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カナリア 短編 END
作者: 水沢麻莉衣  (総ページ数: 9ページ)
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僕と彼女はしばらく森を歩き、語った。
彼女はレイチェルといい、すぐそこのアデス王国の端にある、修道院の修道女である事を僕に教えてくれた。

「ルーフェス・・・さん・・・よね。あ、イアンさんの方がいいかしら。名前では馴れ馴れしいかしら?」

レイチェルは僕の顔色を窺う。
彼女は美しい。

「いや、ルーフェスでいいよ、レイチェルと僕は呼ばせていただこうか」

「・・・!ええ。ふふ。わたし、レイチェルでよかったわ。とってもついてる。貴方に名を呼ばれたのだから」

レイチェルは大げさだ。
僕なんかに名を呼ばれただけでここまで喜ぶなんて。

「・・・あら、もう時間だわ」

修道女は基本修道院から出ることはないのだが、カナリアのための発声練習のため、出ることがあるのだという。

「友人が待っているわ。それでは、ごめんあそばせ」

「ああ。また、会えるかい?」

レイチェルは振り返ると、にこりと優しく微笑んでいた。

そして、儚げな微笑みとともに、

「もちろんよ、また明日この場所で」

レイチェルはまたも美しい微笑みを僕にみせた。




レイチェルside

「はぁ・・・はぁ・・・、ごめんなさい、シーカリス。待ったでしょう?」

わたしは時間に間に合わず、シーカリスに頭を下げる。シーカリスはそんなことない、笑う。

彼女は心優しく、わたしの親友であった。
シーカリスは林檎を籠いっぱいに詰めていた。
また、その林檎を売るのだろう。
彼女の母親、ユイティルは働けないため、シーカリスが働くしかないのだ。
前まではわたしと同じ、修道女であった。

「マリアに怒られるのね、私達」

「やだわ。そんな時間?ごめんなさい、シーカリス・・・うっかりしていたわ」

「珍しいね、レイチェルがうっかりなんて」

「そう?」

「うん」

彼と会ったためか、少し浮かれていたのね。
駄目よ。
わたしは修道女。
男の人なんて・・・。そんな・・・。あまり興味もないし・・・。べつに、彼と会ったからなんてあまり何も差し支えないはずなのに。

この気持ちはなにかしら?

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