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*30*
「なにがあったわけ?」
雪が無邪気に聞いてくる。
まさか、虐められた、なんて言われるなんて夢にも思っていないだろう。
俺も、そんなことはいいたくなかった。
だから、スマートフォンを見せながら言った。
「このゲームが勝てなくてさー、 ムシャクシャしちまった」
あはは、と笑う。
すると、雪は拍子抜けな顔をして言った。
「え、そんな理由? まぁ、いーや、ちょっと貸して」
雪がまた、素早く俺のスマートフォンを取り上げる。
そして、ゲームを起動させると、すぐにゲームを始めた。
無表情だから、かなり集中しているみたいだ。
声をかけるわけにもいかず、沈黙した時間が続く。
でも、暫くして俺はあることに気づいた。
「おい、いま昼だろ、学校は?」
雪はまだ学校に行ってるはずだ。なんで俺の家なんかに居るんだろう。
「梢ちゃんに行けって言われたからー」
梢ちゃん?……って、梢 悠馬だよな。教育実習生の。どんだけ親しくなってんだよ、先生にちゃん付けとか。
てか、教育実習生に言われたら俺の家来ていいのか?
「担任の許可は?」
担任の、女教師のメガネ面が脳裏に浮かぶ。
「もらってないよー」
脳裏に浮かんだ担任のメガネが、怒りでキラッと光った気がした。
「いや、だめだろ、戻れ」
「やだー。 てか、いまやってるんだから黙って」
雪が、こちらを見もせずに言う。
仕方なく、このゲームが終わったら口論してやることにした。
そして……五分後。
「終わったよー、 私、見事でしたっ!」
いきなり、雪が大声を出した。
「わっ! ビクったぁ……いきなり大声出すんじゃねーよ」
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