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桜と君と雪の匂い 【完結しますた】
作者: 唯柚 ◆0Tihdxj/C6  (総ページ数: 8ページ)
関連タグ:  少女 ロリ 複雑・ファジー 
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*1*

 四月。

「――だれ?」

 僕が彼女に出会ったのは、桜色の世界でのことだった。

「誰だろうね。当ててみて」

 右半身は、未だ熱を持っていない土に触れ、左半身は、揺れる花弁の隙間から漏れる日光で、眠くなるような温もりに包まれていた。声のした方に目を向けると、一面の桜色と深い水色の斑を背負うように、一人の少女が立っていた。

「うーん……分かんない」

 少し首を傾げ数秒。早くも考えることを放棄した彼女は、「教えて」と答えをねだる。風音の隙間を縫うように耳に入り込んだソプラノボイスが、心地好い。

「正解は、ただのお兄さんだよ」

 この時の僕は、彼女の年齢も、名前も知らない。ただ舌足らずな言葉と、少女特有の高く甘い声。そして背格好のみで、自分より年下だろうと判断したのだ。そして、結果的に違っていようが、気にしてはいなかった。元々、口からの出任せのみで言ったのだから。

「ふぅん、そうなんだ」

 後に、それは小さな嘘になった。
 そしてこの嘘が、僕と彼女の非日常な平和の始まりだった。

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