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イナズマイレブン5 さすらいのヒーロー
作者: 南師しろお  (総ページ数: 44ページ)
関連タグ: イナズマイレブン 不動明王 パワプロクンポケット イナイレ しろお 
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 山口商店でのバイトを終え、不動はいつもの商店街の道を通る。今日はまた京香の店が開いていた。京香が不動に気づいて、手をこまねく。
「やあやあ明王くん。お疲れ様。暇人の話し相手になっておくれよ」
「俺も暇だからかまわねえぜ。正直トレーニングする体力も残ってねえしな。やっぱ、怪我するとスタミナが落ちるな」不動は漢方薬屋の中にある椅子に腰掛けた。
「怪我? してたの?」
「ああ。今はすっかり良くなったんだがな」
「凄いね。この間も一番街なんとかに勝ったそうじゃない。商店街のヒーローだね」
「ヒーローねえ。俺はトリックプレーを信条にしてるから、ヒーローっていうよりかはジョーカーだがな」
「またかっこつけて。ねえ、やっぱり、サッカー浪人さんはプロを目指してるの?」
 京香は緑茶をずずと飲む。
「プロか。どうなんだろうな」
「あ、緑茶飲む?」
「頼むぜ」
「はい、どうぞ。ごめんねすぐに出せなくて」
「気の効かない女だな。あ、バナナあるか?」
「気が利かない……か」
「おい、聞こえてる? バナナあるか?」
「私ね、むかし『お前には人間として欠落しているものがある』と言われたことがあるの」
「ひでーこと言うもんだな」
 元彼かなんかだろうな、と思い不動は興味なさ気に緑茶を飲む。
「私の親みたいな人にね。言われたんだ」
 京香は笑ってはいるが、声には力がなかった。
「気にすンな。人間としての欠陥なんて、誰に解るものでもねえと思うぜ」
「ね、明王、貴方はもし……」
 京香はなにかをいいかけて、止めた。
「いや、なんでもない」
「そうか。今度俺が来るときはバナナも用意しとけよ」
 京香は返事をせず、ただ口元だけで笑ってみせた。
 不動は店を出た後も、京香との会話を考えていた。
「人間としての欠陥、か」
 かつてまだ彼が少年だったころ、彼はチームでの邪魔者だった。チームメイトとは馴染めず、孤独なサッカーしかできなかった。
 今では彼も協調性がある人物に成長したが、時々その時を思い返すことがある。
(昔の話だ)



君の手で鍵をかけて ためらいなどないだろう
間違っても二度と開くことのないように
さあ 錠の落ちる音で終わらせて


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