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*23*
不動が練習前に集会所に寄ると、商店街の面々が揃っていた。
「これを見てくれ」
と米田が不動にチラシを渡す。スーパーのチラシだった。
「いつも商店街がイベントを企画すると、それにあわせてあちらでもイベントを企画しているんだよ。それで客があちら側に流れてしまう」
と権田が不動に説明した。
しばらく沈黙が流れたが、「けど、気にかかりますね」と玄武が一声を発した。彼は続ける。
「イリュージョンスーパーの立地はどちらかというと車で買いに来る人向けです。ですが、ブギウギ商店街は駅前で、電車を利用する人が主な客層なんです」
はっとした京香が、玄武に続けて発言した。
「つまり、商店街を潰したところで客層が別れているから、イリュージョンにはそこまでメリットがないということね」
「もしかしたら奴ら、ここにもうひとつスーパーを建てる気なんじゃねえか?」
と言う米田の発言は不動が否定した。
「それは無いな。同じようなところに二つスーパーを建てる意味がねえ。もしかすっと、やつらは『この土地自体に価値がある』と考えているンじゃねーか」
「そういう話は聞いたことがないですよ」
奈津姫は首を振る。「俺も無いな」と権田が言った。他の誰もそういう話は知らなさそうだった。
「わかった!」
と京香が手をたたいて注目を集めた。「イリュージョンスーパーの人たちはきっと凄いひねくれてるのよ!」
「違いねえ!」米田が笑う。「理由なんか無くてちょっとの売り上げのために俺たちを潰したいだけなんだ!」
笑う京香と米田につられて、その場にいる全員笑ってしまった。ただひとり、不動だけは輪に入らず辺見のことを考えながら嫌な予感を感じていた。
「ああそうだ不動、次の週は稲妻町の一番街サリーズってのと試合だ。強豪だが勝てるな?」
「稲妻町……フン、懐かしいな。ああ。この不動明王様に任せとけ」