もし本当だったらって思ったらぁ、急に螢ちゃんに会いたくなってさ。」
「私は別に。」
「うぅ…。相変わらず釣れないなぁ…。」

松原玲央。クラスメイトって螢は言ってるど、実際は知らない。俺には関係ない事だし。

「お?何だ、生も居るのかよ。」
「何だ。居たら悪いのか。ここは俺の家だ。」
「もう。生ちゃんと玲央は本当に仲が悪いんだね。」
「仲良くしようとも思わないけどな。」
「へっ。同感、同感!オレだってこんな奴とは仲良くしたくねぇよ!」

ただの口喧嘩…って程でも無いか。喧嘩吹っ掛けてくるのはいつもあっちからだし、俺はその挑発にのってるだけ。それなりに楽しい。とか思ってしまう。悪くはない。

「なあ、螢ちゃん。今から遊ばない?オレと。」
「え?何で?」
「明日皆死んじゃうしさ。どうせなら良い思い出作ろうぜ!な?」
「んー…。じゃあ、生ちゃんも…」
「行かない。」
「えー?何でぇ!?」
「面倒くさい。」
「そんなこと無くない?」
「ある。」
「ない!」
「ある。」
「…っ。じゃあ、私も行かない!」
「はぁ!?何でだよ。行ってくれば良いじゃねぇか。」
「明日もし本当に皆死んじゃうとすれば、私は生ちゃんと居たい。だから玲央。ごめんなさい。」

ざまあみろ。一緒に居られても嬉しくは無いけど。

「おい、生!覚えてろ!この恨み、いつか何倍にもして返してやるからな!」
「明日死ぬなら無理じゃん。」
「っ…。」

バカも程ほどにして欲しい。全く、俺の周りには馬鹿な奴しか居ないのか?俺の人生、一体どうなるんだよ。

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