完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*23*
・ 夕方、食事は酒場にて。 ・
「いただきます!」
という挨拶をしてから、みんなが一斉に料理にがぶりついた。
「ぷはーっ!」
――また、飲むのか。
一人で呟き、そして、ためいきを吐く。
最初から酒を飲み始めるラクーナを見やりながら、俺はラディッシュへとフォークを伸ばしていく。
パクッ
「ん〜!」
――美味しい!
その隣にあった、メイプルスペアリブ――サクヤの知り合いが保存して持ってきてくれたらしい――にも手を伸ばし、がぶりつく。
肉汁がぼたりとあふれでる。あまりに美味しいスペアリブの味を堪能して、次はブドウ酒、次はローストビーフと、次々と料理を堪能していく。
――はっ。
酒を飲んでしまった!
どうしよう。ラクーナに目をつけられたら。
――まあ、いいか。こちらに注意が届いてない。
「とりあえず、美味しいっ!!」
「はーっ。探索が上手くいった日は、ご飯が美味しいわねぇーっ」
叫ぶ当然にいったラクーナを、じと目で見やるアーサー。
そして、ようやくアーサーがラクーナに向かっていった。
「ラクーナはいつでも食ってばっかじゃねえか」
はー、とためいきを吐く。
「たくっ、あの鎧の下はどうなってんだか」
「これぐらい普通よ、ふ・つ・う。……アーサー、あんたが小さいのって、食べてないからじゃない?」
ダンッ!!
ラクーナの売り言葉を買ったみたいで、アーサーが机を勢いよく叩く。
その表情は怒りの顔になっている。買ったみたいだ、本当に。
「食ってるよ! めちゃくちゃ食ってるつーの! そもそも小さくねーし!」
「そうかしらねー? ほら、そこのラディッシュは?」
と、ラディッシュが置いてある場所を指摘されたアーサーは、一目散にラディッシュへと向かい、それを手でつかみとった。
そして、そのままラディッシュを、味付けなしで口の中へと放り込む。
「食えるよ? そこのハーブも、花だって……」
と、ミントやカモミール、そして飾りの花へと手を伸ばしてゆく。
――ん? 飾り?
そうか、アーサーは、あの花が飾りだって気づいてないのか。
そしてアーサーは、ハーブも花も口へと放り込み――むせた。
「それは飾りだから、食べなくていいと思うんだけど……」
花を食べたアーサーに、フレドリカが静かにつっこむ。
「放っておけ。食べるぶんには害はないぞ」
ポンッとフレドリカの肩に手を置き、サイモンが言葉を発した。
「うん……わかったわ」
サイモンがうなずく。そして、疑問を彼女にぶつけた。
「それよりフレドリカ。きみは、魚を残すのか?」
「残してないわよ。今、食べようと思ってたんだもん」
「きみも」
はた、と気づく。
どうやら、サイモンの注意が俺に向けられていたみたいだ。
「……ニンジンを残すのか?」
あ、という言葉が不意にでてしまった。
「ああ……そうなんだよな。俺、ちょっとこの料理駄目みたいだ」
「確か、これはハルジオンとニンジンの和え物、だったか」
「ああ……」
「……じゃあ、ラスクなんてどうだ?」
フレドリカがパッと顔を上げる。
「ラ……ク……あの……りの……?」
なにか呟いているが、わからない。
「これ、なんだ?」
フレドリカのことはおいといて、サイモンに質問してみた。
「ああ、これはラスクというんだ。美味しいぞ」
「へえーっ」
ラスクか。あの、パンの耳で作るおやつ。
「少し火加減に失敗して、焦げてるところがあるから気をつけてくれ」
「ああ!!」
「あれ……? ツバサ、手作りだったって気づいてない?」
――え? テヅクリ?
ブッ!!
「ええええええっ!?」
思わずラスクをふきだすほどに驚き、そのあとサイモンに怒られてしまったのは、いうまでもない。