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Ghost-Soldier【完結】
作者: レンクル01  (総ページ数: 58ページ)
関連タグ: ファンタジー シリアス 血描写 
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*20*

  アイリside


僕は、自分の声に違和感を感じていた。

あの研究所でみんなの無事を祈りながら、大好きな歌を口ずさんでいた。
それからだった。僕も、みんなの様子も少しだけおかしくなったのは。

「ヤジータを助けてくれた」とか、「特別な力がある」とか、何もわからないのにいろいろ言われた。
僕が無意識のうちに何かしていたのかもしれない。といってもいつもと同じ歌を歌っただけ。それがどうしてだろう。


「見つけたっ!アイリー!」

下の方から声が聞こえた。
そこにいたのは、ネオン。
明るく振る舞っているが、僕にはわかっている。
分け隔てなく接することで、自分の奥にある何かを隠しているんだ。それは隠し事をするときはみんな同じことだ。

「ネオン?どうしたの?」
「話したいことがあるのー!降りてきてくれない?」

僕は塀から降りて、ネオンの元へ歩いた。



「で、話したいことって?」
「うん、あのね……」

そこで急に、ネオンの顔は険しくなった。
真剣になったとも受け取れるし、僕にしてみれば……影を宿している、と感じる。

「……『退魔の魔術師』って知ってる?」
「……聞いたことないなぁ」

そっか、とネオンは残念そうな顔をして、

「じゃ、ごめんねアイリ!またね!」

と、その場から去ろうとした。



「あ、待ってネオン!」

僕は彼女を呼び止めた。

「んー?」
「その力のこと、よく教えてくれないかな?」

ネオンは不思議そうな顔をしていた。

「僕、最近変なんだ……歌ってもやたら疲れるようになっちゃったし、重いものを背負った感覚がある……これって、その退魔の魔術師に関係あるんでしょ?」

そだね、とネオンは呟く。

「いーよ!教えてあげるよ。」




軽い気持ちで聞いたそれが、まさか天性のものだったなんて思いもしなかったんだ。




「……そう、なんだ……」
「どう?わかった?」

ネオンは平然とした顔で、僕に笑いかける。

「……うん。でも、大変なものだったんだ……」
「違うよっ、すごいことなんだよっ」
「そっか……あ、ネオン」
「何?アイリ」

まっすぐと僕の目を覗きこむようにしているネオン。
……その裏に、どんな影が隠れているのか。

「もうひとつ、僕に教えてくれないかな?君のこと。」








ネオンの顔から笑みが消えた。

「……どして?」

声も少しだけ低くなったように感じる。

「お願いだ。僕はずっと気になってたんだ。君の笑顔の裏に綺麗に隠された影がいったいなんなのか。」

ネオンはため息をついて、

「別にいいや。退魔の魔術師様のお言葉だしな。……でも」

蒼い目は、こちらを下目づかいに見つめる。



「誰にも言わないよね?」


「うん」


僕もまっすぐに目を見つめた。



「じゃ、話すね。私が、『何者』なのか……」










「……」

ネオンから聞かされた話は、本当に驚くべきことだった。

「えへへー、驚いたでしょ?」

そしてそれを笑い飛ばす。これだから怖いんだ。

「それでは、今度こそ、じゃあねー!」

手を振って、ネオンは去っていった。

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