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作者: 裕 (総ページ数: 10ページ)
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*8*
「夕陽が…きれいだな。…螢と初めて見たのもこんなだった。」
過去を振り返っているだけなのに、時間は止まらない。あれからもう何時間経っただろうか。南にあったはずの太陽は西に傾き、一日の終わり告げようとしている。…一日の終わりを。最後の一日…。明日、もうここに俺たちは居ない。…居ないんだ。
「死…か。」
なら、俺のすべきことは?今日のうちに俺がしておかなければならないことは?
寝ることか?
怒ることか?
飯を作ることか?
螢に命令して、智里のわがまま聞いて子供用プール出すことか?
過去を振り返っているだけか?
…どれも違う。約束は果たさなければならない。ちゃんと、伯父さんとの約束を、果たすんだ。螢を一人にしないって約束を…!
「ちっくしょっ…!っ…。」
俺は無我夢中で走った。昔よく螢と遊んだ川沿いの道。公園。小学校。中学校。…全部、全部消える前に…その前に俺がしないといけないことはただ一つだけなんだ。
「はあはあっ…っはあ…。」
オンボロの家にあるインターホンが鳴り響く。声がする。玄関のドアがガラガラと音を立てながら開いていく。
「…生ちゃん。どうしたの?」
「俺、っはあはあ…。俺は、…お前のことが嫌いだ!」
「…え?」
「嫌いだ!大っきらいだ!でも、…はあはあ。でも、俺はお前を守る!伯父さんとの約束を果たす!俺は、お前を一人にしない!」
「…生ちゃん?」
「…今日は、俺の家に泊れ。俺と、っはあはあ…。俺と、一緒に居てくれ。…明日まで。」
「…信じてるんじゃん?」
「信じてねえよ!」
「見栄張らない!」
「張ってねぇ!」
ああ、またこれだ。この日がいつまでも続けば良いのに…。明日も、明後日も、1年後も、10年後も…。ずっと、ずっと…こいつと
「…一緒にいてぇなぁ…。」
「何?」
「ごめん、俺嘘つきだ。」
「…。」
「…俺、螢の事やっぱ好きだ。どうしようもないくらい放っておけないし、危なっかしいし…。螢の事が好きで好きで仕方ねぇや…。」
「…。」
螢は、俯き若干泣いてる俺をあの時と同じ腕で抱きしめた。そして…
「知ってたよ。」
と、一言言った。
「乳、育ったな。」
「なっ…。生ちゃんのヘンタイ!!!」
性格は若干…いや、結構変わったのかもしれない。
「…夕陽がきれいだな。」
「そうだね…。」
もし明日地球が滅びるとすれば、俺は
好きな奴と一緒にいる。俺の人生が終わっても、こいつの人生が終わっても、
こいつを
幸せにしてやれるように。
伯父さん、俺
約束果たせたよ…。
完。 …ってことにしておくwww