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僕は夢の中の君に恋をした【短編】 『完結』 番外編更新
作者: 電波  (総ページ数: 15ページ)
関連タグ:  恋愛 ファンタジー 
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10~

*2*


俺がユメと出会ったのは一週間前のことだった。

その日は特に何事もなく、学校から帰宅した俺はベッドに倒れていた。

その時にハマっていたことなんて特になく、ゲームや漫画、テレビなんて最近手をつけていない。

そのせいもあってかクラスメイトの話題にはまるで付いて行けず、隅っこの机で突っ伏してる。


周りから少し浮いてる気もするが特に気にしない方向で毎日を過ごしているのだが最近その考えを改めようか考え始めている。

そのきっかけになったのはつい先日学校の放課中の出来事である。

俺はいつも通り机に突っ伏して、自分の世界に入り浸っている時だった。

俺の席から少し離れた場所で女子グループがこのクラスでムリな人の話題で盛り上がっていた。


普通ならこういった会話は人前のするような話ではないのだが、この女子グループは何を考えているのか堂々と話し始める。

クラス自体なかなか騒がしく、女子達の音量は多少は紛れてはいるが席にいる俺からでも普通に聞こえるぐらいだった。

「ねぇ、茜はこのクラスにムリっていう人いるの?」

「いるよー」

「マジ?だれだれ!?」

すると女子グループはエサに群がる魚のように過敏に反応した。

正直俺もこういった会話は気になった。このクラスの女子は一体どういう奴が嫌なのか知る良い機会だと思ったからだ。

俺が聞き耳を立てていると、女子がはっきりとした口調でこう言った。

「ほら、あそこで寝てる奴」

「あー納得。いつもクラスから孤立してるよねーアイツ」

この『寝てる』、『孤立』の二つのワードで大体誰のことか察することができた。

言うまでもなく俺だ。

その根拠はこのクラスにいる奴らは俺を除いて大体がアウトドア系の連中である。いつも外に出かける連中が大人しく席にジッとできるわけもなく、どこかに行ったりとか、友達とワイワイ話したりとかしている。

結果、一人で席について寝ているなんて俺だけなのだ。

そして、女子グループは楽しそうに更に会話を続ける。


「アイツってさぁ、マジ陰キャラじゃない?クラスのイベントでもいっつも一人でいるし何も話さないよねー」

「それ分かるー。てか、アイツの声忘れちゃっんだけど」

「それウチも!」

そこで花火が弾けたように大きな笑いがその女子グループで巻き起こった。



陰キャラで悪かったな…。


これをきっかけに今までの生活を変えていこうと考えたのだが結果実行できず、今に至るわけだ。

実行しようとどんなに心に決めていても、体がそれを拒否し、行動を阻害する。

それに追撃をかけるかのように女子グループの話題も俺へと向かいつつあり、蔑むような言葉や見下した言葉がチラホラ聞こえてくる。


今の俺の気分は最悪だった。どんなに行動しようと考えてもそれを行う勇気が俺には足りない。


これでは、

「バカみてぇじゃねぇか」

そう呟くとゆったりとした眠気に襲われ、徐々に意識が飛んでいった。






気付いた時には、見知らぬ場所に立っていた。身の丈を超えた植物が辺り一面に生えており、どこかの農場を思わせた。

空を見上げれば雲一つない青空に、燦々と照りつける太陽。

あまりの景色の変わりように俺はすぐにここが夢の中だと分かった。

まず服装と景色がマッチしていない。ここが仮に農場とするなら俺は真っ黒の学生服だ。そして二つ目が殺人的な光を放つ太陽だが全然暑くない。しかも学ランを着ているのにだ。

驚くことに現実を見るだけで一気に夢の中がつまらなくなる。不思議なものだ。


だが、そう思う一方懐かしささえも感じた。

最後に夢を見たのは中学の終わりがけに
みた超能力で世界を操るといった非常にイタイ夢だった。

あの頃は色々な物に影響されていた時期だったからそういった夢を見やすい傾向にあったのかもしれない。

俺は辺りを見渡し、景色を拝んでおく。どうせ起きたら忘れると思うがこの光景を一時的にだが記念に頭に残しておきたかった。


その時、

「やっほぉぉ!!」

「ッ!?」

甲高い声と共に背中に強い衝撃が走った。それと同時に俺のバランスは崩れそのまま勢いに負け地面に倒れる。生憎夢の中でも痛覚はあるらしく、俺が倒れた時の痛みもリアルに再現されていた。また、重さとかそういう感覚もあるようで誰かが俺の背中に乗っかっているのが分かった。

「いって……」

俺はそう呟きながら自分を突き飛ばした奴を睨め付ける。


そこには顔立ちの整った可愛らしい女の子が無邪気な笑顔を見せ、俺を見下ろしていた。

思わず俺は彼女にこう言う。


「………誰?」

すると、彼女はんーと声を上げて考える素振りを見せると再び表情を笑顔にしてこう返した。







「分かんない!!」







これが俺と『ユメ』との最初の出会いだった。

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