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第四話 We are the same
今日のビクトリーズの対戦相手は、マックスパワーズである。不動が監督から聞いた話では、なんでもアメリカ人が中心になったチームらしい。
名前どおりのタフガイが勢ぞろいしたチームだった。なんでもチームメンバーは全員アメフトもやっているらしい。
「まあこれだけ体が大きいのでは動きがきっとのろいのでしょう。よろしくお願いします」
玄武が握手のために手を差し出す。
「挑発トハ良イ度胸デスネ」
マックスパワーズのキャプテンが玄武の手を握り返すと、玄武の手の骨が砕ける音が観客席のカンタにまで聞こえた。
「ああっ! 玄武さんの手がつぶれた空き缶みたいにペッシャンコでやんす! 相手はきっとすごい力の持ち主でやんす!」
「ま、まあ試合前の挑発合戦はこんなものでしょう。さあみなさん作戦会議をはじめましょう」
玄武は強がって言うが目には涙を浮かべていた。
試合が始まる。パワーズのフィジカルはやはり強く、空中戦や奪い合いではビクトリーズに勝ち目がなかった。
が、パワーズに戦慄が走る。幾度となく完璧な形でシュートを放っても、すべてキーパーのジモンが止めてしまう。
試合後半。前線で不動からのパスを受けたFWの玄武が、不動にもう一度バックパスをしようとしたとき、DFとの接触で転んだ。勝手に玄武がこけただけだが、見ようによってはパワーズDFの足が絡まったようにも見えた。
これがファウルになり、ペナルティエリア前から不動のフリーキックになる。これを完璧に決め、試合は1−0のビクトリーズの勝利に終わった。
不動は気づいていなかったが、観客席から辺見が試合を見ていた。
(不動の奴ずいぶん下手になったな。が、それでもパワーズじゃ不動は倒せないだろ。奴を殺れるのは俺だけだ。実力的に考えてな……)