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さぁ、復讐を始めようか【完結しました!】
作者: 杏里  (総ページ数: 54ページ)
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どうしても書きたかった短編集 その5

「友達」

10年ほど前のお話。
寒い寒い冬の朝でした。
とある小さな病院で、7ヶ月の女の子が生まれました。
そう。彼女は未熟児だったのです。

彼女は「麻子」と名付けられ、病気もすることなく、すくすくと育って行きました。
しかし、彼女は気が弱く、人に反論することができなかったのです。
そのせいで、彼女はいつも泣いていました。

小学校に入学し、しばらく経ったある日。
彼女は願いました。

「死にたい」

と。
こんな苦しい人生ならば、生きていても仕方が無い。ならば、死んでしまった方が楽ではないのかーーと、彼女は考え、死のうとしました。
小型のカッターナイフを持ち、遺書を書き、さぁ、死のうとした瞬間ーー
友人の言葉を思い出しました。
「俺らは、出会う運命だった」
彼ーー池上隼人はそう言い、彼女の頭をくしゃくしゃと撫でた。
それだけで、彼女の心は柔らかく解けていった。

「私やっぱり、生きたいよぉ……」

ぽろぽろと、彼女の瞳から涙があふれる。
彼女は、気が済むまで泣きました。
静かに、1人で……



6年後、純粋だった少女は、「復讐」という毒で汚れていた。
光も、闇も映っていない虚ろな瞳で。
「復讐」という名の鎖で繋がれていた。
「親友」という存在の為に、必死で生きていた。
ただただ、時間を消化していた。
親友に裏切られても、必死で生きていた。
「死にたい」と願いながらも、生きるしか術はない。
「……だって、一人は怖いもの」
彼女ーー私は、拳を握りしめた。
「死んだら、一人にならなきゃいけないでしょう? 一人は嫌」
友達が欲しいの。心を許せる人が欲しいの。
だから、私はもがき続ける。

(……覚えていますか、私を傷つけた方々)
(今もきっと、幸せに暮らしているのでしょう)
(でも、きっとそれは一時の幸福)
(本当の幸福を手に入れられる者など、ほんの一握り)
(私は、そんなものいらない)

(ただ、友達が欲しいだけなの)

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