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MH4~Re:クエスト~完結済
作者: 鈴木鈴  (総ページ数: 8ページ)
関連タグ: MH4 チートなし ハーレムなし 短め 
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*6*



 ジンオウガの背中に、折れた操虫棍を突き刺す。さぞや痛かろう、ジンオウガは暴れていた。立つのもやっとの私は、その、駄々っ子のような攻撃に吹き飛ばされ、氷雪地帯をゴロゴロと転がる。

 身体中が悲鳴を上げている。フヨフヨと飛ぶグロムウィルも、もはや虫の息だ。
 逃げれば良かったとは思わない。こっちの右腕の代わりに、アイツの後ろ足を折ったときは痛快だった。思わず笑みが溢れる。

 痛みから立ち直ったジンオウガは、足を引きずりながら私に向かう。前足で胸を押さえつけられた。これは、前に見たことがある。アプケロスに対する食べ方だった。まさか自分が受けるとは思わなかったが。
 鎧と骨がミシミシと歪む。痛みは限界を超えていて、気絶すらできない。

「カハッ……」

 左手は胴と一緒に前足でプレスされているので、折れた右手で懸命に叩く。月が綺麗だと気づいたのは、その頃だった。いつのまにか辺りは真っ暗になっていたのか。そこに気付ける余裕があってよかった。
 キラキラと雪の反射と月明かりに照らされ、空を舞う彼女は、とても美しかったのだから。





 そうだよね、あんたも生きるのに必死だよね。

 クシャナを食べようとするジンオウガを見ながら、あたしはそんな場違いなことを考えていた。
 走りながら、息を吐ききる。無呼吸攻撃が双剣の真髄だ。いま、それを見せてやるよジンオウガ。
 段差を利用しての跳躍。あたしは空で乱舞した。

 円を書くようにジンオウガの背中から前足を斬りつけ、転倒を誘う。そのまま背中に、鬼神乱舞を叩き込む。

「クシャナァ!!」

 無呼吸は終了だ。粗い呼吸で、相棒の名前を叫ぶ。
 あたしは納刀して走り出す。それを見たクシャナも、足を引きずりながら追ってきた。そして、ジンオウガもだ。

「飛ぶよ!」
「おう!」

 斜面を思い切り踏みしめ、クシャナとともに前に飛ぶ。雪に顔を埋めながらも、懸命に後ろを振り返ると、

「グオオオオオオオ!!」

 口から血の混じったよだれを垂らしながら、ジンオウガは落とし穴にはまっていた。
 クシャナは振り返りながら、
 ポシェットから捕獲用麻酔玉を取り出し、
 投げつけた――。





「そういえば、こんなものを拾った。なにかわかるか?」
「なにそれ? 灰色の玉? それよりお腹すいたー……」
「肉くらい持って来ればいいのに」
「クシャナもでしょうが! さっきから腹の虫と隣の虫がうるさいんだけど」
「私は立ち食いなんてみっともな――グロムウィルのことを貶すな!」

 月も沈み掛け、空も白んできた荒野を、二人のハンターがトボトボ歩いていた。
 ジンオウガと新米ハンター三人を乗せたポポ荷車に、二人を乗せるだけの余裕はなかった。ほかにこの地方に着ているハンターは、いい時間だったのも相まって存在せず、あたしたちはトボトボトボと歩くことを決めたのだ。

「あぁ、せめてアイツらの道具、受け取っておくんだった」
「野蛮だな。まったく……」
「なんだよ、動けないアンタ助けてやったの、もう忘れたの?」
「助かったのは秘薬のおかげだ。もともと私のじゃないか」
「ったく、塗ってやれば良かった」

 悪態をつきながら、足を引きずりながら、それでもあたしたちは笑っていた。
 太陽が真上に上がる頃、あたしたちはバルバレに戻り、驚く程よく眠った。起きたのは、クシャナがギルドから報告書の記入用紙を持ってきたとき。あたりが真っ暗になっていたことより、腹の虫で経過時間がわかった。もっと寝ようとしたが、それはクシャナに邪魔される。

「えー、んー、とー。黒いジンオウガの捕獲に成功しました!」
「ちゃんと書け。日記じゃないんだぞ」
「だってお腹すいたもの……飯食ってからでもいいんじゃない?」
「腹を膨らませたら寝るだろ。悪いこと言わないから書いておけ。飯も奢ってやる」
「え!? 本当!? じゃ絶対スマル亭! おっし、やる気出てきた!」


 クシャナの苦笑いを背に受けながら、サラサラと記入する。
 昨日クシャナに会ったこと、彼女が意外にも世間知らずなこと、装備の見た目よりも役立たずだったこと、彼女が激運であったこと、そして、彼女がいなければ捕獲に失敗していたであろうこと。

 最後にまとめとして
 えー、つまりハンターギルドの皆々様、ギルドカードの名前の枠をもう少し増やしてください。
 以上、報告終わり!









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