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*17*
・ 翠緑ノ樹海 ? ・
「――そういえば、だが」
迷宮に入った直後、魔物がお出迎えをしてくれた。いや、困るんだけれど。
シンリンチョウという魔物を見据えながら、サイモンが俺に向かっていった。
「伝えたいことが二つある」
二つ? なんだよ? 早く話してくれないか、魔物が襲ってくるんだぞ?
……まあ、いいや。
俺は槍を振る。蝶の魔物が一匹倒れた。
「一つ目は、この――‘グリモア石’についてだ」
きらりと青白く光る石。まるで水晶みたいに感じられる石――あれっ? どっかで見たような。デジャヴだが、どこかで見たと思う。
その石は平然ときれいな光を放っている。その光はまるで、技を出すときのような‘気’をまとっていたようにも感じられた。
――あ! 思い出した!
「この石、‘持ってる人が持ってない能力を得られる’っていう石だ!」
「そのとおりだ」とサイモンがいった。
「僕はこの石の力によって、‘ソードマン’の能力を使えるんだ」
――魔物が飛んできた。それも、数匹。
まるで海の波のよう――って、多すぎだ!
「さっさと倒すぞ!」
ああ、メンドーだ。まったくもって、面倒だ。
だけど――やらなきゃいけない。
俺は槍をしっかり持つ。
――魔物たちが攻めてきた。
「――これが、グリモアだ」
戦闘が終わったやいなや、青白く光っている石――グリモア石を持って、サイモンがやってきた。
「この石は魔石とも呼ばれている。この石がひときわ強く光ったときに、稀にグリモアから新たなグリモアが生まれてくるらしいんだ。――子供を産んだようだな、まるで」
「子供!?」 「僕は産んでないぞ」
アーサーの華麗なる――いや、違うけど。全然華麗なるじゃないけど――そんな感じの素早いボケに対応して、サイモンが続ける。
アーサーがなにかふてくされていた。「サイモン……産まれるのか……」とぶつぶついってる。
――いやいや、んな訳あるか!
「その生まれたグリモアには、僕たちの技と、魔物の技のどちらかが入っているんだ。――それに、強く光るのは戦闘中だけらしい」
「戦闘中!?」 「テレビの番組じゃない」
サイモンがツッコミ直後、考え込む。
しばらくたったあと、サイモンがいった。
「……テレビ?」
サイモンが、自分のツッコミに疑問を漏らしたのだ。……もしかして、フレドリカの病気が移ったのかな?
「移ってないわよっ」
ビュンッ!
突然、弾丸が放たれた。今、実弾飛んできたよ!? 危ないって!
「貴方のせいでしょ」
……そうですけど。
「そして、二つ目は――」
――依頼のことだ、と。
微笑みながら、サイモンがいった。
・ 翠緑ノ樹海 ? ・
――神秘の水。
そんなの、ホントに樹海にあるのかよ? なんて気分になるが、それが樹海にあるらしい。
――翠緑ノ樹海。
迷宮の第一階層。とても浅い階層の、一階にあるらしい。
ここは一階。うん、だからサクヤはこうもいった訳だ。
『それと、ついでに依頼も受けてくれない?』と。
サイモンが依頼の単語を口に出したのも、そのためだ。
だから、水をくんでます。ドブドブドブドブ、っていい音してます。
「地下一階の東奥……ここだと思うが、これは本当に神秘の水なのか?」
サイモンが素直な疑問を漏らす。
……だって、そうだよ。これ、どうみても岩肌から流れ出る川水とかなんかだろ。
でも……依頼人の人にとっては、神秘なる水だったのかもしれない。
きっと、そうなんだ。魔物に疲れて、疲れ果てて――もうだめだ、死にそうだってときにこの水を飲んだんだ。
だから、きっと、依頼人にとっては神秘の水なんだろうな。
「いいこというわね、ツバサって」
ラクーナがにやりと笑いながらいった。
――聞かれてた?
「口に出してたぜ。お前、案外いい奴なのな。変だけどさ」
アーサーが微笑みながらいった。……変って、おい。
ドスッ
「これで、いいか」
……待ってください。
「「「「多すぎる!!」」」」
サイモン、待て。お前、三つも水が入った樽を運ぶつもりか?
「つか、どこから樽出したんだよ」
うん、そうだよな? ……樽、サクヤからもらったのかな。
……ちなみに、あとで革袋にくんだことは彼には秘密。
サイモンさんはこんなキャラではないですよ!
ストーリーのボケのためにわざとキャラ変えているんです!
サイモンさんのファンの方ごめんなさ「俺のこといってんのか? 作者?」
・ 翠緑ノ樹海 ? ・
「なあなあ、知ってるか? 迷宮には宝箱っつうのが――
アデッ!!」
突然、アーサーがつまずき、転げ――進んでいた先の小部屋の奥に突撃した。
アーサーが痛そうに頭をさすっている。合掌。
――ん?
「黄色い箱?」
黄色い箱だった。アーサーが突撃したところは、奥の壁ではなく黄色い箱だったのだ。
ギンギラギンの――金の箱。これがアーサーのいっていた‘宝箱’なのか?
「おおっ!? 宝箱じゃんか!」
そうみたいだ。だが、俺は不思議に思う。
こんな浅い階層でも、倒れる冒険者は多くない。――誰かの遺品だってことも考えられる。
「浅い階層だし、誰かの遺品かもよ?」
ラクーナも疑問に感じていたみたいだ。アーサーにいっている。アーサーは「そうかもな……」と少し考え込んだ。
「なんにせよ、有効活用しておこう」
……そうだな。
俺はサイモンに続いて、宝箱のふたを開けていった。
――その途中。
「んげげっ!?」 「魔物――!?」
――戦闘のゴングが鳴って、俺たちはまた戦闘へと移ることとなった。