完結小説図書館
>>「紹介文/目次」の表示ON/OFFはこちらをクリック
*7*
俺とユメが出会って一週間が経った。
今日も俺はいつもと変わらずユメからのタックルに倒れこみ、いつも通りの自己紹介をして今日は何をして過ごすか話しあう。
青い空、植物の海に囲まれながら互いが互いの意見を出し合う。
色々と何にするか迷った挙句、今日決まったのが花探しだった。至って単純で簡単そうに思えるが、俺が見る限りの景色に緑以外の色なんて空と土ぐらいのものだった。強いていうならユメも相変わらずの白のワンピースだ。
ユメはぴょんぴょん飛び跳ねながら無邪気な子供のような笑顔を浮かべていた。
本当に楽しそうにしているな……。
見ている俺でさえ楽しくなってくる……とあぶないあぶない!
つい見とれてしまいそうになるが顔を左右に振って意識を戻す。
その時、
「おーい!勝負は始まってるよー!負けたら罰ゲームだからねー!」
彼女は走りながらこちらに顔を向けて言う。お、おう!と反射的に返事をする俺だが正直この勝負、負けるつもりでいた。別にやる気がないとかそういうのではなく、この遊びはただの口実にしかなかった。
本命は罰ゲームの方だ。
罰ゲームの内容は、負けた方は好きな人を発表するというもの。
なぜここまでのことをするかというと大体察したと思われるが、俺はユメのことが好きだ。
最初の内はただの夢の女の子で相談に乗ってもらってる時もそんなに意識していなかったが、彼女が俺を忘れてしまうと知った時からいてもたってもいられなくて、色々と努力していくうちに彼女のことが好きになってしまった。
そして今日、会って一週間で告白とは早い気がするがどうしても自分の気持ちを伝えておきたかった。たとえ明日には忘れてしまうかもしれないけど、彼女にとってあったばかりの男だけど一言言っておきたかった。
しかし、いざ告白するぞ、となると妙に落ち着かないし変な汗かくし手足が震える。
「だ、大丈夫だ!これは夢だから!これは夢だからまったく全然、問題ないっ!告白したって大丈夫だ!」
必死に自分に言い聞かせながら俺は、一応一生懸命探したていを装うため、草原の中へと入っていった。
それからどれくらいの時間が経ったのか、俺が草原の中から出てくると勝ち誇ったような表情をするユメが目の前に立っていた。
「あれ、よくここが分かったな」
「ふっふん、私はこの場所を熟知しているのだ!だから名無しさんの居場所は手に取るように分かるよ!」
なるほど…と妙に納得する俺。そんな時、ユメが自分の腰に両手で何かを隠しながら不敵な笑みを浮かべてこう言った。
「では、勝負の結果と行きましょうかね!」
「お…おう!」
ノリの良い彼女はいっせーのーでっ!と掛け声を放ち隠している物をだした。俺もその掛け声に合わせて片手に持っていたそれを出す。
「……」
「……」
ユメが出したのは花びらがとても細かく綺麗な紫色を特徴とした花だった。(後で調べたが彼女が出した花の名前は『オオカッコウアザミ』という海外の植物である)
一方俺が出したのは何処にでもあるようなアサガオの花である。
この時少しの沈黙が流れた。お互いの花の量が圧倒的な差があって不自然に思ったのか、それともこの量を見てふざけているのかと怒っているのか、そんな悪いイメージが俺の脳内に駆け巡った。
「やったぁぁぁ!!」
と思ったらそうでもなかったようだ。
彼女は全身で喜びを体現しながら、こう言う。
「ばっつゲーム!ばっつゲーム!」
内心ホッとする俺。ここまでは計画通り。しかし、問題はここからだ。彼女いない歴=年齢の俺にはどう言えば良いか分からないでいた。
「ほらほら罰ゲームだよ名無しさん!」
「う、うん…」
ああ…どうしたら良い物か。口を開こうにも唇が震え始め、顎もなぜか重くて開けない。
そんな俺を見てか励ますようにユメはこう言った。
「大丈夫だって!好きな人の名前を挙げても私はその子のこと全然知らないから!」
いやいや、好きな人はお前だから!
俺は言いたいけど言い出せずに口をひたすらもごもごさせているだけ。気づけば顔の温度が急上昇、恐らく見た目が茹で上がったトマトのように真っ赤なのだろう。
ユメは頑張れっ!頑張れっ!とにこやかに応援してくれる。
ここまで来たなら言うしかない。
男なら覚悟決めてバシッとしろ!
俺はぎこちなくだが口を開け、そこからようやく声を出すことに成功した。しかし、その声は風が吹き抜けたかのような情けない声で言い出した俺でさえ聞き取れない。
「頑張れっ!もう一回!」
彼女は微笑みながら俺に顔を近づける。勇気づけるためなのか、もしそうだとしたら余計に声が出なくなる!
だが後には引けない。もうやりきるしかない。半場開き直りながら俺は天を見上げ高らかに宣言する。
ええい、ままよ!言ってやれ、もう一回言ってやれ!
たとえどんな答えが出ようとも後悔しない!
悔いを残したくない!
彼女との思い出を残すためだ!
「お前が好きだぁぁぁぁぁぁぁ!!」